戦姫絶拳シンフォギアF   作:病んでるくらいが一番

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流も養子だけど、風鳴を名乗っています。


しないフォギアG
#32『改善しない国の闇』


 無事フロンティアによって、カストディアンが遺した月の装置を起動させることができ、世界の危機は去った。

 

 その代償としてアメリカは各国より責められたり、欧州の何者かがシンフォギア装者の情報を流したので、二課は日本の直轄組織ではなくなった。

 

 シンフォギアは今までの兵装の概念をぶち壊すほどの戦力であり、それ故に一国が所有するには危険すぎるとして、現在の特殊災害対策機動部二課はアニメと同じように再編成され、国連直轄の超常災害対策機動タスクフォース『S.O.N.G.』となった。『S.O.N.G.』はSquad of Nexus Guardiansの略称だ。

 アニメではナスターシャの遺体を回収したシャトルのシステムトラブル時に、完全に姿を晒したことで再編成されたが、相当時期が早まった。

 

 ちなみに流はこの組織に直接所属していない。日本は第二の特異災害対策であり、単独で憲法に接触するレベルの戦力人材を放出したくなく、協力者としての立ち位置で貸出をしている処理になっている。

 まず流の存在は公表もされていないし、シンフォギアほど派手ではないので、『快傑☆うたずきん!』のような隠蔽もしていない。なので、このような処理を行うことは容易であった。

 

 そんな事(政治的柵)は流や装者達には関係なく、日常へと戻っていった。マリア達と本格的に戦うこともせず、落下してくる月の問題は9月後半には収束した。

 

 高校であるリディアン音楽院では、9月後半にあるイベントが開催される。その前に何とか流とマリアは親心で、調と切歌のリディアン入学手続きが終わるように、二課を急かしまくった。

 

 調は14歳と周りに比べて1歳若く、普通なら次の年度に入学の方がいいのだが、調も切歌も高校レベルの学力なら問題ないようだった。二人に聞いてみると、知り合いが同じ学年にいた方がいいとのことで、響や未来が所属している1年に編入することになった。

 知識に関してはマリアがあった方がいいからと、訓練の合間にマリアとナスターシャが、教師役になって教えていたらしい。

 

「行ってくる」

 

「行ってきます」

 

「行ってくるデス!」

 

「「行ってらっしゃい」」

 

 クリスと調と切歌が()()()()()()()()を着て、玄関から出ていった。そんな三人をマリアと流が見送った。

 

「調にも切歌にも友達ができて本当によかったわ」

 

「やっぱり文化祭の準備っていうきっかけがあったから、すぐに馴染めたのかね。共同作業をすれば自然と溶け込めるはずだし」

 

「そうなのかしら? 私は学校へまともに行けなかったから分からないわ」

 

「俺は小学校すら行ってねえから知らん」

 

『あたしは行ってたけど、ノイズを殺すことばかり考えてたしな』

 

『私は流さんと同じで学校へは行ってないですね』

 

 ここには四人? もいるのに誰一人として、学校で作る友達に関する事がわからなかった。唯一まともに学校へ行っていた奏もちゃんとした意見が出せなかった。

 

 文化祭の準備期間に編入した月読調と暁切歌は、切歌の持ち前の明るさとボケ、調のツッコミ、あとは見た目やその他で簡単に周りと溶け込めたようだ。それを嬉しそうに話す二人を見て、流もマリアもホッコリしていた。

 

「今日と明日は仕事なしか」

 

「ええ、少ししたら翼とショッピングに出かけてくるわ。翼ってありえないと思わない? 持っている服は尽く緒川さんが用意した物。だから、服の選び方を教えてあげるの」

 

 流とマリアは二人で部屋の掃除をしながら、スケジュールに変更がないか確認をしている。マリアと翼は仕事の休みを合わせて遊びに行く予定は前から立てていた。もちろんマリアのマネージャーの一人である流は知っている。

 本来ならば翼は学校があるのに、ショッピングに行くことはない。学生の本分は云々と言う。だが、前にマリアと遊ぶ約束していた当日に急遽仕事が入ってしまい、ドタキャンしてしまった負い目があり、今回はマリアに合わせたようだ。

 

「ちゃんと変装するんだぞ?」

 

「そんなこと分かってるわよ。流は何をするつもり? 何も無いなら誘ってあげてもいいわよ」

 

