ポケットモンスター PECULIAR PERSON   作:TOKI

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なんかすげぇ奴がいた

  7時半ぐらいだろうか、ほどよく昇った朝日が部屋で眠る俺を呼び起こす。昨日の出来事があまりにも刺激的でいつものような朝でもまるで違うように感じる。異次元の力を持った生物、ポケモンという存在、当分この世界で退屈することはないだろう。

 今日も隣街に行くことにした。ささっと支度し出発する。今日も本当にいい天気だ。木漏れ日が林の中を明るく照らす。昨日の帰りの時と違って木漏れ日に照らされ輝く黄緑の草木が心を穏やかする。森林浴とはこういうものなんだろうか……

 ほのぼのとしてるところに後方13メートルに気配を感じる。その気配はずっと10メートル以上間隔を開けながらついてきてる。そいつが10メートルまで近づいて来た瞬間、俺は殺気丸出しで気配に向かって飛び出す。しかし、それを予期していたのか気配はきれいさっぱり消え失せ、ただ通って来た道だけが果てまで続いていた。結果として追って来た奴の姿形を捉えることはできなかった。だが何故だろう、俺はそれをわかってたような気がする。自分でも分からない、逃げられると知ってながら振り返る馬鹿な真似など今の今までしたことがないしするわけがない。だからこそ、今の自分の行動が理解できないのだ。

 だがそんなことぐだぐだ考えるのも馬鹿馬鹿しい。気にせず先へ進む。

 

 

 街に行くと早速ポケモンバトルを見物したり、どういったようにして共に暮らすのか調査したり、最終的にはこの辺りのポケモンの分布などあらかたまとめた。

 全て終えると丁度近くにあるベンチに座り込む。

 

「ふぅ~。いやぁ、つかれた~」

 

疲労のこもった声は天に向かって飛び去っていく。朝一から日が傾き始める頃までずっと街を駆けずり回ったのだからもうヘロヘロだ。もう意識が薄れかけて来た。

 そんな時、なんか騒がしくしているのに気づく。気になって見てみると、どうやらポケモンバトルしてるようだ。バトルポケモンはカイリキーとマニューラ。一見普通のバトルに見える。

 しかし次の瞬間、俺は眠気を吹き飛ばす光景を目の当たりにする。なんと、本来なら戦わないはずのトレーナーがバトルに参戦しているではないか。驚きのあまり、俺は柄でもなく呆けていた。そのトレーナーはマニューラといい勝負をしてる。おまけにコンビネーションは抜群ときた。もはや、異次元の戦争に生身の人間が飛び込んで戦線でも同然な事態だ。この時点の俺はそう思ってた。

 だが、さらに驚くことに周りの観戦者は疑問に思うどころか大盛り上がりだ。そりゃもちろん、トレーナーがバトルに参戦することは可能だが、やろうとする者なんて居やしない。異次元の身体能力を持った奴に自ら向かうなんて自殺行為に相違ない。普通ならそう思うはずだ。

 だが、奴はそこらのトレーナーとは違う。見る限り、奴は戦闘向きの身体能力を供えている。その能力を使い参加してるようだ。一見、2VS1のとても有利な状況に見える。しかし、それとは反対にトレーナーは自分も戦いながらポケモンに指示を出さなければならない。よって、脳をフルで活動させても追い付かないような事態が起こりかねない。多分、相等長い年月をかけてここまで仕上げたのだろう。

 

「あの人は一体何をやってるんだ?」

 

あまりにも理解できないので近くにいる男に問いかける。

 

「あんた知らないのか?あれは特異能力を持ってるトレーナーがやるやつさ。みんなは『ぺクリアーバトル』って言ってる」

 

「『ぺクリアーバトル』?」

 

彼は意気揚々と説明する。

 

「あいつらのように俺らとは違う力を持った奴がそれを生かしてバトルするんだよ。ほら!今カイリキーと一緒に戦ってる奴はポケモンとおんなじくらいの力を持ってるから一緒に戦うんだよ」

