そして今回で100話いきました! これも皆様のおかげです。
『奏さんも冷静にはしていましたけど、やっぱり翼さんと話せるのは嬉しそうでしたね』
『そうだな……セレナの事もできる限り急ぐから』
『マリア姉さんが三十路になる前にはお願いします。それまでは流さんのただ一人の背後霊として、色々楽しみたいと思います』
『ソロモンいるけどね?』
『あれは知りません』
流は奏を見届けながらセレナと、言葉とは裏腹に顔が凄く嬉しそうに笑っていた奏の話する。更にそれをしながら数週間ぶりの
「始めは調と切歌でいいの?」
「……みたいデスね。負けないデス、お仕置きは嫌デスからね」
「流を倒す! イグナイトモジュール」
「「ダブル抜剣(デース)!」」
無人島で流から一本取ってから誰も流を倒せていない。あの時は了子が地形を指定して、完全に流を読み切り、それを利用して倒した。だが、あれは皆の実力ではなく了子の実力だ。
二人は勝てないまでも流を一瞬でも驚かせて、出来るのであればクリーンヒットの一撃くらいは入れたい。それがダメージになるかはともかく。
二人は【イグナイト】の二段階目ルベドまで一気に解放して、更に二人で歌を重ねる技術【ユニゾン】で共に出力を高めていく。
「行くデス!」
「まずは私から」
【α式・百輪廻】
二人は離れている距離を詰めるために、調が放った丸鋸がどんどん分身していき、全てが流の近くへ向かっている。
流は近接戦闘の方が強いが、近くにいないと宝物庫ワープを使われて動きが予測できなくなる。そして錬金術や薬物で倒されてしまうかもしれないので、危険だが接近した方が動きがわかりやすい。
二人が近づいてきている間に流は丸鋸を一撃でいくつも巻き込んで壊していく。前の調の丸鋸分身は攻撃すれば崩れてしまう程度の物だったのに、流がいない間にシンフォギアの技となり、完全に実体を持った丸鋸になったようだ。もし流がXDUの知識があれば【殺X式・裂風残車輪】に近いものであるとわかったかもしれない。
「私が切ちゃんをサポートするから、切ちゃんは全力で流に当たって」
「それはとっても頼もしいデスね!」
人との付き合いが得意ではない調は緒川一人から、一つの技術を深く学んだ。逆に切歌は一つの事にとことんという訳ではなく、武術の達人お爺ちゃん達との話が楽しく、色んな人から技術も含めて様々なことを学んだ。切歌は自分の器用さを活かすべく色んな技術を吸収した。
そして思った。シンフォギアの技を同時に使えばよくね?
切歌は流の左側から近づき、肩アーマーを四つ操る【
「手数多いな!」
「流とパワー勝負なんて絶対にしないデスよ!」
全身デュランダルな流だが、腕や足よりも顔や胸の方が若干防御が薄い。人間をほぼやめているが、人間要素を少しでも残そうとした結果なのだが、切歌はそれを敏感に察知して本気で顔や足や股間を狙っている。
二人が流にクリーンヒットを当てたいのは攻撃されている本人も分かっている。だからこそ、防御しなくてもダメージにならないが、肩アーマー四本に鎌が二つを迎撃し続ける。クリーンヒットを簡単にあげてなるものか。
切歌は確かに器用だが、六本もの攻撃を操り続けるのはも並大抵の集中では足りない。切歌が汗をかきながら、流を攻撃し続けるが、どうしてもやればやるほど隙ができる。
流はその隙があえて出したモノではないことを見抜き、クリーンヒット以外を食らう覚悟で攻撃しようとして……その場をすぐさま飛び退った。
流が立っていた場所には、ピンク色の大きな
「なかなか……なにそれ?」
「なんかいつの間にかなってた」
流は調が気配を完全に断ち、自分の後ろ側にいたことは分かっていた。だが、切歌の攻撃を受け切る気でいたので攻撃されるまで放置する気だった。
