戦姫絶拳シンフォギアF   作:病んでるくらいが一番

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いつの間にか総合評価が2000ptを超えていました。
皆様がお気に入りや評価をして下さったおかげです。ありがとうございます。

今回ある人が出てきますが、含みなく名前通りの人です。


#33『仕事をしない錬金術師』

 奏から流が貰った鉄フライパンの修繕が終わってから少し経ち、『秋桜祭』の幕が開けた。

 

 準備期間中、クリスがクラスの人達に追いかけられたり、翼が準備を手伝おうとしたら舞台装置がぶっ壊れて、紙の花飾りを作る作業しかさせて貰えなかったり、調と切歌が秋桜祭を楽しみにしすぎて、夜に騒いでマリアに怒られたり、色々あったが無事リディアンの文化祭が開催された。

 

 流も祭りは生きている奏と翼の二人と行って以来、全くもって足を運んでいなかったので楽しみにしていた。マリアは既に家を出ていて、流も片付けが終わったので家を出る。

 セレナがマリアと少しでいいから回りたいと言ってきたので、マリアにガングニールのペンダントを一時的に預けている。

 

 徒歩10分圏内にある、リディアン音楽院に向かっている途中の曲がり角で、人とぶつかり()()()

 

 流は急いでいたが周りの足音を聞いて、角の向こうには誰もいないと思っていた。しかし実際には人が居たようで、ぶつかる寸前に無理やり避けた。

 相手も流をギリギリで認識したようで避ける動作をしたようだが、その相手の女性はハイヒールを履いていて、ヒールでうまく踏ん張りが聞かず、体を傾けて転けそうになった。

 

 流はその女性に不振に思われない程度の身のこなしで切り返し、トラブル(toloveる)が起きないように手を掴んで倒れるのを防いだ。

 

「あら〜、支えてくれてありがと。助かったわ」

 

「いえ……無事でよかったです」

 

 流は改めてその女性を見る。

 

 水色の髪を頭で二つ結びにして、後ろの髪はクリスの伸ばしている髪のように何本も下げている。そして豊満なバスト。その巨乳をベアトップ系の服よりも大胆にさらけ出し、スカートやズボンの類のものは履いてなく、長めの黒いシャツで隠している。

 

 そして()()()()()()()()()()を感じた。先程まで確かに角の向こうには人の気配がなかった。それなのに、いきなり現れたようにその場所には人がいた。

 セイントが消える時に使った、テレポートジェムのような力の波動(錬金術)を感じたので、流は警戒レベルを引き上げる。

 

「って、あー! ヒール折れちゃってるじゃない!」

 

 流が警戒を表に出さずに微笑んでいると、その女性はしゃがみ込んで靴を覗き込みはじめた。確かに先程無理をした方のヒールが折れている。

 

 それよりもしゃがみ込んだせいで、上が隠せていない豊満な胸が色々大変なことになっている。敵かもしれない人の胸を眺めて警戒を怠ることは、本来の流ならしないのだが、最近流は欲を持て余していた。

 

 クリスはアピールをしてくるが、踏ん切りがつかないのか手を出すことが出来ない。まずクリスのアピールを見ると奏の機嫌が悪くなるので、多分手を出すことは難しいだろう。

 そしてマリアも調も切歌も流という男がいる環境に慣れたのか、相当ズボラな格好で家の中を徘徊することがあるし、風呂でバッテングなどもたまにある。

 

 流は今まで心頭滅却し、忍者の心得を唱え、鍛錬に打ち込み、あらゆる手段で欲望を抑えてきた。一人のあれは奏やセレナ、部屋の鍵を勝手に開けて入ってくるクリスや調や切歌がいるせいで出来ない。

 別のセーフハウスに行こうとすると、クリスが子犬のような顔で連れて行って欲しそうにして、外部に仕事で行くと、家にいる人たちから心配の連絡が頻繁にくる。

 

 流は頭の中で長々と言い訳をしたが、今の流は役得やラッキーを無視できるほど、精神の強靭さはない。まず流は父親(血の繋がる方)と同じおっぱい星人だ。マリアやクリス越えのおっぱいを無視できるわけがない。

 

 少し話は変わるが、ウェル博士も一緒に住んでいるのではないのか? それなのにズボラな格好でマリア達は徘徊しているの? という疑問が浮かんでくるだろう。実際の所は流の家に住み始めてから二日目にして、

 

「小娘達がうるさいから別の家を僕にくれよ。もちろん風鳴から届くお菓子は僕の方にも送ってくれよ? まあ、僕達は友達だし当然だよね?」

 

「ああ!」

 

 ちなみに流は未だ男の友人がいない。友達とは双方が互いに友達である事を認め合うものである。流はもちろん友達であろうとしている。

 

 

 

「助けてもらったのにごめんなさい。ここら辺の地理にあまり詳しくないの。近くの靴屋さんまで連れて行ってもらってもいいかしら? 本当にごめんなさいね」

 

「俺も不注意だったし、それくらいなら」

 

 流が手を差し出すと、その手にすがり付いたまま女性が歩き出したので、流の体勢で近くの靴屋まで連れていった。

 

 決して胸に釣られた訳では無い。セイントと同じ気配がしたからこそ、警戒するために共にいるだけだ。と後の流はクリスに供述しようとしたが、言語化出来ない現象がまた起きて喋れず、クリスなどからお仕置きを受けるのだった。

 何故バレたのか? 知らない(メス)の臭いがしたそうだ。

 

 

 

 **********

 

 

 靴屋に女性を連れていき、ハイヒールを買い換えて、お礼がしたいと言われたので、近くの喫茶店に入った。

 

「私はブレンドで」

 

「ホットの紅茶。ミルクを」

 

