海軍大将 白狐   作:汎用うさぎ

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執筆が滞り、書き悩む事が多くなったので気分転換にと新作品を練ったら予想以上に筆が乗ったでござるの巻。


1.海軍の白狐

コツコツとブーツが音を立て長い廊下に響く。背丈150㎝程の少女、着用する白いコートの背中には正義の文字が刻まれている。

少女はある扉の前で立ち止まり、憂鬱そうに溜息を吐くとノロノロと手を伸ばし扉を叩いた。

 

「センゴク元帥、入室の許可を」

 

「おぉ、来たかシルヴィア少将。構わんよ。」

 

ノックして直ぐに返事が返ってきた。少女は扉に手を掛け元帥の執務室へと入る。中には煎餅を齧り書類に目を通しているセンゴク元帥とペットであるヤギが居た。

 

少女は手を挙げて敬礼をピシリと決めた。

 

「失礼します」

 

「急に呼び出してすまないな。任務明けで疲れているだろう、気を張らなくともいい。そこに座って寛いで話を聞いてくれて構わん」

 

センゴク元帥は目を通していた書類を仕事机に置くと立ち上がり、接待用の机に備え付けられたソファに座った。

そして少女にその対面に座るように指示を出した。

 

「お心遣い感謝します。では……はふぅ」

 

少女はそれまでの凜とした態度を一変させ溶けたようにフカフカとソファに沈んだ。他の海兵達が見たら驚愕するほどのダラけっぷりである。

 

「まずは任務ご苦労とでも言っておこうか、シルヴィア少将。首尾よくいったそうでなりよりだ」

 

「えぇ、面倒ではありましたが、何事も卒なくこなす出来る女…ですので」

 

シルヴィアと呼ばれた少女はソファに全身を預けつつもキリっとドヤ顔を決めた。

 

「そうか。ところで任務で疲れた君を呼んだのは褒めるためではないのは分かるな?」

 

「まぁ普通はそうでしょうね。何事です?」

 

「シルヴィア少将、単刀直入に言おう私は君を中将に昇格させるつもりでいる。必要な手続きは既に済ませている、後は君の承諾だけで昇格が決定するだがーー」

 

「お断りします。ただでさえ怠いのに何故中将に…」

 

「そうか、残念だ…。中将ともなれば部下も増えて仕事の負担が減るというのにーー」

 

「その話、受けましょう」

 

「そうかね、有能な部下が昇格してくれると私としても嬉しい限りだよ。」

 

「ですが、天竜人関連の仕事だけは絶対に受けることはありませんので、そこだけはご理解頂きたいです。」

 

「あぁ、重々承知しているとも。」

 

「話はこれだけです?」

 

「そうだな…いや、最後に一つ。」

 

「何です?」

 

「私は、君が数年中将の経験を積んだら大将に据えたいと考えている。その事を頭の隅にでも置いて仕事に努めてくれ。以上だ」

 

「うげぇ…、大将って楽なんですか?」

 

「あぁ、多分楽だとも。」

 

「そうなんですか、じゃあやります」

 

「前向きな返答が貰えて嬉しい限りだ、ではゆっくりと休養してくれたまえ」

 

「はい、失礼しました」

 

少女はソファに沈んだ体を起こし立ち上がると敬礼し執務室を退室した。バタンと閉まるドアの音を聞いたセンゴクは仕事机に向かいシルヴィアの今回の任務の報告書に目を通した。

クロッゾ海賊団の殲滅作戦。懸賞金が総額7億を超える新世界の海賊団。その団員全てを生け捕りにしてマリンフォードへ帰投した。

船長であるクロッゾは5億の懸賞首、少将には荷が重いであろう任務を難なく終えた。

 

「イヌイヌの実、少将、いや、中将でさえも有り余る能力か」

 

動物系幻獣種の悪魔の実「イヌイヌの実」モデル九尾の狐。センゴクはシルヴィアが海軍に入隊した当初よりシルヴィアの実力を買っており、彼女は直ぐに昇格を繰り返し入隊してから2年もしない内に少将に、そして今中将へと昇格した。それに見合うだけの功績も残している。実力は本物、あと数年訓練すれば大将に据えられる程だった。

 

天竜人を毛嫌いしている点を考慮しても、是非とも大将になってもらいたい存在だ。

 

「ガープの奴、とんでもない逸材を拾ってきおって…」

 

センゴクの脳内で憎たらしく笑い飛ばすガープも偶には良いことを仕出かしたもんだと笑みを溢した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

執務室を出て自室に戻る途中、シルヴィアは怠そうに立ち止まり振り返る。

 

「…クザン大将、何用ですか?」

 

少女の後ろには2mを優に超えるであろう大男が真剣な表情で歩いていた。執務室を出て数分もしないうちに後ろにくっついて来たのを無視し続けていたのだが部屋が近くなったので仕方なく声を掛けた。

 

「あらら、特に用はないけど。君のお尻に用があるかな〜って。」

 

クザンの手はくっついて来た初めからシルヴィアのお尻に伸ばされており、サワサワとソフトに撫でてその感触を楽しんでいるようだ。

 

「そうですか。別に構いませんが、私の自室にまで入って来ないでくださいね」

 

「あらら、つれないこと言うじゃない。それなら最後に堪能しとこう…」

 

クザンが先ほどの比ではない程露骨に尻を撫で繰りまわす。というかガッシリと鷲掴みと言っても過言ではない程に尻に情熱を注いできた。何がいいのか理解できないシルヴィアは特に気にせずに自室へと向かう。

 

「あれれぇ〜〜?何をやっとるんだいクザン君 ?セクハラじゃないのそれ〜〜?」

 

