海軍大将 白狐   作:汎用うさぎ

4 / 13
時系列としては、幼少期(グレイターミナル)編の終盤です。


4.フーシャ村

心地よい風が頰を撫でていく。空は快晴、気温もそこそこに。文句のつけようがない良い天気である。

 

「ここに来るのいつぶりだろう。マキノちゃん元気かな?みんな元気だと良いけど」

 

少し長めの航海の末にフーシャ村へと辿り着いた私とおじいちゃんは軍艦の船員から敬礼を受け、それに応えるのもそこそこにして歩き出し、今はフーシャ村へと向かっている。

 

懐かしい香りを感じる。やっぱり帰ってきたと思えるのは存外私もホームシックとやらを患っていたのかもしれない。マリンフォードにも自宅はあるが、やはり故郷と言われると此方であるのは隠しようもない事実である。

 

故郷の風景とともに浮かび上がってくるのは酒場の女主人、年の離れた弟達、村長、村のみんな、次々に湧いて出てくる

 

「おぉ、そうじゃな。みんな元気じゃろう」

 

「あ、そうだ思い出した。この前ここに来たの半年前だった。」

 

確か任務でフーシャ村の近く通ったから少しだけ進路を変えて貰ったんだっけ?まぁ、私の一存で長居は出来ないから船から村の方を眺めただけだったけど。

 

今考えてみれば重度のホームシックだったのだろうか。郷愁の念にかられるとは良く言ったものだ。

 

「なぁシルヴィ、ルフィ達の事なんじゃが…」

 

「2人の説得は面倒だし無駄だと思う」

 

「そこを何とか…のぅ。あいつらわしの言うことをまるで聞いてくれんのじゃ」

 

(2人もおじいちゃんに対して同じこと思ってるんだろうなぁ)

 

「はぁ、わかった。話はするつもりだからその時聞いてみる。面倒だけど」

 

「おぉ!そうか!海賊なぞ絶対に許さんとキツく言っておいてくれ!」

 

「ダル…」

 

「なんじゃもう疲れたのか?背負ってやろう、ほれ」

 

おじいちゃんは少し屈んで背中を見せている。別に歩くのが怠いんじゃなくて説得が怠いと言ったつもりだったのだが。まぁ歩くのもやっぱり怠い。

 

「んー」

 

おじいちゃんの好意に甘えてがっしりとした背中に飛びついた。

 

そうして他愛のない話をしながら歩いているとフーシャ村に到着した。おじいちゃんは大柄なのでとても目立つ。ゆえに村に入った瞬間から視線は自然と集まった。村を歩いているとキーコキーコと椅子を揺らして寛いでいたボーダーの入った帽子を被った老人が目をひん剥いて椅子から立ち上がった。

 

「あ!?ガープさん!?何でここに?」

 

「おぉ、村長。今日は特に用はない。可愛い孫娘と里帰りじゃ!」

 

ぴょこっとガープの背中から顔を出して会釈をする。おじいちゃんの背中は広くて安定してるから降りたくはない。少し硬いのが玉に瑕だけど。

 

「おぉ、シルヴィアちゃんも居たのか。久し振りだな。元気にしてたかね?」

 

「えぇ、まぁそこそこに」

 

「聞いてくれ村長!何とシルヴィはまた昇格したんじゃ!今はもうシルヴィア中将じゃ」

 

「…な、なんと!?ちゅ、中将ぉ!?」

 

村長の奇声に周囲もざわつき始める。こりゃ目出度いと彼方此方から声が聞こえる。囃し立てられるのは好きじゃないし面倒くさいなぁ…と思いつつ村長に是と答える

 

「身に余る役柄だと思いますけど、なっちゃいましたね」

 

「ぶわっはっはっはっ!何を言うか!実力はこのわしが保証するから安心せい!」

 

「…こりゃめでたい。わしらとしても鼻が高いな。村の身内から海軍中将が輩出されとは。これは村総出でお祝いでもしようか」

 

ルフィやエースが海賊になると言う中、私の昇格は本当に嬉しいのだろう。海賊などけしからんが口癖のようなものだったしね。

 

