戦姫絶拳シンフォギアF   作:病んでるくらいが一番

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今更ですが、注意書き書き忘れていました。
G編は大幅改変によって、戦闘が極端に減りますのでご了承ください。


#26『遊園地その1』

 流の鍛錬にいくつか新しいモノが追加された。錬金術師に対抗するため、クリスや奏達を幸せに導くために。

 

 まず一つは聖遺物でもなく、錬金術でもない異端技術、フィーネが編み出し名前すらつけていない、紫のフィールドの生成。アニメ1期でデュランダルが覚醒する時にフィーネが使っていたやつだ。

 

 これは普通なら出来ないはずなのだが、デュランダルの欠片が作り出すエネルギーによって、流は発生させることが出来た。聖遺物由来のエネルギーだから、出来たのだろうと了子は言っていた。

 まだ安定には程遠く、流は日に数回程度試している。ガングニールの欠片からの便乗フォニックゲインがない限り、デュランダルの欠片によるエネルギー生産量は微々たるものだから、この回数が限界だ。

 

 本命の二つ目。

 

「……うーん? うーん」

 

 シンフォギア装者の監視下で一体だけノイズを召喚して、ノイズに触れては離し、触れては離しを繰り返している。流はノイズに触れると、位相がノイズに合わせるように変化するので、その変化を感じ取る鍛錬だ。

 

 ノイズの強い点は人間の炭素化だが、もう一つに位相差を利用して攻撃自体を喰らわないようにするというものがある。シンフォギア装者を間近で見ていると、ノイズは雑魚にしか思えない。しかしそれはシンフォギアの持つ『調律』という、位相の差を無くして同じ位相に持ってきて攻撃しているからであって、普通一般兵装ではほとんど勝てない。

 

 流は元々肉体と魂の位相位置に差がある。ノイズよりもこの世界との位相に差はあるが、肉体がこの世界基準であるため、普通に物理攻撃が効く。

 ならば、肉体の影響を受けないくらい位相をズラせば、『調律』をされない限りあらゆる攻撃を無効化できる。『調律』をされたとしても、常に位相をズラし続ければ、シンフォギアでも対処が大変になる。

 

 そんな考えの元、訓練をしているのだが。

 

「感じ取れるけど、自分でずらそうと思うと上手くいかないな。何度もやってんのに」

 

「それが普通よ。先史文明期の人間だって、兵器の位相をズラせるなら、自分達の位相もズラせるんじゃないかと試みた事くらいあるわよ? でも、フィーネである私がそれをやっていない」

 

「無理、もしくは現実的ではなかったってことか」

 

 クリスの言葉に了子は頷いた。流とクリスが約束を結んだ後から、クリスは了子(流の母)を避けるのをやめて、出来るところから交流を始めた。一対一はまだ無理のようだが。

 

 約束を結んだ後、流はいつもの調子を取り戻した。流の中で、奏やセレナという優先順位の中にクリスも加わったが、クリスも流も今までと接する態度をあまり変えていない。流は変えることを求められない限り変える気がなく、クリスは小っ恥ずかしいので態度を変えられていない。

 

「まず変に位相をズラした時に、肉体の半分がA位相、肉体のもう半分がB位相なんて事になったら、体は崩壊するのよ? 安全性も確保出来ないから、結局は兵器に適用させるのが限界だったのよね」

 

「……あ? 待て、これってそんなに危険な訓練だったのか! 流、危険なことはしないって約束したじゃねえか!」

 

 クリスはノイズをぺたぺた触っている流の元に行き、睨みつける。それを了子が止めた。

 

「落ち着きなさい。流は肉体が半端に位相がズレる事はほぼないのよ。魂が肉体から大きくズレてるせい? おかげで、ほとんど事故は起きないって結果が出たのよ」

 

「それでも億が一の確率で事故が起きるんだろ!」

 

「その億が一で安全が買えるならいいじゃない」

 

「クリス、これはどうしても習得したい。あとノイズと戦ってても勝手にズレるから、会得しといた方がいいと思う。その億が一を恐れてたら、ノイズとすら戦えなくなるし、俺はもう逃げない」

 

 クリスはその言葉に頬を膨らませて、あっかんべーを流にした後、訓練している部屋から出ていった。

 

