「さて、どうしたものか」
博士が先ほど持ってきた物資のほとんどが食材でした。見慣れない果実や栄養を蓄えた根菜、葉物もあります。その他にもヒトが作ったであろう木の皮の器に白い粉が入っていたり、透明なガラス状の器に黒い液体が入っていたりします。
料理をするための場所ということで案内された所には、石で作られた大きな穴の空いた台と平らにされた木の台が置いてあります。
「…助手」
「文字は私が読んでやるのです。ノヴァは写真から直感で作りたい料理を選ぶのです」
「……それでいいのか?この食材から何が作れるのか見当もつかないのだが」
ノヴァのとなりで助手が料理本のページをめくっています。彼女がノヴァのサポートをしてくれるようです。しかし頭が働いているのかいないのか、ただただページをめくっているようにしか見えませんでした。料理を早く食べたいという欲求が助手の思考をおかしくしているのでしょうか。
ほとほと困ったノヴァも、料理本の一つを手にして目を通します。
「初めてやるんだ、なるべく行程が少なくて簡単なものにしよう」
全体を見渡して載っている写真の少ない料理を探します。
「簡単なもの……」
ページ数が少なくて、何からできたものかわかりやすいもの。そう考えてページを送りますが、条件に引っ掛かる料理はなかなか出てきません。
「こういうの、やっぱり苦手だ…」
「頭の良さというのにも種類があるようですね。何かを作り出す力と何かを理解する力は別物なのでしょう」
「…そうみたいだ。助手、あなたが食べたいものを選んでくれ」
「そうするのです。完全に日が落ちるまで待たせては、博士が空腹で倒れてしまうのです」
じゅるりと音を何度も鳴らしながら、助手は料理本のページを行ったり来たりします。
葛藤はあったようですが、助手はズバッと決めたようです。
「これにするのです」
「……これは?」
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「…本を読んでいたのですか」
「この身体じゃ満足に動けないもの。その辺にある本を勝手に読ませてもらったわ」
としょかんのソファに寝そべりながら、ライは何かの図鑑を読んでいました。夕暮れで薄暗いですが、とさかが電気で発光して文字や写真がはっきり映ります。
博士は明日の準備を終えたようで、ライの方に近寄ります。
「字はわかるのですか?」
「そこにある五十音表を使わせてもらったわ。あとこの辞書も」
「……それだけでわかるものなのですか?」
「ええ、知っている言葉から読み方を逆算すれば何となくね」
博士はどうしてもライへの違和感を拭えませんでした。まるでヒトの持つ複雑な思考回路をそのまま移植したような性格。驚異的なスピードで学習していく知能。ノヴァも頭のいいフレンズだと思いましたが、ライはそれ以上なのかもしれません。
…彼女の正体を知るのは必須だと、改めて確信しました。パークに新しい風を吹き込む存在かもしれませんが、それが災厄を撒き散らす風になるかもしれませんので。
「勉強もよいのですが、ちゃんと体力を整えておくのですよ。明日手術なので」
「わかってるわよ。食事が終わったらすぐ寝るから」
「夜更かしはダメなのですよ、夜行性でもないのに」
こんなにビカビカ光る生き物は夜に生きるのに向きません。自分の位置を示しているようなものです。
ですが、その雷の力は絶大です。電気ナマズのように水に電気を這わせることができる生き物は知っていますが、空気に放電したりあまつさえ電気を身体に蓄えるなど考えもしませんでした。
雷というワードから博士は昨日の大雨を思い出して、なぜライが漂流してしまったのかを聞きたくなりました。
「ところで、お前はなぜ湖で流木に掴まっていたのです?」
「………………」
「言いたくないことなのですか?」
「…いや、話しておくわ。あの夜のこと」
「あたしが電の竜として終わったのは霞のかかった夜の森だったわ」
