ジャパリパークのかじやさん   作:Kamadouma

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つながるこころ

 

 

「…これで人数分か」

 

「そうっすね!うわぁーこれは壮観っす!」

 

 

 

遺構の中には様々な“武器”が並べられていました。技師の二人はその光景を見て悦に浸っています。

 

柄の両方に石突きが付けられた長物、一対の手槍や握り込み式の短剣、トゲのついたブラスナックル、それにノヴァの愛刀…。どれも癖の強い武器ばかりです。

 

 

 

「…ほんとにこれで迎撃隊のみなさんは戦えるんすかね?」

 

「戦いのスタイルは前もって聞いているさ。それに合う武器を選んだつもりだ」

 

「…それで、その手に持ってるのは?」

 

「これはまだオモチャだ。もっと時間をかけて精錬しなければ、想定通りの運用はできない」

 

「オモチャを作れるほど余裕があったんすね…」

 

 

 

そして隅で腰を下ろしたノヴァの手には、からくりが仕込まれた武器が握られています。彼女が言うには未完成であるようですが、試作すら行わず形にしてしまう構想力にビーバーは驚いていました。

 

 

 

「…もうそろそろ主役の登場かな」

 

「邪魔するぞ」

 

「あ、みなさん、お揃いっすね」

 

 

 

セルリアンと真正面から当たり、罠へと追い込む役…迎撃隊に抜擢されたフレンズたちが一堂に会しました。

 

ハンターたちのリーダーのヒグマ、その側近のキンシコウ、キングコブラも一目置く実力者のジャガー、蛇の王に何度も挑んで力をつけたフォッサ、実は達人技を持つアクシスジカ。不安定な場所で戦える最大の戦力を集めたつもりです。

 

 

 

「おーすごいね。私にも使える武器はあるかな?」

 

「あなたがジャガーだな?あなたのスタイルにあった武器はこれだ」

 

 

 

ジャガーと初めて顔を合わせたノヴァ。お互いに一目合わせるだけで、死線を潜り抜けてきた強者だと察しました。

 

彼女を知るじゃんぐるのフレンズたちから戦いのスタイルを耳にして、それ用の武器を手渡します。拳での突きが得意となれば、その威力を集中させる武器…軽くて強靭なナックルダスターが適していると思ったのです。

 

 

 

「なんです、これ?本当に武器なんですか?」

 

「ああ、動きを損なわない武器だ。その穴に指をはめて、底の部分を手のひらで押さえながら握るんだ」

 

「…おお、この角ばった部分で殴るんだね。これなら私でも使えそうだね」

 

「…あの黒曜石の拳のように上手くいけばいいが」

 

 

 

さっそくジャガーはナックルダスターをつけてみました。木製の握り手は少し大きめで余裕のある作りでしたが、手に馴染むように凹凸がつけられています。打ち付けられた青い鋼鉄の角柱もぐらつきを見せず、十分な強度を保っています。

 

 

 

「他のみんなにも見合った武器を作ったつもりだ。爪の技が得意なフォッサにはそれに似たブンディを、二つの武器を同時に使えるアクシスジカには一対の手槍を、棒術で戦うキンシコウには鋼の石突きを備えた棍を、…そしてヒグマ。あなたには私の剣を使ってほしい」

 

 

 

それぞれに技師二人の渾身の作品を手渡しました。

 

それはかつてノヴァに挑んできたヒト…ハンターが使っていた武器でした。取り回しを考えた小型の剣、それを二つ持つことで手数を増やした使用法、変幻自在の一撃を可能とする棍、そして体躯の大きな生き物すら肉薄する大剣。全部彼女がその眼で見たヒトの知恵の結晶です。

 

 

 

「すごいな、これ…。水たまりに写ったみたいに自分の顔が見える…」

 

「これ、全部ノヴァの尻尾から作ったのか?」

 

「柄の部分はじゃんぐるの木みたいですけどね」

 

「ビーバーのおかげだね」

 

「いや、オレっちはノヴァさんの指示通りにやっただけで…。構想は全部ノヴァさんがやったんすよ」

 

 

 

「……いいのか?その剣はお前の魂じゃないのか?」

 

「だからだ。この剣が負傷兵に握られたまま戦いに参加できないのは可哀想だ。こいつの魂のありかは私の手ではなくて、戦いの中にある」

 

 

 

新しく作った武器を授けられた四人は興味津々に眺めていますが、ノヴァのトレードマークである大剣の柄を向けられたヒグマはためらいました。

 

