ジャパリパークのかじやさん   作:Kamadouma

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あわときょえい

 

 

 

 

 

「ダメです。ここから先は通せません」

 

「ええーっ!?なぜなのだー!?」

 

 

 

日が登ってきてみんな目を覚ますと、ゲートの奥には一人のフレンズが道を塞ぐように立っていました。

 

丸い耳と模様のある灰褐色の毛が景色に溶け込んで、鋭さの中にも他人に気配りできそうな優しさを感じられる眼が印象的なフレンズです。

 

 

 

「何かこの先であったのかなー?」

 

「とても危険なセルリアンが出現したんです。今同僚のハンターが対応してますので、安全が確認できるまで封鎖しています」

 

「そこまで本腰を入れるとは。よほどの大物なのか?」

 

 

 

不平不満を言っていたアライさんですが、危険なセルリアンがいると聞いて静かになりました。フェネックの表情は相変わらずですが、足止めをくらうことにはあまり納得できていないようです。セルリアンとの戦いを何度もくぐり抜けてきたキングコブラも今回の対応には違和感を覚えているようです。

 

 

 

「何でも、かつてパークに存在したっていう“輝き”を奪うセルリアンらしいですよ」

 

「輝き…抽象的すぎてわからないな」

 

「そうでなくても、小さな丘より大きなやつですので、我々が相手でも難しいものがあります。危険ですので迂回するかしばらく待ってください」

 

 

 

丸い耳のフレンズはそれ以上言葉を続けませんでした。彼女も任務中ですので、揚げ足を取られるわけにはいかないようです。

 

 

 

「…この先に住んでいるフレンズは避難できたのか?」

 

「既に避難誘導は終わっています」

 

 

 

寝起きで黙っていたノヴァが口を開きました。ゴーグルを額に上げて目をこすりながら、渋い顔をしています。

 

 

 

「本当にか?」

 

「我々の知る限りでは、ここに住んでるフレンズにはすべて声をかけています」

 

「じゃあ、あなた達の知らないフレンズは?」

 

「そんなのそうそういる訳……あ」

 

「そうだ。目の前にいるだろう。あなたが初めて見るフレンズが」

 

 

 

ゴーグルが遮らない視線は、焼けるほどにまぶしい強さを宿しています。圧倒的眼力は気の弱いフレンズなら直視できないほどです。

 

その視線で詰めよってくれば、中々強気に出られません。丸い耳のフレンズは冷や汗を流して後ずさりします。

 

 

 

「私だけじゃない。しんりんにはもう一人正体不明のフレンズがいるし、昨日は大量の泡をばらまく奴がこはんちほーに入っていったようだ。…まだ、避難していないかもしれない」

 

「…た、確かにそれは知らなかったですが…」

 

「そう怯えてくれるな。別に揚げ足を取りたい訳じゃない。手伝いたいと言っているんだ」

 

 

 

ノヴァの目的はそこにありました。障害物のせいで進路が塞がれるなら、障害物を取り払えばよい。前の身体の時と変わらない根本的な方法です。

 

威圧感で首を縦に振りかけた丸い耳のフレンズですが、待ったの声がかかります。

 

 

 

「おい待てノヴァ。それは私達の仕事じゃないだろう。ハンター達に任せればいい」

 

「足止めを食らっているなら、原因を解消するのがいいだろう」

 

「別に迂回路がないわけじゃない。わざわざ危険な道を通る必要はない」

 

 

 

キングコブラは別のルートから迂回して通ることを提案しました。彼女は確かに実力者ですが、好んでセルリアンと戦いたくはないのです。

 

 

 

「…それはダメだ。仲間が危機にさらされているのを素通りはできない」

 

「仲間って…お前、ハンターたちと縁があるのかよ?」

 

「私がしんりんの奥地から出てくるきっかけを作ってくれたのもあいつだし、ライを一緒に助けてくれたのもあいつだ」

 

 

 

ノヴァとていたずらに剣を振るうのはもうこりごりですが、仲間が危険というのなら話は別です。あの時見せつけられたヒトの強さを、どうしても自分の目で確かめたい…それで仲間が救えたなら嬉しいことこの上ないのです。

 

 

 

「それって、ヒグマさんとキンシコウさんですか?青い炎のフレンズに会ったって」

 

「そのとおりだ。その正体も私のことだな」

 

