戦姫絶拳シンフォギアF   作:病んでるくらいが一番

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本編も100話に到達。そしてAXZは20話くらいで終わると思っていた時期が私にもありました。流自身のオリジナルがあるせいで進まねえ。


#100『再開のコトバとお別れのコトバ』

 微妙にぎこちなさを残しながらも、皆で家に帰ろうと歩き出すがマリアが流を呼び止めた。

 流もマリアの目的は分かっているので、クリスを奏に預けて二人はブリーフィングルームに残った。

 

「さっきのタイミングで聞いてくると思ってたよ」

「あの場でセレナについて知りたい人はあまりいないわ。本当は優先したかったけど、他の人は流の秘密を知りたがっていたから終わるまで待っていたのよ」

「なるほどね。で、マリアが知りたいのはセレナが居るかどうかだよね?」

 

 流は温かいものを二人分作りながらマリアに話しかける。マリアを落ち着かせるためにも温かいものはあった方がいいだろう。死んだはずの妹が幽霊として存在していて、遺伝子データさえあれば何とかなるなど普通は頭がおかしくなったのではないかと思われることだ。

 

「そう。天羽奏は翼がへにゃへにゃになっていたところを見るに本物よね」

「俺は奏を侮辱するようなことは絶対にしないよ」

「……随分彼女の事が好きなのね」

「好きだし、実質俺が殺したようなものだからね。セレナもそうだけど。だからこそ、償わないと」

『そんな事ないですって。あれは私が選択して、絶唱を歌ったって何度も言ってるじゃないですか。ほんと頑固ですね』

 

 セレナの言葉を流は意図的に無視する。色々ないざこざが終わったからこそ、セレナと奏、それに物語通りにするために響を助けなかった事がどうしても気にかかっていた。

 

「そういうのはやめた方がいいわよ。あなたが人を殺していたことだって何となく皆察していたわ。了子や弦十郎にF.I.S.の皆は、米国から口封じのためにエージェントが来るかもしれないと聞いていたのに蓋を開けてみれば全くそんなことは無かった。でも、今のアメリカは国連加盟国全てから非難を受けている。私達が襲われそうになったことも含めてあの国は批判されているのよ? 裏で誰かが動いていないわけがないし、私達の身近でそういうのが好きな人がいるのだから分かっちゃうわよ」

 

 どうやら殆どの人が流は裏で色々していることを察していたようだ。だが、流石に風鳴でそんなことをしていた事は翼の反応からして誰も予想していなかったのだろう。

 

「その、すまん。次からは気をつけるよ。それでセレナだが……」

『どうする?』

『体をお借りしてもいいですか?』

『いいけど、憑依して喋るの?』

『はい!』

 

 流は自分の姿でセレナが喋るのを想像して全然合ってない気がするが、今はそれしか方法がないのも事実だ。流はその事をマリアに伝えてから憑依させようとしたが、セレナによって遮られた。マリアの驚く顔が見たいとのこと。

 

『それではお借りしますね』

『ああ』

 

 セレナが噛み跡の部分から入ってきて流に取り憑いた。セレナは少しだけおっかなびっくり、マリアに流の体で話しかける。

 

「……マリア姉さん?」

「えっと、もしかしてセレナ? それとも流は私をおちょくってるだけ? そうよね、後者の方が有り得るわ」

 

 だが、流はマリアの事を姉と呼んでおちょくったりした事があるので、当然その言葉を発したのがセレナであることに見抜けなかった。

 

『流さんがマリア姉さんで遊ぶから信じてもらえないじゃないですか!』

『ああやってマリアをおちょくって欲しいって言ったのはセレナだろ! セレナしか知らない秘密とかを言えばいいじゃん』

『それですよ、それ!』

 

「……マリア姉さんはあのお花畑を覚えていますか?」

「流はあの花畑のお土産を買ってきてくれたじゃない」

「……故郷のお婆ちゃんが教えてくれたわらべ歌は覚えてますか?」

「それも流は知ってたわよね? 何故歌詞にルルアルメという言葉が入ってるのだろう? って言ってたじゃない」

 

『……流ざんのぜいでマリア姉さんがみどめでぐれまぜん!!』

『バッカ! いきなり体の操作権を放棄するの!』

 

