ポケットモンスター PECULIAR PERSON 作:TOKI
あの後、周りの人に囲まれ「君すごいね」だの「バトルしてくれ」だの、最終的には「どうやったらそんな強くなれるの?」と質問攻めという始末。
「……勘弁しろよ……」
なかなか断り難い性格が出て、結局全てこなして終わったのはもう夜中だ。
俺は近くの自販機で『おいしい水』を2本買って、隣のベンチに座った。
「ホラよ」
1本をルカリオに投げ渡す。左手で受け取り、器用に飲み始めていた。
「その手でよくそんなに器用に飲めるな」
『よく言われる。が、実際のところ何でも出来る万能ポケモンではない』
「だろうな」
そんなことできるならこいつだけで生活できるだろうしな。
んでもって、何故こいつが俺のパートナーになっているのかというと、少し時間を遡る。
俺が喧嘩を吹っ掛ける少し前のこと、ちょうどマニューラが相手を圧倒し出したときだ。
『こんなものか……』
ふと、声が聞こえた。その声は俺を除いて、誰一人として聞こえていない様子だった。一瞬、なんだ?誰か何か言ったのか?と思うと、
『そなた、我の
と帰ってくる。
それが始まりだった。頭にダイレクトで入ってくる声と無音の会話をし始めた。
「何者だ?」
『我はルカリオ、そなたたちの言うポケモンと言うものの一種だ』
「なるほど。で、これはお前の能力か?」
『それは真であるが否でもある。我だけの力では普通会話など出来ん』
「ってことは、他に何かが働いてこのような芸当ができるって解釈で合ってるか?」
『そうだな』
淡々と会話を進める中、バトルは終了したのを目視した。
「なあ」
『なんだ?』
「お前のパートナーは誰だ?」
『おらぬ。というより単独行動を得意としている故、パートナーを持たぬ。だが……』
「どうやら答えは同じようだな。いいぜ、いっちょかましてやるか。合図出すまで準備でもしてな。それまで俺が遊ばせてもらう」
『よかろう。そなたの力量、見せてもらう』
たった1分も経たない内に会話しかしてない相手とパートナーになるというイレギュラーなことをした。しかも、相手の姿も力量も知らずにだ。
『かなり特殊な出逢いとなったな、生を受けて1度あるだろかという体験だな』
「全くだ。ま、改めよろしくな、ルカリオ」
手を差し伸べ言う。それにルカリオも重ねる。
『これから頼むぞ、我が相棒よ』
「相棒か、いいなそれ」
この時、互いにパートナーとして明確に認め合った。
この世界ではモンスターボールというものがあるようだ。それはポケモンを捕獲するのに使われる他、ポケモンを収納し持ち運び可能にするという優れものだ。しかし、今の俺はそれを持ってないので移動は連れて行くしかない。
家の前まで連れて来た。
「で、一応家に帰るがお前は問題ねぇか?」
『無論』
「よし、じゃあ入るか」
そう言い、扉をあける。その後、俺たちは何を話したか。この世界のこと、互いのこれまでの経験、この先の話、思い出そうと思えばいくらでも出てきそうだ。そんな他愛ない話を何度しただろうか……気付けば夜は更け、朝日が窓から指す頃には疲れた体は深い眠りに就いていた。
昼前、目が覚めた頃には日は高く昇っていた。辺りを見渡すとリビングで眠ってしまったことに気づく。
「あぁ、いつの間にか寝ちまったか……」
うっすらと開いた目蓋をこすり呟く。
ピンポ~ン、朝早くから誰だ?そう思いつつ渋々ドアを開ける。
「どちら?」
「おお~、君がナギ君だね。わしはオオキドじゃ、カントー地方のポケモン博士じゃ」
カントー地方?つまり、この世界にはいくつかの地方に分かれてて、このじいさんはカントーってところから来たようだ。
「で、カントーからわざわざここまで来て、俺に何の用だ?」
寝起きということもあり、俺は相当気分が悪い。そんなこともお構いなしに答える。
「君に旅をしてもらいたいのじゃ」
「断る!」
じいさんの頼みに即答する。もちろん、NOだ。昨日の1件で一躍有名になり、半日中、人の波に吞まれっぱなしだったのだ。そのせいで、もうくたくた……昨日の疲労がまだ抜けてない状況で旅なんて冗談じゃない。
「そうか、じゃあ『クロセシティ』の広場にいる。気が向いたらいつでも来てくれ」
そう言い残して、じいさんは去っていった。
正午になる数分前にルカリオにも事の一貫を話す。
『なるほど。そのオオキドとやら、我も少々耳にしたことがある。世界的有名な博士だそうだ』
そんなすごい人だったのか。
「だが、そんな人がなぜここまで来たのか」
