獣耳天国   作:黒樹

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ミト当たりました。
もう八十回はガチャしましたね。


戦争の終結

 

 

 

西へ。ウズールッシャの兵が撤退しているとの情報を得て、エントゥアと共に其方を目指し、放浪する中でそれは突然現れた。

 

『ウオオオオォォォォォォ–––!!!!』

 

白い巨影。それはいつか見た禍々しいウィツアルネミテアの姿とは違い、甲蟲のような奇妙な顔をした巨人だ。まるで羽虫を払うが如く腕を一振り、するとその一撃で巨人に向かって行ったウズールッシャの兵が虫けらのように飛んでいくではないか。血を撒き散らし、骨は砕け、命を散らし、天を舞い、地に落ちる。そして、それは骸となった。

 

「あれは……なんですの……!?」

 

巨人の姿を見たエントゥアが驚きの声を上げる。しかし、答えを求めていたわけではないのか、その巨人がいる方へ走る。

 

エントゥアはウズールッシャが敗走し始めたのを聞き、ウズールッシャ軍の本隊にいる父を探すべく行動していたらしい。自分を置き去りにして彼女は茂みの奥に消えてしまった。

俺も彼女を追って巨人の方へ向かう。そして、やっと追いついたかと思うと茂みで身を潜め、戦場の一点をただ見つめていた。

 

「お父さま……!」

 

視線の先、旗下には仮面の将とウズールッシャの将が対峙していた。もう既にエントゥアの父–––千人長ゼグニと呼ばれた男は満身創痍の状況で、立っているのがやっとな状況だった。

最後の一太刀。一振りに向けて、対峙していた二人が動き出したのはすぐ後で、娘の叫びさえ戦場には無用とばかりに届きすらしない。

 

「参られよ、ゼグニ殿!」

 

「うおおおぉぉぉぉ–––!!!!」

 

対峙していた二人が交差し、刃を断つ嫌な音が響いた。お互いに立ったままで……やがて、膝をついたのはゼグニだった。肩口から胸に掛けて袈裟斬りに斬られ、鮮血を吐き出していく。その姿を見てエントゥアが叫んだ。

 

「いやああああぁぁぁぁッ–––!」

 

倒れ伏した父、ゼグニに駆け寄り泣き叫ぶエントゥア。その姿にようやく二人は別の者がいたことに気づいたみたいだ。オシュトルは俺の姿を見て、仮面の下の顔を少し驚きに眉を潜めたように見えた。しかし、やがて娘と父の姿を見て、自分を見ると何も言わず敵國の皇を追って静かに去って行く。

 

「お父さま! お父さまッ!」

 

エントゥアが父の躰を揺さぶるも反応が薄い。意識が朦朧としているのか、実の娘がそこにいることもわかっていないようだった。

 

 

 

それから数分後、瀕死であるゼグニが身動ぎ思い目蓋を開けた。エントゥアの必死な呼び掛けが功を制したのか、それとも最後に残された親娘の時間か、それは奇跡と言ってもいいだろう。

 

「エントゥア、か……」

 

「お父さま……!」

 

父が目を覚ましたことにエントゥアが喜ぶ。それが最後の奇跡だと、彼女も判っているのだろう。目元には涙を溜めて、ただ父の手を握って涙を流していた。

 

「よくぞ無事で……怪我もないな……あぁ、其方の男は……そうか、助けてくれたのだな。其方が」

 

「はい、ヨミナが助けてくれましたから」

 

勝手に自己完結して、それにエントゥアが力強く肯いて、しかし俺は素直に肯定することは出来なかった。自分もまた彼とは敵対するヤマトの一人なのだから。

 

「それよりお父さまこそ治療を–––」

 

「よい。儂はもう……」

 

ゼグニ自身も死期を悟り、最後の時間を娘と過ごそうとする。

そこに後悔などあるはずもなく、ただ清々しいくらいに穏やかな顔で娘を見つめていた。

 

「思えばお前は……昔から機織りや料理ばかり好いていたな。集落では振り向かぬ男などいないくらいに誰もがもてはやす、妻に似た美しい自慢の娘だった」

 

それは誰に向けた言葉だったのか、或いは独白か、ゼグニは空を仰ぎ見ていた。

 

「……生きよ」

 

ぽつり、と呟く。

 

「エントゥア」

 

「お、お父さまの仇は必ず–––」

 