 

へぇ~と思った。別にそこは見てればわかる。

 

「じゃあもう一方の奴は?」

 

俺はマニューラのトレーナーを指さす。

 

「あ!あいつは……」

 

彼の言葉を遮るようにけたたましい歓声が巻き起こる。

 何かと思えば、カイリキーとそのトレーナーがマニューラに圧倒され始めたのだ。マニューラに変化は見られない。それはカイリキーとそのトレーナーも同じだ。辺りを見回しても至って変わった様子はない。ただひとりを除いては……

 マニューラのトレーナーの指示が変貌した。今まで、敵に合わせていただけのような指示から制圧するための指示の送り始めた。

 それからは戦況は一転した。2vs1という劣勢の中、全ての攻撃を避け確実に攻撃を命中させ始めた。後は、一方的な試合展開だった。結局、マニューラに攻撃を当てる前に力尽きて倒れる結果に終わった。

 

「やっぱ、すげぇな。あの人……」

 

隣で感動してる奴が気の抜けた声を発する。まぁ、ど~でもいいことに代わりはないが……

 

「なるほど、中々楽しめそうだ」

 

「だろ!だろぉ!こんな面白いものを見れるなんて最高だよな!」

 

「はぁ?っんなもん知るか」

 

ズボンのポケットに手を突っ込んだまま、マニューラのトレーナーの方へ歩き出す。

 

「いや~、しかしいつも思うがあんな的確な指示出せるなんて、あいつの力ってなんだろうな!未だに明かされてないって言うし……」

 

こいつの耳は飾りか?あるいは低脳馬鹿ザルなのか?そんな馬鹿馬鹿しいことを考えてしまった。

 それより、あいつの方が重要だ。あいつなら俺を楽しませてくれそうだ。

 

「おいお前!今すぐもう一戦付き合え!」

 

一瞬にして外野が静まり返った。

 

「私と?君がかい?」

 

「ったりめぇだろが、お前以外の雑魚共じゃ退屈しのぎにすらなりゃしねぇよ」

 

この一声でまた外野が騒がしくなった。それも一層激しく。まぁ、こんだけ言いたい放題言われて黙ってるなんて思ってもいねぇがな。

 

「……いいだろう。だが今は無理だな。これから用があるんでね。明日の正午からならいくらでも付き合ってやろう。文句はな……」

 

「大有りだよ」

 

そのひと言で外野が更に騒がしくなる。まるで怒り狂ったサルだ。そんなこともお構い無しに続ける。

 

「俺は『今すぐ』つったんだよ。お前の都合なんか知ったことか。それともなにか?『俺とはやりたくねぇ』つぅことか?」

 

「そうだな。今君と戦っても面白味がないのでね」

 

その言葉に眉間にシワを寄せる。

 

「は?面白味がないだと?冗談じゃねぇよ!今此処にいる奴で俺より強ぇ奴がいるってのか?」

 

そう言うと溜息混じりの言葉が返ってきた。

 

「そういうことはパートナーを連れてから言うものだ。ポケモン無しの君では相手にならん」

 

奴は哀れみの眼差しで俺を見る。が、お目当てのものは手に入った。俺は不意にフッと笑いがこぼれた。

 

「ん?何かおかしなことでもあったのかい?」

 

その言葉を聞いて笑いが抑えられなくなる。終いには吹き出し高笑いした。

 

「あんたの秘密、今ここで暴かせてもらうがいいだろうな?」

 

「何?」

 

外野もさっきとは別の意味で騒がしくなった。驚きを隠せない奴らが大半、中には声を出せなくなってる者もいる。残りの数名は俺の妄言だブラフだと騒ぐ奴か嘲笑う奴だ。

 

「おまえ、見えてんだろ?この先の……」

 

「なぜわかった……」

 

