海軍大将 白狐   作:汎用うさぎ

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今回はちょい長めです。
クロッゾな笑い声をボロロロロロに変更しました。ワンピース特有の特徴的な笑い声ですな。


12.腐蝕する者

「総員甲板にて待機、私とセラ准将が制圧に向かう。目標であるクロッゾを捕縛した後、信号を送る。受信次第諸君らも島へと上陸しろ。以上だ」

 

クロッゾ海賊団が暴れているという島に辿り着き、軍艦を港に停泊させる。

 

既に港は壊滅しており、街は腐り落ちて異臭を漂わせていた。住民の声は一切聞こえない。逃げたか殺されたか、攫われたか、いずれにしろ許せる所業ではない。

 

シルヴィア少将は見るも無惨な港を一瞥すると凛とした声で指令を出した。

 

「「「「はっ!」」」」

 

軍艦に乗る海兵全員が敬礼を持ってシルヴィア少将を送り出す。

 

「さて、先陣を切るぞセラ。」

 

この町の被害を見るに恐ろしく強い能力者がいるというのに、シルヴィア少将はいつもと変わらない様子で軍艦を降りた。

 

「はい!」

 

私から願い出た手前退く訳にもいかないし、シルヴィア少将の期待を裏からような事はあってはならない。私は覚悟を決めてシルヴィア少将の後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の認識が甘かったのだと思い知らされる。おおよそ予想していた海賊行為はひどく甘いものだったのだ、と。軽い覚悟で付いてきたしまった事を後悔した。

 

「なに…これ…」

 

かつては盛況に栄えていた町は、もはや見る影もないほどに腐っていた。古くも情緒のある軒並みは腐り落ち、瓦礫の屑が散開している。

 

そして、地を埋め尽くす町民の遺骸。辛うじて息のある者は苦痛に身を焼かれながら地を這っている。

 

「…ぃた…い…」

 

「…こ…ろ……く…れ…」

 

肢体を欠損し、肌は爛れてずり落ちてなお、死ねない町民達は地獄のような苦しみから逃れようと地面をのたうちまわっている。

 

見聞色の覇気は多くの苦しみに喘ぐ声を私に届ける。それら全て脆弱でか細い声であった。命が燃え尽きかけるその瞬間に発するような。

 

「…た、助けなくちゃーー」

 

予め用意していた医療器具をバックパックから取り出そうとした手を静かに止められる。

 

「よせ」

 

その手の持ち主を見上げてみれば、シルヴィア少将は普段の柔和な表情からは考えられないような厳格な表情で私を見つめていた。

 

「な、なんでですか!?今すぐ治療すればまだ…」

 

「無駄だ、もはや助からない。クロッゾが死なないように拷問したのだろう、内臓が腐っている。それだけならまだしも生存に必要な臓器が悉く腐蝕されている。それを治療する技術はない。」

 

「そんな…」

 

「私たちが出来ることは苦痛から解放してあげることだけ。」

 

シルヴィア少将はスラリと刀を抜刀すると躊躇なく町民の胸元に狙いを定め刀を引き、淀みなく刺突する。

 

私は、その全てを見るまでもなく目を逸らした。否、全てを受け入れられず、目を閉じた。

 

町民の最後が見たくないから閉じた、あの優しいシルヴィア少将がここまで躊躇なく人を殺してしまうのを信じたくないから目を閉じた。嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ…これが現実のはずがない。

 

目を閉じ続ける私の耳には断続的に町民達の死ぬ間際に漏らす呻き声が聞こえる。

 

「…ぁぐっ……ぁりが…と…う…」

 

「…っ!!」

 

それは、断末魔の悲鳴でも、呪詛でもなく、ただ只管に感謝する声であった。

 

そして数分もしないうちに見聞色の覇気が声を拾えなくなった。

 

「…セラ、目を開けて。弔いの火は貴方が」

 

シルヴィア少将の声が耳元で響く。パチパチと燃える音も聞こえる。恐る恐る目を開けて、直ぐに閉じた。

 

「…うぅ…!」

 

数瞬の瞬きにて捉えた光景に、耐えられなかった。胃の中の物が迫り上がり酷い嘔吐感に襲われる。

 

「セラ、決して人の死に慣れるなとは言ってない。でも今は目を開けて。これはきっと貴方に必要な事だから」

 

「…っ…分かりました…」

 

シルヴィア少将から火種を貰い受け、遺骸を集め寄せた山へそっと投げる。腐敗した遺骸の山はガスに引火して爆発するように燃え盛り、遺骸は灰へと形を変える。

 

「セラ、町民のためにもクロッゾは必ず捕らえるよ」

 

「…はい」

 

この惨劇を生み出した元凶、腐蝕人間クロッゾ…必ず報いを受けさせる。私はそう強く胸に刻みつける。

 

そして私は、今も燃え盛る死の山の先、少し丘のように隆起した大地の上に1人の男が此方を見ているのを見つける。

 

「ーーあぁ?なんだァ?俺のおもちゃを燃やしたのはどこのどいつだァ!?」

 

その男は顔を歪め、激昂した。私は一瞬奴の言っていることが理解出来なかった。おもちゃ?この町の人々が?

