龍の手使いが頑張る話   作:花咲爺

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ギブミー感想
花咲爺です

展開色々教えて偉い人!


第三話 ∞の龍

 イグァートとの戦闘が終わり、僕は自宅で全身が映る大きさの鏡の前で傷の具合を確かめていた。

 鏡には見慣れたやや細いが引き締まった体、その所々に走る大小の傷が写っている。僕の鍛錬の成果と守ってきた証だ。

 

「ふふ、ふふふふ…」

 

 乾いた笑みが零れた。いや、可笑しいな、何が守ってきた証だろうか。

 僕がこれまでに見た死体は20にも登ると言うのに…時にはいくつか助けることも出来たが僕はそれを教会に届けただけで後は何もしていない。

 それを「守ってきた」とは口が裂けても言えないだろう。僕はごくごくわずかに被害を減らしただけだ。アフターフォローもクソもない。

 

「あぁー…誰も死ぬずに、皆を助けられる、ヒーローになれたらなあ…」

 

 心の声がモロに出てしまうほどメンタルはダメージを負っていて、鏡に映った僕には悔しさが滲んでいた。

 

 体を見ると今回受けた外傷は表面上は見えず、日常生活には困らないレベルのようで安心した。

 皆勤賞が無くなってしまうのは大学まで見据えてる身としては困る。何だかずれた思考だと思うがもう日常と化したこれは多分治ることはないだろう。

 

 治る関連だが叩きつけられて出来た傷は中々治ってくれていない、表面上の傷は塞がってるように見えるが中にはまだ傷が残っているようでひねったり激しい運動をしたらかなり痛む。

 

 これも僕の弱点、治りの早さが人間なので深い傷を受ければ神器を使っても完治まで数日は要する。

 やっぱり自己回復だけでは地味にキツい、身体能力を倍化させているだけなので栄養をしっかり摂っておかないと治りも悪くなるし、まあ人よりは丈夫って位?

 最初は禁手無しでも行けると思ったんだけど流石A級、結局出し渋っていた禁手を使う羽目になってしまった。

 

 ただ、そのA級悪魔でもその上はいる、山ほどいる。

 Aの上にはSがあり、さらにその上にはSSランクも存在するし、まあSSSまでいるのかは知らないがそれくらいのレベルは存在しているわけだ。

 

 今言ったのはぐれ悪魔のみだけど他にも例を言えば聖書に記された熾天使や魔王といった超常の力を持った人外共やドラゴン、果てや神。

 

 殆どは話で聞いただけだがやっぱり吐きそうになる…人間に優しさを感じない。

 それ等を倒した人間の英雄、の末裔は「禍の団」とか言う組織作って世界を相手にテロ行為してるし…

 英雄を人工的に生み出す為に孤児やらを集めて非人道的研究をしてる機関もあるし…

 

 ・ ・ ・

 

「あぁーーーーーー!!!!人間殆んどモルモットじゃねぇかッ!!!天界連中何やってんだよッ!!神いないからって自力で何とかしろってかぁ!!!?なぁああああにが救いだクソ共がァ!!?悪魔連中もクソしかいねぇじゃねえか!!!クソがァ!!!堕天使連中もいっつも研究に付きっきりで興味のある奴しか保護とか言う名目で研究材料化するし…ああああああああ!!!どうなってんだ!どうなってんだよオイ!!」

『Twice!』

 イライラが爆発し、倍化の力を使い手当たり次第にドカドカと壁を殴りつける僕、もちろん壁を倍化した為傷は付かない。賃貸だし。

 篭手をしてても手に衝撃が来て地味に痛い。

 まともはぐれさんには感謝感謝だが教わった術式ではそこまで大きい声を抑えてはくれないのでもう止めとく。

 

 はぐれさん、綺麗な人だったなぁ。猫みたいな喋り方と見た目だったから猫系の妖怪だったのかも…スタイルも中々だったし多分だけどそう言う理由で成らされたんだろうなぁ…

 

 はぁ…ともかくそう言う連中とはまだ事を構えないことにしてッ!カンサイが禁手の反動で眠っているので一人で反省会だ。

 

