即興二次小説というサイトで書いたものをこちらでもあげます
例え昼であっても光がその奥底まで届くことのない暗い、黒い森のなかで、一人の騎士と二匹の灰狼と白猫が木に凭れて寄り添っている。
「アルヴィナ、とうとう明日だ、ウーラシールに行くのは。」
騎士がぼそりとそう言った。言葉は溶けるようにして森のさざめきに消えていく。涙のようにポロポロと木の葉が落ちた。
「怖いかい?深淵歩きと歌われたあんたが、たかだかウーラシールの一つや二つ、救うなんてわけないだろう。」
騎士は首を振るう。
「どうにも、嫌な予感がする。深淵とは別の何か。」
その身体、切り倒した大木のように大きく、また確固たる芯の通っているであろうそんな騎士から漏れる言葉はあまりにも弱々しく、小さかった。傍で柔らかな草を枕に寝そべっていた灰狼が顔を上げて心配そうに騎士を見る。そんな狼の頭を騎士は優しく撫でてやった。
「もしかたら、私の寿命がとうとうやってきたのかもしれないな。」
「馬鹿なことを言うんじゃないよ、アルトリウス。四騎士の中でもゴーと並んで古株のあんたが負けるほどの事がこの世にあるかい。年長の気概を見せな。じゃなきゃ示しがつきやしないよ。」
騎士の言葉をはねのけるように白描が言う。騎士の顔には自然と笑顔が灯る、だが目に宿す揺らぎは消えはしない。
「こういう時ほど予感というのは当たるものさ。長年生きたからこその経験とも言える。」
騎士の言葉に不満気な二匹をよそに、騎士は懐から小さな手帳と、それに記すためのインクと羽ペンを取り出した。
「なあ、アルヴィナ。」
「なんだい。」
「私は小説を書こうと思うんだ。」
「なんでまたそんなことしようと思ったのさね。」
「このご時世だ、楽しい事は少ない、だからこそ、戦いから身をおいて、皆を楽しませるような物を書きたいんだ。綺麗な空のことや星のこと、草木のこと、色んな事、それらのことに心弾ませ希望を見ること、私ができる、出来る限りの面白おかしい話で皆を楽しませたい。」
騎士が語る、まるで子供のような夢に、二匹は少々驚いたように騎士を見た。
「へぇ、ずっとずっと守るためだって言って誰が止めても戦ったあんたがそんなことを言うのかい。」
アルヴィナの言葉に騎士が困り顔で言う。
「変だろうか。」
「いやあね、いいんじゃあないのかい?あんたが本当に身を置いてくれるなら、何時もはらはらする必要がなくなってすむよ。」
「何時もはらはらさせて済まないな。」
「勝手にしていることさ、気にする必要はないよ。で、どんなお話を書きたいんだい?」
「そうだな、一人の勇者が世界を救う話なんてどうだろう。」
「冒険譚ってやつかい。」
「そう、数多の試練を乗り越えた勇者が悪を打ち倒し世界を救う、単純だが、わくわくする話だろう?」
「そうかいね、現実はお伽話ほど綺麗じゃないことを知っているからね、私が楽しめるかは知らないよ。」
「はは、そう言うな。もしお話が完成したらアルヴィナ、まず最初に君に読んでもらおうと思っているんだ。」
「おや、キアランの娘っ子じゃないのかい?」
白描はニンマリとして騎士に言った。騎士はその言葉の真意を汲み取れず、不思議な顔をしている。
「たしかにキアランにも読んでもらいたいが、一番最初は君だアルヴィナ、君はゴーやグウィンについで付き合いが長いからな。」
「はぁ、ま、勝手にするんだね。」
「そうさせてもらうさ。」
騎士はペンの先にインクを付けて、手帳に文字を書き込んでいく。カリカリと音を立てて、白紙だった手帳に黒がにじむ。白描も語る言葉をなくしたのか、唯灰狼と共に、騎士の傍で、微かに、木々の隙間から見える星を見ていた。時間が流水のように流れるのを感じる。何時の間にやら騎士や白描達の呼吸は一つに整えられていた。
「なあアルヴィナ。」
どれほどの時間が経ったのかはわからない。まだ日は開けていないことだけが確かだった。
「なにさね。」
「この手帳、預かっておいてくれないか、明日の任務を果たすまでに汚したくはないからな。」
そう騎士は言って、つい先程まで書き記していた手帳を白描の前に置いた。インクのツンとした臭いが手帳の中から漂っていた。
「ま、預かっておくよ。で、何を書いていたのさね。」
「なに、さっき言っていたお話の締めくくりを書いていたのさ。」