「パス。二課に行かないといけないからね」

 

「予定があるならしょうがないわ」

 

 掃除が一通り終わると、マリアは準備をして、流も一緒に出て、建物の前で別れた。

 

 

 **********

 

 

「……私は聖遺物が作られた時代の人間だから、ある程度は侵食を操作できるけど、流はなんでできるのかしらね」

 

 マリアの誘いに乗らずに二課に来た流は、了子と合流して身体検査を受けていた。

 

「わかんない」

 

「わかってるわよ。何かしらの聖遺物が関わっているのだと思うのだけど、その痕跡はないのよね」

 

 流は定期的に様々な角度から検査を受け、聖遺物の侵食が危険域に達していないかを確認してもらっている。流は別に要らないと言ったのだが、了子が母親権限を使ったので、彼は逆らわないで定期的に来ている。

 

 ちなみに検査データなどの、了子と流についての資料はS.O.N.G.のデータベースには保存されず、日本のサーバーに保存される。現在の日本は流と了子(フィーネ)の隠蔽にさらなる力を捧げている。

 シンフォギアというアドバンテージは国連に公開しないといけなくなったが、シンフォギアを実現できるのが了子とナスターシャとウェルだけなので、日本はそこまで焦っていない。

 

 了子は流の検査結果を見て、侵食が()()()()負荷にならないように、安全に行われている事を疑問に思う。

 流の体は右腕だけデュランダルと完全に融合しているが、その割に人間としての肉体を保っている。マリアとの戦闘で右腕にデュランダルが浮かび上がったのに、それ以降は反応がないことも了子にとって気掛かりだ。

 

「私はまだ人間で聖遺物の融合症例程度で済んでいるけど、流は聖遺物が人間の姿を取っていると言われても、納得できる姿になっているわね。杖を勝手に融合するからこうなるのよ」

 

 流に負荷が掛からないのは、既に全身がソロモンの杖と融合しきっていて、所々にある隙間にデュランダルが侵食している感じになっているからだ。ソロモンの杖は何故か流の体とうまく融合しているので、それが支えになってデュランダルの拒絶反応や、デュランダルの表面化……アニメ2期の響のように、体から出てくることはないらしい。

 

「別に問題はないでしょ。生殖機能にも問題は無いみたいだし、その他は頑丈な人間程度だもん」

 

「右腕は天羽々斬を正面から受け止められる時点で異常よ。元々はここまでは進んでいなかったはずだけど、やっぱりフロンティアのせい……いいえ、糞ネフィリムのせいね」

 

「ネフィリムの心臓が俺に媚を売るために、エネルギーを馬鹿みたいに寄越してきたからね。どう考えてもあのエネルギーで一気に侵食が進んだよね」

 

 翼とマリアが世界へ向けて歌を歌っている時、流はフロンティアのコンソールをずっと弄っていた。その間、流に大量のエネルギーが勝手に流れ込んでいた。

 了子はもちろんそれに気がついて止めようとしたが、止めることが出来なかった。フロンティアと同化しているネフィリムの心臓がやっていたため、操作権限はそちらの方が上だったからだ。

 

 ならアニメのように、フロンティアはネフィリムに乗っ取られるかと聞かれればそんな事は無い。

 ネフィリムは度重なる流のお仕置きを受けたせいで、フロンティアを使ってネフィリム・ノヴァになっても、お仕置きをされると思っているので変なことはしない。

 

「ネフィリムが心臓の姿でもしっかりとした意識がある事は予想外だったわ。しかもアメリカみたいに流に媚を売ることも」

 

「今ではネフィリムも可愛いもんだけどね。俺がフロンティアに行けば、大型犬程度の大きさで出現して、甘えてくるし」

 

「あれは甘えている訳では無いと思うのよね。捕食をしようとして全く出来ていないだけで」

 

 流がフロンティアへ行くと、ネフィリム・ノヴァになった時のように土塊から肉体を作り、流を出迎えてくれる。彼はネフィリムが犬のようにじゃれているだけと言っているが、他の人から見たら襲われているようにしか見えないようだ。

 

「……その他は特に変わった点はないわね。自分でおかしいと思うところはないのでしょう?」

 

「ないね」

 

「問題しかないけど、問題ないってことにしておくわ。それで聞いてよ、弦十郎くんがまた…………」

 