しかし、いきなりピンクのクナイを持った調が真横に現れ、その逆からピンク色の手裏剣が流のいた場所に突き刺さる。
そしてそれを放った調はピンクの忍者服のようなシンフォギアを纏っていた。
『……あらあら。シンフォギアに掛けていた可能性という名のロックが、調ちゃんの動きに適した姿に変化させたのね』
『あれはシンフォギア……なのか?』
『ええ。シンフォギアのアームドギアはその人の心持ちによって変わるわ。クリスがイチイバルを銃として使っているようにね。それと同じ要領で調ちゃんの意思で、ギアを変化させたようね』
流は耳につけているインカム越しから聞こえた情報を調にも教えてあげる。
「……便利。前のだと忍術との相性が悪かったから、これはとってもいい」
「調が更に可愛くなったデスよ」
「だな。その手裏剣の髪飾りもとっても似合ってるし、可愛い」
「べた褒めは照れる」
ひと通り調を褒めたあとまた戦いが再開されたが、一方的な展開になった……調と切歌達の優勢という形で。
先程までの切歌による六つの攻撃に、調が気配を完全に消してから【殺X式・裂風残車輪】を使ってきている。
ギアの効果なのか、調の気配が全然掴めなくなり、少しずつ流の対応が遅れていき、
「ハァ!!」
「くっ!」
「それは悪手デスよ!」
「行け、切ちゃん!!」
頭の真上から落ちてきた手裏剣と背中に向けて飛んできた手裏剣、そして調自身が右手側から攻撃してきた。少しずつタイミングがズレてきていたのでその隙を突いたのだ。
流は体勢が悪くなるが背後の攻撃を蹴りで破壊して、上空からの攻撃はおでこで、調は右手で迎撃する。
そこに切歌は使っていなかったシンフォギアの技【
「やった!!」
「決めてやったデス!!」
もちろん二人は威力自体をあげる気がなかったので流の胸には傷がつかなかったが、もし生身であれば確実にダメージを与えていた。まず生身の人間にシンフォギアで戦っているのがおかしいのだが、弦十郎や流や緒川に対してはそれが普通なのでこれで問題ない。
流は切り裂かれた衝撃で少しだけ吹き飛び、そのまま地面を滑った。
『……負けた』
『手段を選ばずに何も使わないで武術でゴリ押しをしないなら、手数勝負で負けることくらい分かってましたよね?』
『分かってたけどやっぱり悔し……悔しくないな。二人があんなに強くなってるのが嬉しい』
『異性目線で見てると思ったら、次は父親か師匠目線ですか』
『にしても、切歌の切り裂きは悪くなかった。愛を感じたね』
『アホですね』
流は倒れたままセレナと話していた。セレナの言っていることは正しかったが、前はその手数があっても流を圧倒できていなかった。だから純粋に二人の成長を嬉しく思う。
切歌は六本の攻撃を操作し続けるほどの集中力、そして流を倒そうとする想い。調は通常のギアを転換させるほどの想いに、切歌が危なくても信じてあえて放置などをする我慢強さ。流は全てを感じていた。
「……やはり強い想いはいい。これこそ愛だ」
流は負けた余韻を楽しんでいたが、調と切歌は全く起き上がってこない流を心配して近づいてくる。
「大丈夫?」
「負けて泣きそうだったりデスか?」
「いいや、二人が強くなって嬉しくてね。さて、次は本気の本気で戦うよ?」
「まだやるデスか!?」
「当たり前だ。本気って言っても、殺しちゃうような技とか技術は使わないけど、二人には敬意を評して俺の本気を見せるよ」
「それは楽しみ」
二人は疲れているが今までは手加減している状態でしか戦ってもらえなかった。それなのに流が本気を出すと言っているので、とても楽しみにして先ほどと同じように離れた。
制限時間はイグナイトが切れるまでと決めて、すぐに戦いが始まった。