その道中、黄色と白のストライプのスーツ、サングラスが特徴の大将黄猿ことボルサリーノがT字路の角からヌッと現れた。

 

途端にクザンの表情が曇り、脂汗を出すほど焦り始めた。

 

「ゲッ、黄猿さん…。違いますよ、コレはその部下との信頼を深めるためのスキンシップですよ」

 

「そうかい?やましいことじゃないなら後でセンゴクさんに伝えておくよ〜〜。シルヴィア君の尻を撫でてたって」

 

「ウェッ!?勘弁してくださいよ。あの人そういうのに厳しいんだから!」

 

「そう思うのならその手を離したらどうだい〜〜?別にわっしはシルヴィア君が嫌じゃないなら止めはしないがねぇ〜〜」

 

「正直言って不快です。何とかしてください黄猿大将。」

 

「んん〜〜、了解したよ。ほら、センゴクさんの所に行くよ〜〜クザン君」

 

黄猿がクザンの首根っこを掴んで執務室へと連れて行こうとする。クザンはジタバタと暴れるが黄猿がしっかりと掴んでいるため徒労となる。

 

「ちょっ、シルヴィア!」

 

クザンは最後の希望に縋るようにシルヴィアに手を伸ばし助けを求めた。シルヴィアは面倒くさ気に溜息を吐いた。

 

「はぁ、私から引き離せばそれでいいです。センゴクさんの所に行かれたら私まで面倒な事になるじゃないですか。それにクザンさんのセクハラなんて常日頃の出来事ですし」

 

「シルヴィア…」

 

「君は相変わらずだねぇ〜〜。君がそれでいいなら構わないけど。でもやっぱりクザン君はセンゴクさんの所に連れて行くよ〜。常日頃セクハラしてること伝えなきゃねぇ〜」

 

流石は「どっちつかずの正義」、情に流されたりはしなかった。いや、正確には彼の正義はそういう簡単なものではないけれど。一瞬思考が停止したクザンも正気を取り戻すと一層暴れだす。

 

「はぁ!?何で!?今いい感じだったじゃない!?シルヴィア!助けて!」

 

「それでは大将方、お疲れ様でした」

 

ニコリと会釈し自室の扉を開ける。クザンが必死に手を伸ばしているのを見て頑張ってくださいとアイサインを送り扉をソッと閉じた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大将2人を見送った後、シルヴィアは自室に備え付けられたベッドに倒れこんだ。

 

「ねむ…でも、お風呂入らなきゃ」

 

任務で2週間海の上だったため少々潮の香りが拭えない。軍艦にも風呂があるが、仕事の過程ですぐに潮の香りがついてしまうのだ。

 

「はぁ…」

 

仕方なく起き上がりコートや衣類を脱衣所で脱いで洗濯カゴに入れ部屋に備え付けられたユニットバスに向かう。お湯を張るのも面倒なのでシャワーを浴びる。

ポタポタと水の音が響く。

 

「私が中将ねぇ…。センゴク元帥は何を考えているのやら。」

 

私のイメージではガープ中将のようなパワーゴリ押しな人や六式を修めた人、覇気を習得した人じゃないとなれないと思っていた。

私は六式は全て納めていないし持久力はあるがパワーは義父であるガープ程はない。覇気はそこそこレベル。完全に能力頼りである。

能力はイヌイヌの実モデル九尾の狐という珍しい能力で、コレが恐ろしく強いらしい。

 

用途としては 相手を化かす能力、式神を操る能力である。つまるところ、幻覚幻聴など人の五感を惑わせる能力。それとめちゃ強い式神を召喚し私を護らせる能力。

 

確かに能力は強いのだろう。が、若年の私に務まるものだろうか。というか、大将に据えるとか言ってるし。絶対面倒な気がする。体良く騙された気がする…センゴク元帥ニヤついてたもん。

 

あぁ、考えるのも面倒くさい。

 

「…ふぅ」

 

シャワーの水を止め、バスタオルで体を拭きそれを体に巻くとシャワールームを出てベッドに倒れこむ。

 

「桐代〜」

 

シルヴィアが指をクルクルと振るとポンっという音ともに煙が発生し、その中から着物を着た長い黒髪の美女が現れる。

濡れ鴉の髪を耳に掛け、恭しく頭を下げた。

 

「お呼びでしょうか、シルヴィア様」

 

「…あとはよろしく。私は寝る」

 

枕に顔を埋めて指示だけ飛ばすとシルヴィアは全身を弛緩させベッドに溶けていった。

 

「畏まりました」

 

シルヴィアは式神の声を聞いて意識を手放した。対する式神である桐代(キリヨ)は主人を起こさぬように体やまだ濡れている髪を丁寧に拭き乾かし服を着せた

 

「…お邪魔しますね、愛しい我が主様」

 

布団を掛けるのと同時に自分も布団に入り桐代はシルヴィアに寄り添うように寝た。

そして翌日、桐代はシルヴィアが目を覚ます前に抜け出して人知れず消えた。

 

 

 




なお、この話は原作開始の10年前の話である。

桐代について。
桐代はシルヴィアの式神として契約しており、種族は鬼。髪に隠れて見えづらいが二本の角が生えている。ワノ国出身で屈強な武人である侍を物ともせず蹂躙したことで恐れられた鬼。騙し討ちによって瀕死までに追い込まれた際にシルヴィアに出会い契約する。
ワノ国は鎖国国家で国外に出るだけ罰せられるため逃亡生活の身である。が、普段はワノ国の近海にある魑魅魍魎が住まう島に住んでいて不気味な島だと近寄る人間はいないため快適な生活を送っている。
シルヴィアの事を心酔しておりシルヴィアに呼び出される事を心待ちにしている。

モデルはFGOの源頼光です。
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