 検査のことが終わると、了子は惚気と世間話とまた惚気を話し始めた。流はそれを嬉しそうに聞いていると、端末に緊急のメールが届いた。

 

『査定会へのお知らせ』

 

 ある組織から流にメールが届いた。内容も見ず、題名で意図を察する。先程まで嬉しそうだった流の顔が無表情になる。

 

「……弦十郎くんは本当になんなの!? なんでベッドに入り込んでも、この私の全裸を間近で見ても! 全く手を出さないのかしら」

 

「全裸族なママだし、特別な意味はないとか思ってるんでしょ。それはそうと、仕事が入ったから出るね。お茶ご馳走様」

 

 流は出された紅茶のカップを片付けて、そのまま出ようとするが、了子に引き止められた。

 

「逃げるように出ようとしたってことは、また戦いなのね」

 

「エージェントクラスをぶっ飛ばしてくるだけだから」

 

「気を付けなさいよ? 流は確かに人間から外れているけど、それでも簡単に死ぬのだから」

 

「うん、行ってきます」

 

「行ってらっしゃい」

 

 流は了子の見送りを受けて、二課に置いてあるバイクで()()まで走らせた。

 

 

 **********

 

 

 鎌倉に向かう途中一度家に帰り、プロテクターや仕込み武器を収納しやすい服に着替え、置き手紙で『調や皆で夕飯を作って食べておいて』と書いておいた。

 

 バイクを走らせること数時間。鎌倉にある巨大な屋敷の前に着くと、適当にバイクを止めて門の前に向かう。インターホンや呼び出しをすることなく、勝手知ったるとばかりに中にどんどん入っていく。

 

「二人共、特にセレナは絶対に表に出てくるな。出来れば話も聞かないでくれ」

 

 流は欠片にいるであろう奏とセレナにお願いをしてから、靴を無造作に脱ぎ捨て、障子で仕切られている部屋に入る。

 

「遅いぞ!」

 

「勝手に呼び出したのはそっちだろ。金魚の糞は黙ってろ」

 

 ある翁が上座に座り、そこから一段降りたところにその翁よりも若めの人達が低姿勢で座っている。先程叫んできたのは、下座にいる若めの人だ。

 

「無礼であるぞ!」

 

「うるせえ黙れ。殺すぞ」

 

 フィーネを殺そうとしたアメリカ軍に向けた威圧と同レベルの威嚇を振りまき、偉そうな翁のいる場所の反対側、下座に()()をかいて座った。もちろん流よりも上座にいる、金魚の糞呼ばわりした人達は正座で姿勢を正している。

 その事に取り巻きは声を荒げようとするが、最も上座に座っている翁、風鳴訃堂(かざなりふどう)が手で制した。

 

「で? 査定会って書いてあったけど、時期的には少し早い。なぜ呼び出した」

 

「褒めて遣わす」

 

「……何が」

 

 上座に座る訃堂は一言だけ発した。流も意味がわからず問いただす。

 

「異国に流れた異端技術。その権威を我が国に引き入れ、三名の装者を招き入れた。天羽奏のような不完全な装者だが、我が国所属に出来た事は良き事だ」

 

「死ね。奏の名を貴様が語るな!」

 

「此度は何か褒美を与えてやろうと、貴様を呼び出した。望みのものを申せ」

 

 流は怒りをあまり引きずらない。アメリカは了子(母親)を狙ったため、ずっと嫌っているが、鎌倉にあるこの組織や訃堂の事は、それと同じくらい嫌っている。

 

 翼の母親を無理やり犯し、作った子供が女であったので母親は罰を受けた。更に翼に過酷な運命を強いるだけでなく、道具として運用している。流は翼の事を了子や奏と同レベルで身内と思っているので、それを流が良しとするはずがなく、この組織のトップである訃堂を嫌悪している。

 

 そして流が功を上げても、流が望むものは決まっているので、訃堂やその組織は簡単に彼に褒美を与える。

 

()()()()()としての立場の強化に使え。言われなくても分かっているだろうが、翼に変な虫をつけようとするな」

 

「貴様の望み通り、未熟な防人の種馬として権利に充てよう。だが、貴様の有用性を示し続けられず、あやつが負けた時、子を孕む袋としての生を送らせる」

 

「翼の所有権は俺にあるんだから、絶対に変なことをするな。企んだ時点で俺はお前らを殺す。日本がどうなろうと関係なく殺す。何度も言っているが、翼には関わるな」

 