「先手必勝デス!」
「初手から必殺」
二人はどちらも遠距離攻撃をしながら、近づくという同じだが、対処を変えづらい方法で攻め始めたが。
「……ふぅー、爆振!!」
「なんデスと!」
「切ちゃん!」
流は本気で地面を踏みしめ、その衝撃に指向性を持たせて地面ごと吹き飛ばす。その時にデュランダルのエネルギーブーストを使っていたので更に威力があがり、近づいてきていた調と切歌が地面の爆発に巻き込まれた。
調はギリギリで回避できたが切歌はその砂埃に巻き込まれてしまった。切歌ならすぐに立ち上がると信じて、調はコンクリの下から巻き上がった砂埃を使って完全に気配を断ち、少しずつ流に近づくことにした。
「錬金術で風」
流は自分の中心に風を外側に吹かせて、そのままその場で構えて目を瞑る。
調はその流にゆっくりと近づこうとした時、目を開いた流と目が合った気がする……いや、完全に目が合った。
流は更に地面を酷使して、調の下へひと足飛びで駆ける。調はその場でクナイを構えて飛んできた流の拳を迎撃しようとしたが、威力を流しきれずにそのまま吹き飛ばされた。
「……ごほっ、なんで?」
「調のそのギアは調が出す音を吸収してるのか、完璧に無音だし気配を消している。だけど、俺が出した風とそれによって舞い上がったホコリと小さい石の音までは消えてなかったよ」
「スペックを把握してなかったのが敗因?」
「……まあ、そうかな?」
調の想いが流に流れてきているのでそんな事しなくても場所を掴むくらいできるのだが、これが何なのか分からないので流は利用しないことにした。
流は立ち上がらない調に手を伸ばすが、お尻を向けてきた。
「……あー、これは調達の年代には不適切だったらしいよ?」
「でもこれが流のお仕置き。マリア達と争ったのを怒ってるんでしょ?」
「ああ。まず人間同士で争って欲しくないし、皆がただの喧嘩じゃなくて敵同士になるのは嫌だな……わかった、一回だけお尻叩きね」
「うん、うひっ!」
調のお尻を叩く時、デュランダルに物凄くお願いをして生身の腕に戻してもらっていたのは欲望が暴走した結果だろう。ギアを解除した調のお尻に真っ赤なもみじができた。
「Gatrandis babel……」
そんなことをしていると、切歌が地面に巻き込まれたところから切歌が絶唱を使おうとしている声が聞こえてきた。
切歌は流が本気で戦ってくれるから自分も本気を出そうとしている。今のリンカーなら、
「絶唱だけは駄目だ!!」
「Emustolronzen ピャアアアアア!! 私のお尻が四つに割れちゃうデエエエエス!!」
煙が晴れて切歌が見えるようになっているので、切歌のお尻らへんに宝物庫の出口を作り出し、自分の手元に入口を作り、その場から切歌のお尻を強めに叩き上げた。
流は1期の時に翼が絶唱を使わせない様にボコったように、絶唱に対して極度のトラウマ、奏が死ぬという絶望があるので絶対にさせたくない。例え死なないような使い方だったとしてもだ。
「そっか、今のリンカーなら絶唱を使ってもそこまで危なくないから」
「……え? どういうこと?」
「ウェル博士と了子さんが少し前に完成させた。そのリンカー『Linker type Well』は薬害が凄く少ないらしい。流の頭を解析して理解した理論が使われてて、聖遺物からの拒絶反応がもの凄く抑えられていて、絶唱を必殺技として戦術に組み込めるくらいには問題がなくなったって博士が」
『どうだ流! 僕は遂に絶唱すらも掌握したんだ! あははははははは!!』
調の言葉に被さるようにインカムの向こうからウェルの高笑いが聞こえる。だが、主にウェルと了子のおかげで、土壇場で絶唱を使っても死ぬ事は絶対に無くなったのも事実。