『そこだな。我々の元までくる必要性は微塵もないだろうに、直接会わなければならない理由でもあるのか』
この世界の通信機の技術はなかなかなものだ。なにせ、ポケモンの転送が可能なのだ。俺のいた世界ではそんな技術はなかった。それも含め、この世界には俺の興味をそそるものが溢れかえっているのだ。
その話は置いといて、通信技術の高いこの世界なら別に通話でもいいと思う。そうでなくとも、研究員の誰かを派遣すればいいだろうし、あの人が直々にここまでくる必要があるのだろうか。
『……こうは考えられぬか?そのものは直に我々に頼まなくてはならないということだとすれば……』
「必然的に直接ここまでくるということか」
だとすると、その理由は……
『どうやら、本人に直接聞く以外ないようだな』
彼の言葉に頷く。
「しかし、会うとしたら夜中か。今じゃ、騒ぎになるからな」
『うむ、それまでここで待機となるな』
ほぼ確実に他の奴らにもみくちゃにされるだろう。
『して、そなたはどう思っている?』
「それはあのじいさんのことか?それとも……」
『それを聞くのは野暮ってものではないか。我々の考えは互いに筒抜けになっているようなものであろう』
「その言葉、そっくりそのまま返す。そもそも、そんなこと言ったらこの会話自体意味を失うようなものだろ」
『それもそうだな。して、そなたはどうしたいのだ?』
その質問に対して、フッと笑いこう答える。
「さあな、知らねぇ」
『……そうか、余計なことを聞いた。すまないな』
多分、いや、確実に察している様子で謝罪してくる。その後、後に備え本日2度目の睡眠をとる。
再び目覚めたのは、夜中の9時。ルカリオも丁度起き、パパッと支度を済ませすぐに出る。
『クロセシティ』の広場に来てみると、入り口近くのベンチに座る1人の影を見つける。俺はその人のそばまで寄り思ったことをそのまま言葉にする。
「暇人かよ、あんたは……」
「ハハハ、そうでもないと言ったとして君はそれを信じるかい?」
「チッ、聞いた俺がバカだったわけか」
そう言ってドスッとベンチに座る。
「ここに来たということは、さっきの……」
「勘違いするな!」
じいさんの言葉を最後まで聞く前に口から出る。
「あんたの言いなりになるのは真っ平ごめんだ!」
「しかし、現にここまで来た。それは紛れもない事実。何かあるからこそここに来たのじゃろう?それが旅の話かは別になるがなぁ」
このじいさんの言うことはいちいち癇に障る。分かりきっていることを敢えて口にしない辺り腹立たしく思う。端的に言えば、
「回りくどい」
「ハハハ、それは君も同じことだよ」
言い返せないぶん余計に腹が立つ。
「では、そろそろ本題に入ろうか。君にはこの地方の様々なポケモンたちに出合い、多くの街を回ってもらいたい。この地方の生態の調査を兼ねて色々な経験も出来る。ポケモン自体も未だに多くの謎に包まれておる。君にはポケモンたちの、この地方の、この世界の謎に触れるべきじゃ!……それを聞いた上で今一度訪ねる。旅に出てはみないか?」
随分と長ったらしい講演の後、聞き覚えがある言葉が耳に入る。今度は俺の気を引くように……
「建前だの何だの、んなもんどうでもいい。それより、退屈しないんだろうな?」
じいさんはこれまで、初対面から数時間の間で一番いい表情で答える。
「もちろん!」
「……わ~たよ、引き受けてやる」
そう言った瞬間、じいさんは両肩をガシッと掴んで来た。
「よく言った!では、これを渡そう。『モンスターボール』と『ポケモン図鑑』じゃ。そのふたつについては……」
何か説明しているじいさんをよそに、ルカリオをモンスターボールにいれるという作業をする。これで俺たちは本当の意味でパートナーになった。
「もう行くか?夜明けまでまだ時間はかかるが……」
「朝になるまでいたら騒ぎに巻き込まれる。今出るのが良んだよ」
「それならよい。では、よい旅を!」
「あんがとよ!おっさん!」
『感謝する。といっても聞こえぬか』
隣に立つルカリオはそう言う。
ポケモンはモンスターボールにいれてコンパクトに持ち運べるが、こいつはボールから出して行くのが一番良いと判断した。それ以外の要因もあるが、今は別に言わなくても良いだろう。
とりあえず、ルカリオはこのまま出して連れていくつもりだ。
「さて、行くか!」
『うむ!』
こうして、俺たちは『クロセシティ』を後にする。
ここから、新たな物語が今始まりを告げた。
そして、この数週間後、俺たちは今までにない強大な陰謀に足を踏み入れることになるとは、このときはまだ知らずに……
to be continued