言葉を遮る声は見てわかるほどに震えていた。

 

「俺がいつポケモンを持ってないって言った?」

 

 その瞬間、奴ははっとして後ろに数歩よろけた。

 

「成る程……そのために、こんな真似を……」

 

奴の声からはかすかに怒りが伝わってきた。

 

「とんだ茶番も使いようだろ?どうだ?少しはやる気になったか?」

 

そのひと言が引き金となり、眉をピクリと動かし、烈火の憤怒は漆黒の憎悪になっていく。

 

「……いいだろう、受けて立つ……」

 

先ほどの奴とは一転、冷静で動じない精神は消え去り獣のような獰猛さが滲み出てる。

 結果的にバトルすることになったがそれも覚悟の上だ。

 

「貴様、たった1人で挑戦してきたことは誉めてやろう。だが、1分と保たないようであれば容赦しないぞ」

 

「安心しな。1vs1(タイマン)なんだ。これの方が面白いだろ?」

 

奴の頭に血が上り、爆発した。

 

「ポケモン無しで挑んできたこと、後悔させてやる!マニューラ、“きりさく”!」

 

 その言葉を合図にマニューラと俺……が戦闘を開始する。互いの拳は激しくぶつかり合い衝撃が街を覆い尽くす。無数に降り注ぐ攻撃の嵐、攻防の切り替えを一瞬でも間違えれば一気に劣勢にたたされる。

 だが、そんな肉弾戦がいつまでも続くわけがない。

 

「マニューラ!距離をとって“こおりのつぶて”!」

 

マニューラは空高く飛び、大量こおりのかけらを飛ばしてくる。これを一発でも食らえば敗北は免れない。

 が、これを待っていた。

 あと1秒も満たないところで着弾する位置まで飛んできたこおりのつぶては一瞬にして停止した。いや、実際に停止したわけではない。()()()()()()()()()()()()。その一瞬の時の中、そのわずかな時間で膨大な情報が脳内を駆け巡る。

 

『準備完了、いつでも行ける』

 

『よし、戦闘開始!』

 

頭の中に響く声に答えると、周りの時が再生する如く動き出す。目の前のこおりが再び俺に飛来する。

 次の瞬間、観客および相手トレーナーが唖然とした。それは無数のこおりのつぶてが俺の体に届く直前、つぶてが粉に変わった。正確にはつぶてを粉々に砕いただけだが、問題は()()()()()()()()() ()()だ。

 粉々に砕いたのは、藍色と黒の身体、胴をクリーム色の毛が包み、狐のような頭をしたポケモンがやったのだ。

 

「る、ルカリオだと!?バカな!いつの間に、と言うよりどうやって?」

 

奴は先ほどまでポケモン無しで挑む、戦闘馬鹿だと思っていたので俺の目の前に立っているポケモンを見て冷や汗をかいてる。

 

「さぁ、どうした?もう終わりか?」

 

動揺してる奴を煽り挑発する。

 

「ぐっ、マニューラ!」

 

かかった!今の奴に冷静な判断は不可能。ただ突っ込んでくる獲物を落とすぐらい容易い。

 

『ルカリオ、だっけ?カウンターを狙う』

 

『了解した』

 

頭の中で会話を済ませ、ルカリオはカウンターの体勢にはいる。

 マニューラは『シャドークロー』でくるようだ。鉤爪を高く振り上げた。今のマニューラは隙だらけだ。

 

「いけ!」

 

ルカリオはマニューラの腹部に重い一撃を与える。たちまち、マニューラはぶっ飛び石垣に激突した。石垣に当たった衝撃で砂ぼこりが舞う。だんだん晴れてマニューラを見てみると完全に伸びていた 。

 

「マニューラ戦闘不能。よって勝者、……」

 

そう言えば、まだ名乗っていなかった。

 

「俺の名はナギ。最強の男だ!覚えとけ」

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