彼女自身も重たい武器を使用していますし、この剣を使いこなせなくはないと思っています。ですが、この剣に込められた重みは彼女でも受け止められるかわかりません。動けない自分の替わりに、戦ってほしいという意味なのです。

 

 

 

「…それとも、重いか?」

 

「いいや、…やるさ。さいきょーのお前と、さいきょーのおれ。合わさったら負けるはずないだろ?」

 

「ああ、思う存分使ってくれ。ただ、…必ず返してくれよ。気に入ったなら後で二号を作るから」

 

「任せろ」

 

 

 

柄を強く握って先を天に掲げました。ランプの明かりを照り返して青く輝く剣はまるで御旗です。パークを守るべく団結したフレンズたちの集うべき場所。

 

それを支えるように、続々とノヴァとビーバーの作った武器が天を衝き交わります。棍、双手槍、短剣、鉄拳…同じ志を持った仲間が目指した場所を示すように合わさります。

 

 

 

「…ノヴァも、ビーバーも、他の連中も心は一つだ」

 

「パークを守る、だね」

 

「そう、この作戦にはみんなの思いが巡ってるのさ」

 

「この戦いの先で、私たちはもっと絆を強めてるはずだよ」

 

「…だから、絶対勝ちましょう」

 

 

 

「…ふう。…私の役目はここまでか」

 

「あとは祈るっすよ。…みんなの無事を」

 

 

 

 

 

 

_____________

 

 

 

 

 

 

「の、ノヴァさん!聞いてほしいのだっ!」

 

「?アライサン?どうした慌てて」

 

 

 

自分の役目を終えて天井を見上げて黄昏るノヴァに、騒がしい突風が吹き付けられました。入り口に視線を合わせると、びしょ濡れになったアライさんと…その腕には水色の謎の生き物が抱えられていました。

 

 

 

「…何か見つけたのか?」

 

「違うのだ!ボスが…ラッキービーストがしゃべったのだ!」

 

「えっ」

 

「ほんとっすか!?」

 

「ボスってしゃべれたのか」

 

「うわさでしか聞いたことなかったです」

 

「なんだよ、しゃべれるなら返事くらいしてくれたっていいじゃんか」

 

「ボスにもボスなりの事情があるんだろ」

 

 

 

アライさんが抱えてきた水色の生き物…手がなくて頭と胴体が繋がったそれは、どうやらじゃぱりまんを配給してくれているというラッキービーストだそうです。

 

周りのフレンズの様子から察するに、今までは会話してくれなかったようです。そもそも初めて存在を確認したノヴァにはあまり驚くことでもありませんが。

 

 

 

「…で、その内容は」

 

『それはボクから説明するよ。キミは…』

 

「ノヴァだ。種族不明のノヴァ」

 

『…検索中…検索中…』

 

「…?何か思い出しているのか」

 

 

 

アライさんの腕から飛び出して、ラッキービーストはあぐらをかくノヴァのところまで歩いてきます。

 

明らかに自分たちとは違う発声器官でしゃべる音に少し違和感を覚えながら、ボスの次の言葉を待ちました。

 

 

 

『緊急事態により上位コードを優先。検索を保留』

 

「ボスは難しいことを言うのだ…」

 

「それは別にいい。それより、緊急事態なのはわかっているから、用件を教えてくれ」

 

『みんな、このちほーに大量のサンドスターロウが検出された。急いで避難してほしいんだ』

 

「……それは、例の超巨大セルリアンのことだな?」

 

『そうだよ。危険が及ぶ前に、さばんなちほーを抜けてみなとへ向かって』

 

「……それはできない。あなたが誰に指図されて勧告してきたかはわからないが、私たちは奴を打ち倒してパークの秩序を再生させるんだ」

 

 

 

ノヴァも他のみんなも、覚悟は決まっています。保身的な賢い判断を捨てて、この場に残った者たちなのです。理屈では語れない、ヒトの心がそうさせたのです。

 

 

 

『ダメだよ。戦ったら無事ではすまないよ』

 

「そんなことはわかってます」

 

「でも、そしたら誰があいつを止めるのさ?」

 

「それともパークを見棄てる気なのかい?」

 

「それは絶対イヤだよ」

 

「だから知恵と勇気で危機を乗り越える…それがこのパークを作ったヒトの“ワザ”だろ?」

 

