龍の手使いが頑張る話   作:花咲爺

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主人公の戦闘シーン。
批評は受け付けます、感想も見ます。
ただ更新頻度は期待しないで…


第二話 さて、頑張ろう

 右手で4、左手で1。これがどんな意味を表すかは僕だけしか知らない。

 勿体ぶらず簡単に説明しよう。

 右手で表すのは敵に殺られた僕の数、左手で表すのは敵の数、僕が行かせた人数は5人の為生存者は一名だけだ。

 

 相手、相当強いみたいだ。

じゃなきゃ僕は殺られない、そう言う自信が僕にはある。

 まず倍化してあるし自分自身と一緒に戦っているのでコンビネーションも文字通り以心伝心で行ける。

正直僕が一緒に戦わずに分身だけで戦わせた方が早くやれる可能性すらある。

 それこそ下級、中級のレベルならばコンビネーションと数の利で僕無しでも欠けることなく勝利を収めることが出来るだろう。

 

 事実、さっき帰ってきた僕も三人で下級のはぐれ悪魔を倒せていた。

 その僕が4人殺られる、よっぽど力が強かったのか速かったのか。

ただ逃げる要員の一人だけとは言え逃げ帰って来れているのでもっと強い奴を呼んで来いと言う奴ではない限り相手が速い可能性は低い。

 

 試しに僕に相手はどんな奴?と思い浮かべると僕が懐からメモ帳を取り出して絵を描き始める。

 モノの一分で出来上がった絵には筋骨隆々な毛むくじゃらの化物が僕を頭から思いっきり地面へ叩きつけている姿が描かれていた。

 どうやら予想通りパワータイプらしい、もちろんのことだがスピードもある程度はあることだろう。

 

 元々「A級はぐれ悪魔イグァード」と言う情報はあったのでまずは僕を送って様子見するつもりだった。これで取る情報も取ったしそろそろ行くことにしよう。

 

 では悪魔祓い(故人)から剥ぎ取った気配隠しの術式付き戦闘服と、鉄パイプやらナイフやらを懐に仕込む。

さらに見られた時のことを考えた仮面を付けて分身。

するとハロウィンの時でさえ人が見たら怪しがること100%請け合いな見た目の集団が出来上る。

僕は自宅を後にした。

 

 

 

 町外れにある廃工場にやって来た僕御一行。

やっぱりここにいるみたいなのだが何このいかにもって感じは…

 これまでの経験から言うと悪魔とか化物の類はこう言う廃工場だの廃墟だのが好きなんだろうか?

 確かに人は来ないだろうがこう言うのを狩るのが職業の人には逆に見つかりやすそうな気も…

 

『行くんやな、晴天』

 当たり前さカンサイ、早く倒しておかないと被害が増えるからね。

はぁ…悪魔といい裏の人達といい、もっと管理をしっかりしろよ…

 

「イグァード、殺らないと」

「きょんヴァんわぁ!どうも俺イグァード!最強の悪魔だよろォしく??」

 

『晴天ッ!!』

 

 僕の呟きが影から現れた全身が毛で覆われた巨躯の男にそう返され、その豪腕が振るわれる。

 カンサイのおかげで僕は間一髪避けられたがちょうど後ろにいた僕は勢いよく壁へと叩きつけられ掻き消えた。

 

 なるほど、狂ってる。

前に出会った話が通じる悪魔じゃないな、つまりこれまでの悪魔と同じだ。

 

 殺ろう。

『Twice!』

 

 僕は倍化した体で飛び出し先端を尖らせた鉄パイプを突き出す。

 

「ヒャハッ!?あぶっぶ、もモラララぁあ!!」

 

 しかし悲しいかな、相手は悪魔、しかも上級並みの力を持った悪魔だ。技もなく突き出ししただけの攻撃は普通に避けられた。

逆にサッと言う少し濡れたような音と一緒に鋭い痛みが走りグッ!!とくぐもった声が出る。

 脇腹を結構切られた、鍛錬しているとは言え僕は人間なのであまりこう『避けッ…』イッ!?