「……二人は今超大型セルリアンの対応に当たってます。…正直なことを言えば、戦力が足りていなかったんです。…どうか、協力していただけませんか?」

 

「ああ、任せてくれ。私の剣はそのためのものだ」

 

「………………」

 

 

 

揺るぎない意志を燃やす熱い瞳に、キングコブラはそれ以上言葉を返せませんでした。仲間のためならどんな困難にでも立ち向かいそうな相棒が、誇らしくもあり、不安にも思ってしまいます。

 

 

 

「三人とも、それでいいな?泡の持ち主の安全を確保してからセルリアンを叩く、…付き合いきれないというなら降りても構わない」

 

「いいや、アライさんは賛成なのだ!この石の持ち主を探しながら、超強敵のセルリアンを倒す…アライさんにふさわしい劇的なしちゅえーしょんなのだ!」

 

「アライさん楽しそーだねー。私もついてくよー」

 

「……助手の命令の手前お前についていくが…」

 

「…ということだ。ハンター、共闘を申請する」

 

「リカオンです。共闘の依頼を受理します、…ノヴァさん」

 

 

 

リカオンは認識を改めて、彼女たちを仲間と認めてくれました。握手にも慣れてきたノヴァと手を組み交わします。どちらも意気揚々とした表情で見つめ合います。

 

意気揚々なのはアライさんもでした。ビッグなことをやり遂げたいと思うアライさんにはまたとない機会です。気合いをためる彼女をフェネックはいつも通りに眺めて微笑みます。

 

でも、キングコブラはいまいちこの空気に馴染めませんでした。なぜなのかは自分でもわかっていませんが、なぜか気分が乗らないのです。特に怯えているわけでもなければ、ハンター達に恨みがあるわけでもないのに。もやもやして無意識の内に尻尾をビタンビタンと地面に打ち付けていました。

 

 

 

「では、まずその泡の方の捜索からです」

 

「任せるのだ!まだ泡が残ってるみたいだし、それをたどっていくのだ!」

 

 

 

 

 

 

____________

 

 

 

 

 

 

消えない泡を追ってこはんちほーの針葉樹林を突き進む五人。初めて来てもわかるその異常さに、戦いが壮絶なものであると嫌でも思い知らされます。

 

 

 

「通路側の木は軒並み倒させれているな…」

 

「広い道に誘導するのが精一杯で、まともに戦えていないんでしょうか…」

 

「…そのセルリアンはどんなやつなのだ?」

 

「なんと言えばいいのか…地面を砕きながら泳ぐ首の長いやつ…ですかね」

 

 

 

リカオンの言うとおり、所々地面は大きく掘り起こされて新しい道を作っていました。それだけでもわかる敵の大きさと強力さ。いくら剛毅なノヴァでも少し怖じ気づいてしまいます。

 

 

 

「…溶岩を泳ぐやつなら知ってるが…液状でない地面を突き進むなんて、想像もできんな」

 

「今は出くわさないことを祈るばかりです。その泡の持ち主の行方を確認できるまでは」

 

 

 

泡は道なりに残っています。手がかりは失われていないのですが、掘り起こされた土と同じ方向に進んでいるのがとても不安に思います。

 

 

 

「お前の仲間は大丈夫なのか?」

 

「…そう信じるしかありません。先輩たちはどんな苦境も乗り越えてきたフレンズですから…」

 

「普通に逃げ出してもいいと思うけどねー。どう考えてもパーク全体で対応しなきゃいけないセルリアンだよー、それ」

 

「…とにかく無事を祈るだけです」

 

 

 

先輩たちは絶対に逃げ出さない、と言い返したくなったリカオンでしたが、彼女も実物を見ています。あれを見れば、自分たちじゃ戦いにならないと本能が察してしまいます。現実との折り合いをつけて、冷静になろうとつとめました。

 

手がかりを追っていくと、大きな湖にたどり着きました。えぐられた地面も撒き散らされた泡の量も比にならないくらい増えています。

 

 

 

「……やはり、泡のやつを追っているんじゃないか?」

 

「キングコブラさんもそう思う?私もそう思ってたんだー」

 

「どういうことなのだ?」

 

「セルリアンはフレンズを狙う習性があるだろう?この泡がフレンズの出したものだとすれば、セルリアンが追跡していてもおかしくはないだろう」

 

「そうなのかー?」

 

 

 

