ジャパリパークのかじやさん   作:Kamadouma

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へびのおうとあおいほうけん

 

「まずはこのジャパリパークがどんな場所かを身をもって勉強してくるのです」

 

「我々が“製鉄”や“義肢”について調査しておくので」

 

 

 

手術の翌日。博士と助手は最初の仕事をノヴァに伝えました。

 

それは、ジャパリパークを知るべし、と。

 

 

 

「…その真意は?」

 

「ここにいてもお前は料理しかやることがないのです」

 

「我々はそれでもよかったのですが。作成の段取りが決まれば、恐らく素材を集めるためにパーク中を行き来するので。土地勘を身につけるのです」

 

「なるほど」

 

 

 

ノヴァも元々は刃を研ぐ石を求めて遠征する種族です。砂漠や火山を徘徊していた時期もありましたので、縄張りを出ることにそこまで抵抗はありません。

 

納得した様子のノヴァが立ち上がると、背後から誰かが迫るのを感じます。もう剣を抜く仕草をとらないくらいには慣れましたが。

 

ゆっくり振り返ると、キングコブラがそこにいました。

 

 

 

「お帰りですか、キングコブラ」

 

「体調が整ったので私は帰らせてもらうぞ。あと、ノヴァの“りょうり”、すごくおいしかった」

 

「それはどうも」

 

 

 

強面のキングコブラも、最高のおもてなしをしてくれたノヴァにはいい笑顔を見せました。

 

昨日のお昼は、ぜんざいを作りました。豆と砂糖を入れて煮て、もち米を蒸して…。うすときねは見当たらなかったのですりばちで地道についていきました。

 

博士と助手、ライとキングコブラも甘くて温かいぜんざいに満足して、手術後の重い空気はどこかへ飛んでいきました。お互いに打ち解け合い、いろいろなことをしゃべって楽しい時間を過ごしたのです。

 

 

 

「そうですねぇ…キングコブラ」

 

「なんだ?」

 

「じゃんぐるちほーに帰るまで、ノヴァを一緒に連れていくのです」

 

「……それは命令か?」

 

「もちろんなのです。ノヴァの性格なら各ちほーのフレンズとトラブルを起こすとは考えられませんが、一応後見人が欲しいのです」

 

「…案外信用されていないのか、私」

 

 

 

博士が信用しきっていないと知り、少し肩を落とすノヴァ。悲しい気持ちになるのは初めてでした。

 

 

 

「いいだろう。道案内がてら親睦を深めるのも」

 

「お願いするのです」

 

「ノヴァ、ちゃんとキングコブラのいうことを聞くのですよ」

 

 

 

子供のように扱われて少し腹が立ちましたが、実際そうです。ノヴァはまだこの地で生を受けて一月も経っていない子供なのです。

 

いまいち納得のいかないノヴァは首をかしげて渋い顔をします。その背後から這うようにキングコブラが絡んでくるのにも気付かず…。

 

 

 

「そうだぞ。秩序を乱す者は王として制裁を与えてなければならない」

 

「…!」

 

 

 

手足をノヴァの肢体に絡めて、首元に毒針を仕込んだ指を突き立てます。キングコブラの長い尻尾もノヴァの足に絡み付いてがっちり動きを封じます。

 

何だかなまめかしい二人の絡み合いを目の当たりにした博士と助手は、少し顔を赤らめました。

 

耳元でささやくように忠告をすると、ノヴァのゴーグルがくもって表情がわからなくなりました。

 

 

 

「遺憾だが、心得た」

 

 

 

ジュッ

 

 

 

「あつっ!」

 

 

 

赤熱した尻尾はフリーでした。器用にねじって曲げて、一瞬だけみねをキングコブラの背中にあてます。その短時間でも服の上から熱を伝えるには十分でした。

 

真昼の砂漠の地面すらぬるく感じる灼熱の刃で触れられ、キングコブラはすぐさま身を引きました。同時にこのフレンズが自分すら及ばない強者であると認識します。

 

 

 

