戦姫絶拳シンフォギアF   作:病んでるくらいが一番

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十月十五日、セレナ・カデンツァヴナ・イヴさん誕生日おめでとうございます。
え? 遅い? 学校がなければ書けたんですけどね。

今回は話はAXZが終わったあと、AXZで出るであろう影響を反映させず、セレナの誕生日の話になります。
今回は番外編ですけど、5期をもし書ける機会があるなら伏線になると思います。


#番外04『セレナ・カデンツァヴナ・イヴ』

 パヴァリアとの戦いが終わり、一時的な平和が訪れたあと、何やかんやしてセレナは蘇った。死んだ時の姿で蘇ったため、霊体の時のように胸があるわけではないが、セレナは必死にバストアップ体操をしている。

 

 どうやって戦いが終わったのか、何やかんやとは何なのか、パヴァリア三人娘やアダムはどうなったのかは今回は無視して、これはある日のお話。

 

「マリア姉さん! 今日がなんの日かわかりますか?」

「……洗剤が安く売られる日かしら」

「違います! 流さんはわかりますよね?」

「さあ? あっ!」

「わかりましたか!」

「セレナさ、俺が洗濯に出したシャツ返して。あれ明後日着たいから、どんな状態でもいいから返して」

「あ、あれはちょっと……」

 

 マリアはセレナの言いたいことがわかったが、あえて惚けてみた。

 マリアはやっと流軟禁のあとから引きずっていた罪悪感に苛まれなくなり、今では普通に話せている。解消のきっかけはやはりセレナの復活だったのだろう。

 

 今は学校組は家に居らず、翼は撮影が入っており、奏もそれについて行っている。今回は日本で新曲をレコーティングするようで、奏に聞いて欲しいと翼がお願いしていたのを見た。

 

 流は自分の首にガングニールのペンダントが()()()()()()()のに慣れない。最近は奏やセレナを見るたびに、首元に不足感を感じてしまう。

 あのガングニールの欠片ペンダントを流がずっと持ち続けていた理由は、奏の遺した物だと思っていたからだ。奏が霊体そばに居ることが分かってからは、奏達の家として機能していたのでずっと付けていた。だが、今は正規の持ち主である奏が首に下げている。

 

「もう!……流さん、また首元を弄ってますよ? やっぱりペンダントとか何か付けてみては?」

「色々つけたんだけど、しっくり来ないんだよね」

「何年もガングニールを付けていたのだもの。いきなり新しい物に変えても、違和感があるのはしょうがないわ」

「そうだ! 私が何かプレゼントしてあげます。ですから、私に誕生日プレゼントを下さい」

 

 セレナは遊ばれているのか、それとも本当に分かっていないのかわからず、とうとう自分で言ってしまった。

 

「流は分かっていたわよね?」

「もちろん。十月十五日、セレナの誕生した日なのは分かってたよ。だけど、今のセレナって新しく肉体を作られたから、誕生日違うよね?」

「いいんですー! 魂に刻まれた云々とかそんな感じなので、いいんですー! でも、よかったです。皆さんが騒いでいるのを見るだけの立場でしたからね。お料理は食べてましたけど」

 

 セレナは確かに奏と流と居て楽しかったが、奏が先に復活して、翼と話したり、ほかの人と話すようになって、ずるいとか羨ましいなんて想いを多少なりとも抱いていた。

 

「……ほら、セレナいらっしゃい」

「うん」

 

 そんな気持ちになっていたことをマリアは今初めて知った。セレナは流の影響か、表情や考えを隠すのがうまくなっているため、口に出してもらわないの分かりづらくなっている。

 マリアはセレナを自分のひざの上に座らせて、強く抱きしめる。

 

「……流さんも!」

「欲張りさんめ」

 

 流はセレナとマリアに近づき、二人の頭を優しく撫でていく。

 

「ちょ、ちょっと、私は別にいいわよ」

「少しだけ羨ましいと思ったろ? そんくらいなら分かるからね?」

「ホントその感受性は異常よね。神云々なのだからしょうがないのでしょうけど」

 

 そのあともっとわちゃわちゃにして欲しいと言ったセレナの要望に応えて、クリスや調が最終的に真っ赤になって倒れる撫で方で数分撫で、マリアのストップが入った頃には、セレナはクタクタになっていた。

 

「その撫でも異常よ!」

「人が撫でて欲しい所を、撫でて欲しい力で、撫でて欲しい撫で方で撫でるだけなんだけどな」

「いやいやいや、それは普通じゃないわよ?」

「知ってる……試してみるか」

「え? 本当にそれだけはやめ、セレナ! 翼! 助けた」

 

 結局マリアも撫での餌食になった。

 

 

 **********

 

 

