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ゲンム襲撃から数日後、一夏達は千冬に呼ばれIS学園の来客者用の部屋に向かっていた。
「なぁ、俺達に用があるってなんだろうな。」
「そうですね。しかも呼ばれているのは一夏さん、私、箒さん、鈴さんだけ。」
「どう考えてもあのゲンムと言う奴が襲撃した時に、近くに居たメンバーだな。」
「ほんと何の用なのよ…。」
一夏達は来客者用の部屋の前に着くと、そのドアをノックする。すると中から入れと千冬の声が聴こえ、ドアを開けるとそこには黒髪の若い青年がが座っていて、その近くに千冬と真耶が立っていた。
「やぁ、君たちが織斑一夏君達だね。」
「え、えっと、誰ですか?」
一夏は青年に質問するが、箒達は嘘だろ?と言う目で一夏を見ていた。
「ど、どうしたんだよ皆?」
「い、一夏。あんたこの人知らないの!?」
「知らないけど…。」
「幻夢コーポレーションの社長、檀黎斗さんですわよ!?」
「え!?幻夢コーポレーション!?」
一夏はその会社名に聞き覚えがあった。幻夢コーポレーションとは、様々なジャンルのゲームを販売するゲーム会社だ。しかもそのゲーム全てに外れはなく、発売すれば即日完売するほどの人気だ。特に名作中の名作、マイティアクションXは今でも人気であり、近々新作が出るそうだ。一夏もプレイしたことがあり、徹夜でしていて千冬に怒られたこともあった。そしてそんな超有名会社の社長が今目の前に居るのだ。
「マ、マジかよ…。あの、さっきはすみません…。」
「いやいや、あまりメディアなどでは出ないから知らなくても無理はない。」
「それでその社長さんが俺達に何か用ですか?」
「ああ、そうだったね。まず一言、すまなかった。」
そう言って黎斗は頭を下げ、一夏達は慌て始める。
「え!?あの!ど、どういうことですか!?」
「数日前ゲンムと名乗る者がここを襲撃したという情報が入ってね。あれはわが社で開発したパワードスーツの一つなんだ。実は数ヵ月前、わが社が何者かに襲撃され、その時にゲンムや他のパワードスーツが盗まれてしまったのだ…。」
黎斗は顔をあげ、悔しそうに拳を握りしめる。
「そういえばあのゲンムも盗んだって言ってたな…。」
「あ!パワードスーツって言えば、最近都市伝説とかで仮面ライダーとか言われてるけど、あれも幻夢のパワードスーツなの?」
鈴はふと思いだし黎斗に聞く。
「ああ。わが社のパワードスーツ、別名ライダーシステムは怪人と戦うために造られた物なんだ。」
「怪人って…。」
鈴達は顔を見合せ先日襲撃したロイミュードを思い出す。
「ああ。君たちが会ったロイミュード027のことだ。だが他にも怪人は存在していて、種類で数えるとその種類は10は越えている。」
「ですがわざわざライダーシステムでしたっけ?を作らずISで対抗すればよろしいのでは?」
今度はセシリアが黎斗に質問する。だが黎斗は首を横に振り口を開く。
「いや、確かに弱い怪人なら倒せるだろう。だがそれより上のクラスとなると倒すのは難しい。例え絶対防御があっても簡単に削りきられる…。そこでだ。」
そう言って黎斗はアタッシュケースを一夏達の前に置く。
「これをわが社から君たちに送ろうと思う。」
黎斗がアタッシュケースを開けると、金色のバックルと蜘蛛の絵が描かれたトランプのクラブのエースが入っていた。
「バックルと…トランプ?」
「これはレンゲルバックルと呼ばれるものだ。そしてそのトランプは5番目の怪人、アンデッドが封印されたカードだ。アンデッドは様々な生き物の祖先であり、そして不死でもある。だからこいつを使ってアンデッドの封印と、他の怪人の排除を頼みたい。本来ならわが社から誰かを派遣したいところだが、今回の騒動でわが社はIS委員会に不信感を持たれているから、あまり動けないんだ。そこで若い君たちに任せるのは悪いが、このレンゲルの適合者を探して、その者に託してもらいたい。」
「適合者…?誰でも使えないのですか?」
「ああ。このライダーシステムはカテゴリーエース、つまりこのクラブのエースと適合率が高いものにしか変身することができない。」
「でも探すと言いましてもこの学園には沢山の生徒が居ますわ。」
「そこは心配しなくてもいい。このカテゴリーエースは適合者を探すと自動的にその者に向かうのさ。だから常に持っていてくれればいつか反応する者が現れる。」
「…ほう、随分と自信があるようだな。」
突然今まで口を開かなかった千冬が声をあげ、黎斗を見る。
「さっきから話を聞いていれば色々と出来すぎている。他のライダーシステムを渡せば良いのに何故これを選んだ?聞き方によればこの学園に適合者が居ると言っているようなものだ。しかもそいつがお前達と関係がないとも言えないぞ?」
「つまりあなたは私があのゲンムと関係があるかもと言うことですか?」
「ああ。もっと言えばゲンム本人ではないのか?」
千冬は黎斗を睨み付けるが、黎斗は口を押さえ笑いだした。
「何がおかしい!」
「いやぁ良くできた話ですね。もし私がゲンムだとしたらこんなことしませんよ。メリットがありませんからね。むしろデメリットの方が大きい。」
そう言って黎斗は分厚い本を取りだし、一夏達の前に置く。
「それともうひとつ。ここにはわが社で調べた全ての怪人のデータが記されてます。この学園で怪人が現れた時に参考にしてください。あと怪人等の件はここに居る君たちだけの秘密にしてほしい。下手なパニックを起こしたくはないからね。あともしわからないことがあれば名刺を置いておくから電話してくれ。それでは。」
そう言って黎斗は部屋を出ていき、外に止めてあった車に乗ろうとすると後ろから声をかけられる。振り向くとそこには真耶が居た。だがその顔はとても不安な顔をしていた。
「ねぇ黎斗君…。本当に黎斗君がゲンムじゃないよね?」
「…ああ。私は何も変わらないよ。」
「うん、そうだよね!また時間が空いたらメールして。久しぶりにデートしたいし…。」
真耶は顔を赤らめモジモジする。黎斗はそんな真耶を抱きしめる。
「もちろんだ。ここ数年の近況も聴きたいからね。」
そう言って黎斗は真耶から離れ、車に乗りIS学園を去っていった。
「…助けてくれてありがとう…。黎斗君…。」
真耶は誰も居ない校門の前で小さく呟いた。
はい、という訳で黎斗の彼女は山田先生でした~。
え?知ってた?マジで!?
そしてレンゲルの適合者は誰なのか…。
こうご期待!