「だが覚えていてほしい。私という生き物が外敵を滅ぼすことに特化した者であることを。もし我を忘れて暴れたら、辺り一面火の海になってしまう」

 

「…わかった。気を付けよう」

 

「私も理性的に振る舞うようにするが…このように挑発されたら抑えられるかわからない」

 

 

 

改めてノヴァという生き物の凶暴さを認識する博士。身体に込められた炎は文明の象徴ではなく、噴火のような破壊の象徴。これを自ら纏うというのは、外敵を燃やし尽くすという意識の表れ。

 

ノヴァが知性で本来の姿を押し留めているだけであって、一度暴れ出したら災厄の炎がパークを不毛の地に変えてしまうでしょう。

 

 

 

「そうならないようにお願いするのです。お前がヒトに憧れるのであれば、自然との調和を考えられるようになるべきなのです」

 

「…自然との、調和?」

 

「かつてヒトは、過剰に増えた種族の数を減らしたり、滅びそうな種族を保護したりして生き物の力のバランスを保とうとしていたのです」

 

「増えすぎたり悪さする種族を淘汰する者はハンターと呼ばれたのです。そう、ヒグマやキンシコウはフレンズを守るだけではなく、セルリアンの数を調整しパークの力のバランスが崩れないようにしているのです」

 

 

 

キングコブラはその意味が伝わらなかったようですが、ノヴァには身に覚えがあります。

 

なぜなら、かつて自分が淘汰されたからです。それも、ヒトによって。

 

 

 

「…ははは。なるほどな。どうりで」

 

「意味がわかるのか?ノヴァ」

 

「ああ、痛いほどに。実際にハンターに淘汰されてみて、ようやくわかった」

 

「…では、前の姿の時はハンター…ヒトに狩られたのですね」

 

「そうだ。新しい鉱石で研いだ刃を試したくて、辺りにいた奴らを片っ端から斬り捨てた。そうしたら、今度は私が斬り捨てられた。…悪逆の刃は支配者の剣の前に折られたんだ」

 

 

 

ようやく長く悩まされていた謎が解けて、満足そうな顔をしています。なぜ自分が討伐されたのか。ヒトが見つけた世界の仕組みに触れられて、それを理解し実践できる力を得られて。

 

これからの自分が可能性に祝福されていることを噛みしめて、ゴーグルの奥の青い瞳に静かな炎を爛々と輝かせています。

 

 

 

「…つまりは、正義が勝つ、ということだろう?」

 

「大分かいつまんでいますが…だいたいはあっているのです」

 

「大切なのは、何が正義かを間違えないことなのです。キングコブラ、お前の王としての眼で判断するのですよ」

 

 

自然との調和という概念をキングコブラは理解できませんでしたが、自然に反する逆賊は討たれるべきという理念は彼女の中に息づいています。それは王の名前を持つ者の使命でもあるのです。

 

 

 

「ああ。任せてくれ」

 

「ではノヴァのことをお願いするのです」

 

「準備ができたらとっとと行くのです。ライが目覚めてしまうと面倒なことになるので」

 

「わかった。…ライの世話を頼んだぞ」

 

「任せるのです」

 

 

 

 

 

 

_____________

 

 

 

 

 

 

ライにはとしょかんを出ることを告げずに、キングコブラと一緒に旅路につきました。

 

 

というのも、昨日のライはやたらとノヴァに絡んできて

 

“責任取りなさいよね”

 

“逃げたら許さないんだから”

 

…と、依存のような言葉を浴びせてきました。そして隣に座ったノヴァにべったりくっついて、電気を流してくるのです。

 

 

もちろん彼女の義肢を作ることから逃げるつもりはありませんが、何と言葉をかけていいかわからず困り果てていました。助手や博士が助け船を出そうとしても、電気をバリバリ放たれては本能が怯えてしまいます。

 

対処方がわからない以上、避けるしかありません。ライには悪いと思いつつも、自分ではどうしようもならないと逃げるようにここまできたのです。

 

 

 

「…何でだろうな」

 

「ノヴァが優れた者だからだろう。屈強で頭もいい、それに性格も実直ないい奴だ。本能的に惹かれるのだろう」

 