 まず第一に長く展開しても大丈夫なようにしなきゃダメだな、僕のためにも、カンサイの為にも、そして、僕が守る人たちの為にも…

 他に反省点と言えば今回僕の倍化のからくりが分かる理性と頭脳が無かったからこの戦法でも行けたけどあれ以上に知恵があれば、もっと強かったなら…確実に更なる苦戦を強いられていたことか。

 

 やはり何処かから武器を手に入れるべきか…ただそうなると裏の世界に本当に入らないといけなくなるし管理も必要になる、証拠の隠滅もさらに難しく、いや、それは裏の連中にどうにか…

 

 だんだんと悪い方向へと思考が進んでいってしまう。僕の悪い癖だ。カンサイみたいに明るく振る舞えないものかと僕は少し自己嫌悪に陥ってしまう。

 いつもはここまででは無いのだが…それもやはり、あれを見たからだろうか…

 

 イグァードのように、他種族を悪魔に作り変える道具…『悪魔の駒(イービル・ピース)』を。

 

 悪魔に成る。

 寿命が一万年程延び、力は倍以上に上がるし欲の強い男子であれば手にしたいと思う女の巣窟(ハーレム)もその気になれば得られる。

 力を求める者にはとっておきの秘密兵器だと思う。

 

 が、その効果の数々がどれだけ可笑しい事か考えたことか分かるだろうか?

 

 僕的な考えだけど不思議な力で動物が人間になる童話に近い。

 で、物語でも現実でも例えば猫から人になった者は物語でどうなっただろうか?

 大抵の場合、体も違うし、自身の増した力を制御出来ずに終いには形はどうあれ暴走してしまう。

 結局のところ童話ではある程度ハッピーエンドになるが現実では理性を無くして人を襲って殺して…

 これが悪魔の駒、恐ろしい転生道具の力だ。

 

 はぐれさんから初めて見て説明された時、カンサイですら知らなかったことを聞いて、僕等は言いようもない悪寒に襲われた。何故か他人ごととは思えなかった。

 

 人一人の人生をなんだと思っているのだろう、承諾も確認も無く力や容姿を得るために悪魔にされ、逃げてもはぐれとされて消される。不都合が起きないよう知ってる者にはその人を忘れる魔法も掛けられる。

 

 こちらは覚えているのにあちらは何も覚えていない、それがどれほど辛いものなのか僕は想像することしか出来ない。

 でもはぐれさんは種族は違えど理性はあった。が、もしこれから他の者と同じように正気を失い、人を殺すようになったら…

 

 まさしく、悪魔に変えて…

 

 

(…何だ?)

 

 

 不意に意識が何気ないはずの宙に向いた。

 ただその見つめる先には本当に何もなく、普通に僕の部屋が広が…(ス゛ズッ

 

「!?」

 

 僕の反応は公私どちらで判断してもけして遅かった訳じゃない。すぐにその場から飛び退こうとしたがその時空の乱れとも言える揺らぎは一瞬で開き、僕を捕らえ…ることはなかった。

 

「…………へ?」

 

 いきなり何処でもない、強いて言うなら空間から女の子が飛び出して来ただけ。

 間抜けな声が僕の声帯を震わせる。

 それほどまでに衝撃的で瞬間的で、僕は混乱の最中にいた。そして一言

 

「ん、ついた。お前、何?」

 

 こう言われた。僕も一言言わせてくれ、何言ってるのこの子可愛い。

 ロリコンペド呼び何でも来い。今なら何だって反論できそうだ。

 僕の脳内は混乱と興奮が混じって訳の分からない答えに陥る。深呼吸して一回落ち着こうと言う思考回路がまだ残っていただけマシと言えるか。

「すぅーーーーー…ふぅ…」

 さて、整理だ。僕の前には幼児レベルの外見をした女の子がいる、その子が僕に何者ですか?と聞いた。OKOK把握した。

 とりあえず整理したはいいが僕はどう答えたら良いだろうか?名前?種族?それとも存在意義的な哲学系の答え?