 セレナは特段普段と変わらないように見えて実際はマリアと話せるのをとても、それはとても楽しみにしていた。だが、自分がお願いすれば流は従ってしまうから、黙って順番を待っていたのだ。

 そしてやっと流の体でだが、マリアと話せると思ったら姉が信じてくれない。

 

 セレナは泣きながら、霊体で流の体に抱きついた。セレナが身体の操作権を得ていたのに、いきなり放り投げたので流の体は急に倒れだし、セレナが抱きついたことによってそのまま吹き飛ばされた。

 

「……今の動きって、前にも似たようなものがあったわよね?」

 

『マリア姉さんが信じてぐれまぜん! もう嫌! なんで()()()()()と話せるとおもったのに、こんなに疑われないといけないのおお!! ひっぐ! ううっ』

『……まあ自業自得だよね? マリアが困る姿が見たいとか言って、セレナしか知らないことを俺に教えたのが悪いし』

『流さん! ここは慰めるべきところです!』

『す、すまない』

 

 流は寝っ転がった状態でセレナの下敷きになりながら、その場で頭を下げた。セレナは少しだけ流を見たあと、何かを閃いたのか手をポンっと叩き、立ち上がった。

 

『謝っているんですよね? ならその体で何でもしてもいいですよね?』

『いや、何でもは』

『駄目なんですか?』

 

 いつものおちゃらけた、楽しそうなセレナではなく、真面目な顔のセレナに念押しされて……流は折れた。

 

『わかったよ。でもあんまり変なことはしないでね?』

『了解です』

 

 セレナは置いてけぼりなマリアを放置して流と交渉を終わらせた。もう一度憑依してセレナは流の喉に触れる。

 

「アガートラームで流さんのデュランダルのエネルギーベクトルに干渉」

『「は?」』

「流さんが前にやった腕をガングニールやアガートラームの篭手にしたように、喉の形をエネルギー操作で無理やり変形」

『……え?』

 

 セレナは流の元にいた時間は奏二比べたら少ない。だが、セレナも力がなかったからこそ、自分を贄として姉や施設の皆を救った。

 流の元ならば様々な力を付けられるので、セレナは必死になって勉強をした。そしてセレナは死んだ時にアガートラームのペンダントに憑依したことによって、アガートラームの特性を得ていた。、

 

 セレナのアガートラームの絶唱特性は『エネルギーベクトルの操作』である。攻撃的な効果を一切持たず、それに特化していたからこそ、エネルギーを増幅させ続ける完全聖遺物であるネフィリムを基底状態まで持っていけた。

 セレナは流のような異常さも、奏のような圧倒的な運動センスもない。ならばと、セレナは手にいれたエネルギーベクトルの操作を最大限に使う事にした。

 

 流と奏とセレナの中で一番錬金術が上手いのは実はセレナだ。錬金術とは完璧な方法で完璧な分量のエネルギーを注ぎ込んで術を発動させる。セレナにはそれが簡単に出来る。聖遺物の性質を帯びているからこそ、そして精神体というエネルギー塊になったからこそ、それらを理解出来た。

 

 流の体の9割9分は既にデュランダルに置き換わっている。デュランダルは完全に動かさなくても、流の生命維持のためにある程度エネルギーを生産し続けて身体中を循環している。

 それを無理やり操作して、セレナは流の喉を都合のいいように動かしていく。

 

「あー、低い。あー、あー、あーあああ。こんな感じですね」

「セレナの声……いや、でも」

 

 セレナは流の声帯を弄り、少しずつ自分の声に変えていく。調整が終わると、完全にマリアが聞いたことのあるセレナの声になった。

 セレナには本来なら声帯の知識などない。だが、ガングニールの欠片の中にある前世の魂が住んでいた部屋には、イザークという人体治癒の錬金術を極めんとした男の知識の断片が教本として置いてある。セレナはそれを全て知識と変えている。

 

「これでも駄目なら、この体ごと私に切り替えて」

『いやああああ! 待って、俺の体で女性体を再現しようとしないで! 有用性を理解しちゃって尚且つやり方を覚えちゃったら、必要な場面で迷いなくトランスセクシャルしちゃうようになりそうだから絶対にやめて!! お願い!』