「ヒトに憧れたノヴァさんだから、みんなにヒトの心を教えられたっすよ」

 

 

 

表情の読めない顔をして、ボスは言葉を止めました。サンドスターを検知しているのに、そこに見えるのはヒトの表情。いなくなったはずのヒトの心を伝えるのは、検索してもわからない謎の赤と青のフレンズ。

 

ボスのブレインサーキットはショート寸前でした。フレンズが進化したのか、それともこのゴーグルのフレンズが何者かの手先なのか。その判断はラッキービーストの創造主にしかできません。

 

でも、ボスは次の判断を迷ったりしませんでした。

 

 

 

『わかったよ、ノヴァ。キミとフレンズたちがパークを守りたいというなら、ボクも手伝うよ』

 

「…ありがとう。そして、あなたも仲間だ、ラッキー」

 

 

 

ノヴァはその手でボスの頭を優しく撫で付けました。牙を立てずにものに触るのはもう慣れたものです。

 

 

 

「…やっぱりノヴァさんのところへ持ってきて正解なのだ!」

 

「ところでアライサン、自分の持ち場は大丈夫なのか」

 

「へ?あっ…」

 

 

 

小柄ですいすいと狭い場所を通り抜けられるアライさんは伝令隊に抜擢されました。ノヴァがアライさんに頼んだのは伝令隊の本部と各隊への連絡。重要な伝令があればすぐに出発できる状態でなければなりません。

 

ゴーグルを手で覆って首を横に振るノヴァと、やれやれといった表情でため息をつく迎撃隊。苦笑いをするビーバーはさらに表情を困らせています。

 

 

 

「…まあいい、伝令だ。迎撃隊はいつでも出撃できる、崖の工作と岩の用意が出来次第こっちに連絡を寄越してくれ」

 

『連絡なら任せて。他のラッキービーストに内容を送信して他のフレンズに伝えるよ』

 

「そうしん…?」

 

『そうだね。コウモリたちの超音波みたいに声に出さなくても伝えたいことを伝えられるんだ。それも、パーク中にいるラッキービーストにね』

 

「…それは便利だな。ライにも教えておこう」

 

 

 

手間が省けたと微笑んで頷きました。それと同時に、伝令隊の存在意義が薄れてしまったとも勘づきました。

 

 

 

「へっ、伝令隊はお役御免だな」

 

「がーん!なのだ…」

 

「いや、ラッキーを連れてきてくれたのはアライサン、あなただ。これはあなたの功績だよ」

 

 

 

これはアライさんへのフォロースルーなのか、単純な感謝の言葉なのかは誰も知る由もありません。群れを動かすヒトの心を知れど、誰かの心の中を知ることはノヴァにはまだ早いのですから。

 

 

 

 

 

____________

 

 

 

 

 

 

「…こんなもんかしらね」

 

「うむ、これでいいのです」

 

「まったく、コノハがあたしを呼びつけたと思ったら、崖の上まで加工するなんて。予想外よ」

 

「ライこそ。退路を塞ぐための土砂まで用意するなんて聞いてないのです」

 

 

 

崖の罠の設置に当たっていた工兵隊は中道の工作を終えた後、博士の応援要請に従って崖の上の穴空けを行いました。それと平行して侵入ルート側に土砂の山を築いて崩落させるトラップも完成させました。

 

 

 

「…まあ、いいじゃない。あんたにしてはいい提案だと思うわよ」

 

「完璧な策なのです。あのまま岩運びを続けていたら、攻撃隊の体力が底をついていたのです」

 

「…そうね、そこまで配慮が回ってなかったわ。…けど、少し威力に不安が残るかも」

 

 

 

崖の縁に座る二人の後ろでは、攻撃隊と工兵隊のメンバーが準備運動をしたり身体を休めています。まだ十分に体力を残しているようで、こちらは問題ないでしょう。

 

彼女らの隣には二つの巨大な岩とそれを押し固める土砂、そしてそれを囲うように地面に穴が穿たれています。当初の予定では大小の岩を集めて落とすはずでしたが、博士の提案で整地した時の土砂でかさましをしました。

 

 

 

「土砂でも十分押し流せるのです。ここでとどめを刺す必要はないのですよ」

 

「……相手が相手よ。自称空の王者や無双の狩人を追い払うくらいのノヴァを、倒してしまったのよ?端から常識が通用する相手じゃない…それこそ、いにしえの龍や四神に並ぶ力を持っているはず」