泡と土の進行方向が一致していると思ったキングコブラは、そんな可能性を口にしました。フェネックも同じことを思っていたようです。

 

 

 

「わからないな。もしかしたら逆なのかもしれない」

 

「ノヴァさん、どういうことですか?」

 

「フレンズの中にはセルリアンを付け狙うやつもいる…リカオンたちのようにな。…普通、自分が敵わない相手には挑まないし、こんなに大量に泡を出したということは…この泡の持ち主はセルリアンと戦ったのだろう」

 

 

 

水面に浮いた泡をじーっと見つめてノヴァが推測を打ち立てました。先ほどから見てきた泡もありますが、赤い色の泡や、緑や青のものも岸に撒かれています。

 

ノヴァは一つ一つ無意識のうちに触って確かめます。なんでも触って確かめるのは彼女のクセのようです。

 

 

 

「…何だろう。これは…魚の匂いか?…こっちは…刺激物?……じゃあ青いのは…?」

 

「色とりどりできれいなのだ。アライさんにも触らせるのだ!」

 

「…!待てアライサン!青いのはダメだ!」

 

 

 

青い液体に触れた時に、ノヴァは異質なものを感じました。さらさらな白や赤や緑とは違う、強烈な粘度。少量手に取っただけで指から離れないそれは、迂闊に触れば身動きが取れなくなってしまうでしょう。

 

ですが、ノヴァの忠告もむなしく、アライさんはべったりと青い液体に手を突っ込んでいました。

 

 

 

「…お?あれ?取れないのだ…!」

 

「土を巻き込んでこんなに大きく…すごい粘度だな」

 

「うわー全然抜けないねー」

 

 

 

フェネックがアライさんの腰を持って引っ張りますが、手についた粘液が伸びるだけ伸びて取れる気配がしません。周りの土にべったり貼り付いて、抜こうものなら土ごと持って行けと言わんばかりにアライさんを離しません。

 

 

 

「大丈夫か、アライサン」

 

「全然他の泡と違うのだ…」

 

「…そうだな。この青いのだけは別のものだろう」

 

 

 

顔を真っ赤にしてふんばるアライさんを見て、緊張感ないなと微笑むノヴァ。彼女は一応臨戦状態にあったのですが。

 

手慣れた仕草で青い液体の周りの土を掘り起こしてアライさんを自由にしました。

 

 

 

「た、助かったのだ。ありがとうノヴァさん」

 

「礼には及ばないさ。さ、水で土を流してこい」

 

「そうするのだ。…けど、これはこれで面白いのだ!」

 

「へー、ノヴァさんも土を掘るのが上手なんだー」

 

「鉱石を探したりしていたからな」

 

 

 

青い液体と土が混ざって泥の塊に巻き込まれたアライさんの両手。なぜか面白がってくるくる回って遊んでいます。

 

 

 

「…あいつ、本当に緊張感がないな」

 

「そーゆーのも含めてアライさんなんだよー」

 

「一応緊急事態なんですが…」

 

「いいじゃないか、周りに流されないのは確かな自分を持っている証拠だ」

 

「お前も似たようなものだがな、ノヴァ」

 

 

 

少しあきれているキングコブラとリカオン。修羅場を乗り越えてきた二人には、今回の事件は重大なことなんだと直感しているようです。

 

フェネックやノヴァもかつては危険な状況をくぐり抜けてきた者たちですが、心の中の“ぶれない何か”が気持ちを安定させているようでした。

 

 

 

「…何だろうこれ」

 

「?リカオン、何か見つけたのか」

 

「はい、…何でしょうこれ?」

 

「……?」

 

 

 

アライさんが泥の塊を振り回して飛び散った破片から、白いものが見つかりました。小さいですが鋭く尖っていて、爪や牙にも見えます。硬さもあって、それでいて軽い素材でできています。

 

四人が集まって観察しますが、中々にわからない物体です。

 

 

 

「牙か?…にしてはゴツゴツしているな」

 

「爪じゃないですか?…でも、付け根がないですね…」

 

「…これ、骨だよ。骨を削って尖らせてるんだよー」

 

「そういうこともできるのか」

 

 

 

フェネックが材質を見てそう言いました。こんな形の骨は自然にはできませんが、加工すればあり得る形だと。

 

その推理力にも驚きましたが、ノヴァはその技術力にも驚いています。

 