 流がこの世界に生を受けて狂ったモノの一つが、鎌倉の翼に対する扱いの違いが挙げられる。

 アニメの裏では何かをしていたかもしれないが、2期までは名前が出ず、3期に少しだけ名前が出ただけだった訃堂や鎌倉。

 

 流が弦十郎や緒川の鍛錬を受け、シンフォギアと同等の価値を示した時点で、訃堂からの接触があった。

 風鳴翼は異端技術を使っているのに、異端技術を行使しない風鳴流に劣る。これは風鳴の血を引く者として、あってはならない事だと言われ、翼の自由を更に失くすと訃堂は流に言った。

 自由をなくす手段の一つが、訃堂という濃い風鳴の血を受け継いだ翼が、優秀な雄の血によって子を作り、翼よりも優れた子を産ませ続けるという過酷なモノだった。

 

 流はそれを聞いた時点で、内心どう思っているのかを考慮せず訃堂を憎悪し、鎌倉に対して流は自らが最も優れた雄である事を示し続けている。

 

「話は終わりだ。査定の準備は出来ておる。はよう行け」

 

「絶対に弦十郎父さんや翼、その他の人にこの事を言うんじゃねえぞ。俺は翼を孕ませたいから権利を有し続けている訳じゃなくて、貴様らが変なことが出来ないようするために、翼の自由を守るために権利を持ち続けている事を忘れんなよ? 今はまだ従ってやってるだけってことを忘れんなよ? いつか殺す」

 

 流が訃堂や鎌倉と接触している事は、弦十郎も緒川も翼も八紘も知らない。弦十郎の気質を理解している鎌倉は、無用な争いを起こさないために、この事は誰にも口外していない。

 もし弦十郎が鎌倉に息子を脅されていると分かれば、下手したら国が割れてしまう。

 

「防人を歌女として、女として居させたいのであろう。はよう行け」

 

「死ね」

 

 流はそれだけ言うと、その部屋を出ていき、用意された別室に向かう。

 

 

 **********

 

 

『流さんは翼さんの婚約者だったんですね』

 

「俺は聞くなって言わなかった?」

 

 着替えをするために宛てがわれた部屋で、セレナが出てきた。しかも聞かないで欲しいと言っておいたのに、普通に聞いていた。

 

『流さんは一人で抱え込むのが駄目なんです。しかも、奏さんだって知ってるのに、仲間はずれは嫌ですよ』

 

『そういう事だな。おっさんも了子も翼も知る事が出来ないなら、あたし達が知っておいてやった方がいいだろ。どうせ流以外とは話せねえんだし』

 

 真剣に心配する二人の目を見て流は折れた。奏が知っている事は分かっていたが、流はセレナにまでこんな闇を見せたくはなかった。セレナにはF.I.S.以上の闇を垣間見て欲しくなかったからの発言だったが、逆に心配させてしまったようだ。

 

『査定会って何をするんですか?』

 

 流が先程から戦闘用の服装に着替えて、いつも以上に入念に準備体操をしている事にセレナは疑問を口にする。

 

『言っていいか?』

 

「どうせ駄目だって言っても見るんだろ? 言っておいた方がいいだろ?」

 

『言っておいた方がいいな。セレナ、査定会っていうのは、ただの殺し合いの事だ』

 

 

 

 

 流は和風の屋敷に相応しくない、二課にある強化素材で出来た訓練場と同じ見た目の部屋に入った。

 部屋の上部に取り付けられたガラスの向こうには、先程の部屋で上座にいた人間や研究員がこちらを見ている。

 

『今回は30人です。準備はよろしいですか』

 

 流が部屋の中央で立ち止まると、スピーカー越しにアナウンスが入る。

 

「いつでも」

 

『では、開始します』

 

 流が入ってきた扉とは違う位置に付いている扉から、合計30人の人間が訓練場に入ってくる。その人達は一様に流のことを見ていて、体つきは皆逞しく、剣や棒、槍などの武器を持った人たちもいる。

 

 その集団の先頭にいる男が流に一度頭を下げてから、気合いの声と共に、一気に近づいてきて、流を槍で突き刺そうとする。

 

「死ね」

 

 刃に毒が塗られているかもしれないので、当たらないように避けて、流は相手の頭を蹴り砕いた。いつも笑っている流の表情は無表情になっていて、男達を物を見る目で見つめながら、立ち向かってくる男達を殺していく。