『またクリス姫がお怒りだぞ』

 

『なんか見ててヤキモキしますね』

 

『姫自体、多分そういう感情を理解してないっぽいし、時間掛かりそうだよな』

 

『奏さんも気がついた時には』

 

『セレナはそれ以上口を開くのをやめろ』

 

『おかず一品で手を打ちますよ?』

 

『ぐぬぬ』

 

 流がクリスの去った後を見ていると、奏とセレナが少し離れたところで話しているのが目に入った。奏は流がクリスといると微妙な顔になり、セレナは目を輝かせる。

 今は奏がセレナの口を必死になって抑えようとしている。奏はセレナによく口で負けるので、暴力で訴えようとしているのだろう。

 

 三つ目の訓練は魂関係の操作だが、全くもって進展がない。流は奏とセレナで実験する気もないし、二人もあまりいい顔をしない。二人は死者蘇生に否定的だからだ。

 

「クリスももう少し素直になればいいのに」

 

「あれが可愛いんじゃん。あれでお腹が減ったらご飯! とか言って擦り寄ってくるし」

 

「息子もわからない拗れ方してるし……はぁ」

 

 了子は日課となりつつある、ため息を一つこぼした。

 ちなみに了子は弦十郎に思いを告げることにビビってしまい伝わらず、聡いはずの弦十郎は全く気が付かない。そんな場面を見た緒川は苦笑をして、了子に蹴られるというのが最近の二課ではよく目に出来る。

 

 

 **********

 

 

 クリスと約束をしてから数日が経った。その間、翼とマリアはバラエティ番組が連続して入っていたので、計画についての話し合いが出来なかった。ちなみに今日も仕事だ。

 翼はマリアに何とか勝つべく、二人で色んなクイズに出ていたが、翼がクイズのスコアでマリアに勝つことは一度もなかったようだ。刃物の使い方と歌以外では今の所全敗している。

 

「マムやマリアは働いているのにいいのかな」

 

「子供は遊ぶのが仕事らしいデスよ、調」

 

「それ誰が言ってたの切ちゃん」

 

「響さんデース」

 

「そうだよ、二人とも。学校に入ったら、課題に追われて、テストに追われて、遊べる時間が全然なくなっちゃうから、今のうちに遊んどいた方がいいよ!」

 

「そのバカは馬鹿だから課題に追われてるんだけだけどな」

 

「酷いよクリスちゃん〜」

 

「バッカ! 引っ付いてくるな!」

 

「響! 車の中で暴れないの!」

 

「ヒィッ! ごめんなさい」

 

『翼も連れて来たかったな』

 

『マリア姉さんと翼さんは次回、時間が合えばって事ですから、それに期待しましょう。嫉妬する未来さんも可愛いですね』

 

 後部座席で楽しげに話しているアイドル以外の装者一同。一部霊体がいるが、そちらも楽しそうにしている。助手席に座る流は、バックミラーでそんな楽しげな様子を眺めていた。

 

「あのさ、なんで僕が運転手をしているわけ! 何度も言うけど、僕は生化学の天才博士であって、運転手じゃないと何度言わせたらわかる!」

 

「これから行く遊園地って甘味はメチャクチャ多いらしいじゃん。まだ給料出てないよね? 日本円足りてる? 今限定のスイーツは凄く美味しいらしいよね」

 

「僕が口に入れるのに相応しいお菓子は、それ相応の値段がするのが悪い。日本はお菓子が高すぎるんだ! 悪魔()との契約に乗ってしまうのもしょうがない! 僕は悪くない」

 

 そう口にしながら、ウェルは三十円ほどのキューブチョコを口に放り込む。

 

 

 

 現在二課はとてつもなく忙しくなっている。ナスターシャとウェル達の計画を聞いたあと、まず月の軌道計算をしたら、NASAが発表していた軌道は偽りだった。

 

 そんな最中、アメリカから元国営研究員が犯罪を犯し、日本に逃げ込んだから捕らえて返せと言ってきている。国には既にNASAの情報が偽りであることが報告されていて、ナスターシャ達の情報がなければ世界が終わっていたかもしれないと、F.I.S.組は英雄扱いされているから、返されることは無い。調査中と報告して、遅延を行っている。