「竜…?…お前は、竜だったのですか?」
「この図鑑には載っていないけど。…でもこの翼竜に似た行動をとっていたと思うわ」
「……なるほど」
「その時は特別視界が悪くて、さっさと巣に帰ろうと飛んでいたんだけど…気づいたら叩き落とされて足を折ってしまったのよ」
「誰に、ですか?」
「わからない。だって、そこに誰もいなかったもの」
「ますます訳がわからないのです」
「それで途中で意識が途絶えて…そうしたらあの湖に流されていたわ」
「いきさつが跳躍しすぎて理解が及ばないのです」
「あたしもそうよ。訳のわからないまま死にかけて、今ここにいるんだもの」
「ですが、ヒントは得られました。お前が翼竜に近い生き物だったとわかっただけで収穫はあったのです」
つじつまの合わない話に首をかしげながらも、知りたい情報の断片を得られたので満足しました。焦る必要はありません。それを全て知るには時間と考察が必要なのですから。
「さて、助手とノヴァの様子を見てくるのです」
「料理、か。どんなものなのかしらね」
「未知への挑戦なのですよ」
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「助手、指は曲げて拳で押さえるんだ。でないと指を切ってしまう」
「こう、なのですか?」
「そうだそうだ。刃物を使う時は自分をケガさせないのが一番大切だ」
ノヴァが助手の後ろに回って、調理器具の中にあった包丁のレクチャーをしています。ほぼ密着していますが、二人とも料理に集中していて意識していません。
「種は取り出して、実をある程度細かくする、だったな」
「こっちは私に任せるのです。ノヴァは火の準備をするのです」
「ああ、そうだな。すぐできると思うから、それを切り終わったら粉の用意を頼む」
「任せるのです」
二人とも自分にできることを理解して分担を徹底しています。
穴の空いた石の台の中に木片を積み上げて、口から燃えるすすと熱い息を吹き出すノヴァ。火の広げ方は前から知っています。
プラムを細かく切り終わった助手も、ボウルに入れて次の作業に取りかかりました。単純で細分化された作業なら彼女にも十分できます。
「この粉と適量の水と、こちらの粉も加えて…だまがなくなるまで混ぜる、と。これで本当にできるのですか?」
「さあな。ヒトの作ったものだから、理屈もわからない。けど、その粉は間違いなくその絵の“それ”なんだろう」
「…騙されたと思ってやるしかなさそうなのです」
「さて、こっちも温まってきたな。切った果物と、この粉を一緒に火にかけるのだな」
助手はもう一つのボウルに白っぽい粉と水ともう一種類の粉を入れて、ヘラのようなものでかき混ぜます。持ち方が上手ではないのでぎこちないです。
一方のノヴァは鍋を石の台の網に乗せて熱を帯びるのを待っていました。
「…しかし、すごいものだな。この“ほうちょう”といい、この“なべ”といい…こんなに美しく形を作れるなんて」
「その道具を作るための道具を作っていたのですよ。それを作っておけば後から簡単に作り直せますので」
「…なるほどな。私も、そういうものを作りたいものだ」
やはりヒトには敵わないな、と嬉しそうにため息をつくと、果物と助手が指定した粉を鍋に入れました。
ジュー、と心地よい音をならしてプラムが水分を出して煮詰まっていきます。甘い香りが調理場に広がってノヴァも助手もうっとりしました。
「…おっといけない、かき混ぜないと」
「焦げる、のですね。…焦げるとはどういう現象なのですか?」
「もう焼けないくらいにまで火で炙られた状態だ。食べると苦い」
「それはいけませんね。苦いのはおいしくないのです」
助手はそう言いますが、ノヴァは焦がした風味が嫌いではありません。手順の手前やりはしませんが。
木のヘラで念入りに混ぜて焦げを防ぎながら、果汁がゼラチン質になる様子を見届けます。横で粉のペーストをグリグリ混ぜる助手も、そちらから視線を外せません。