「あいつ、自分の親の顔すら見たことないと言っていたな…。甘え方を知らないのかもしれないな」

 

 

 

とぼとぼとしんりんちほーの出口まで歩くノヴァとキングコブラ。この先はへいげんちほーに入ります。

 

 

 

「キングコブラ、あなたが住んでいるじゃんぐるちほーまではどれくらいかかる?」

 

「私のペースで2日だな。助手に連れられた時は半日もかからなかったが」

 

「空を飛ぶというのは便利なものだな」

 

 

 

でも、自身は高いところはあまり好きではないので遠慮しておこうと思いました。ノヴァの脚力は重さを支えるのに特化していて、がけを登ったり坂を上がったりするのは得意ではないのです。ゆえに高い場所にはあまり行かず、逆に高所恐怖症気味です。

 

 

 

「このしんりんちほーを出れば、へいげんに出る。…少しきな臭いうわさも聞くから寄り道せずいこう」

 

「きな臭い?争いごとでもあるのか」

 

「…百獣の王と森の王が、縄張り争いをしているそうだ」

 

 

 

そう言ったキングコブラですが、あまり怯える様子を見せません。彼女も蛇の王ですので当然といえば当然ですが。

 

ノヴァの頭の中では、百獣の王と森の王の姿が想像されています。百獣の王、といえばやはりあの金色の猿が思い浮かびますが、森の王とはどんなやつなのでしょうか。最期に見た森では、自分の縄張りを荒らす者はいなかったので想像がつきません。

 

 

 

「…まあ、別に気にする必要もないだろう。私たちが争いに巻き込まれるわけでもあるまい」

 

「そうだといいが。私もノヴァも奴らにしてみれば異邦の民。緊張状態の中では警戒される存在だ」

 

「ちゃんと事情を説明すればわかってくれるさ。…それでも突っかかってくるなら、な」

 

「博士に言われたことをもう忘れたのか。ノヴァの力をフレンズに向けてはいけないって」

 

「わかってるよ。でも、キングコブラなら実力でわからせることもできるだろう」

 

「ノヴァから他人任せな言葉が出るとは思わなかったよ」

 

 

 

少ししたり顔に見えなくもないノヴァの表情。その意味を察して不服にも恭順にも見えるキングコブラの表情。二人はお互いに皮肉を言えるような、対等な関係であると認識しているのです。

 

歩を進めると徐々に高い木が減ってきて、拓けた平地が視界に広がります。

 

 

 

「きれいな場所だな。広すぎて調べ尽くせないな」

 

「こんなところに義肢の素材になるものがあるのか?鉱石なら洞窟や山肌にあるのではないのか?」

 

「それだけでは作れない、と思っている。…私を狩ったヒトは、鉄の他にも草木の繊維や、動物の皮革や骨を使った道具を用いていたんだ」

 

 

 

ノヴァの何気ないセリフが物騒に聞こえて背筋に悪寒が走りました。キングコブラの長い尻尾がくるくると丸まります。

 

 

 

「私に致命傷を負わせたあの槍だって、砂漠の大食らいの甲殻で出来ていた。…あまり考えたくはないが、必要なら動物から素材を採取しなければならないかもな」

 

「お前…正気か…?」

 

「最悪の場合の話だ。なるべくそういうものを使わないで製作しようと思う。…まあ、私の尻尾の破片ならいくらでも使うが」

 

「十分正気でないぞ、その考え方」

 

 

 

自分の尻尾を大事そうに抱えて、ノヴァをじっとりと見つめます。内心ドン引きしていますが、揺るがない熱意は嫌というほど伝わりました。

 

そんなことを考えている間にも、尻尾から剥がれたまるで鉄の破片のような甲殻を熱しています。それを拳で叩いて延ばしたり折り曲げたりして何かを作っているようです。

 

 

 

「…何を作っているんだ?」

 

「草や細い木を刈るための、ないふというものを作ってみようかと」

 

「お前にはそんな立派な剣があるだろうに」

 

