助けた女の子は駆け出しアイドルでした   作:羽沢珈琲店

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どうもΣ5です。バンドリ作品4作品目。作り過ぎだろと思う方もいらっしゃると思いますが、暖かい目で見守って下さい。

一応、もう一個roseliaメインのやつを作ってから、ガルバのストーリーを軸にしたやつを書きたいなと思っていまして。(本来の目的それなんですけど)

兎に角、今回はパスパレに当てた小説です。どうぞ!


ヒーローに憧れる男

僕はヒーローが好きだ。困ってる人がいれば直ぐに駆けつけ、助けてくれる。どんなピンチに陥っても絶対に諦めない心を持って敵に立ち向かうそんなヒーローが僕は好きだ。だから、子供の頃願った。将来はヒーローになって悪い奴らを倒して、正義の味方になるんだ!、と。

 

そんな僕も今や二十歳を過ぎ、23歳。ヒーローではなくアイドル事務所に入社した新人社員になっていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……!はぁ……!やばい!完全に遅刻だ!」

 

決して広くない大通りの横を車と同等かそれ以上のスピードで自転車を漕いでいる男がいる。つまり、僕だ。何故こんなに急いでいるのかは、まあ簡潔に言えば寝坊して遅刻してるからなんだけど。

 

「くそっ!入社1日目から付いてないな!」

 

小さい頃、僕はヒーローが好きだった。困っている人を無断で助け、笑顔で去っていき、また別のところで困っている人がそこへ向かってまた助け出す。だから子供ながら思った。将来はヒーローになりたいと。でも、実際問題そんなものになれないし、なったとしても周りからバカにされるだけの始末。というか、一時期されていた。まあ自分も大人になってきてから現実というものを知り、次第にヒーローについて遥か彼方に捨て去っていった。

 

そして、ヒーローにならず僕は、普通に高校を卒業して普通に大学を卒業して、普通に……ではないな。兎に角社会人となった僕はアイドル事務所に入社して、初出勤が今日なのだが……、

 

「流石に酒飲みながらアイドル鑑賞したのはやり過ぎた……」

 

出勤前夜に高校時代の友達が祝いに来て、そこから友達が持って来たアイドルのライブ動画を朝日が昇るまで見ていたのだ。うん、何やってんだって言ってくれても構わないよ……。

 

「って凹んでる場合じゃない!急がないと!」

 

信号待ちしていた僕は青に変わった瞬間、猛スピードで漕ぎ出し、他を寄せ付けない速さで事務所を目指した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、僕は偶然にも見てしまった。いや、思い返してみれば偶然ではなかったのかもしれないと、後に僕は語ることになるんだけど。それでも、見えたものは見えたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

女の子が不審者らしき男に捕らえられているところを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……っ!?」

 

僕は猛スピードで漕いでいたペダルを止め、急ブレーキをかける。ブレーキをかけてから軽く20メートルぐらい進んだかもしれない、と思いつつも女の子が見えた方向を振り向くと、路地裏の方へ今にも連れ去られそうだった。

 

(ど、どうする……!?と、とりあえず警察か!?で、でもでもそんなことしてる内に女の子が何処かに連れ去られたら……!!)

 

まただ。僕の悪い癖。僕は予想外の事や、事件に何か巻き込まれるとテンパって何も出来なくなる。小さい頃もヒーローを目指していたのに、いざって時に足が動かなくなっていた。その度に僕は逃げ腰だとか色々……、

 

「や……や、めて!離して……!」

「ぐふふ。やっと彩ちゃんと会えたんだ。ずっと、ずっと見て来たんだからね、僕」

 

女の子の声と不審者の声にハッ!と我に返される。

 

(何を思い返してるんだ!今はあの女の子をどうやって助け出すかを考えろ!ま、まずは警察に……!)

 

僕は新しく買った手提げカバンからスマホを取り出し、警察に連絡しようとする。けど、手が震えて操作が上手くいかない。

 

(な、何を震えてるんだ!唯、警察に連絡するだけなんだ!たったそれだけ!今、震える思いをしてるのはあの女の子だろ!)

 

自分に言い聞かせて行動に移そうとしても、やはり手は動いてくれない。

 

(やっぱり……僕は弱い。大人になった今でも……)

 

何かを諦めたようにスマホを落とし、手をぶら下げる。僕は握り拳を作りながら女の子に謝罪しかけた。

 

(ごめん……僕には助けられ……)

 

その時、声が聞こえた。

 

「……だ、誰か……助けて……!」

「っ!!」

 

その瞬間、僕は走った。何も考えず、無我夢中で不審者に向かって。

 

「その子から……手を、離せ!!」

「ぐふぉ……!!」

 

僕は自分が持てる力の全てを右拳に乗せ、右ストレートを相手の顔面にぶつける。

 

「え……?」

 

女の子は一瞬、何が起きたのか分からず混乱していた。けれど、一つわかるのは目の前にいる男性が助けてくれたということ。

 

「……い、痛い!お、お前!僕の顔によくも!け、警察に訴えるぞ!」

 

確かに、今のでは僕が一方的に殴っただけに見える。しかも、ここは人通りが少なく場所も場所だ。警察呼ばれたら僕が不利になる。

 

「は、果たして訴えられるのはどっちでしょう?」

「な、何!?」

「あそこに僕のスマホが落ちてます。あれには今のやつが全部写っています。これを警察に見せれば、どうなるか貴方も分かりますよね?」

「うっ……!」

「そ、それにもう警察に電話もしています。もうじきここに来るでしょう。ここら辺をパトロールしてましたしね」

「そ、そんなの嘘に決まってる!!」

「う、嘘じゃありませんよ。よーく聞いてみて下さい」

 

耳を澄ませ始めた不審者は微かにパトカーのサイレンが聞こえてきた。

 

「う、うわあああぁぁぁ!!」

 

サイレンに驚いてか不審者の男は地面に倒れながらも必死に逃げていった。

 

僕も不審者の男が騙されてくれてホッとしたのか腰が抜けてしまった。

 

(こ、怖かったぁ〜……!全部ハッタリだって気づかれたら一巻の終わりだったよ……)

 

それでも、女の子を助けられた。何で足が動いたのか今でも分からないけど、自然と足が動いていた。

 

(やっぱりまだ僕はヒーローに憧れを抱いているのか?いやいや、今のでヒーローになれていたら僕はとっくになってそう気がする)

 

自問自答しつつも、遅刻していた事を思い出し急いで事務所へ向かおうとした時、誰かに手を握られ止められる。誰かとは他でもない、助けた女の子だ。

 

「あの……!た、助けてくれてありがとうございます!そ、それと……私は、貴方の事、ヒーローみたいでカッコいいと思いましたよ!」

 

その日、僕の人生は変わった。ヒーローに憧れていた僕がほんの僅かな出来事で彼女を助けたこの日から、僕の物語が始まるのだった。




最初に言っときますが今後ヒーロー要素あんまり出てこないです。

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