『なんでも?』

『するから! 限度と拒否権は持たせてもらうけどね!』

『交渉成立ですね!』

 

 セレナは先程まで本当に泣いていたが、それとこれは別だ。流にはお願いすればなんでも聞いてくれるが、それとお願いを聞く権利はやはり意味合いが違う。遠慮をしなくて済むのは大きい。

 

「マリア姉さん! 私はセレナ・カデンツァヴナ・イヴ。マリア姉さんの唯一の妹で、あの花畑で花飾りを作ったり、マリア姉さんが私の代わりに施設では叩かれていた事を知っている、お姉ちゃんの妹です! 信じてください、お願いします!」

 

 この世界にはコトバノチカラという不思議な力がある。それは人間が想いで様々な現象を引き起こす。セレナの想いによって、マリアは本当に目の前にいる流の中にいるのはセレナである直感を得た。

 実際はセレナが統一言語を使えば済んだ話なのだが、そんな無粋な方法を取りたがらないのが二人だ。

 

「……ま、まさか。本当にセレナなの?」

「そうですよ。流さんの体に取り憑いて、今はこうしてお話をしています。マリア姉さん!」

「セレナ! セレナ!!」

 

 セレナはマリアがやっと気がついてくれると、マリアの飛びつき、そのまま流の体でマリアに抱きついて泣き始めた。

 流はそれを黙って見続けた。

 

 そのあと流は乙女同士の話があるとかで、欠片の部屋へ行っているようにお願いされた。10分という時間制限をつけて流は欠片の中の部屋へと消えていった。

 

 

 **********

 

 

「やあ、少々お邪魔しているよ」

「……お前は、いやそれはない。ソロモンか?」

「ああ。キミの中にいたソロモンだ」

 

 流が欠片の家の中に入ると、リビングのソファーにだるそうに座っていたソロモンがいた。前と違う点をあげれば、場所が違うのと流の目でも今のソロモンの顔を視認できることだ。

 そして前に会った宗教家と同じ顔だとわかるが、それと同時にソロモンが死に掛けている事にも気がついた。

 

「……やっぱりそうなのか。流、私は君に()()()()()()に鍛えたと言っていたことは覚えているね?」

「ああ、あんなが指輪に囚われ続けている負の連鎖を終わらせるために神を殺すか、指輪から完全に開放される方法を探す……だったよな?」

 

 ソロモンはプロジェクトDになくてはならない存在だ。故にソロモンは月に人格と魂をバックアップされていて、もしソロモンの指輪という人格洗脳装置に()()()()()指輪が壊れても、世界中にある指輪のどれかに人格と魂を複写されるらしい。

 それ故にソロモンは神という支配者にずっと支配されているのだが、流ならばそれを打ち破れると思って、ソロモンは全てを話して流に神に至る階段を登らせた。

 

 だが、流はソロモンの予想よりも早く神に近づきつつある。

 

「すまない。流自身の力で神に至り、月遺跡にある私を殺して欲しかったのだが、どうやら君の体はフェーズをある程度進行させると無理やり覚醒に至るようにされていたようなんだ」

「お前は計画のすべてを知っていたんじゃないのか?」

「……()()流の味方でありたい。ずっと思っているよ」

 

 流は打ち破った想いを言葉に出来ぬ呪いは流だけではなくソロモンにもあったようで、ソロモンは喋れないことがあると毎回こう言う。

 

「……カストディアンの想定した作戦は完璧に覚えているって前に言っていた。だが、今回のこれは喋れない……俺だけのいわゆるラスボスが居るってことか」

「すまない、ゴホッゴホッ!」

 

 ソロモンはゆっくり頭を下げたあと咳き込んだ。その勢いでソロモンは床に倒れそうになったので、流はソロモンをキャッチした。

 

「え? 軽い?」

「あははは。いや、悪いね。流が神となりて神を殺す。神同士の戦いを行うにあたって、君に掛かっていた呪いは邪魔以外の何者でもなかった。だからこそ、君とセレナで破らせたんだけど、私は神の掛けた呪いのペナルティを消す方法を知らなかったんだよ」

「は? いや、お前は対策を施したって言って……自分にペナルティを行くようにしたのか」

 