「もうよい。よいのだ……お前は……普通の娘だ」

 

復讐に身を滾らせようとした娘に父の叱咤が飛ぶ。

消え入りそうなほど弱い声で、娘を諫めた。

そんな父の姿に娘は口を噤む。

父の最後の言葉を一字一句、聞き逃さんと。

 

「女としての幸せを掴め……普通に生き、幸せに……それだけが儂の願いだ」

 

「お父さま……」

 

初めて父の願いを耳にしたのだろう。エントゥアの驚いたような顔が証明だった。次第に流れる涙がポタポタと地面を濡らす。

 

「……ヨミナ殿」

 

そして、ゼグニは次に俺を見る。

離れたところに立っていた自分をだ。

呼ばれて俺は歩み寄った。

 

「……娘を頼む」

 

「あぁ……判った。命に変えても守ると誓おう」

 

「フフッ、そうか……恩に切る」

 

ゼグニは笑った。

きっと彼には、自分がどっち側かも判っているのだろう。

それでも託すと決めたのか。

憑物が晴れたような顔を浮かべる。

 

「未練があるとすれば……娘の花嫁姿を拝めないことか……あぁ、実に残念だ」

 

そして、その言葉を最後にゼグニは目蓋を閉じた。

 

 

 

啜り泣くエントゥアの泣き声だけが後に残る。父の亡骸を前にして、悲しみ泣く娘の姿が戦場にはあった。そこに近づく足音にエントゥアは気づいたのか涙を拭った。

 

「……行きましょう」

 

「いや、ちゃんと弔おう」

 

「ですが……」

 

戦場で散った命の残骸、骸が弔われないことはよくある話だ。負けた國の誰かも判らない死体は野晒しになったり、獣に喰われたり、弔えない場合というのが多々ある。エントゥアもそう思い、この場を離れようとしたのだろう。敵兵である千人長ゼグニの死体を手厚く弔うなど、ヤマトの兵がするとは考えなかったのかもしれない。

現に今も残党狩りは行われており、弔う余裕などはなく、何処の誰かも判らない死体は増え続ける一方なのだから。

 

「忘れたのか。俺はヤマトの兵……まぁ、それなりには権限がある。敵兵を弔おうとも誰にも文句は言わせないさ」

 

だから、ゼグニを弔う時間もある。そうエントゥアに伝えると彼女は泣きそうな顔で頷いた。

 

「はい」

 

それから数秒後、足音が複数、ヤマトの兵がこの場に姿を現した。

 

「貴様ら、何処の者だ!」

 

「……む?まさか、ウズールッシャの!」

 

エントゥアがゼグニの亡骸を抱えていると、そうなることは予想していた。千人長ゼグニはウズールッシャの兵の中でも特別な装いをしており、ヤマトの兵と言い訳は出来ないだろう。

強く父の亡骸を抱くエントゥアの前に出て、懐を漁り双子に渡された印籠のようなものを取り出し、前に掲げる。どのような効果があるかは知らないが、ヤマトの者だと証明するには十分な代物とのことだ。

 

「これが目に入らぬかッ」

 

「なっ、それは–––!?」

 

「ははぁ–––ッ!!」

 

特殊な印籠を掲げた瞬間、ヤマトの兵が平伏する。

思った以上の効果にドン引きした。

 

「此処はいい。おまえたちはオシュトルの後を追い、グンドゥルア討伐に努めよ」

 

「は、はい!……あの、その女性は……?」

 

ウズールッシャの者ではないかと疑いを掛けているのだろう。

訝しむような視線がエントゥアに突き刺さる。

 

「俺の女だ。気にするな」

 

手を出すなよ、との意味を込めて言ったら何故か騒然とした様子で兵達が顔を見合わせる。きっと敵の女を囲ったとか思われてるんだろう。どうでもいいが。

 

兵が去った後で脇腹を小突かれる。

 

「誰が誰の女ですって?」

 

「そうでも言わないと収まりがつかなかっただろう」

 

 

 

 

 

 

ウズールッシャの國は死者を弔う場合、枯れた大地に死体を埋葬するらしい。その血と肉がやがて栄養となり、地に還元されることで作物が育つと信じられてきたとか。

埋葬を終えたエントゥアは名残惜しくも立ち上がり、前に進み始めた。一眼に見てウズールッシャの者と判る彼女は自分の隣を付かず離れずついてくる。

 

