はい、もちろん誕生日回も書きます。今から書きます。では、それ関係の話は外伝で。
「見せてくれよ、君たちが作り上げた賢者の石というものを! 少しだけ別の場所に飛んでいてくれるかな? ティキの安全のために」
「うん! 三級錬金術師なんてケチョンケチョンにしてやっちゃえ!」
アダムはラピス・フィロソフィカスのファウストローブを纏ったカリオストロとプレラーティを見据えながら、ティキをどこかへとテレポートさせた。
「確かに計画もある、僕は君たちに言っていないね。でも、カリオストロ、君もそうじゃないか。使おうとしているじゃないか、風鳴流を!」
アダムは前に可能性の一つとして流を見に行った。だが、聖遺物を融合させた
それと共にカリオストロが自分の住む場所に盗聴器を潜ましていたことにも気がついた。
「あんたがサンジェルマンを利用しようとしていなければ、そんなことをする必要もなかったんですけどね!」
カリオストロの威勢はいいが、少しずつ、少しずつ二人は追い込まれていく。
アダムは膨大な魔力量で無理やり錬金術を完成させ、使おうと思った時にはラグなく使えている。だが、普通はプレラーティのように一つ一つ錬金術陣を出して戦うのが普通だ。
カリオストロは単純だが、単純故に強い光線のみに絞っているので特に錬金術陣は必要としていないが、アダムは斬撃や四大属性、その他様々な錬金術を錬金術陣なして使っている。
術行使の速度の差に火力の差もあるため、二人は建物の壁まで追い込まれてしまった。
「そうだね、こういうことにしようか。シンフォギア装者と彼らの手によって、君たちは殺されてしまったってことにしよう」
アダムはその手に小規模な黄金錬成を発動させながら、二人にゆっくりと近づいてくる。
二人は頷きあってから、アダムに今撃てる最大の錬金術を撃ち込んだ。アダムは慌てずにもう片方の手で防御錬金術を発動させたが。
「ここは一旦引かせてもらうワケダ!!」
高位の錬金術師同士の戦いではまずやる事はテレポートを使えなくすることだ。あとはテレパスを妨害したりだが、戦い始めてすぐに二人はやはりと言うべきかテレパスが使えなくなっていることに気がついた。ならば、きっとテレポートジェムも無理だろうと当たりをつけた。
この戦いでアダムを倒せれば万々歳だが、そんなに上手くいかないこともわかっている。今回の呼び出しで二人に襲いかかってくる可能性も考慮して、壁もしくは床を物理的に破壊して逃げ出そうと決めていたのだ。
プレラーティはあえて武器として使わなかったけん先に玉をつけたけん玉を、壁に向けてフルスイングして壁をぶち壊した。
そのまま二人はそこからトンズラしようとしたが、目の前にいる存在はアダム・ヴァイスハウプト。新しいモノは生み出せないが、生み出されたものならばいくらでも扱うことが出来る男だ。
アダムは黄金錬成に使っていた指で一度だけ指を鳴らした。先程まで展開していた黄金錬成の術式はどうやらフェイクだったようで特に何事もなく霧散した。
二人は黄金錬成の威力を知っているからこそ、行動を先走ることになってしまった。
「……ああ、そうよね。サンジェルマンが使えるなら、あんたも使えるわよね!」
「先日出来たばかりだったワケダ。だからこそ、まだサンジェルマンが教えていないと思ったワケダが」
「ああ、そうさ。僕はアダム・ヴァイスハウプト。生み出せないけど、出来たものを完璧に扱うことに長けた錬金術師さ。当然できるはずだよ、空間閉鎖の錬金術もね!」
カリオストロとプレラーティは自分達が使っていた、空間閉鎖型アルカノイズと同じような空間に閉じ込められてしまった。
この錬金術は最初期はサンジェルマンが術式を自分で維持しながら使っていたが、その後アルカノイズの機能をこれのみにすることによって術式維持をしなくて済むようになった。
完成したのはすぐ最近だが、サンジェルマンはアダムに垂らしこまれているならこうなる可能性も考慮しておくべきだったのだが、最近はずっとサンジェルマンが自分達と一緒にいたからないと思ってしまっていた。
「……結構やばい?」