 

 

 

 翼の種馬になるという事は、日本でも権力を持つ風鳴の身内になるという事だ。翼の種馬になるには優れた防人を孕ませられる証拠を見せないといけない。

 現在翼の婚約者としての権利を持っている流を殺せば、それ以上の種馬の素質を持っているということになるので、定期的に呼び出されて査定会(死合)をさせられている。いわゆる蠱毒の方式で、優秀な人間を選定している。

 

 フィーネがアメリカの工作員に狙われた時、流は躊躇いなく殺していたが、あの時点でこの死合を何度も行っていたので、流は既に人を殺した程度では心が揺れ動かされることは無い。

 

『終了です。生き残りは風鳴流。以上で査定会を終わります。帰宅しても構いませんよ』

 

 流は無言でシャワーと着替えを済ませ、自分の家まで奏ともセレナとも話さずに帰った。

 

 

 **********

 

 

「ただい……くっさ!」

 

 夕暮れにやっと流は自分の家がある街に帰ってこれた。内心荒んだ心のまま流は家に帰宅すると、玄関に入ってすぐ、奥から異臭が漂っていた。

 

『凄い臭いです。焦げ臭さだけではないと思いますけど』

 

『これはあれだ。キッチンがひでえ有様になってるやつだな』

 

 彼がいつもの流に戻ったので、奏とセレナが出てきた。流は急いでリビングに入り、キッチンを見る。

 

「なんでこんなにグチャグチャなんだよ!」

 

「私は悪くないデス! 響さんが悪いデス!」

 

「私じゃないよ! マリアさんがあの時にお酒を入れたから!」

 

「ちょっとやめてちょうだい。あれは正しい調理手順で、爆発の原因はあれじゃないわよ。というか、なんで手順通りにやって爆発するのよ」

 

「なんでメモに書いた通りにやったのに、上手くいかなかったんだろう。流さんはこの手順でやってたのに」

 

 何故かキッチンには調は居らず、クリスと響と未来とマリアと切歌が煤けていた。

 

「私は知らぬ。私は見ていただけだ。キッチンを汚した罪に私を含めないでくれ。流はキッチンを汚されるとキレる。私は関与していないぞ!」

 

「私も知らない。私の指示を聞かないで、暴走したマリアと響さんと未来さんと切ちゃんとクリス先輩が悪い。その鉄のフライパンを焦がした罪は重い。流のお気に入りのフライパンだよね、それ」

 

「これって流がよく磨いてる奴か!? 本気で流がキレるやつじゃねえか! 流が帰ってくる前に……あっ!」

 

 廊下からリビングに繋がる入口で、流は動きが止まっていた。

 朝にマリアと掃除をしたのに、何故かキッチンのシンクはグチャグチャ、コンロ周りは焦げ、素材が散らばっている。流が子供の頃、奏が誕生日プレゼントとしてくれた鉄のフライパンがひどく焦げ付き、一部欠けている。

 

 クリスが入口を警戒するためにこちらを見ると、流が荷物を落として呆然としているのを見つけた。

 

「私は逃げさせて頂く。Imyuteus……」

 

「あたしも逃げるからな! Killiter……」

 

「今ならバックファイアだって怖くない。Various……」

 

 クリスの反応でいち早く危険を察知した翼は、シンフォギアを纏おうとする。それに続いてクリスも歌い出し、linkerなしの危険も厭わず調は聖詠を歌う。

 翼は過去の出来事で、クリスはフィーネから逃げた時の出来事で、調は流の思い出話で、あの鉄のフライパンは地雷の一つである事を知っている。

 

「させるか!」

 

 三人が歌いきる前に、三人の顎をうまく殴り意識を飛ばす。その三人を見た他の装者は唖然として固まる。

 

「なるほど。俺の荒んだ心を癒そうとしたんだな」

 

「……そうデス! 流が疲れ」

 

 何かを言おうとした切歌は、流の投げた針が首に刺さるとぶっ倒れた。

 

「意識のあるお前ら、リビングで正座な?」

 

「「「はい」」」

 

 この後、起きてきたメンバーも含めて、めちゃくちゃ説教をした。




鎌倉や訃堂が実はOTONAでしたという展開があったら、後のち色々変わると思いますけど、今の所は流と翼を利用する気が満々ということにします。

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