 

 その間に二課はフロンティアの調査や神獣鏡の研究データの確認作業を行っている。

 ウェルの研究テーマであるlinker改良も重要だが、今はフロンティアやそれらの計画に対する事に人員が割かれているため、暇をしているウェル博士を流が連れ出した。

 

 ウェル自体、自分自身が英雄となる計画がご破算になり、やる気を失っていたので、変な抵抗をしなかった。それなのに、日本の上層部からは英雄と言われていて、微妙な顔をしていた。

 流はウェルと話しながら、後ろの装者達とも会話をして過ごしていると遊園地に到着した。

 

「いやー、一週間前に遊園地に来たのに、また来れるなんてね〜」

 

「前回は俺が迷惑掛けたからな」

 

「いえいえ、先輩のおかげで遊び放題食べ放題なんて夢みたいですよ!」

 

「本当にいいんですか? 二課の経費で落ちないんですよね?」

 

 

 ちなみに今回の遊園地での装者交流会は、未来が言っている通り二課の経費では落ちない。流が勝手に欝になり暴走した結果、クリスが遊園地近くでシンフォギアを纏ってしまい、それの隠蔽経費が馬鹿みたいにかかり、弦十郎が流に言った。

 

「お前の金でやれ。了子くんと組んで使い切れないほど儲けているだろ」

 

 弦十郎は隠蔽にまる2日かかり、ストレスが溜まっていた。一切体を動かせず、スーツで高官達に頭を下げていたのだ。

 

 何故遊園地なのか? というと流がクリスの話を聞いて行きたくなったからだ。奏が死んでから初めて自ら遊びに行くことを提案した。

 

「了子母さんと稼いでるし」

 

「いいんだよ。こいつはずるして稼いでるから」

 

「待てクリス。了子と二課の技術を使ってシミュレーター作っただけだからね? インサイダーとかしてないし」

 

「了子と二課だけでも狡じゃねえか!」

 

「いいや、ずるじゃない。法律でも取引ルールでもシミュレーターを使ってはいけないとは言われていない。人工知能も今は禁止されていない」

 

「はいはい、ルールルール」

 

「……調達と飯のグレードに差をつけるわ。二段階くらい」

 

「は? それこそ卑怯じゃねえか! 口で勝てないからって料理に手を出すのはやめろ!」

 

「知らんし。料理を作るのは調と俺だし」

 

「なら外で食うからいいわ」

 

「外で食ったら、一生作ってやらん」

 

「……卑怯者!」

 

「うるせえ犬!」

 

「犬ってなんだよ! 雌犬ってか? あ!」

 

 クリスと流が喧嘩を始めたのを、ほかの人達は見ながら会話が弾む。

 

「クリス先輩は空間をパリーンやった後から、ずっと嬉しそうデスね」

 

「喧嘩するほど仲がいい」

 

「どこがだ!」

 

「それほどでも」

 

「……言い過ぎた。ごめん」

 

 流がクリスと同じような反応をすると思ったら、肯定してしまい、クリスは居心地が悪くなった。後輩達からの生暖かい目線が少し辛い。

 

「そういうのいいからさ、早く入ろう。流に引っ張られてきたせいで朝食食べてないんだけど。天才の脳には甘味が必要なんだよ。この僕を劣化させてもいいのかい? linker作らないよ?」

 

 遊園地に入るのに、それから五分ほどかかった。ちなみにその日の夕食は料理のグレードが二段階ほど()()()()()()

 

 

 **********

 

 

「次はあれに乗るデスよ!」

 

「待ってよ切ちゃん」

 

 既にいくつもアトラクションに乗っていて、元気っ子以外は疲れを見せ始めた。ウェルは入って早々食べ歩きに出たのでここにはいない。

 

「クリス、大丈夫か?」

 

「……大丈夫だ。なんでバカどもよりもペースが早いんだよ」

 

「ずっと外で遊べなかったっていうし、付き合ってあげようクリスちゃん」

 

「何してるデスか! 早く行きますよ!」

 

「おっと、引っ張らなくても行くから待って!」

 

 三人乗りのゆっくり進む、見るアトラクションの入口から戻ってきた切歌は、流の手を握り、そのまま入口へ連行して行った。

 