 

 やっぱその前に一言言わせて―

 

「―なにこの子、めっちゃ介護欲が湧くんだけど(錯乱)」

 

「我、介護欲湧く?」

 

 小首をかしげる幼児、あざとい。

 何を当たり前のことを言ってるんだろうか?この子は?こんなに小さくて肌も白くてきめ細かくて、髪もサラッサラ、声も可愛いしほっぺもぷにぷにしてそうな幼児が僕の介護欲を掻き立てない訳が無いでしょうに。

 

「当たり前でしょ?」

 

 僕はそう言って微笑みを返す。

 そういえば何でカンサイが何も言わないかが分からない、いつも小学生を見かけるとめんこい子供やなあとかごっつ撫でたいわぁと少し背筋が寒くなる一言を言うのに、一体どうしたことだろう?

 

 あ、そうか寝てるんだった。でもそろそろ30分が経つのでもう起きてるはずだ。

 ちょっとした感動を分かち合う為起こしてみることにする。

 

 カンサイ、カンサイ?カンサイー!駄目だ、反応が『わわわわわわわわわわワイやで!?』カ、カンサイがこの上なく動揺してるだと!?

『動揺すりゅのもあたり前やや晴天、こ、コイツはあかんねん』

 

 な、何で?人形みたいに可愛らしい子供じゃないか何も怖いことは…

『ちゃうねん!!なんで気づかんの晴天!!コイツ子供やない!!前に一度だけやけど、あれは、あれだけは忘れようもない…コイツはドラゴンや!それも龍の頂点、赤龍帝神グレートレッドに最も近い、あの、無限龍のオーフィスやぁあああああああああ!!!!!!』

 

 頭の中にぐわんぐわん響くその声を僕は10秒経って理解する。

 アッ!?エッチョッ、ジョウダンヨシテヨ…

『お前見たらちょっと落ち着いたわ、ホンマ…』

「ア、アイエー!???」

 普段の僕とは似つかない声が僕から出た。動揺が隠しきれない、本当に、本当にそうなのか?いや、カンサイがここで嘘を付く必要性も無いしさっきのも嘘とは思えない。

 じゃ、じゃあ、この子、あの話に聞いた次元の狭間に住んでるっていう∞龍なの!??

 

「我、オーフィス。もう一回聞く、お前、何?」

(ブワッ)

 その瞬間オーフィスから力の波動が放たれ、僕の体は締め付けられるように固まって動けない。

 「蛇睨み」蛇に睨まれた蛙の如く動けなくなることを言う言葉が脳裏に浮かぶ。そう言うのがまさしくな状況になった。

 

 頭がどうにかなりそうだ…超スピードでも催眠の類じゃ断じてない、もっと恐ろしい圧倒的なまでの理不尽さと不条理とが混ざった衝撃。

 そのまま僕の口をパクパクさせる音だけが場に響く。

 

 カンサイ?ガッツリ怯えてさっき以上に何も喋れてないよ。本当に^p^<あうあうあーとしか言えてない。放心してるじゃないか…

 

「何で言わない?セイテン我、嫌い?ならこれ、あげる」

 

 そう言ってオーフィスは特大の殺気とも呼べるオーラを引っ込め、手の平から黒い何かしらを取り出す。

 僕は重圧からの解放で息を荒くしながらそれを見る。少しすると形を持って蛇のような姿になった。

 

 これ重要な質問なんだけど今の無意識なんですかね…まさかだけど無意識の波動で体を縫い止められたの?覇O色の覇気喰らったモブなの僕は…?

 

「それあげると、皆、我褒める」

 

 オイオイオイ、待て。それってもしかして集りじゃないか?と僕は瞬時に感じる。

 脳内に浮かぶのは一人の幼児を囲む大人たち…ジポだな…

 で、何それ?