「テレポートも出来ない、勝てそうにない、ピンチなワケダ……だとしても」
「ええ、サンジェルマンにこの事実を聞かせて、何とか計画修正しないといけないわよね」
カリオストロは胸に挟んでいるボイスレコーダーを軽く弄り、問題なく動作していることを確認する。
錬金術師だが、科学製品は便利ならば普通に使うカリオストロだからこそこの発想に至っているのだろう。割と古臭いサンジェルマンはボイスレコーダーという考えは浮かばないかもしれない。
「姦しいね。君たちは弱らせて抵抗できないくらいまでダメージを与えてから、ゆっくりと僕の野望のために消えてもらおうか。どんな願いでも聞いてくれそうだね、サンジェルマンは大切な人を二人も無くしちゃうんだから」
「そんなことさせないワケダ!!」
プレラーティはけん玉による物理攻撃をしつつ、錬金術勝負には持ち込ませないように立ち回り始めた。カリオストロは未だ錬金術にこだわり、プレラーティのサポートに徹するつもりなのか青い光の錬金術ばかり使っている。
アダムは焦ること無く、二人の攻撃を完封しながら少しずつ相手の体力を削っていく。黄金錬成などの強大な力を使わない限りアダムの魔力量にはまるで響かない。だが、アダムにダメージを与えようとしている二人は違った。
「……プレラーティ、あとどのくらい使えそう?」
「大きいのなら数回といったワケダ」
「あーしもそんくらいかも……やっぱりアダムは化け物ね」
「たまに言うじゃないかサンジェルマンも、僕のことを人でなしと。ならば、化け物くらい想定済みだろう?」
カリオストロとプレラーティは錬金術を何度も何度も行使した結果、汗だらけで息絶え絶え。しかし全裸のアダムの体には汗の一滴もない。無能と呼ばれてもただ軽く笑うそんな表情を激戦を繰り広げているはずの今ですら浮かべている。
二人は戦い始めた時は少しだけ舐めていた。
アダムは確かに魔力量は多いが、無能と言われているし、実際に戦う場面なんてほとんど見たことがない。黄金錬成などの超必殺さえ撃たせなければどうとでもなると思っていた。皆が無能と囁くが故に、アダムは弱いと欠片でも思ってしまっていた。
「まだまだ負けるわけにはいかないワケダ!」
「いいや、終わりだよ!」
アダムに向けてけん玉を打ち込んだがその玉は弾かれてしまった。その弾かれた勢いを利用して、アダムにけん玉のハンマー部分で押しつぶそうとするが。
「有り得ないワケダ!?」
「不味っ」
「終わりだよ、プレラー……カリオストロ!!」
アダムはハンマー部分を素手で受け止め、そのまま空へと押し返してしまった。反動と武器自体の重さ、そしてファウストローブを纏った二人の筋力は並大抵の力ではないのにも関わらずアダムは片手で防いだのだ。
けん玉を空へ打ち上げられたせいで、体が反って動けなくなっているプレラーティの顔面を掴む気なのか、手を伸ばしている所にカリオストロが割り込む。
だが、アダムは始めから今回の件を見抜いたカリオストロを殺す気だったので、顔面を掴んで握りつぶす対象をカリオストロに変えた。
アダムの二人を凌ぐパワーで顔面を握られたらそれだけで殺されてしまうが、カリオストロは関係ないとばかりにプレラーティとの間に入る。
そしてアダムの手がカリオストロの顔に掛かりそうになったその時、カリオストロは笑みを浮かべた。
「まさかの武闘派!!」
「な、ゲフッ!?」
アダムはカリオストロの瞳に炎が燃え盛っているように見えた所で、クロスカウンター気味にカリオストロの拳はアダムの美形に突き刺さり、彼は背後に吹き飛ばされた。カリオストロの顔にも多少傷がついたが、掴まれたら死ぬ攻撃に比べたら安いものだ。
カリオストロは今まで一度も拳という自らの本気を出しては来なかった。もし万が一自分達の手の内を全て知られた上で戦わないといけなくなった時のためにずっと隠してきたのだ。
カリオストロのファウストローブはほかの二人に比べて錬金術方面が微妙に弱い。だが、それはインファイトに特化させているからであって、サンジェルマンもこの事は一々伝えてなかったのだろう。