 その日の夜飯はいつもよりも相当豪勢だった。主に欧米の料理を流と調と未来と()()の四人で作った。人数がいたおかげで、料理のできる前者二人はこったものを作り、後者二人はミスらないものを作った。

 

 装者達にキャロル達、S.O.N.G.の主要大人メンバーが皆、流の家のリビングに集結し、色んな方法でセレナの誕生日を祝った。

 

 初めは一人、次にクリスが住み始め、F.I.S.組が住み、翼が、響と未来が、そしてキャロル達が住み始めて、広すぎたリビングもちょうど良いくらいのサイズに感じるようなった。

 

「あっ! そういえばこれって聞いてもいいデスか?」

「なに切歌ちゃん」

 

 セレナはF.I.S.では調とも切歌とも会っていない。会っていたかもしれないが、マリアが二人の友人になったのは、セレナが死んだあとだ。

 だが、セレナは持ち前の優しさと明るさですぐにみんなと溶け込んだ。

 

「セレナはえっと、死んでしまった? あれ? セレナは今は生きていますけど、死んじゃってましたよね? なら、あれ?」

「切歌落ち着いて。セレナは蘇ったの」

「そうだよ。あと死んだって表現しても、私は問題ないよ。マリア姉さんが怒るかもだけどね」

「セレナがいいなら、別に怒らないわよ!」

 

 切歌はセレナが死んだ事についての何かを話そうとしたが、それは傷つけるのではないか? と表現に困ってしまった。だが、セレナも奏も死んだ事実は消えない。そして蘇った事実もまた消えない。

 

「デスか。えっと、アルビノネフィリムを抑えて、セレナは死んでしまったんデスよね? そのあとセレナはずっとどうしていたのデスか? そこら辺の話は流とかは聞いていると思うデスけど、知りたいデス」

「そういえば話してなかったね。奏さんは死んだ時にすぐに流さんに憑依のような事をしたから、そう言うのを話せませんし」

 

 奏はこんな感じの話をしたことがあったが、奏の場合、特殊なパターンなので、聞いても心霊現象には全く思えない。

 

「だな。あたしは死んだ次の日に、流の横にいたからな」

「……奏がいるなら教えて欲しかった」

「ごめんって。話せなかったんだよそれだけは。あとセレナが来るまでは、奏は妄想の産物だと思ってたし」

「死んじゃった人が次の日には隣にいたんですもんね。びっくりですよね」

「それ」

 

 響の言葉に相槌を打ち、セレナにバトンをパスする。

 

「えっとですね。目をぼんやりさせたような視界に、雑音混じりの音しか聞こえませんでした。でも、漠然と自分の意識があることは分かるんですけど、それ以上は何もわからないんですよね。そのぼんやりした状態で、マリア姉さんが持ってたアガートラームに憑依してました」

「……F.I.S.にいた時は意識はなかったのね」

「はい」

 

 セレナは特製の誕生日ケーキを口にして、飲み物をひとくち飲んでから続きを話す。

 

「その状況が変わったのは、日本に来て、マリア姉さんが流さんと戦った時です。流さんとガングニールを纏ったマリア姉さんが接触した時、私の意識は今と変わらない状態で復帰しました」

「マリアがボコボコにされた時デスね」

「あの時は流が本当に怖かったわね……まず、なんで人質してたはずなのに、あなた達は平然とご飯を食べていたのかしら?」

「流が食べようって」

「そうデス! 犯人に強要されたデスよ!」

 

 当時のことを楽しそうに話している。ちなみに大人達は別のテーブルに付き、お酒を出して飲んでいる。流は絶対に飲まないと誓っているので、近づきたくもない。

 

 それからはセレナが流と共に体験したことを話していった。

 特に花畑の所はセレナも顔を赤くして話していて、クリスやマリアに何度も殴られていた。

 

 ひと通りセレナは話し終わり、ふと気がついたことを口にしてしまった。

 

「そういえば流さんって女性の弱みに漬け込んで、好感度を稼いでますよね」

「は?」

「だって、クリスさんはフィーネに痛みは愛と教えられながら、傷ついた心と体を流さんが受け止めましたよね? マリア姉さん達の時は、世界を救うために世界の敵になろうとした時に、助けることで救いました。響さんもコンサート会場の時に助けましたし、キャロルちゃん達の時なんて、お父さんの命題を知るために世界を分解しようとしていた人に対して、父親の霊を仕向ける。なんか口にするとあくどい人間に見えますね」

「ほぼ意図的ではないから! クリスのは介入しようと思えば出来たけど、あの時の俺は撃たれれば死ぬくらい弱かったし」

「今は絶対に死にませんからね」

「鍛えてますから」

「デュランダルなだけ」

 