「剣や尻尾では小回りが利かないし、牙では刃渡りが足りない時もある。それに、あなたにも手伝ってほしいからな」

 

 

 

何度も折り曲げた鉄片は最後には2つに割れて、細長い形になりました。片方をぐるぐるとねじってエッジ状になった部分を内側にねじ込みます。そこを熱を込めてぎゅっと握ると、鉄片は手の握った形を覚えて丸くなりました。

 

 

 

「これならキングコブラでも使える。誰でも使える、使い方を教えられるものを作っていきたいんだ」

 

「…そうか。しかし驚かされるな、お前には」

 

 

 

刃になる部分を指の牙で軽く研いで、あとは熱を冷ますために腕をブンブン振り回して空気に触れさせます。

 

冷めた頃にはノヴァの剣と同じ青い光を反射させる、美しいナイフができました。

 

 

 

「あなたにあげよう。私の二つ目の作品だ」

 

「…慎んで頂戴しよう」

 

 

 

冷めた柄の部分をキングコブラに差し出しました。それを彼女は宝物を賜るように丁寧に受け取ります。

 

 

 

「食べ物以外のものをもらうのは初めてだな。大切にするよ」

 

「とはいえ刃物は使ってこそ、だ。宝物のように飾られているだけでは刃に込めた魂がふてくされてしまう」

 

「たましい…?」

 

「作品に命を吹き込むもの、だそうだ。それは与えられた役割かもしれないし、製作者の意思なのかもしれない」

 

 

 

ノヴァが熱く語る職人魂ですが、キングコブラには伝わっていません。物を使う生き物はたくさんいても、物を作る生き物はヒトの他にはいません。ノヴァだって尻尾の刃を鍛えることはあっても、一から刃物を作ることはなかったのです。

 

ヒトを尊敬し、その所業からヒトの心を学ぼうと努力するからこそ、ノヴァはヒトの精神論を難なく受け入れられるのかもしれません。

 

 

 

「よくわからないが、草を刈るときに使えるんだな?」

 

「ああ、その他にも石に跡を刻んだり爪や牙を研ぐこともできるだろう。セルリアンにも十分な攻撃力を発揮できると思う」

 

「戦いの苦手なフレンズならこれで少しは安心できるな。私には無縁かもしれないが」

 

 

 

物珍しそうに刀身を眺めるキングコブラ。牙で研かれた刃はキングコブラの顔を青く写し出しています。硬質で重量感のあるナイフは、キングコブラの鱗すら簡単に貫けそうです。

 

 

 

「ありがとう。じゃんぐるちほーに帰ったら自慢できるな」

 

「そうしてくれ。それを聞いた誰かが私に作ってくれと言ってくるかもしれないからな」

 

「…それは嬉しいのか?」

 

「わからないが、それが一番のやりがいになる、らしい。…ヒトの感性は私たちとは別のところにあるのだろうな」

 

 

 

誰かに頼まれる…これ職人冥利に尽きる、と助手が本を読んでくれたのです。

 

確かに自分が作ったものが喜ばれて、他の誰かに広まっていくのはやりがいを感じそうです。

 

 

 

 

 

_____________

 

 

 

 

 

 

昼下がりには強い日差しが草木を照らし、想像以上に気温が上がります。ノヴァにとっては何のことはなくても、元々変温動物だったキングコブラには中々こたえます。中途半端にヒトの性質を預かったので、温度の調節が上手ではないのです。

 

伏流水が地表に出てくる水源の近くで、休憩をとることにしました。大きい石に二人で腰をかけて、草木で彩られた水源を眺めます。

 

 

 

「すまないな。じゃんぐるのように日陰ばかりならこの程度でへばることはないのだが」

 

「いいや、かまわないさ。少しお腹も減っていたところだ」

 

 

 

ノヴァの作業着のポケットから、ビン詰めのジャムと、としょかんでもらってきたじゃぱりまんを取り出しました。木を半分に割って作った簡単なテーブルに並べます。

 

 

 

「それは?」

 

「ジャム、というものだ。果物をさとうで煮詰めて保存が効くようにしたんだ」

 