「プレラーティ! 今なら出来るわよね!?」
「わかってい……あれはどういうワケダ?」
「え?……顔が割れている?」
カリオストロはアダムがぶん殴られて動揺しているうちに、プレラーティに脱出の錬金術を行使してもらおうとしたら、プレラーティはアダムの方を見て固まっていた。カリオストロもそちらを見ると、アダムの美形にヒビが入っていて黒く蠢く何かが顔の下にはあった。
「……知られてしまったね。ああ、サンジェルマンすら知らないんだよ? いくら
アダムは真顔のまま、ゆっくりと起き上がり、崩れはじめた顔を抑える。アダムは次にフィーネと戦うことがあれば始めから自分の本気で戦う気でいたため、いつでも変身できるように体を調整していた。だが、人間の滑稽さにまたハメられて真の姿の一部を見られてしまった。
「あんたもしかして、本当に人じゃないわけ!?」
「……だからずっと言っていたじゃないか。僕は人でなしだって……そうだ、ウォーミングアップをしよう、君たちでね。久しぶりなんだ、僕もこの力を使うのは。完全には切り替えないけど、慣れておこうか、一部くらいは変えてね!!」
アダムは顔を撫でると先程までひび割れていた顔が治った。腕をアダムは抑えて数秒すると、アダムの腕の中にあったとは思えないほどの黒く巨大な化け物と表現できる腕がアダムの腕を突き破って現れた。
「片手だ、君たちにはこの手を使ってあげよう。言ってきたんだ、何度も何度も僕自身に。だけど、やっぱり舐めてしまうんだよ、人類というやつを。だが、今回のこれで思い知った、不完全故に完全に近づける……それが人間だと」
アダムはギョロリと二人の見つめると、一気にその場を駆けだしカリオストロに近づく。そしてその巨大な腕をカリオストロめがけて振り抜いた。もちろんカリオストロだって反撃しようとしたが、リーチとパワーがあまりにも違いすぎる。
プレラーティもけん玉や残り少ない魔力量で無理やり錬金術を行使したが、全てをその腕で防がれてそのまま押しつぶされた。
そしてアダムはひたすらリハビリをするかのように、色んな動きで二人を嬲り続けた。
「……ゲフッ、生きてる?」
「ギリギリな……ワケダ、ごほっ」
「やはり丈夫だ。いい仕事をするね、サンジェルマンも。足りるだろうね、これなら大祭壇設置にさ。天で見ていてくれたまえ、サンジェルマンが夢半ばに散っていく様をさ!」
アダムは腕に本気で力を入れる。同じ場所に倒れ、ファウストローブもボロボロ、顔面や体なんてどれだけ殴られたのか物凄く膨れ上がっているその二人に向けて拳を打ち下ろした。
その時、二人は自分達がとうとう死んでしまうのだと悟った。サンジェルマンに完全なる女性体にしてもらってから、長い年月を生きてきたが、サンジェルマンとは結局隠し事なしに心の底から笑い合うことは出来なかった。
悔しい。サンジェルマンだけを置いていきたくない。まだやるべき事がある。死にたくない。これが終わったら、隠し事なしに皆でお酒を飲みながら語り合うと約束した。
それらの想いが死ぬ間際の走馬灯と共に、強い想いとして宿り、そして思った。思う資格はとっくに捨てたのに願った。
誰でもいいから助けて。
巨大な何かが硬いものに打ち付ける音、何かを殴りつける音がカリオストロとプレラーティの上から響いた。二人は開けるのも辛い腫れた目でそちらを見てみると尻が見えた。
全裸の男の尻が見えた。
「はぁ……なんでこういうピンチな時ばかりに助けに入るんだろうな。どう思う?」
『いやいやいや、まずここどこですか? まず流さんは何を掴んでいるんですか? なんで体全身がいきなりデュランダルになって、しかも完全にエネルギーが充填状態の完全覚醒になっているんですか? って、カリオストロとプレラーティが酷いことになってる!?』
「色々わからないけど、一つだけ分かったことがある。俺はカリオストロとプレラーティの願いによって、呼び出されたことは理解しているかな? あとこの腕はアダムね」
「か、風鳴流!? フィーネの息子おおおおお!!」