「それで。ヨミナ、貴方は何処を目指しているんですか?」

 

出会ってから約三日程の時が過ぎ……お互いのことを未だに知らないままのエントゥアが、今度は俺の目的について聞いてきた。

 

「仲間の元だ。オシュトルがいたんだ……きっとこの辺にいるはずなんだが」

 

自分を見捨てて帝都に帰っていなければ、と注釈が付くがそんなことはないだろう。見捨てて帰ったとかあり得ないはずだ。フミルィルやヨハネ、双子に至ってはその可能性は低いだろう。

 

そうして岩場を渡り歩いている時、前方から声がした。

 

「……言いたくはないが、もう……」

 

「旦那ぁ、まさかそれを姐御達に報告するんで?」

 

「だが仕方ないだろう」

 

「……」

 

「もう一週間と経っているんだ。それにあの数、生きていられるとは思えない」

 

聴き慣れた声と、戦場で手を組むことになった男の声。

何やらひそひそと話をしているみたいだ。

 

「捜索を切り上げて、帝都に帰るべきだと思う」

 

「それ、姐御達に言えんの?」

 

深刻な様子で話し合う二人の背後に忍び寄り、俺は様子を窺った。どうやら何かを探しているようだ。

 

「何の話をしているんだ?」

 

「だから、犠牲になって残ったヨミナを……おぉわっ出たっ!」

 

ハクが振り向いた瞬間、吃驚して腰を抜かし地面に尻餅をつく。大袈裟に飛び退いて腰を打ったハクは俺を指差し動揺したままの声で問い掛ける。

 

「おまえ、何で生きてッ!?」

 

「勝手に殺すな。あの程度、自分一人ならどうとでもなる」

 

「いやでも良かったじゃない。フミルィルの嬢ちゃんなんてもうそわそわしぱなっしで、もう何日も元気がなくなってて正直、フォローのしようが……」

 

「それはすまなかったな」

 

心配されていることに対して嬉しいと感じることは不謹慎だろうか。少し、吊り上がった頬を悟らさないように無表情を貫いてみる。

 

「……なぁ。おまえの後ろにいる女は?」

 

「あぁ、拾った」

 

呆れか、驚きか、二人の顔色はどうも良くない。

何故だろうとエントゥアを見ると、彼女も驚いたような表情で二人を見ていた。

 

「ヤクトワルト!」

 

「え、なに、知り合い?」

 

「「「……」」」

 

そう聞くと三人は気まずげに視線を逸らす。そうして数秒沈黙しているとヤクトワルトが身を寄せて俺に耳打ちしてくる。

 

「一体何がどうしたらそうなるわけ?相手が誰だか判ってんの!?」

 

「ウズールッシャの者、ということか?そんなの大した問題ではないだろ」

 

「いや、匿ったりなんてしたら……それに朝廷に引き渡しを要求されたり、色々と問題があるじゃない」

 

「案ずるな。俺はエントゥアを見捨てないし、誰にも傷つけさせはしない、そう約束したからな。たとえ誰が相手だろうとそのような命令に従う気はないぞ」

 

そうきっぱり言い放つとヤクトワルトは溜息を一つ。

 

「姐御といい、ヨミナの旦那といい、なんていうか……二人とも似た者同士というか肝が座っているというか」

 

「そうか、似ているか。あれはどちらかと言えば妻に似ているのだがな」

 

「……え?」

 

「すまない。今のは忘れてくれ」

 

つい口が滑ってしまい、口止めにそう言った。

聞いていたのはヤクトワルトだけだった。

 

「ヨミ様ッ!」

 

何か追求したげであったがそれよりも早く、岩場の影から世にも美しい少女が姿を現す。足場の悪い場所を転けそうになりながらも跳ねるように移動して、勢い余って胸に飛び込んで来た。

 

「もう、心配したんですよ、勝手に…いなくならないでください…危ないことはしないでください…ユズハ様に言いつけますよ」

 

それで普段の彼女からは想像もできないような震える声で責め立ててくる。

 

「それは困ったな」

 

全然困っていないことを隠そうともせず、腕の中で顔を埋めるフミルィルを宥めるように背中を撫で続けた。

 




ロスフラの復刻VH5、ゲンジマルの火力はもう笑うしかない……クリアしたけどね!カミュの攻撃アップ封印がなけりゃ詰んでた。ゲンジマル以外はミトの連撃で全滅するとは思ってなかったわ。
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