「…おお、すごいな。本当にハチミツみたいになった」
「“じゃむ”という食品なのです。保存が効くのでこの後も食べたい時に食べられるのですよ」
「…助手、粉が跳ねている」
「あら、いつの間に」
ノヴァの料理に夢中で、ボウルから粉のペーストが顔に跳ねたのに気付いてなかったようです。ノヴァは傷つけないようにそっと指で拭いました。
それを熱い息で吹いてやると、ジャムとは違う甘くて香ばしい香りが鼻をくすぐります。
「こっちもすごい。こんなにふくらんだ」
「混ぜ具合もいいようですね。じゃむをお皿に移してふらいぱんを火にかけるのです」
「わかった。けどその前に」
先ほどのペーストを焼いたものに、木のヘラについたジャムを少しつけました。それを助手に差し出します。
「あじみ、というのだろう。料理する者が味を確認するという」
「…こほん。では、遠慮なく」
助手はノヴァの指先の料理を、指ごとぱくり。変な刺激が背筋まで走ってビクッとするノヴァでしたが、なぜかはわかっていないようです。
「…さくさくで、甘くて、少しだけすっぱい……うまいのです…!」
「さくさく?…それであってるのか?」
「わからないのです。ふかふかと本には書かれているのですが。…でも今の一口は、至福の時だったのです」
「まあ、気に入ってくれて何よりだ」
ぎこちない笑顔を作る合間にも、鍋にできたジャムを小皿に移し終わっています。
てきぱきとジャムを作った道具を片付けて、フライパンを網にかけました。なにも中に入れていないのですが、ノヴァはフライパンを凝視します。
「…ノヴァ、どうしたのですか?」
「いいや、この浅いなべ…表面にすごくいい研磨剤を使ってる」
「??」
「これなら効率よく武器を磨げるんだろうな」
「…よくわからないのですが、ふらいぱんには食べ物がくっつかないように表面を特別な加工しているとあります」
「特別な加工、か」
もしかしたら切れ味が落ちづらくなる加工とかも知っているのかも、とノヴァの期待は高まります。気づけば熱したフライパンを直に触っていました。
「…熱の伝導もいい。 ああ、どうなっているのだろうなこれ」
「熱くないのですか?私はここでも空気が熱いのです」
「溶岩に足を突っ込むよりは熱くないさ」
助手は遠巻きからノヴァの異様な行動を冷静に観察しています。火をおこして、よもや火を触りにいく生き物がどこにいるのでしょうか。
温度が頃合いになったと見て、ノヴァは助手から預かったペーストをフライパンに流しこみました。丸く形が整うようにフライパンを傾けて、じっとペーストを見ます。
「表面からふつふつと気泡が出てきたらひっくり返すのです。その頃には底が固まっているので」
「わかった」
フライパンからは香ばしい甘い香りが広がり、元は肉食だったノヴァでも味覚が味を期待してしまいます。
「ああ、これは身体に毒だな。あとこれを四回もやらされるなんて」
「空腹は最高のすぱいすなのですよ。餓狼の気持ちで期待して待っているのです」
助手の言ったとおり表面から気泡がふつふつと出てきたので、薄い金属のヘラで底をすくい…
「あっ」
料理はヘラから滑り落ちて、そのまま地面に…
「おっと危ない」
…地面には落ちませんでした。金属質なノヴァの尻尾のみねで受け止めて、その熱を尻尾に伝えます。
「やってしまったのですねノヴァ」
「ああ、これは責任を持って私が食べるよ。鉄くさくなっているだろうし」
「…何だか尻尾の上でも焼けているように見えるのです」
「この身体になってから自然に尻尾を擦る姿勢になってしまってな。ずっと熱を持ったままなんだ」
ノヴァの長い尻尾はいつでも地面を刻んでその摩擦熱を蓄えています。助手が興味本位でそっと触りますが、あまりの熱さにすぐ手を離してしまいます。
「あつっ!熱いのですっ!」
「大丈夫か?擦った時の熱もバカにできないだろう」
「…全身火の玉なのですね」
尻尾で器用にフライパンの上に戻すと、刃に触れた部分が黒く焦げていました。頭の後ろをかいて、ノヴァは大皿に料理を乗せます。