「……そうか、本当によかった」
「し、調、助けて欲しいデスよ! 私のお尻は三つ以上に割れてないデスよね?」
「あっ、止めるの必死で強めにスパンキングしちゃった」
「羨……切ちゃんの介抱に行ってくる」
切歌が突っ伏したまま調にSOSを送ってきたので、調は何かを言い直してからそちらに向かった。
『調ちゃんもハマっちゃいましたね』
『も?』
『あっ、いえ何でもないです』
セレナも顔を少しだか赤くして何かを口走ったが、流はそれをしっかり覚えておく事にした。
次に
「ふざけんな! 流をまた軟禁するとか許されるわけねえだろ!」
「私達は流がやってないって事を信じられるわ。でも! 他の人たちは未知を怖がるの! だからこそ、そういった人達に排除されないように今は流に戻ってもらった方が、後のちの皆との日常が!」
「うっせえ! そんなこと知るか!」
「少しは思考停止しないで考えなさいよ!」
イグナイトまで使ってマリアとクリスが争っていた。
「……俺のために争ってる」
『またそれですか』
「でもさ、クリスが殺意を持って攻撃してるんだよね」
『そうですか? クリスさんの攻撃は遠距離なので、そういった事はわかりづらいと思うんですけど』
「想いが流れてきてるからね」
『何ですかそれ?』
「俺もわからん」
クリスはマリアにとても小さい想いだが、殺意を抱いてしまっている。クリスにとって流はなくてはならない存在なのに、その流が戻って来たと思ったらマリアが他の人たちのために一度戻らせるなど言ったのでブチギレている。マリアもクリスだって考えればわかるのに、思考停止して流を手元に置こうとしているので割と怒っている。
「ここに宝物庫の小さな入口が二つあります」
『あっ』
「シンフォギアを纏って喧嘩をするな! 素手で殴りあえ!!」
「んんんん!?」
「あはっ!」
マリアとクリスは戦っている最中に、いきなりお尻を叩かれた。シンフォギアの防御力を思いっきり抜くつもりで叩いたので、しっかりお尻にまで衝撃が届いていて、二人は地面に突っ伏した。
二人はその時にちょうどイグナイトの時間が終わったのか、シンフォギアの強制解除があったので、私服に戻っている。
マリアは何をされたのか分からず叫び声を抑えている。クリスは何故か奇声ではなく、喜声をあげていた。
「何となくもっかい……マリアのお尻柔らかい」
『私の姉ですからね!』
「誇るところ?」
『女性の臀部が脂肪ではなくて、柔らかいのはいい事ですよ? マリア姉さんは筋肉質ですけど何故か柔らかいんですよね』
クリスがビクビクしているがお尻ペンペンをされた時は
「……二人と戦うのはまた今度だな」
『クリスさんはあっち側に逝っちゃいましたからね』
「あっち側?」
『あっ、いえ。そう言った隠語というか、言葉回しは少しくらいは覚えた方がいいですよ?』
セレナはそれだけ言うと、マリアの元へ向かった。
流は残りの二人の下へ歩み寄る。響も同じくこちらに歩いてきた。二人もまだシンフォギアを纏っている。
「先輩……無事でよかった」
「なにが?」
「あの日、先輩に色々なことを言っちゃって……その」
「ああ、奏の事ね。あの時の俺は本当に情けなかったし、まだ奏が復活できるか分からなかったから不安定だったんだよ」
「やっぱり流先輩が奏さんを復活させたんですね。翼さんも嬉しそうですし、私もすごく嬉しいです!」
響は道徳的には死んだ人を生き返らせるのは間違っていると思う。だが、もし自分が流のような力を持っていて、未来が死んだら、死者蘇生をやらないかと言われれば何も言えない。
なので、響は純粋に奏が復活を喜ぶことにした。