 

 

「…だとすると、すごい技術だぞ、これ。風化させずに、更に強度まで増幅させる加工。この青い液体にどんな効果があるのか知らないが、これの持ち主はヒトに匹敵する知性や技術を持っているのかもしれない」

 

「…お前も相変わらずだな」

 

「……でも、その正体はたぶんセルリアンじゃないですか?たぶん、そのセルリアンの外側を覆っていたのもこれですし」

 

「………………」

 

 

 

その言葉で、うきうきしていたノヴァの表情は一転して沈んでしまいました。心なしか尻尾の熱も引いた気がします。

 

 

 

「…そうだったな。相手がセルリアンじゃ、意志疎通は図れないな」

 

「元気出してノヴァさーん。倒したら一杯取れるよー」

 

「問題はそこじゃないだろ…」

 

「そうですね…。こんな硬い外骨格を持ったセルリアンが相手なんです…。二人とも、無事なんでしょうか…」

 

「おーい、みんなー!手を貸すのだー!フレンズが湖に浮いているのだー! 」

 

 

 

水で洗ったら青い液体は取れたみたいです。アライさんが手を振って呼んでいまいた。何でも、フレンズが湖に浮いているだとか。

 

 

 

「…またか」

 

「はい、オーダー了解しました!」

 

「誰か戦いに巻き込まれたのかなー?」

 

 

 

他の四人も急いでアライさんのところへ急ぎます。デジャヴを感じるノヴァですが、なんだか嫌な予感がしました。泳げない自分が役に立つかはわかりませんが。

 

 

 

「あそこに二人、浮いているのだ!」

 

「…!!ヒグマさんにキンシコウさん!?」

 

「セルリアンに敗れたのか?とにかく助けなければ」

 

「キングコブラさんは泳げるのー?私はダメかなー」

 

「いや、私も泳げない。…ノヴァもダメだろう?」

 

「面目ない。水は苦手だ。体温を失って最悪死んでしまう」

 

「ということは、泳げるのは私と…アライグマさんは?」

 

「ばっちりなのだ!救助に向かうのだ!」

 

 

 

元々泳ぐのは得意だったアライさんと、ヒトの姿になって泳ぐ訓練をしたリカオンがハンターたちの救助に向かいました。他の三人は泳ぐことができないので岸で二人を待ちます。

 

さっきの骨の欠片を片手に、ノヴァはヒグマとキンシコウの様子をじっと観察します。目立った外傷はありませんが、なぜ湖で漂っていたのかわかるものが見当たりません。手練れのはずの二人がこうもあっさり押し退けられるのは、不可解です。

 

 

 

「しっかりするのだ!湖に浮いている場合じゃないのだ!」

 

「うぅ…お…?」

 

「キンシコウさん!一体何があったんですか!?」

 

「んんっ…リカオン…?」

 

 

 

二人がハンターたちを背中から抱いて背泳ぎで岸に引っ張ります。アライさんが引っ張るヒグマは意識レベルがあまり良くないみたいですが、キンシコウはリカオンの動きを阻害しないようにできるくらいにはしっかりしているようです。

 

岸につく頃にはアライさんもリカオンもヘトヘトになっていました。まだ泡の残る畔に大の字になって胸を上下させています。

 

 

 

「大丈夫ー?ハンターさんたち」

 

「え、ええ。なんとか」

 

「外傷はないみたいだな。少し落ち着いてから事情を聞こう」

 

「う…、そうだな…」

 

「ヒグマ、キンシコウ、無事でよかったよ。…二人もお疲れ様」

 

 

 

ノヴァの労いの言葉に二人は親指を立てて気持ちを表します。…ノヴァには伝わらなかったようですが。

 

 

 

「…お久しぶりですね、えっと…」

 

「ノヴァだ。種族不明ということで博士がそう名付けてくれた」

 

「…なぜここに?ゲートは封鎖していたはずですが…」

 

「仲間のピンチには駆けつけるものだろう。…無理を言ってリカオンに通してもらった」

 

「すみません。でも、先輩たちのことが心配で…その時丁度通りかかったノヴァさんが手伝ってくれるということで案内しました」

 

 

 

あくまでキンシコウは感情を表に出さず事情を聞きました。リカオンも素直に命令を破ったことを謝って、二人の身を案じていることを告げます。

 