「次は失敗しないように気を付けるさ」
「お願いするですよ。火を扱えるのはお前しかいないのですから」
「な、ななな、なんてことですか」
「わ、私にすらくってかかるような助手が、楽しそうにいちゃいちゃしながら一緒に料理を作っているのです」
「ノヴァ、あなたも災厄の炎を振り撒く存在なのですかぁー!」
_____________
「待たせたな。コノハ博士、ライ」
「とっておきの料理が出来上がったのです」
両手に皿を持ったノヴァと助手が建物の中に入ってきました。椅子に座って落ち着かない様子で足をブラブラさせていた博士は、怪訝な顔をして二人に言葉を返しました。
「料理は楽しかったですか?ノヴァ、助手」
「ああ。ヒトの営みに触れることができてすごくためになった」
「新しい発見ばかりだったのです。手探りでもの作りをするのは、まさに未知の冒険だったのです」
「仲がいいのね、ミミとノヴァは」
ライの一言で少しむっとする博士ですが、漂う甘い香りで怒りなど吹き飛んでしまいました。
机に皿を乗せて、ノヴァと助手も着席します。
「…暗いな。少し遅くなってしまった」
「我々は夜目が効くので大丈夫なのですが、ノヴァは夜は苦手なのですか?」
「そうでもないんだが…。だいたい夜活動する時は周りに火をつけるから、それがないと不安だ」
「うわ、はた迷惑…。あの火を吹くチキン野郎みたい」
「あんなへなちょこと一緒にしないでもらえるか」
なかなかの毒舌に少しむっとしたノヴァでしたが、相手がけが人なので自重します。獰猛さが残っていたなら尻尾を降り下ろしていたことでしょう。
共通の認識を持たない博士と助手は首をひねりますが、共通の認識を持つという事柄からある推測を思いつきました。
「もしかしてノヴァとライは、同じ時代の生き物なのですか?」
「時代?」
「ジャパリパークでは絶滅したはずの動物も、フレンズになって過ごしているのです。化石や何らかのサンプルがサンドスターに反応するのです」
「…理屈はわかったけど、火を吹くやつはあのチキン野郎と耳デカと岩の竜くらいしか知らない。ノヴァみたいに剣みたいな尻尾をぶんぶん振り回すやつは、あたしの縄張りにはいなかったわ」
「私もだ。雷を放つのは金色の猿と狼のやつくらいしか知らないな。緑の雷は初めてだ」
「あ、でも金色の猿は知ってるわね。あいつだけは関わらないようにしてた」
「そうあるべきだ。威嚇と攻撃がほぼ同時だからな、あいつ」
「やってられないわよ…。爪を一本折られちゃったりしたし」
「私だってせっかく研いだ尻尾を欠けさせられた。……共通の敵はいたようだな」
愚痴で盛り上がる二人についていけない博士助手。ですが、“金色の猿”という共通の天敵がいるということはかなり近い時代に生きていた生物と推測できます。
金色の猿と聞いてキンシコウを想像しますが、彼女が雷を纏ってノヴァやライを蹴散らす姿はまるで想像できません。
「まあ、いいや。明かりならそこにランプがあるわよ。火をつければいいじゃない」
「らんぷ?」
ライが棚の上に乱雑に置かれたガラスの置物を指さします。ノヴァが立ち上がってそれを手に取ります。
「人間どもが夜に使ってた道具よ。その中の火種に着火すれば安全に明かりにできるんだって。火種が何なのかは知らないけど」
「…ああ、確かに。この白いのは火がつくやつだ」
「…まずいのです博士。島の長として、森の賢者としてのアイデンティティが奪われかけているのです」
「どちらもヒトの文明を象徴するエネルギーを操る生き物なので、知能もものすごく高いということなのです…たぶん。自然とは時に残酷なものなのです」
ノヴァはさっそくランプのロウソクに火をつけて机に戻ってきました。
暖かい火の光が四人を照らして、皿の上の料理もはっきりと全貌が見えます。
「さて、雑談で盛り上がっていたけど、冷めない内に食べよう」
「ノヴァ、これは…?」