 

「…ノヴァだって、賛成してくれたのです」

 

「あいつはそういう奴だから。誰かの提案を無下にできないし、苦役を強いることを許さないから。…どこまでいっても優しいのよ、あのヒトマニアは」

 

 

 

一応、計画変更の伝令をノヴァに飛ばしたのですが、すぐに帰ってきたハシビロコウが“それで頼む”と伝令を持って帰ってきたのです。迅速で迷いがないノヴァの決断をコノハは快く思っていますが、ライは払拭できない不安を残していました。

 

それは、ノヴァ自身のことです。頂点に君臨するものとしては、あまりに優しすぎると感じています。

 

 

 

「…イネイブラー」

 

「??なんですか、それは」

 

「………………」

 

 

 

ライがこぼした聞きなれない独り言を、博士は聞き逃しませんでした。日々図書館で本や資料を読み漁っていたライは、もはや博士すら及ばない知識を得ているのです。

 

聞き返されて渋い顔をするライは、少し考えてから例を示しました。

 

 

 

「…頑張らないといけないけどもう頑張れない…そんな時は私に全部任せて!…という風に本当は本人がやらなきゃいけないことなのに、ノヴァはその人を助けてしまうのよ」

 

「それはいいことなのです」

 

「本当かしら?…仮にそれがずっと続いて“ノヴァが全部やってくれるからいいや”ってなったら、どうなると思う?」

 

「…それは、だらけてしまうのです」

 

「そうね、その人はノヴァに全てを任せてしまうわ。そしてその人の全てを任されたノヴァはどうなるかしら?」

 

「………………」

 

「間違いなくつぶれてしまうでしょうね。…あたしもこの依存症を知った時に、背筋が震え上がったわよ。間違いなくノヴァのことだって」

 

 

 

ヒトの“いいところ”ばかりに憧れて、それを日々実践しているノヴァ。しかし、ヒトの本質を理解してないのが問題なのです。善の心を持って、その志に殉じていったヒトは数え切れないのです。その裏に潜む自覚のない悪意に喰い殺されたヒトも数知れないのです。

 

ヒトの歴史や心情を学んだ二人は、ノヴァもその一人になるかもしれないと思ってしまうのです。彼女にそんな残酷な運命を歩んでほしくないのは、二人とも同じです。

 

 

 

「…どうすればいいのですか、それは」

 

「知らないわよ。知ってたら、こんな悩むことないじゃない…」

 

 

 

二人の視線は曇天へ放り出されてしまいました。仕事を終えて喜ぶべきなのに、正の感情は雨に流されて憂いが羽毛や鱗に浸透していくようでした。

 

 

 

「…ぬ。どうしたんだ博士、それにライ。何をそんなにしょぼくれているのだ」

 

「…別に」

 

「…さて、そろそろハシビロコウがノヴァのところに着く頃なのです。我々の出番ももうじきなのです」

 

 

 

リーダー二人の落ち込んだ背中を見て、へいげんの双頭の一人…ヘラジカが声をかけました。おおざっぱで短絡的な彼女ですが、感情の機微には鋭いようです。

 

相変わらずライはそっけない反応しかしませんでした。心の中を覗かれたようであまりいい気はしてません。

 

逆に博士は現実に戻されたようにはっとして、この上がってきた空気を壊すまいと鼓舞します。

 

 

 

「そうだな。雨で冷えないように身体を動かしておくぞ」

 

「あまり夢中になって体力を使い果たさないようにするのですよ」

 

「わかってるさ」

 

 

 

少し部隊が暇をもて余しているようです。とはいえ余興のできるフレンズはこの中にはいそうにないです。博士が談話しようにも、理解してくれるのはたぶんライだけでしょう。

 

 

 

「タイリクオオカミでもいれば暇潰しの話でもできたのですが」

 

「博士博士ー。何だかボスがじゃぱりまんをいっぱい持ってきたよー」

 

「?」

 

 

 

ヘラジカの後ろから、いつもアライさんの露払いをしているフェネックが顔を出しました。その足元にはお盆に大量のじゃぱりまんを乗せたラッキービーストが二人います。

 

 

 

「まだ配給の時間じゃないはずなのですが」

 

『緊急事態により、みんなにじゃぱりまんを配ってるよ』

 

「!!?ラッキービーストがしゃべった!!?」

 

「わーほんとだー」

 

「珍しいこともあるのだな」

 

「…そうなの?てか、その声…スピーカー…?」

 