「ほらほらほららぁ!!」

 

 カンサイの助言が間に合わず連撃を貰ってしまい僕は2度地面に叩きつけられた。

 体に鞭打って立ち上がったが体がかなりボロボロになってしまった。

仮面もひび割れイグァートの容姿が鮮明に見える。

狼に似た肉体、顔には何処かデジャブを感じた。

 

『ヒャハッ、もう動かなくなったぜ』『生意気なんだよ人間の癖に』

 

 突然思い浮かんだ謎の映像を振り払うと僕は地面に転がった鉄パイプを拾い上げる。

 クッソ、しくったなぁ…やっぱりこういう相手は下手に手を隠さずさっさと済ますに限る。

カンサイ!

『あいよ!』

 

『「禁手(バランスブレイク)!」』

 

 呪文のようにそう唱えると僕を目が眩むほどの光が包む。

一応目潰しも含まれた演出だ。さらに、

 

「イイッタイッ!!!?メガァア!!メガァア!!」

 

 悪魔には尚更効果アリ、目を焼かれたようなので僕もすぐさま向かう。

 黒光りする甲冑を着た僕は文字通り弾丸のような速度で右手の鉄パイプを思いっきり振り抜く。

(ゴキンッ)

「あギュッ!」

 

 スイングによって脇腹が痛むがリターンとして鉄パイプに伝わってくる確かな手応え。

 イグァードの顔面があらぬ方向へと曲がる。

だがこれ位で悪魔が死ぬわけないので僕は分身を増やし押し倒してリンチを開始する。

 卑怯上等、こっちは倍化してもひ弱な人間なのだ。せめて数だけは増させて欲しい。

 

「…」(ドカッ)

「…」(ゲシッ)

「…」(ザッ)

 

「「「…」」」(バキグシャドスッ)

 

 無表情の僕達が悪魔を篭手で、そこらの材木で、鉄パイプで殴る。非常に狂気度が高い光景に見える。

 

 硬度を倍加させてるので材木でも鉄で殴られる程に痛むだろう。振り下ろされる速度もかなりのものなので痛そうだ。

 そんな僕等に殴られる度グボッ、たのひっ!?だのと悪魔が喘ぎ声に近い声を出す。

 僕もその中の一員として顔面を蹴っているのだが考えもそこそこに、もう倒してやろう。

じゃ僕、頼んだよ。

『Twice!』『Twice!』『Twice!』『Twice!』『Twice!』『Twice!』『Twice!』『Twice!』

『Twice!』『Twice!』

 総勢10名の僕から倍化を掛けられ、僕の身体能力はなんと2の10乗、1024倍まで上がる。

体に負担が掛かるが人の身でも上級悪魔以上の動きが可能になった。

「それじゃ、があッ!!!」

 振り下ろした鉄パイプが轟音と共にパキンと小気味よい音を立て折れるが、その力をモロに当てられたイグァートは異形と化した体に大きな穴を開ける。

 

「ぐぁ、おぉぉ、あひっあひひ…」

 

 しかしイグァートはそうなっても未だに生きていた。

 まだ終わっていないとでも言うように空いた穴から血を垂れ流しながらも起き上がり、周りにいた僕の分身をこれでもかといつの間にか伸びていた爪で切り刻んで霧に返す。

 

「ギルへぇ?ギルテー!ギルテー!」

 

 有罪(ギルティ)とでも言っているつもりなのだろうか?こうまで人を殺しておいて、何を言うつもりだろう。

 

 僕がチラと見た先には数人の亡骸があり、それもさらし首のようになっている頭以外はミンチ状態になっていてぐちゃぐちゃにされた肉塊と化している。

 

 たまにふわっと香る血の匂いで僕の体を怒りが支配した。

 僕は指輪から分身を3体出し、その体重(・・)に倍化を掛けさせる。

 

「がぁあああああああ!!!!!」

「シッ!」

 

 速度は増したが直線的なその攻撃をサイドステップで躱し、その勢いで背中を思いっきり両手で殴った。

「ガァッ!?」

 

 先ほど倍加した身体能力はまだ継続中なのでその力で叩けばいかに悪魔といえど地面に縫い付けられ、その体に重さを増した僕等が纏わりついた事で身動きが取れなくなる。

 行くよ。

 

「…」(バスッ)

「ぎぁぁああああああ!!!」

 

 まず一人目の僕が左腕を刺し、二人目が右と言うように拘束兼攻撃を始めた。

 僕の見立てだがこれは最後のあがき、一瞬力は出せてももう長くはもたない。

 さらに時間が経つほどに増える僕の重みと言う拘束によってイグァードは身動き一つ取れなくなって来ている。

 通常時ならばこうはいかなかっただろうが見立て通り先程の傷は大分堪えているようで、徐々に反抗する力は弱まっていく。

 