「ぱんけーき、というらしい。そして横に付け合わせたのがプラムのじゃむだ」
焼き色のついた真ん丸な生地を、博士とライは凝視します。顔を近付けるほど鼻腔をくすぐる甘い香りが際立ちうっとり。
「ないふとふぉーくで食べるようです、博士」
「この金属の道具ね。…私が持ったら通電しちゃうわ」
ライのグローブの指先には黄緑の爪がついていて、常に電気を帯びています。尻尾を掴まれたらビリビリするのだろうな、とノヴァは背筋を無意識に立てます。
「ならこっちのじゅし製のを使うのです。電気を通さないと思うので」
「じゅし…?なにこれ…?」
「よくわかっていないのですが、ヒトはこれでありとあらゆる形を作っていたそうです」
助手がノヴァの使うはずだったナイフとフォークをライに渡します。それは確かに通電させることなくライの手に収まります。
「軽い…。それに硬い」
「…それも材料に欲しいな」
「これは難しいのです。それの材料は“せきゆ”に由来するもので、この島では取れないものなのです」
「そうか…」
残念がるノヴァを尻目に、今にもパンケーキにかぶり付きそうな博士。もうご託はいいのでさっさと食わせろなのです、と目が言っています。
「…もう博士が辛抱たまらないようだ。いただくとしよう」
「ないふで切って、じゃむを塗って食べるのですよ」
「で、では…」
「全ての生命に感謝して、いただきます」
「??何を言っているの?ノヴァ」
ノヴァは両手を前で合わせてまぶたを閉じて一言。ライには少し不気味に聞こえました。
「この果物を実らせた木だって生きている。この粉や道具を作ったヒトも生きていた。そして、それを私たちが食べる。感謝の一つもしないと申し訳が立たないだろう」
「…ヒトの世にあった宗教という概念に近い考え方なのです。ノヴァがさっき意味を教えてくれと聞いてきたので教えてたのです」
「…バカバカしい考えね。全ての生命は誰かに破壊されるためにあるのよ」
「ライ、それも正解なのですが…。今は早く食わせろなのです」
我慢の限界にきた博士はフォークで一突きしてかぶり付きました。ナイフを持つ意味がありません。
「…どうかな、博士」
「………………」
パンケーキを凝視して咀嚼を続けます。
「………………」
「………………感激なのです!温かくて、ふわふわで、ほんのり甘くて…これを美味、というのですね!」
ノヴァはその一言を聞いてほっとしました。そしてなぜか同時に嬉しくなります。ゴーグルの下の表情も緩みます。
「どれどれ…あたしも……」
すーっとナイフで端を切り取って、ジャムをつけてから口に運びます。
「どうです?ライ」
「………………」
「??どうしたのです?」
視線を下げて何かをこらえる様子のライ。助手が不安がって前のめりになりますが、状況が掴めません。
「…こ、…こんな美味しい食べ物…初めて……」
「な、泣いているのですか?」
「大きな草食竜の一番いい部分を食べても、味なんてないようなものだったのに…。…何でかな、仲間が作ってくれたから…?」
意外すぎる反応に博士も助手もノヴァも困惑しています。
「どうやらあの記載は事実だったようですね。みんなで食卓を囲んでとる食事はおいしく感じられると」
「そういうものなのか」
「そういうものなのです。楽しさと美味しさは相乗効果なのです」
試してみたくなって、ノヴァもパンケーキを切ってジャムと一緒にほお張りました。
若干焦げくさいのと鉄の味がするのを除けば、芳醇な甘い香りと甘酸っぱい濃厚な味が楽しめました。自分が食べてきたどの食べ物よりもおいしいと感じたのは確かです。
でも一番心を躍らせたのは、これを自分と助手で作り上げたということです。フレンズになってよかった、もの作りはこんなに楽しいんだ、仲間がいるってうれしいことなんだ、と心の底からこの幸運に感謝しました。
「…悪くない、な」
「これからもよろしくお願いしますね、ノヴァ」
「ああ、助手。一緒にいいものを作っていこう」