 

「お前がクロッゾか?」

 

隣に立つシルヴィア少将が底冷えするような冷たい声を発していた。

 

「あァ、いかにも。そういうテメェは…海軍将校か?」

 

「海軍の正義の下、貴様を捕縛する。」

 

「ボロッ!ボロロロロロォッ!!やれるもんならやってみなァ!!」

 

狂気的な笑い声と共に、クロッゾの周囲の空気が変わる。クロッゾの立つ大地はドロドロに溶け始める。

 

「セラ、貴方は下がってて。これは命令。」

 

クロッゾの狂気に飲まれかけていた私をシルヴィア少将が呼び覚ます。

 

「でも…いえ、分かりました…ご武運を!!」

 

共に戦っても足手まといになるのは間違いない。私なんかが介入できる余地はない。私が出来るのは戦況を見つめるだけ。

 

自分でも情けないと思うけど、最良の選択肢を選ばなくてはならないことくらい分かる。

 

シルヴィア少将、どうか無事に…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クロッゾは腐蝕を齎らす手でシルヴィアの体を触れる。しかし、シルヴィアの体は煙のように搔き消え、クロッゾは怪訝そうに眉を顰めた。

 

「こりゃァ幻覚か?テメェ、ワノクニの忍者か?気味が悪ぃ…」

 

「ワノクニ出身ではないしお前に言われたくない。その能力、危険極まりない。お前は必ずここで捕らえる」

 

「捕らえるだァ?錠でもかけて俺を檻に閉じ込めようってか?ハッ、海楼石の錠だろうが腐り落としてやるよ!!」

 

クロッゾは自信満々にそう言い放つと同時にシルヴィアに襲いかかった。

 

「ハッタリだ」

 

私は平静さを欠くことなくクロッゾの攻撃を幻覚を用いて捌いた。海楼石の錠を腐蝕させるのは不可能だ。触れずに能力で破壊できる、という可能性はあるが、仮に両手に嵌めたとしたら能力者は何も出来ない。

 

「そいつはどうかなァ?」

 

意味深に笑うクロッゾ。例え、本当に破壊できる術を持っていたとしても関係がない。

 

「まぁ、海楼石の錠を使うのはお前の意識を刈り取ってからだ」

 

意識がなければ能力は正確に行使出来ないだろう。海楼石の錠の出番はそれからだ。

 

「どうやってだ?残念だが、テメェの幻覚はもう通じねェぞ?何の実の能力者かは知らねェが、突破口は見えた。」

 

物理攻撃すれば腐蝕される。まさにえんがちょ、私としても直接触れるのは絶対にやだ。えんがちょえんがちょ。

 

なんて考えてるとクロッゾは幻覚に目もくれず私に一直線に突き進んできた。なるほど、クロッゾは見聞色の覇気を持っているのか…。

 

私の幻覚には短所がある、見聞色の覇気を使える者には通じにくいという点である。私の幻覚は“声”を持たない。故に見聞色の覇気によって容易く突破される。

 

「喰らいなァ!!」

 

能力によって一種の透明人間になっている私にクロッゾが正確に手刀を振り下ろす。私は大きく後退し攻撃を避ける。

 

私はクロッゾと距離を置いて透明人間状態を解除して姿を現わす。それを見たクロッゾは下卑た笑みを浮かべていた。

 

狩りで獲物を追い詰めた、舌舐めずりするが如き笑み。

 

「何か勘違いしてるみたいだけど、私の能力は幻覚見せるだけじゃないよ」

 

確かに腐蝕に晒されたら私もただではすまないし、桐代から貰った刀を溶かされたくもない、物理接触も危険。直接攻撃出来ないのは厄介だけど、私には関係ない。

 

「何ィ?」

 

「お前は幻覚と真実、見極められるかな?」

 

私は、能力を解放する。自分でも卑怯過ぎると思う、凶悪無比なもう一つの能力を。

 

ーー夢か現か幻か。狐の見せる白昼夢、ご堪能あれ

 




シルヴィアの幻覚は見聞色の覇気を持つ者ならば見抜けます。単なる幻覚なら(フラグ)

クロッゾは接触を忌避しなくてはならないレベルでヤバいです。触れたらそこから溶けて落ちます。また腐蝕作用を広範囲に拡散させることも出来る。(マゼランの侵食する毒とそう変わらない
人の多い市街や混戦の中に投入されたら待った無しに地獄絵図を作り上げる。
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