 神の呪いを打ち破るのに全くペナルティがなかった。流もセレナも特に何も無かったが、もちろん何も無いわけがなく、流やセレナの意思を消し飛ばす天罰のようなものがあった。それをソロモンの分体のようなソロモンの指輪という繋がりで、無理やりソロモン自身に向けた。

 その結果ソロモンはその存在を希薄にしてしまい、だがそれ故に、その時の衝撃で()()に対する呪いの一部も消し飛んだ。それのおかげでソロモンは顔を晒せているのだ。

 

「勘が冴えてるね……違うか、僕の思考が流れ込んできたのかな? それはね……」

 

 最近流が他人の想いや考えを簡単に推察できるようになっていたのには理由があったようだ。

 理由というのはもちろん神に近づいたことによって起きていた。人類の願いを信仰という形でオモイノチカラとして、自分達の糧としたカストディアン。流はそれに近づきつつあるので、流が大切に想う人達の願いや想いが流れ込んできたらしい。

 

 カストディアンが本当にこんなエネルギー収集をやったのかは不明だが、世界では神が信仰を集めて奇跡を扱ったという考えが広まっており、それが哲学となって流を侵食しているとのこと。

 

「なあ、ずっと思ってたんだけど、俺って人間か?」

「それは慰めとかではなく、客観的な部分で聞いているんだね?」

「そうだ」

「魂があった時はギリギリ人間だった。だけど、今は異世界にいる人達の装者達への想いが擬似的な魂となり、コトバノチカラによる侵食で神話のような神になりつつある。人間から神という哲学兵装……哲学によって生まれた神性を帯びたカストディアンの創りし兵器。それが正しいかな?」

 

 流は頭の中ですぐに否定した。流は人間であった時から、既に本当は人間ではなかったのかもしれない。流はあれだけ奏が好きだったのに見捨てられたのは、人間として欠陥がありすぎる。

 

「……わかった。次に何故お前がその顔をしている? 外でその顔を見たぞ?」

「あれ? まだ知らないのか。彼はアダム・ヴァイスハウプト。完璧過ぎたゆえに捨てられたカストディアンの創造物の一つ、もし捨てられてなければ人類の本当の意味でアダムとなった存在だよ」

「は?」

 

 このあと流はソロモンからアダムについて、そして自分がアダムの姿をプリセットとして作られた存在である事を教えてもらった。そしてそのあと、流に役立つ情報をいくつもソロモンは、文字通り身を削りながら教えていった。

 

「……どうだい? これで、君は君の愛する人たちを守るだけの力となっただろう」

 

 ソロモンは流とそのついでのセレナが受けそうになった呪いのペナルティで消える寸前だった。ならばと、ペナルティ覚悟で流に色々話した結果、既に目も見えず耳も聞こえない。それでも口を動かすのをやめなかった。

 

「流、そこにいるかい?」

「ああ、いる……違うか」『いるぞ』

 

 統一言語は別に耳を使っているわけでもないので、ソロモンにその言葉で話しかけると満足そうに笑った。

 

「なかなかに今回の生活は楽しかったよ。ソロモン王は歴史でも息子たちにモノを残せなかったからね。結局私のあとは分裂してしまったし」

『そうか』

「……そうだ、もう消えそうだから、取っておきのプレゼントをあげよう」

『なにさ?』

 

 ソロモンはイザークが消えた時のように少しずつ体の端から消えていく。もし流が成功せずに流が死んだ場合、またソロモンは復活してしまうのだが、ソロモンはそんな未来はないと確信しているのか、その美形は惚れ惚れする笑顔で言葉を置いていった。

 

「二股以上は滅多刺しにされる覚悟でやれよ? ()の時代でも女は二人以上を愛そうとすると、嫉妬に狂ったからな」

「……は?」

「俺が育てた息子、流! 我が息子の成功を月より祈っている! 我が息子に幸あれ! あっ、あと爆発オチは今回はない!」

 

 ソロモンは最後の最後で、流の混乱させる情報を置いて、その存在を消した。

 

「えぇ……」 




今回は2時間でこれを書いたのでまーたガバッているかも。確認は夜やります、今やってもミスを見つけられる自信が無いので。

そして流を迷わすソロモンの父親宣言。流は父親多いですね。

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