「それならよかった。本当にたまたま生き返らせられただけなんだけどね。条件とか色々あるし」
「……えっと」
「言わないよ。どうせ響に言ってもわからないでしょ?」
「酷い!」
「どうせ響は宿題終わってないんでしょ?」
「あの後から学校へ行けてないんです!!」
まずその人の霊体が居なければ流の蘇生方法では上手くいかない。そしてソロモンを抜いた流が会った人達は皆が皆、壮絶な死に方をして、異端技術に関わり、自分の最も親しい人が近くにいた。多分このくらいの条件がないと幽霊として憑かないのかもしれない。
流はしりきらと一番初めに戦ったが響と未来を最後にする気でいた。
流はこの際ある程度問題をここで解決させる、もしくは暴いてしまおうと思っている。特にこの問題は後のち不幸にしかならない。
それは未来が響の事を愛しているという事だ。
未来は響に対して決して他人に言えない愛を抱いている。響はそれを純粋に好意として受け取っているが、未来がその想いを告げない限り、未来は親友でしかない。
響も大人になれば知らぬ男と結婚するだろう…………流はそんな事させないほど愛を伝えて自分の元から離れていかないように励むつもりだが。
それでも響が好きな人ができた場合、未来は親友、男は恋愛対象として考えてしまうだろう。
そうすると未来はその男を殺しかねない。それ程までに未来は強い思いを抱いていて、ある意味狂っている。流と同程度の愛の重さと言えばやばさが伝わるだろう。皆と世界を天秤にかけても前者を選ぶやばい奴と同程度なのだ。
だからこそ、未来が一生本当の想いを伝えなくていいのか、響がいつかなる未来を見せるためにここで一度本気で怒らせる。
「流さん、奏さんの事おめでとうございます」
「おう、未来も確かツヴァイウイングのファンだったよな?」
「はい。奏さんのファンでした」
「ならまずはサインを貰わないとね」
未来とも軽く話してから、流は本題に入る。
「響に一つお願いがあるんだけど」
「何ですか? あれ? そういえば私達とは戦わないんですか?」
「それは後で……ちょっとこっち来て」
流は手を口に当てて、秘密話であることを仄めかして、響を自分の近くに寄せる。響が近づいてきたらそのまま普通に話す。
「……何ですか」
「響って俺の事好き?」
「はい、先輩はちょっと色々危ない人ですけど、好きですよ」
『そうか。俺も響の事を好きで、愛しているよ』
「え? んっ!?」
響の流への想いも流れてきている。本当に好きでいてくれているのだが、響の好きは一種類しかないようだ。未来の強い思いに対する好きと他の好きが混同しているのだろう。未来の想いは普通ではないので、響の感覚も少しだけズレているようだ。
流は響の手を取り、自分に寄せてそっと口付けをした。流は愛を囁く時、統一言語を使って自分の想いも乗せて、響にキスをしていた。
「……え? は?」
「未来、想いを一生伝える気がないというのはこういう事だ」
「……あれ? 今のってキス? あれ? えっと、ふぇ?!」
響は顔を真っ赤にして、唇を抑えて内股で座り込んだ。目をぱちくりして、どんどん顔が赤くなっていく。そして処理ができなくなり、頭から煙を出して気絶した。
そして未来は目の光が消えた。
流はすぐに響を宝物庫テレポートを使って調達の近くへ飛ばす。
「ナンデ?」
「俺も響を心の底から愛しているから」
「先輩はワタシの本当のオモイをわかってますヨネ?」
「ああ。響を異性へ向ける感情で愛しているんだろ?」
「だったらナンデ?」
「俺は未来も響も愛する気だし、愛してほしい。だが、俺はきっと未来の一番になれないが、未来の想っている一番にはなれないと思っている」
「アタリマエじゃないですか! 私の想いは世間一般から見たらイジョウなんですよ!!」