『あと、ノヴァと迎撃隊から伝言を預かってるよ』

 

 

 

博士は驚愕しています。ラッキービーストがしゃべるのは“ヒト”だけ…パーク中を調べた結果が簡単に覆ってしまったのですから。

 

元々感情を表に出さないフェネックは白々しい反応で、肝っ玉の据わったヘラジカも似たような反応。視線を合わせたライは無反応で、どちらかといえば音源に興味を持ったようです。

 

ボスはそのまま言葉を続けました。

 

 

 

『迎撃隊はいつでも出撃できる、崖の工作と岩の用意が出来次第こっちに連絡を寄越してくれ、だそうだよ。もうこっちのチームの準備はできているのかな?』

 

「こっちも準備はオーケーなのです。伝令をノヴァのところに送ったのですが」

 

『タイムラグは少ない方がいいね。直接ノヴァのところと繋げるね』

 

「…?繋げる?」

 

『通話装置を起動するよ。あっちにいるボクが拾った音をボクがみんなに聞かせるよ』

 

「そ、それって…でんわ!?」

 

 

 

食い付いてきたのはライでした。松葉杖で立ち上がってボスの目の前まで詰め寄ります。

 

 

 

『そうだね、電話の機能だね』

 

「なんでそんなもの持ってるのよ!ヒトが作り出した“機械”…その最たるものを!」

 

『物知りだね、キミは…』

 

「…ライよ。ノヴァから聞いてないの?」

 

『キミがライだね。ん、あっちと繋がったみたいだね、応答するよ』

 

「ちょっ、まだ話は終わってないって!」

 

 

 

ライの声もむなしく、ボスは眼を緑に光らせて会話を終了しました。その代わりにどこからか環境音が鳴り始めます。

 

 

 

『本当にこれであっちとしゃべれるのか』

 

「本当にノヴァの声なのです…!」

 

『博士か?私の声が聞こえるか?』

 

「ええ、聞こえてるわ、ノヴァ」

 

『ライも一緒なのだな。丁度いい』

 

 

 

ボスから聞こえてきたのはぐぐもっていますが確かにノヴァの声でした。

 

 

 

『手短に用件だけ言うぞ、陽動隊をもうそろそろ休ませたい。迎撃隊の準備はできた。今からそっちに向かうから陽動隊に伝令を飛ばしてほしい』

 

「了解よ。そっちにハシビロコウが向かったと思うけど、合流したら一緒に連れてきて。伝令はこっちで送るわ」

 

『任せたぞ、ライ』

 

「ええ、そうね。…あまり無茶しないでよ?」

 

 

 

首をブンブン振ってライは平静を取り戻しました。驚いている暇はないのです。その上、向こうのノヴァも平然としているので自分だけ狼狽えるのは悔しいと思っています。

 

すでにノヴァは行動に出ていたようです。さすがねと思いつつも、敵に回したくないなとも思ってしまいます。

 

通信が終わってボスの眼は消灯しました。目の前に座っているライに視線を合わせてしゃべり始めます。

 

 

 

『通話を終了したよ。…さて、ライ。質問の続きを聞くよ』

 

「…多過ぎて絞れないわよ。これからあいつらも来るんだから、暇でもないのよ」

 

『そうだね。じゃあ、今じゃんぐるで戦ってるフレンズの近くにいるボクをさしむけるよ。予定時間は3分だね』

 

「…お願いするわ。あと、ミミたちが使ってるインターセクションの詰所にも一人向かわせて」

 

『わかったよ』

 

 

 

ライの頭の中では既にこの後の流れが思い描けています。ボスが協力してくれるのは予定外でしたが、冷静に手順を簡略化して最適な方法を打ち出しました。

 

 

 

「…でも、とんでもないわね。…伝令の時差を無くせるなんて、戦いの根本がひっくり返ってしまうわ。…ラッキービーストには逆らわない方がいいわね」

 

「?ライどうしたのです?誰かにこびへつらうなんてお前らしくないのです」

 

「うるさいわね。この通信機能にどれだけ価値があると思ってるのよ」

 

「遠くのフレンズと会話できるはわかっているのです。…でも、それほど怯えるものなのですか?」

 

「…いいわよ。わからないなら」

 

 

 

ヒトが強かった理由を知るライだからこそ、その恐ろしさを手にしていることに震えているのです。たぶん、ノヴァも同じことを思っているのでしょう。

 

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