『晴天、それ、力の塊や…それもどえらいレベルで詰まっとる。人でも飲めばワイと同じ位の力は得られるシロモン、せやかて鍛えて無ければ力に飲み込まれて怪物になってお陀仏やがな。クハハハ、今ワイオモロナカッタ?』

 若干回復したカンサイがそう説明した。

 なんてもんを渡そうとしてるんだよオーフィスちゃん!!カンサイもあまりの状況に壊れないでくれ…僕も実を言えば同じ気分なんだから。

 

「あ、ありがとう」

 

 普段滅多に出ることのない裏声を出しながら。何があるか分からないしこれは貰っておこうと蛇を受け取った。

 う、何かヌルヌルしてて何となく千と千尋のO隠しに出てきたカOナシが思い浮かぶ感触…

 えーっと、何処に詰めておこうか?そうだ、そういえば飲み終わった瓶があったっけ。そのままカバンにでも入れておけば日常生活でも何か言われることもあるまい。さっすが僕、頭いい~!

 

 あれ?何か忘れているような…

『お前のこと知りたがってたやろ、マジで何とかしてくれん?もうワイガクブルやねんけど』

 カンサイに教えられそうだったと気づく、この子が僕のこと聞いてきたんだったね。ただ本当に何を言っていいのか…

 

「僕のこと、知りたいの?」

「ん。我、お前みたいな奴初めて見た」

 

 今更言うのも何だけど、この子、僕のことお前って呼んでくるんだよね。失礼、ではないか。正体は無限の龍神だからむしろ虫けらのごとく扱われないだけまだマシ。

 そもそも何歳?いや、やめとこう。これは不毛だ。

 

「そう言われても僕には特に思うところは…あ、何が初めてなのか教えてくれない?」 

 

「言葉にするの難しい、魂、混ざってる?分かれてる?不思議、我、見たことない」

 

 たどたどしい言葉で何とか伝えようとするオーフィスちゃん、可愛い。その顔は無表情だが何故だろう、この子はこの無表情でこそ可愛らしいと思えるような雰囲気。可愛い。

『無限の龍神に対してそこまで思えるお前の愛、ヤバない?』

 失礼な、僕はノーマル、ドノーマルだ。悪魔なのがホンっっっっっっっっっっト惜しいけど支取生徒会長みたいな人が好みだよ。

 

 たださ、子供と一緒に遊んだり、なでなでしたり「せいてんせんせー!」と元気な声で呼んでもら『分かった!もういい!喋らんといて!』そうか…

 にしても魂ね?あ、もしかして僕の「朧なる陽炎」のことかな?あれ僕の魂をちょっと切り離してるようなもんだから。

 

「うーん、それならコレのこと?」

 

 ひとまず指輪をかざして相変わらず無表情、無気力な僕を作り出す。戦闘の時はキレっキレの動きだけどいつもはこうして半目になって明らかに脱力した感じだ。何か情けない。

 

「似てるけど違う、それじゃない」

 

 え?これじゃ無いなら僕はもうお手上げだ。何かない?カンサイ。

 

『いやここでワイに振る?正直何も言えんって、まだ色々混乱しとるし…もちろんワイが宿っとること言っとるんかもしれんけど赤龍帝や白龍皇みたいなモンやからそこまで珍しいって訳ちゃうやろ』

 

 絶対数は少ないとは思うんやけどと付け足されてカンサイが沈黙。

 じゃ、本当に打つ手なしか。残念ながら帰っていただくしか…いや待て!留まって貰えるかも!!

『え、晴天お前まさか…ってか留まる?』

「分からないなら観察してみれば?別に僕一人暮らしだし遊びに来ても良いよ。いるときにね」

『ちょ、相手は無限の龍…(黙れカンサイ、僕は癒しが欲しいんだ『えぇ…』

 

 心の中で凄みを効かせ、カンサイを黙らせる。

 僕は帰ったら誰かが待ってるのが良いの!端的にいうとホームシックなの!帰りてぇ…マジで家に帰りてぇよ…危険な目に合わせたくないから一人暮らしだけど僕ちゃんと家族いるからねッ!!

 

『晴天落ち着きーや!!オーフィス来たら絶対に、確実に、100%ヤバなるって!今ならまだ間に合う、どうにか帰ってもら…」

「ん、そうする」

 

 言質、とりました☆カンサイドン引き僕歓喜、お前も同類じゃろがい喜べ。

 

 そうして僕の家にオーフィスが来ることになった。

 

 

 

 毎日(・・)

 

 

 

 僕は勢いで事を運ぶとこういう羽目になるのだとちょっと後悔した。

 

 

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