「おい待て!」

 

「あれ? 未来は?」

 

「響遅いよ!」

 

「未来はや!」

 

 

 

「走ったからクリス達と離れちゃったな」

 

 切歌のダッシュについて行って列に並んだ後、別のグループの人達が列に並んでしまったので、クリス達と離れてしまった。

 

「これの後に待てば合流できる」

 

「そうデス、遅いのが悪いんデスよ〜」

 

「それでなんで二人は腕を掴んでるの? 二人でいつも手を握って歩いてるじゃん。俺は端行くよ」

 

 何故か真ん中に流を置き、二人は流の手を握っている。握っているというよりも拘束されていて、流は引っ張られている。

 

「逃げる」

 

「絶対にクリス先輩の方に行こうとするデスよね?」

 

「しないから」

 

「次の方、どうぞ」

 

「はい」

 

 流達の順番になったので、彼を真ん中に置いてアトラクションに乗り込んだ。

 周りを眺めて楽しんでいる二人を見て、流が端だと真ん中の人が見にくいから、自分が真ん中なのねと勝手に理解する。

 

「……私達いいのかな」

 

 調が風景から目を離し、流や切歌を見てから言葉を漏らした。

 

「何が?」

 

「私達はF.I S.に誘拐されたのデス」

 

「知ってる」

 

「デス!?」

 

「切ちゃん、話が進まないから驚かないで。マリアも言ってたでしょ。この人は私達の事を色々調べてるって」

 

「そうデスね。F.I.S.だって始めからめちゃんこ厳しかったわけではないデス」

 

「攫ってきたくせに実験を協力的に行わせようと、懐柔しようとした」

 

 二人は流の腕にすがり付いてくる。その体はひどく震えていた。流はその二人の体を、弦十郎にやってもらった様に優しく抱きしめる。本当はここはマリアのポジションだろうけど、マリアはここにいないから流が代わりを務める。

 

「ほとんど皆誘拐されてきた人達デス。そんなものに引っかからないと思っていたデスが」

 

「ある人を優遇して、ある人を虐める。そうやって私達の同じ境遇としての絆を壊してきた」

 

「私達はフィーネの魂の器になると思われて連れてこられたデス。ですから、乱暴をされることはなかったデスが、優遇された子達が横暴になったりして、色々あったです」

 

「それでも私は切ちゃんと仲良くなれた」

 

「私も調と仲良くなれたデスよ」

 

 流に縋り付きながら、二人は手を繋ぐ。流は二人の言葉を黙って聞く。空気を読んでいるのか、セレナも奏も出てこない。

 

「その後マリアと仲良くなったけど」

 

「セレナが私達や施設の人を守るために、犠牲になったデス」

 

 二人は悔しさからか涙を流す。その涙を流の服で拭いているが、流石にこのタイミングで文句を言うことは無い。

 

「セレナが守ってくれたのに、勝手に命を賭けたゴミ、クズ、そんな酷い言葉をたくさん掛けていた大人達」

 

「しかも、その人達は月の落下を知ると、今までの研究を世界のために使わないで、自分達が逃げるために使おうとしたのデス」

 

「だから、ナスターシャやマリア、調と切歌は世界を救うために、世界の敵になろうとしたんだな」

 

 二人の覚悟を流はそうなる事を知っていたというだけで、その計画を破綻させ、自分に都合のいい流れに変えた。表情には出さないが、やはり流は自分が異物である事を再認識する。それでも流はもう立ち止まらないとクリスに誓った。

 

「でも、私達は世界の敵にならずに済んだのデス」

 

「そればかりか美味しい料理を毎日食べれるようになった。そのせいで少しだけお腹が……」

 

 調がお腹をちら見したあと、流はそのお腹をぷにぷにと揉んだ。

 

「な!」

 

「このくらいならお前らの年齢なら普通だ。少し運動すれば問題ない程度だろ? いや、逆に二人は少し痩せてるんだから太らなきゃ。クリスやマリアみたいに大きくならず、翼みたいに成長しないよ?」

 

「ちょっと! 調になにするデスか!」

 

「これは通報物」

 