この信頼関係は、ノヴァが憧れていたヒトの在り方そのものです。実際に目の当たりにして感傷的になるのを感じました。

 

 

 

「ぐ…。…まあ…今回は許してやるよ…」

 

「あまり無茶をするなよ。外傷はないみたいだが、ダメージはあるようだしな」

 

「ヒグマさん、もろに相手の頭突きを食らってしまって…。あのフレンズが助けてくれなかったら今頃どうなっていたか…」

 

「…あのフレンズ?」

 

「……どでかい泡をばらまく、白と紫のフレンズだ…」

 

「!!!」

 

 

 

ヒグマの語ったフレンズの特徴は、アライさんの見た者と一致していました。目の覚める衝撃と同時に、やっぱりなのだとなぜか嬉しくなるアライさん。

 

 

 

「…ダメージをもらって動けなくなったところに、突然大きな泡が飛んできたんだ。その液体を浴びたら足元がすごく滑るようになって…坂道をそのまま滑って湖にドボンさ」

 

「後を追うように私もそのフレンズに飛びかかられて…ヌルヌルにされて湖に放り込まれましてね…」

 

「おおっ!そのフレンズなのだ!アライさんが探しているのはその人なのだ!」

 

 

 

誰に対して悔しがっているのか、ヒグマは面白くなさそうに状況を説明しました。対してキンシコウは恥ずかしそうに視線を下げて小声で言います。

 

 

 

「その後彼女があのセルリアンと戦っていたようですけど…」

 

「ど、どこに行ったのだ!?」

 

「…わからないですね…。まるでおちょくるように攻撃をよけまくって退散していきましたから」

 

「セルリアンはそのフレンズを追っていったのかなー?」

 

「…たぶんな。あいつが来てから一切こっちを見なくなったし」

 

「そうなのかー。でも、探し当ててお助けするのだ!」

 

「よかったじゃないか。目標の二つは同じ場所にいるってことだろう?」

 

 

 

行方がはっきりとはわかりませんでしたが、同じ場所にいるというのなら一石二鳥です。追う手がかりはまだ残っていますので落胆している場合ではありません。

 

 

 

「私たちは奴の追撃に向かうが…あなた達は大丈夫か?介抱が必要か?」

 

「心配、ないさ。お前たちを先陣に立たせては…ハンターの名折れ、だ」

 

「ヒグマさん、無茶しないでください。ノヴァさんの言うとおり休んだ方が」

 

「大丈夫だって言ってるだろ。…未来の後輩に、カッコ悪いところは見せられないだろ…」

 

 

 

立ち上がろうとしましたが、ヒグマの負ったダメージは大きいらしく、お腹を押さえて膝をつきます。リカオンとアライさんが肩を担いでやっと歩けるくらいです。

 

一つ息をついて、ノヴァは口を開きます。

 

 

 

「その話だが、悪いがなかったことにしてくれ。他にやりたいことができたんだ」

 

「……そうか。…でも何で協力してくれるんだ?」

 

「ハンターにはならないが、私はあなたの仲間のつもりだ。仲間の危機に立ち上がるのは当然ではないのか、ヒグマ」

 

 

 

真っ直ぐヒグマの瞳を見つめて心中を打ち明けました。フレンズとして得られた優しさを大切にしていきたいと、ただそれだけですが彼女にはよく伝わったようです。

 

 

 

「…大人しく休んでくれ。あいつは気を利かせて邪魔とは言わないが、正直今のお前は足手まといにしかならない」

 

「ちょっ、キングコブラさん!?」

 

「…いいや、キングコブラの言うとおりだ。今の状態じゃ戦いにならない」

 

 

 

オブラートに包んだ棘のない言葉で説得しようとしたノヴァでしたが、見かねたキングコブラはまざまざと事実を突き付けます。歯に衣着せぬ物言いの方が抑止力になるようです。

 

ヒグマはその場にあぐらをかいて、やるせない顔をしながら言葉を続けました。

 

 

 

「…でも、決して倒そうなんて思うな。今までのセルリアンとはワケが違う」

 

「だが、放置できるものでもないだろう。このまま他のちほーに侵入すれば大惨事だ」

 

「こはんに隣接するちほーのフレンズには、別の班が避難するように言って回ってる。もう一つ別の班には各地の戦いが得意なフレンズに協力を仰いでる。…パーク全体で力を合わせなきゃいけない程の敵なんだ」