アダムは即座にもう一本の腕も黒く巨大な、まるで悪魔のような腕に変えて、流を横合いから殴りつけようとしたがその腕も完全に受け止められて止まった。
「弦十郎父さんよりも軽い!」
『絶対に嘘だ!!』
流は割とギリギリだが、それでも軽口を叩きながら、その掴んでいる腕を思いっきり蹴り飛ばした。アダムはカリオストロに殴り飛ばされた時の比にならない程の速度で背後に吹き飛ばされた。
そして背後にいろいろ酷い感じな二人に対して、いつも通りに話しかける。
「……二人とも久しぶり。まあ、とりあえず助けてから話そうか」
「訳がわからないワケダ」
「……もうどうにでもなーれ!」
カリオストロとプレラーティは訳が分からず、今はそれをそのまま放置することにした。
**********
『クリスさんや調ちゃんは一緒に入ってもいいって言ったのに一緒にお風呂に入れませんでしたけど、今のお気持ちを教えてください』
「セレナを今すぐに抱きたいです」
『えっ……あははは、もう流さんは狡いですね』
流と霊体のセレナは、皆で夜飯を食べ終わったあと、皆が入ったあとの風呂に入っている。
セレナがいることが分かってからは、みんなの目を気にせずにセレナにご飯を渡すことが出来るようになった。奏と流以外にはご飯が少しずつ消滅しているように見えるようで、クリスと切歌は本気でビビっていたが、マリアに土下座させられていた。幽霊だが妹なのにお経を唱えたりするのが悪い。
そんなこんなで少しずつマリアは皆と仲を戻しているが、やはりまだぎこちなさが残っている。切歌なんかは既に今まで通りに戻っていて未来も問題ない。響は流をまだまともに見れないのか、チラチラとしか見れずその行動に未来がキレていたり。
風呂に誘われるなんていうイベントもあったが、奏が響の状態的にあまりよくないと判断して流を止めたので、今は一人虚しく幽霊さんと風呂に入っている。
「てか、やっぱり全裸になれたんだな」
『はい。幽霊なので見た目の自由は効くというのは知ってますよね? なので、服を着ているように見せていたんですよね。まず、私達も服を着ている感覚でしたので、仕組みは些細なものですけど……あまりガン見されると恥ずかしいです』
「全裸で俺の前に現れるのが悪い」
『手を出そうとしたら、奏さんに言いますからね? 奏さんはそれだけで流さんのことを
「うぐっ……分かってるって。視姦だけにしておく」
『……はぁ』
こんな感じに楽しく会話をしていたのだが、ある時にいきなり流は黙りこみ始めた。
「少し待って」
流の中に強い想いが流れ込んできていた。それはまるで死ぬ間際のような走馬灯。ただ親友を置いていって死んでたまるかという強い愛情。隣に倒れている仲間を殺させたくないという愛情。そして親友を騙していた奴に対する強い憎しみと、あまりにも一方的な暴力故に芽生えた恐怖。
それらが流の中に流れてきた。
そして流を動かす最後の言葉が頭の中に響いた。
『誰でもいいから助けて』
その瞬間、流はその想いの場所と主が誰なのか分かり、想いを受け取った瞬間にはその場所に宝物庫テレポートで飛んでいた。
その後アダムの腕を受け止めて、自分以外にボコボコにされた板場以下響父親以上の愛を向けているカリオストロと、響父親と同等くらいの想いを向けているプレラーティが呻いている。少しだけ流はイラついた。
それを認識した時、プレラーティが翼と調に殺される時に言っていた言葉を思い出した。それはこの世界ではもう起こらない出来事だが、その言葉で確信を得た。
『アダムは危険だと伝えないといけないワケダ』
何故か人間をやめちゃってるながアダムなのだと理解した。いや、それは正しくないだろう、もとの姿に戻ったアダムがそこにいた。
「どうでも良くはないだろ? お前達はその愛故に発生した後悔を抱いたまま死ぬわけにはいかないんだろ? なら気張れよ。だけど、もう安心してくれ。アダムは俺がやる」
流は何故か満たされる想いに困惑しつつも、死にそうな二人を元気づけた。
なんか当て馬っぽくなってしまいましたが、アダムには勝てないですよね。アニメ最後の弾があればワンチャンでしたが、今はまだないし。