「これも料理なんだな」

 

「そうだな。これなら簡単に作れる」

 

「私も食べてみてもいいだろうか」

 

「もちろん。誰かに振る舞ってこそだからな」

 

 

 

さっき作った自分用のナイフで、キングコブラの分のじゃぱりまんにジャムを塗ります。冷めてもなお立ち込める甘い香りが鼻腔を刺激して、空腹を助長しました。

 

 

 

「はい、どうぞ」

 

「ああ、ありがとうノヴァ」

 

「さて、私もいただこうか」

 

 

 

自分の分のじゃぱりまんにもジャムを塗ろうとナイフを翻すと、鏡のように反射する刃に何か動くものが写りました。角度から推測すれば、空を飛ぶ何かだと思われます。

 

 

 

「…後ろに何かいる」

 

「丘の裏か?…もしかして、やつらの斥候かもしれないな」

 

「…下手に動くと怪しまれるか。平静を装ってあっちの様子を伺おう」

 

「承知したよ」

 

 

 

キングコブラも唇についたジャムをなめとるように舌をチラチラさせながら気配を探っています。

 

 

 

「…確かに生き物がいるな。…詳しくはわからないな」

 

「…ふむ」

 

 

 

ノヴァは引き続きナイフを鏡のように使って振り向かず後方を見ます。

 

 

 

「材質のせいで色はわからないが…何かがこっちを注視しているらしい」

 

「…どうする?移動するか?」

 

「いや、後をつけられても居心地が悪い。…逆に捕らえて聞き出してしまおうか」

 

「おいおい、手荒な真似はよせとさっきも言っただろう」

 

「まあまあ、別に脅して聞こうってわけじゃない。うまいものを食わせて自白させる、博士が言うには一番効く方法らしいから」

 

 

 

問題はそこじゃないと言いたげなキングコブラでしたが、ノヴァに言っても聞かなそうです。

 

彼女が理性的にことを済ませると願って、一緒にやることにしました。

 

 

 

「狩りごっこくらいに済ませておけよ。で、どうやるんだ?相手がどんなやつかもわからないのに」

 

「挟み撃ちだ。監視しなければならない対象が二人なら、行動を別にすればどちらかに絞るしかなくなるだろう」

 

「…そうだな」

 

「それで今度は監視から外れたどちらかが姿をくらまして、やつの後をつける。もう一人は逃げ場の少ない林に誘導して好機を待つ。相方が揃ったところで確保、といった手順でどうだろうか」

 

「…よくもまあ、そんなことを思い付くな」

 

「一回同じようなことをやられたからな。おとりと誘導。ヒトの知恵にはことごとく一杯食わされたよ」

 

 

 

ノヴァはその上で罠にかけられたのですが。遠い目で在りし日の出来事に思いをはせます。

 

 

 

「…では、王たちの斥候のお手並み拝見といくか」

 

「蛇の王の威光を示す丁度いい機会ですな」

 

「…その言い方はやめてくれ。ノヴァは私の配下ではない、友達なんだ」

 

「ちゃかした訳ではないんだがな。蛇の王の力を誇示できれば、やつらも手を出しづらくなると思ってな」

 

 

 

大蛇の王がへいげんをまかり通るとなれば、あちらも黙ってはいないでしょう。ならばあえて力を示すことで手出しするのは危険と思わせれば、それ以上の干渉はなくなるとノヴァは踏んだのです。

 

芝居くさいノヴァの持ち上げ方が鼻についたキングコブラ。冗談を言えるタイプだったのかと少し驚くと同時に、その本意が別のところにあるとわかって少し安心しました。

 

 

 

「じゃあ、私は上流の方へ向かう。キングコブラは下流の方へ」

 

「仕掛けるタイミングはどう計る?」

 

「私が尻尾で二回音を鳴らしたら一斉に飛びかかるぞ」

 

「ああ、承知した」

 

 

 

二人とも食べ歩きながら二手に別れました。キングコブラは追跡者の分泌物をサーチしながら。ノヴァは鏡面状の刃で追跡者の影を探りながら。

 

 

 

 

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