「関係ないね。そうやって心に秘めて、いつか響を誰かに……いや、俺に奪われる」
流は他人を説得するのが苦手だ。フィーネの時は了子の弦十郎や流への愛で済んだ。マリアは世界を救う約束をする事で済んだ。キャロルはイザークのおかげで安全に済んだ。
流が知っている説得方法は弦十郎の当たって砕いて包み込む方法と、相手の心をぶっ壊して作り直すソロモンの方法、弱っている相手に飴と鞭で考えを変えさせる了子の方法しか知らない。なら、未来に対しては取る方法は一番マシな弦十郎の方法しかない。
問題を突きつけて、それがどうなるかを示して共に考える。
「イグナイトモジュール、ダブルバッケン!!」
だが、ここで予想外だったのは未来がイグナイトに頼ることだった。今の未来はトラウマや自分の最も強い思いを揺るがされているのだ。そんな状態でイグナイトを使えばどうなるか……もちろんイグナイトによる暴走。
「グオオオオオオ!!」
「いいか、そんな風に暴走しても想いを伝える気がないなら、いつか響が離れていくかもしれないんだぞ? 伝える覚悟がないなら想うことをやめるべきだ」
「ウルザアアアアアアアアアア!!」
未来は完全に暴走しているが何故か武術を使って流を攻め立てている。
神獣鏡のダイレクトフィードバックシステムで自分の動きをコピーして、最適解にして自分に反映させる。未来の武術の上達の速さはこれを利用しているのだが、神獣鏡は未来が暴走してしまったとしてもダイレクトフィードバックシステムは止まることは無い。
だが、力が強いだけの拳など流には効かない。弦十郎にデュランダルパンチが効かないのと同じなのだ。
「世界なんてくそ喰らえと笑っちまえ! 未来が本当に欲しいのはどっちだよ! 周りの目か? それとも響の愛か?」
「グゥギアアア!!」
「未来は響と愛し合いたいんだろ! ならそれを自分で否定するな! 愛とは尊く、それの寄せ集めが一つの体に宿るだけで、人格を生み出すくらい強い力なんだ!」
流はソロモンとの対話で自分がどういうものか分かった。だからこそ、流は愛を信じ、愛を否定させることをさせたくない。特に未来は本当に響を愛しているのだ。その愛を成就させなくてどうする。
流は自分の体を生身に変えて、未来の正拳突きをその身に受けて拳が体を貫通した。流はそのまま未来を抱きしめる。
『セレナ!!』
『無茶しすぎ! そういう事をやるならもっと早く言っておいてください! アガートラーム!!』
流は暴れる未来を抱きしめて固定してセレナに指示を出した。セレナは未来のエネルギーのベクトルを全て流へ流れる様に動かし、流の体の中に入ったエネルギーは全てデュランダルの循環に取り込んでいく。
イグナイトの呪いや怒りが流の中で駆け巡るが、そんなものに今更暴走させられない。もう流の中には愛という力が柱となっているのだ。
少しすると未来からシンフォギアのエネルギーが抜き取られたようで、シンフォギアが解けて私服に戻った。
「……ひっぐ」
「いいか、俺は未来も響も愛するけど、未来には自分の想いを仕舞い込んで欲しくないんだ」
「……流さんなんて大っ嫌い」
「俺は愛してる。俺の事はまずいいから、響への想いを頑張ってみてくれ」
「流さんに響を取られるのはもっと嫌!!……少しだけ考えてみます」
「そうしてくれ」
未来は涙をながしながら、流の腹から腕を抜き、彼を殴りつける。それを流は受けてから、血塗れた手と手を繋いだ。
未来は流を一度睨んでから、自分への決意を宣言して、疲れたのかそのまま流にしなだれかかった。流はそんな未来を優しく抱き上げた。腹に穴が空きっぱなしだが。
だが、393の攻撃を流している時はセクハラをしてた模様。