「ずいぶんと気が早いんだね、まだ始まりを書いてさえいないのに。」
「先に終わりを考えておけば後が楽だろう。」
騎士は立ち上がる。灰狼がそれに続くようにして立ち上がった。
「任務のための準備に戻る。そしてさっさと任務を終えて帰ってくる。留守を頼んだ、アルヴィナ。」
「ならちゃっちゃと行くんだね。あ、お土産はそれなりに期待しているよ。」
「ふふ、ああ、期待しておいてくれ。」
そう言って騎士はその場を後にした。白描は置かれた手帳を、何の躊躇いなしに開いてみる。後ろの方はまだまだ白紙だらけの手帳、はじめの方だけが文字が記されている。
ーー全てに決着を付けた勇者は、疲れ果てた身体を押して、魔王の城から脱出した。ようやく近くの木に凭れると、勇者はここまでの道のりを共に歩んできた友の事を思い出す。自然と勇者の口から言葉が紡がれていた。
【
In the hot daily point, the world is finally surrounded by light.
The dark abyss is rejected, and there is warm light there.
Preferably time when I laugh again together.
Preferably daily life to drink liquor together.
Preferably what I continue walking together.
Protection of the flame without dying out to the friends who supported me even if it does not come true.
But I want you to permit it.
I want you to allow to sleep here.
But I pray for the day when an aspect has an interview sometime by all means.
(辛き日々の先に、ようやく世界は光に包まれる。
暗き深淵は退けられ、暖かな光がそこにある。
願わくば、共にまた笑いあえる時を。
願わくば、共に酒を飲む日常を。
願わくば、共に歩み続ける事を。
例え叶わぬとしても、私を支えてくれた友らに、絶えることなき炎の加護を。
唯、許して欲しい。
ここで眠ることを許して欲しい。
だが必ず、何時か、相まみえる日を願っている。)】
勇者は木に凭れてたまま眠りについた。口元に微笑みを浮かべ、共に歩んだ友の夢を見て。ーー
短く綴られた文を読んで白描は震える声で零す。
「遅い、遅すぎるよ。泣き言を言うにゃあまりにも遅すぎる、許しをこうにゃ、あまりにも遅すぎる。どうしてそんなに生きる未来を望めないのさ、アルトリウス。」
白描の言葉を騎士が聞き取ることは出来はしない。その手に身の丈ほど大剣と大盾を持ち、騎士はウーラシールへの道を行く。騎士の未来に、勇者のお話を書く未来はありはしなかった。勇者の言葉が騎士の独白となって、その身朽ちた後、弔う友らに白描は手帳を見せた。一人の巨人が騎士のために大きな墓を用意した。一人の隊長が騎士のために極上の酒を用意した。一人の小人が騎士のために可憐な花を用意した。その墓は遠い未来までも、白描と灰狼が守り続けた。騎士の誇りを守るように、夢を守るように。
即興というのはかなり難しいものですね、一時間もらいましたが、最後まで書ききるのに、時間切れになるんじゃないかとハラハラしていました
投稿二次小説ではこの作品の作者は匿名さんとなっていますが、私が書いた作品ですので載せます、問題があれば消すつもりです
投稿してチョットしてから気が付きましたが、必須要素:外国語・外来語禁止というのはもしかして英語やらなにやら外国の言葉は全部ダメってことなんですかね、私は外国語が入っていて外来語がダメ、だからアルファベットとかは大丈夫でカタカナとかで書くジュースとかバイオリンとかがダメだと思っていました、とするならアルトリウスとかアルヴィナとかも禁止対象に入るのでしょうか……書いてしまったので最早修正は出来ませんが、どっちなんでしょうね……