 それでもまだ、決定打足りえない。

 過剰と言われればそれまでだが手負いの獣ほど怖いものは無い、先程の一撃がいい例だ。

 ましてや単純な力は僕の数十倍ある悪魔である。念には念を入れ、石橋を叩いて這ってそーっと渡ろうじゃないか。

 予備の鉄パイプを受け取り、僕は餅つきでもするような姿勢になって…

 

「ぐッ……………こ…」

 

 くぐもった声とバキャッと言う何かが砕けた音がイグァードから工場内へ木霊した。

 今度は頭に一撃を喰らったその体が一度だけ大きくビクンと揺れ動き、動かなくなる。

 

 僕はどんどん弱って行く魔力の集中した所、毛むくじゃらの胸の部分を探る。

 するとコロン、とチェスの駒のような物が出てきた。

 それを拾い上げ、もう一度イグァードの顔を見てみるとその顔が完全な獣のものから少しだけ人に変わり、生気が微塵も無く、この人生の中で何度か見た顔、死人の顔へと変わっていた。

 

「ぐぼぉッ!(ビチャチャッ)」

 

 そのことを意識した途端に僕の奥から込み上げたものが地面を赤と汚い黄色に染める。

 あー、最近は慣れたと思ったんだけどな…

 

『大丈夫か?晴天、お前、やっぱり…』

 

 見かねたカンサイに心配されるが今はちょっと大丈夫じゃない…こういうのはいくら続けてても慣れないね…

 それよりカンサイこそ大丈夫?禁手すると疲れるんでしょ?『せ、せやけど』じゃあ寝てなよ。

 

『…スマン』

 

 それっきりカンサイの声と反応が途絶える。眠りについたようだ。

 僕の傷も多方は塞がってきたし、帰るとしよう。ここにいても不都合しか起きないからね。

 頬を叩いて喝を入れ、僕は少しふらつく足で地面に血とは違うモノを垂らしながら家路についた。

 幸い誰に気づかれる事もなく家に帰り、一悶着あった訳なのだが、その一悶着のせいで僕は大事な事を忘れていた。

 

 今も廃墟に転がるイグァードの処理を。

 

 

 

 

 

「これは…一体…?」

 

 私がここに来たのは『S級(・・)はぐれ悪魔イグァード』の討伐の為。それなのに。

 反応が突然途絶えたと思ったら何故イグァードの亡骸が転がっているのだろうか。

 

「凄惨です」

 

「これは酷いですね…」

 

「何度もいたぶるように殺られていますわね。うふふ、一体どんな方なんでしょうか?」

 

 祐斗と白音は顔を顰めるが逆にそれを見る朱乃の表情は恍惚としている。

またいつもの悪癖とも言っていいSッ気が顔を出したようだ。

 だがそのことは何時ものことなので別にいい、問題はここ最近、自分の領地にはこういった痕跡をかなり消されたようなはぐれ悪魔の残骸と思わしきモノが多々あることだ。

 

 今回は形が残っているが恐らくそのうちの一つなのだろう。はぐれ悪魔の討伐は本来喜ばれるべきなのだが今回は大公からの依頼によっての事だ。

 

 それにここは私の領地、誰だか知らないがこのまま好き勝手にされるのは大いに困る。

 だが一つ疑問が残る。これは誰の、そして何処の仕業だろうか?

 

 はぐれを狩る教会のエクソシストであるか?否、それならばあらかじめ何処からか連絡が来るはずだし、S級はぐれに執心する理由もない。

 はぐれのエクソシストでは恐らく実力が足りないし、悪魔に有効な光力を感じないのでそもそもの可能性が低い。

 では一体誰が…

 

「どちらにせよここは私の土地よ、曲がりなりにも管理してる私を差し置いての勝手は許さないわ」

「「「はい」」」

 

 私の言葉に返事した眷属達の顔は皆引き締まっていた。

 




戦闘経験豊富な赤龍帝並みの能力と全国レベルの身体能力保有の高校生>理性を無くし、本能のままに動くS級はぐれ悪魔
 
 理性のあるなしで勝敗が決まるってはっきr(殴
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