 

「…そうなんだー。じゃあ、泡のフレンズを守りながらセルリアンの行き先を見失わないようにすればいいんだねー」

 

「…ああ、それでいい。足止めすらままならないと思うからな」

 

「いよいよもって作戦が動き出すのだ!」

 

 

 

悔しそうな声でアライさん達に後を託しました。本来ならヒグマ自身でやらなければならないことでしたが、あっさり蹴散らされてしまったのには変わりません。負傷者は大人しく休養するのが仕事です。

 

 

 

「…問題はどこで合流するか、だな」

 

「奴らの行った道はさばくちほーにつながっているな。そこで戦力が集まるといいが」

 

「さばくはあまりおすすめできませんね。力を発揮できないフレンズも多い土地柄ですので…」

 

「…その先の区画はどんな場所だ?」

 

「じゃんぐるだ。ホームにしているフレンズも多い場所だな」

 

「…そこがいいな。走力や飛行能力が売りのフレンズには申し訳ないが、寒暖差でやられるよりかはマシだろう」

 

 

 

ノヴァ自身は砂漠こそホームグラウンドですが、日照りの苦手なキングコブラや夜の冷え込みで体力を奪われるフレンズもいると考えました。決戦の舞台としては条件が合いません。

 

ならば戦えるフレンズが多いじゃんぐるの方が適しています。高い木々は機動力を殺してしまいますが、罠をはったりするには適した地形です。

 

 

 

「じゃあ、じゃんぐるちほーで迎え撃つように伝令しておく。…頼んだぞ」

 

「任された。…リカオン、あなたはヒグマとキンシコウと一緒に各地のフレンズの指揮をとってくれ。奴の追跡は私たちで行う」

 

「え、でも…」

 

「大事なのは連携の早さと精密さだ。敵の相手をできる者は大勢いても、戦力を一番いいところに割り振れる者は多くはない。リーダーの手足になって私たちを勝利に導いてくれ」

 

 

 

負傷したヒグマの世話役もお願いなと付け加えて、ノヴァは頭を下げました。

 

戦意の高まっていたリカオンには少し冷たい水でした。ノヴァがそこまで見識の広いフレンズだとは思っていなかったからです。冷静に状況を見て客観的な指示を出す彼女に、ヒグマとは違うリーダーシップを感じずにはいられません。

 

 

 

「ノヴァさん、たいしょーみたいでカッコいいのだ!」

 

「間違いなく王の器さ、ノヴァは。私が見立てたんだから間違いない」

 

「やっぱリーダーのオーラあるよねー。頼りにしてるよー」

 

「よせよ。この中じゃ最年少なんだからな」

 

「生まれもっての才能は年をとっても変わりませんよ?」

 

「キンシコウまで…」

 

 

 

リーダーなんて柄じゃないと言い張るノヴァですが、みんなの言うとおり知恵と勇気を分け与える頼りになるフレンズなのです。降りると言っても聞いてはくれないでしょう。

 

もやもやした表情をしますが、仕方ないかと自分に向かってくすっと笑いました。

 

 

 

「…じゃあ、じゃんぐるで落ち合おう。キンシコウ、この仕事が終わったらプラムを食べにいこう」

 

「…はい!」

 

「ジャムもまた作ろうか、それからパンケーキも…もっと他の料理もやってみたいな」

 

「ふふ、ノヴァさん、楽しそうですね」

 

「大きな仕事が終わった時は“うちあげ”をするものらしいからな。おいしいものをたくさん用意しないと」

 

 

 

みんなでおいしいものを食べながらいろんなことを話すあの空気感がノヴァは気に入っています。自分がジャパリパークの一員であることを実感できる瞬間なのです。

 

約束を覚えていてくれたんだとキンシコウも笑顔で返しました。

 

 

 

「あの雷のフレンズのことも、聞かせてくださいね」

 

「ああ。…あいつの名前はライ。ちょっとトゲのある性格だが…頭のいいやつだよ」

 

 

 

もう少し話したくもありましたが、泡のフレンズのことも心配です。としょかんの時と同じ背を向けて手を振りながら別れを告げました。

 

 

 

「ヒグマさんも無茶しちゃダメだよー」

 

「わかってるさー」

 

「二人を任せたぞー、リカオーン」

 

「了解しましたー」

 

「さあ、出発なのだー!」

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