「村のみんなも大変だからいいよ。気持ちだけで十分だし、スピーチなんか求められたら面倒だし、やらなくて大丈夫」

 

「後半が本音のようだな…。まるで変わらないなシルヴィアちゃんは」

 

「村長さんも健勝で何よりです。」

 

「いやぁ、最近は腰が少し痛むがな…。そうだ、マキノも喜ぶだろうし会ってくるといい」

 

「マキノちゃん元気?」

 

「自分の目で確かめるといいさ」

 

「わしは村長と話をしてるから気にせんでいいぞ。ゆっくりしてくるといい」

 

「うん、行ってくる」

 

名残惜しいがおじいちゃんの背中から飛び降りる。おじいちゃんと村長の談笑を背に、私はPARTYs BARを目指して歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふんふーんふふーん♪っと、今日の仕入れも終わりかな。洗い物も終わったし、予定より早く終わっちゃった。」

 

予定よりも開店準備が終わったマキノは近くの椅子に腰を掛けて自分で淹れたコーヒー片手に一息を吐いていると、カランカランとベルが鳴った。マキノはコーヒーをカウンターに置くと扉へ向かう

 

「すみません、まだ開店は…ってシルヴィ?!こっち来てたのね!」

 

「おひさ、元気だった…みたいだね」

 

「うん!シルヴィも元気そうでなりよりだよ。でもいきなりこっちに来るなんて、手紙でもくれれば歓迎会も開けたのに」

 

「あー、気持ちは嬉しいけどね。私はそういうのいいかなーって」

 

近くの手頃な椅子に座り手をプラプラと振った。マキノは私の分のコーヒーを淹れ、私の座る席の手前の椅子にコーヒーを置いてそのまま私と対面になるように座った。

 

「言うと思った。面倒くさがりなところは変わらないね。でもそれはそれで安心するなぁ。」

 

「私の性分だからね。」

 

私は出されたコーヒーに即座に口をつけて答える。何も言わずに頂くのは無礼に当たるかもしれないが自分とマキノの仲である、ほんわか顔でコーヒーを楽しむ私を眺めてマキノはニコニコと笑っていた。

 

「ふふ、そうね。それにしても仕事は大変なの?最近は全然こっちに遊びに来なかったし。なんか少し寂しかったなぁ」

 

「上司が私をスピード出世させようと頑張っちゃったせいでね…。今はもう中将。私には過ぎた身分だと思うけど」

 

「えぇーーーっ!?中将なの!?そ、それってガープさんと同じ立場ってことなの?!」

 

「一応ね、まぁおじいちゃんは普通の中将とは違うから。私はおじいちゃんほど偉くないよ」

 

「でも凄いわ!入隊数年で中将だもん。なんか急にシルヴィが大人に見えてきたかも」

 

「元々私は大人の女性。出来る女…だよ」

 

「あはははははっ!久し振りにそれ聞いたなぁ。可愛い〜。」

 

「む…」

 

「ごめんごめん、馬鹿にしてるわけじゃないのよ?なんか凄く懐かしくってね。あ、そうだ!ルフィ達も会いたがってたから会いに行ってあげて。今は乗り越えたとは思うんだけど、エース君たまにボーッと海の方眺めてる時あるから少し心配なんだ」

 

「…エースになんかあったの?」

 

「…そっか、シルヴィは知らないのね…。…エース君自体は無事だったのよ。でも、これはエース君達から聞いたほうがいいわ。私の口から言える問題じゃないのよ…」

 

「…うん、そうする」

 

もっとマキノと話をしていたかったが深刻な表情のマキノに不安を覚え、久方ぶりにコルボ山へ赴く事にする。胸がさざめく、嫌な予感は一歩踏み出すごとに強くなっていった。

 

 

 




シルヴィアとマキノの年の差は2歳です。
シルヴィア(19)マキノ(21)エース(11)サボ(11)ルフィ(8)

マキノさんの年齢は公式では不明です。この作品の独自の設定です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。