SSのヒーローアカデミア   作:スティックシュガー

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書き始めって怖い


少年のお話し

ある少年の話をしよう

 

昔々、ではなくちょっと昔、あるところに少年がいた

 

少年は普通だった

 

髪は白く肌は黒かったが『個性』の浸透した社会では目を引くほどでもなかったのだ

 

少年には親がいなかった

 

捨て子という何時でも何処でもありふれた、不幸でちょっと珍しい生い立ちだった

 

少年は一人ではなかった

 

どこにでもいる子供のように友達をつくり、孤児院で過ごした

 

少年は気にしなかった

 

自分を捨てた親に何も思わないではなかったが、

特に不自由もなく周りを見れば同じような境遇の人間がたくさんいるのだ、

そういうこともあるのだろうと気にも留めなかった

 

少年は『個性』を得た

 

それは血液を操るというもので、

最初は体の中の血流を速めたりして気持ちが悪くなったが、

転んだ時に擦りむいた傷をすぐにカサブタのようにできたことで少年は自分の個性を気に入った

 

少年は気づいた

 

指先をあまり痛くない程度に針で刺し血を出し操作して遊んでいた時、

自分の血は燃えるのだということに

 

少年は子供だった

 

自分の個性の新たな事実を知り、見せびらかしたくなったのだ。

友達相手に「俺の血は真っ赤に燃えるんだぜ!(ドヤッ)」と自慢し、

そのまま先生に怒られるまで個性の見せあいをしていた。

ゲンコツは痛かったが今までで一番楽しかったと少年は思った

 

少年は後に後悔する

 

このときのちょっとした自尊心が自分の未来を決めることになるとは露にも思わなかった

未来の少年が見ていればぶん殴ってでも、それこそ命がけで止めたことだろうが、

残念ながら未来にもタイムマシンはないのだった

 

院長は悩んでいた

 

原因は昔の知り合いから届いた一枚の手紙と、

最近一層活発になったと聞く一人の少年である。

手紙には「弟子をとる。操血の(おのこ)がいたら連絡しろ。報酬は弾む。血に性質を持つならば尚良い」と書いてあり、

件の少年はドンピシャだった。

 

しかし、院長は男の人となりを知っているからこそ迷っていた。

 

勿論悪い人間ではないし自身にとって恩人でもある彼の頼みは聞きたいが、

子供を育てる側として彼が向いていないことはわかりきっているし、

預けた結果少年がどんな目に合うかおおよその想像はついている。

背筋が冷たくなるのを感じながら、やはり断るべきかと考え今一度手紙を読み

 

院長は決意した

 

少年も将来はヒーローになると言っていたし彼との生活はきっと意味のあるものになるはずだと。

別に、報酬の0の多さに心が揺さぶられたとかではないのだ。

8個あったからではないのだ。

確かに孤児院は万年金欠気味ではあるがそれとこれとは話が違う。

百の子供が笑おうと一人の子供が泣いては意味がないのだ。

つまり、私は純粋にヒーローを志す子供の将来のために最も良い……いい。

………うん、可能性のある道へ導いてあげる義務があるのだ。          イイネ?

 

そして院長は手紙を書いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少年は困惑した

 

院長に養子縁組希望者だと呼ばれて行ってみれば、ボロ布かぶった老人だった。

身体も顔もほとんど見えやしなかったがその今まで体感したことのない静かな雰囲気と、

しわがれた声で老人だと推測したが、なぜそんな恰好をしているのかまではわからなかった。

ボロ布の中から赤く光る左眼を不気味に思っていると、老人の左腕のあたりから伸びた赤い触手が少年を掴み、

老人は「確かに。」と言い紙(小切手)を一枚を置くと、颯爽と孤児院を去っていった。少年を掴んだまま。

 

少年は訳が分からなかった

 

養子縁組の手続きについては孤児院の先輩に何度か聞いていたが、

どれも大体同じで何度も話し合って段階を踏んでいくようなものだと聞き、

随分とまだるっこしいものなんだななどと思ったりしていたものだが、

まさかうむを言わさず襟首をつかんで連れていくだなんて思わなかった。

あまりの超展開に頭は真っ白になりむしろ不思議と穏やかな気分だったが、

院長の満面の笑みで涙を流す、何ソレどんな感情?

という表情を見たとき何故か無性に腹が立ったのが印象的だった。

今までは別にそんなことは思わなかったのに。

そして、何やかんやで我に帰った時にはすでに赤道を超えていたという意味不明さである。

少年は院長の葛藤とその答えについて知る由もなかったのだ

 

少年は喚いた

 

ボロ布の老人から言葉少なな説明を聞き、少年の感情は爆発した。

意味が分からない。

そんな話は聞いていない。

ここはどこだ。孤児院に帰せ。

弟子になんてならない。

このボロ雑巾っ。

とにかく思いついたことは何でも言った。

自分でも途中から何を言っていたか覚えていないほどに

 

少年は死にかける

 

貴様の心緒になど塵芥ほどの興味もないと、

連れてこられた20m程の崖から突き落とされたのだ。

寸前で手の甲を噛み切り個性を使い生き延びるも、

初めて感じる死に、重力が無くなったような気味の悪い感覚を覚え、背筋が震えた

 

少年は心が折れた

 

少年は頭が悪くはなかったので、

一度冷静になればこのどこなのかすらわからない場所から孤児院になんて自分では行けないことも、

自分が目の前の老人に勝てないことも、

老人に帰してくれと言っても意味がないこともすぐにわかった。

自分がこの老人についていく他ないことも

 

少年と老人は旅をした

 

世界中、

テレビで見るような一度は行ってみたいと言われるような都市や、

名前も知らない国や、名前すら無いであろう秘境まで、

様々な場所を歩き修行をして回った

 

少年は死にかける

 

ジャングルに行けば猛獣というか怪物としか言えないものの巣窟に叩き込まれ

砂漠に行けば期限と場所のみを告げ、置いて行かれる

海に行きつけば己の力のみで目的地へ行けと蹴り落とされた

 

少年は日常的に死にかけた

 

とある大富豪が軍用施設の地下に実験施設を作り、非人道的実験を行っていたところに行きその軍用施設が地図から無くなることになったり

個性を暴走させる薬物により人に戻れなくなった者を討伐したり

馬鹿げた(ヴィラン)の壮大な計画を潰すために戦ったり

少年は日常的に死にかけたが、それでも喰らいついていた。

少年の師匠である老人は例え少年が死んだとしても、

「その程度だったか」で終わらせてしまうことがわかっていたからだ。

少年はそれが自分が殺されることよりも我慢ならなかった

 

少年は師匠を知る

 

少年は世界中を歩き、師匠のデタラメとしか言えない実力を知る。

その流派を教わっているのだと思うと胸に熱いものが燃えるのを感じるが、

ある時師匠のボロ布の中を見たとき少年は凍り付いた。

師匠の体に左腕と左脚は無く、それを己の個性で補っていたのだ。

 

それを見た少年は静かに決意した

 

「師匠のことだ、部位欠損くらい個性でなんとでもなる、歯が抜けるようなものだとでも考えているに違いない。

そして、問題は師匠は自分基準で修行をするということだ。手段を選ばず行動しなくては」

「生きるために、他を蹴落とすのだ!」と

 

こうして少年はクズな方向へ、一歩を踏み出したのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからしばらく時が経ち、

 

少年、

 

斗流血法(ひきつぼしりゅうけっぽう)継承者、

 

斗 紙月(ひきつぼし しがつ)は日本に帰ってきていた

 




完全なる見切り発車。
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