デスゲーム開始から一週間が過ぎ、シエンとユウキはキリトと別れた。別れた理由としては、他パーティーを助けることにキリトは余裕がないと言ったからだ。
別れた後レべリングをしながら二人は迷宮区を進む。ここ一週間はキリトの判断で突き進んでいたが、もうそろそろ追いついてくるかなと思っていた。そして迷宮区を出ようと出口に向かっていた時、モンスターに襲われているパーティーを見つけた。しかもモンスターの数が多いため苦戦していた。
「ユウキ!」
「うん!」
二人はそれぞれに武器を引き抜き、駆け出す。
「助太刀する」
「あ、ありがとう」
シエンとユウキが加わったことで二十体ほどいたモンスターを速やかに倒し、迷宮区を出て一息ついた。
二人はダメージはほとんど皆無だったが、助けたパーティー側は皆赤近くまで減っていて危険な状況だった。
「ありがとう、助かったよ」
回復薬を飲みながらパーティーメンバーの一人が言う。
「いや、助かったならよかった。君らはパーティーだよな?長は?」
シエンの問いにパーティーの皆は眼を背ける。それでいないのがわかった。
「そ、そうか…いままで良くやってこれたな。まぁまずは自己紹介だな。俺はシエンだ」
「ボクはユウキ。よろしくね」
シエンの隣で小さく手を振りながらユウキが言う。
「俺はアキラだ。改めて二人には礼を言うよ。君達はいつも二人で、あそこで狩っているのか?俺達五人で苦戦していたのに……凄く強いんだね。もしかしてベータテスターだったのか?」
「いや、俺もユウキも初心者から始めた。ゲームを始めた日に、そのベータテスターの一人に指南を受けてな。それからは俺の場合は現実で武術をやっていて、ここでもそれが有効だったんだ。ユウキの場合は覚えが早かったりしてな」
「そ、そんなことないって!シエン達の教え方がとても分かりやすいんだよ」
シエンの言葉にユウキが顔を紅く染めながらいうと、アキラ達が笑った。
「そうなのか。じゃあ俺もお願いしてもいいかな」
アキラが少し真剣な顔になり、その仲間もアキラが何を言おうとしているのか予想したのか静かになった。
「俺達に剣の使い方を教えてくれないか?」
「…うむ。ユウキはどう思う?」
「シエンがいいなら僕もいいよ」
「わかった、教えるよ」
「!、ありがとう」
シエンはそのパーティーに剣術を指南することになった。今日はフレンド登録して一度解散し、翌日に迷宮の入り口で待ち合わせることにした。シエンは食材を出すモンスターをユウキと狩った。
「今日はいっぱい狩るね。みんなの分?」
「ああ。それにこの世界の食事はイマイチだからな。自分で料理のスキルを地道に上げて作らないと幅も広がらないし……現実なら材料次第で結構作れたんだがな」
「料理できるんだ。凄いな」
「現実世界へ戻れたらご馳走するよ。さてだいぶ集まったな」
周りのモンスターを狩りつくし、いないことを確認する。握り飯を作りたいが米がないためサンドイッチだ。葉の物は採取で先程揃えて、肉もだいぶ集まった。今のメンバー分なら一週間あるかどうかの量かな。
「さて夕方か。帰って夕食にしよう。まだ料理スキルが低くてサンドイッチだがな」
申し訳なさそうにシエンが言うとユウキが首を横に振った。
「ううん!シエンのサンドイッチはおいしいよ。お店で売ってるのはただのパンとかだし。それにそのパンだと味がほんとにいまいちだもん。だからサンドイッチが作れるだけでも幸せだよ」
「ありがとう」
シエンはもっといろいろな料理が作れるようになったら、まずはユウキに食べさせてあげたいなと思った。