「通報されたら調も切歌も美味しいものが食べられなくなるね……いや、脅すつもりは無い。手が伸びてしまった、すまない」

 

 頬を膨らませる二人に流はしっかり謝って許してもらった。シリアスな雰囲気が多少は和らいだ事に流は大きく息を吐く。この時、翼からメールが届いていたが、流は怖くて開けなかった。SAKIMORIの勘は異常。

 

「えっと、私達は普通よりも裕福に暮らせるようになって、それが辛い」

 

「私達の今の生活が、F.I.S.の飴と同じなんじゃないかって思ってしまうのデス。この後に鞭が来るんじゃないかと不安になるデスよ」

 

「私達は流に脅されて、今の生活を始めたから、脅されて今の生活が終わるんじゃないかって不安になる」

 

「流は少し信じているデス……さっきので信頼が急降下デスけど、二課は本当に私達の計画を受け継いでくれるデスか? 私達をアメリカに送ったりとかは……」

 

「日本政府はアメリカと同じような事をする可能性だってある。どうなの?」

 

 流が環境を無理やり変えたから、逆に不安にしてしまっていた。急激に環境が変わって馴染めていなかったようだ。フィーネの元にいたクリスと同じだなと流は感じた。

 

「まず俺は絶対に裏切らないって口で言っても信じてもらえないよな? それを確固たるものにするにはどうすればいい? 流石に信頼してもらうために死ぬのは嫌だけどさ、目とか指も困る」

 

「そこまでしなくても充分デース!!」

 

「わかった。流の事は信じるから、危ないことはしないで。私達が先輩(クリス)に殺されちゃう」

 

 二人は先程とは別の意味で震え始めた。二人はクリスが流を救う為に、絶唱で空間を壊したあと、逆らってはいけない人であると分かり先輩と呼ぶ様になった。

 クリスはそんな二人にデレデレだった。先輩呼びが相当嬉しいようだ。響はちゃん付け、未来は呼び捨てだったからだ。

 

「二課は多分大丈夫。俺をこの強さまで育てて、俺よりも強くて、自分の身は顧みず民のため、世界のために戦い続ける大人達がいるから」

 

「あの司令デスね」

 

「あの人も流もおかしい」

 

「そして国の意思は無視していい」

 

「デス?」

 

「なんで?」

 

 二人は国を無視という言葉に、特大のハテナを浮かべる。二課は国の組織であり、国の意向には逆らえないはずだ。

 

「二課に世界を救う手立てがあるよね? それなのに国が世界を捨てようとしたら、多分弦十郎父さんがブチ切れて、世界を救うために離反しちまうから。あと俺の祖父は絶対国を守るマンだから、地球を救うイコール国防だしね」

 

「あー」

 

「あの暑い人ならやりそうデス。流のおじいちゃんもやばい人なんデスね」

 

 調と切歌の脳内で、日本国旗を踏み付けながら、月に向けて巨大な弦十郎が拳を振るう妄想が展開された。二人は根拠もなしに勝てると思った。

 

「一応解決させたけど、不安っていうのは付きまとうものだよな。もし調と切歌が不安になったらいつでも言ってくれ。寝ている時に不安になって、俺が寝ていても殴り起こしていいから……あっ! 切歌のイガリマの絶唱で殴り起こすのはやめろよ!」

 

「そんなことしないデース!」

 

「シンフォギアと殴り合える人でも、魂を壊されたら死ぬの?」

 

「当たり前だから。あと二人がやりたい事、やってみたい事、俺に出来ることなら何でも聞いてやるからね? なんか遠慮してるみたいだけど、そんな事されたら逆に悲しいわ」

 

「なんでも?」

 

「ああ、死んでくれって言われても少し困るけど」

 

「なら、次のマリアのライブに行きたいデース!」

 

「それは既に手配してる」

 

「早い……もうアトラクションも終わるから離れよう切ちゃん」

 

「デスね。何をお願いしようか迷っちゃうデスね」

 

「全部お願いしてみれば?」

 

 調の言葉に切歌は流を見上げる。流は頷くと、切歌はその場で喜びのジャンプを披露した。

 

「アトラクション中にジャンプをするのはやめて下さい」

 

 ゴール間近だったので、監視員の人に見られて怒られた。


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