 周りの目が微妙に責めるような目になって来たので、話の話題を変えようと流は考えていると、クリスがセレナに話しかけた。

 

「セレナは流が好きなのか?」

「え? 当たり前じゃないですか、好きじゃなきゃ霊体であっても裸で抱きついたりしませんし」

「……なんでって聞いてもいいか?」

 

 本来ならこんな場面当人である流は聞いていたくない恥ずかしい場面だが、流はほかの人の愛を言葉で知ることが出来る機会なので、うっきうきである。

 

「吊り橋効果で好きになって、そのままって感じですね」

 

 だが、セレナはさらっと言った言葉で、流は微妙にショックを受けた。

 

「そうなのか?」

「だってそうでしょ? 意識はあるのにクリアにすらならない幽霊状態で何年も暮らしている時に、流さんが私を救ってくれました。マリア姉さんもみんなも救ってくれました。意識は漠然としてましたけど、昔に比べたら精神的に成長してしまっていて、無垢に育った精神でそんなことをされたら惚れちゃいますよ」

「……あの」

「でも安心してください。別にそれだけじゃないですから」

「本当によかったわ。吊り橋効果なだけ! とか言われたら、結構落ち込んでた。反応兵器をやたらめったら使っちゃう程度には」

「規模がおかしいデスよ!」

 

 そのあとセレナが恥ずかしい話をしたのだから、周りもするべきだという主張を始め、大半の人はいそいそと逃げていった。

 

「……さーん! 流さん!」

「叫ばなくても、セレナなら俺の居場所は分かるでしょ。指輪の繋がりがあるんだから」

「なんで洗濯物干してるんですか?」

「夏物はもう仕舞わないといけないから、最後に一回干してから入れようと思ってね」

 

 ベランダにいた流の元へセレナが来た。酔い潰されたウェルなんかは客室で寝ているが、大抵の人は自分の家に帰った。8割方がここに住んでいるが。

 

「それで?」

「……えっと、しっかり言ったことがないなと思っていたんですよ。私、そしてマリア姉さん達を救ってくださって、ありがとうございます」

「やめろって。ママをどうにかしたら、セレナを死なせずにいられたかもしれないんだから」

「それでもですよ」

 

 セレナは洗濯ものをして冷えている流の手を取る。普通の人間と変わらぬ触り心地なのに、この手を貫こうと思ったら、デュランダルの強度を超えないといけない不思議な手。人を優しく撫でる手でもあり、死合でたくさんの人を殺した手でもある。

 

「流さんはこれから……将来どうするんですか?」

「将来って? みんなを孕ませて、子供を作って、幸せに暮らすけど」

「その後です。流さんは愛した人達の死を耐えることができません。流さんは愛かあるからこの世にいるようなもので、もしそれが無くなったら、きっと狂っちゃいます」

「……」

「奏さんは聖遺物の完全適合者になり、聖遺物融合症例第四号になってますから、寿命は相当長いですよ。でも、流さんはもう寿命では死にませんし、負けませんよね?」

 

 セレナは流の未来、10年後や100年後ではない、もっと先を憂いている。

 

「近接戦闘なら弦十郎に負けるよ?」

「でも、自重しなければ勝てますよね?」

「さあ?」

「流さんは殺される事に全力で抵抗するように組み込まれていますし、組み込まれた自己防衛のせいで自殺も出来ません」

「そうだね」

 

 流は轟にロボット三原則を仕込まれていた。人間への絶対遵守は了子によって解かれたが、ほか二つは流の精神性に影響を与えているので、削除すれば壊れてしまう。そしてその二つを壊すことは流の崩壊を意味し、それに対して流は全力で抵抗する。滅多にない事なので、別に放置しているが、神の力を得たとしても、流は今の自分の精神性を変える気は無い。

 

「流さんは一人ぼっちになった時に耐えられますか?」

「無理だろうな。でもきっと死ねないし。その時は地球を出て、別の星にとか適当に考えているよ。カストディアンと同じことしてるような気がするけど」

「ですよね。だから、その問題を私が解決してあげます」

「ん? どれを?」

「流さんが一生生きてしまうことに対する解決策です」

 

 セレナは流や了子も知らない技術を知っている。轟はソロモンを取り込んで知識を得たが、セレナはソロモンに好意的に知識を教えて貰ったため、色々役に立つ知識もある。

 

「その前に、私セレナ・カデンツァヴナ・イヴに何故、イヴなんていう始まりの名前が入っているのか、その答えが分かっちゃったんですよね。なんで私のおばあちゃんの故郷の歌にルル・アメルなんて単語があるかも」

「まじで?」

「マジです。それはですね……」

 

 その日流とセレナはある誓いを立てた。




最後のはちょっとタイミング的に言えない言葉なのでぼかしておきます。

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