「ブレンドに紅茶のホット、ミルクですね。かしこまりました。少々お待ちください」

 

 店員がその場を離れると、女性は話し始めた。無駄に胸を強調しているせいで、流は眺めそうになるが、初対面でそれは不味い……しかし、どうせ敵になる人なので容赦なく見る。

 

「本当に助かっちゃったわ」

 

「何度も言うけど、俺も周りを見ないで走ってたから」

 

「あー! 何度もお世話になったのに、自己紹介すらしてなかったわね。私はカリオストロって言うの。よろしくねぇ」

 

「俺は流、轟流だ」

 

「流ね。漢字はどう書くの?」

 

 流はカリオストロとたわいも無い話をしていると、ドリンクが来たので少し飲む。話が途切れたので、流から切り出す。

 

「カリオストロはここら辺に何しに来たの? 地理が分からんって言ってたけど」

 

「んー、下見みたいな? 私のお友達がここで探し物をするかもしれないから、見に来たのよね」

 

「お友達?」

 

「そう。父親の真意を探すために頑張るみたいだから、それをする国がどんな所なのかなって」

 

 流はそれを聞いて、真っ先に思い浮かんだのは錬金術関係だとキャロルだった。そしてカリオストロが現れた時に感じた、あれはテレポートジェムの時にも感じた錬金術の力だったと思う。

 セイントの仲間かキャロルが利用している人物か、はたまた別の勢力か。

 

 だが、本当に敵対する錬金術師ならシンフォギアに関する情報は所持しているはずだし、流の事も知られている可能性が高い。

 現に錬金術師であるセイントが知っていたので、錬金術の本場である欧州系列の組織は流の事を知っていると思って行動することにしている。

 

 ならば、流のような危険人物にキャロルの計画の目的を簡単に話すか? 有り得ない。流は警戒をするが、警戒レベル自体は下げる事にした。

 

「ふーん。ヨーロッパの人なのに、父親の真意が日本にあるのか」

 

「あれ? そんなこと言った覚えはないわよ?」

 

「カリオストロってヨーロッパ圏だろ。こっちに来るって言ってたし、そこら辺の知り合いなのかなって」

 

「なるほどね。確かにそうだわ。そういえば流は急いでいたようだけど、私の相手をしていていいのかしら」

 

「近くの高校で文化祭があるんだよ。そこに招待されたから行こうとしてたんだけど、人助けをして、その人がお礼をしたいと言ったから遅くなった。これで怒られないでしょ……いや、怒られそう」

 

「なら良かったわ。無理やり引き止めてるのかとずっと気にしていたのよね」

 

 流は最後の言葉を口の中で留めた。クリスならその相手が女性だというだけで怒る可能性が高い。流はクリスの好物であるアンパンを作り、許してもらおうと家にある材料を考える。

 

 そしてカリオストロの仕草は一々アピールポイントを強調していて、流は少しずつ醒めてきた。強調をすればいいというものでは無い。

 

 シンフォギアを纏う時に見える調の薄い胸も良い。クリスの戦っている時の揺れる胸も良い。家でブラを付けずにパジャマを着た切歌の胸もまた良い。

 強調するだけでは駄目なのだよ! と流は語りたくなったが、それを聞いてくれるのはウェルしかいないので、ここでは我慢する。

 ウェルが本当に聞いているのかはウェルのみぞ知る(聞いてない)

 

 もちろん勘の鋭い装者達はあとで流をボコボコにした。調だけは手加減して形だけ参加し、流を手当してくれた。流はとても嬉しかったと後に語る。

 

 

「さて、そろそろいいんじゃないか?」

 

「もしかしてナンパ? やだ〜、困っちゃう」

 

「違う。カリオストロは誰の仲間? キャロル? セイント? それとも別勢力?」

 

 流は穏やかだった表情を引き締めて、カリオストロに問いかけた。ボケられたため少し調子がズレるが、すぐに引き締め直す。

 流がキャロルという名前が言えた事から、カリオストロはキャロルの事を確実に知っている人物であることがわかる。同じくセイントも。どちらも錬金術師業界では有名人である可能性の方が高いと思っているが。

 

「やっぱり流はキャロルを知っているのね。ルナアタックの英雄であり、新フロンティア計画の立役者でもあるものね。私はキャロルとはただの友達よ? 彼女は嫌がっているけれどね。セイント? 誰それ? まあ、別勢力かしらね」

 

 カリオストロも気合を入れているように見えるが、流からしたら、いつでも殺せる程度の警戒しかしていないように見える。だが、錬金術師という流の理解が及ばない敵なので、警戒は継続するが、セイントと比べると強さの覇気が何段階も下がっているように感じる。

 

 そして流は頭の中で、頭を抱えそうだった。錬金術師の敵が、キャロル、セイント、カリオストロ。三つの組織が日本で活動する、もしくはしようとしている。もし流がいるせいで歴史が変わり、キャロルの襲撃中に他が来られたらたまったものではない。

 早期からアガートラームが使え、異端技術に対する切り札の神獣鏡もある。それでも装者達は経験が不足しているので、ダインスレイヴありでも勝てるかどうかといったレベルだと思っている。

 

「さっきはテレポートジェムで出てきたの? いきなり人の気配が現れたから、避けるのが遅れたけど」

 

「そうよ。サ……じゃなくて上司? にお願いして飛ばしてもらったの」

 

 カリオストロの上司は『サ』がつく人なのかと流は頭の中でメモる。フェイクである可能性も考慮はするが、流はこの人が嘘をついておらず、自然体のように感じているので、嘘の可能性は低いだろう。それすらも偽れる人物なら、今までの情報は全て役に立たないことになる。

 

「テレポートってなかなか難しい技術じゃなかったか? キャロルだって、拠点へのワープにしか使わないだろ?」

 

「本当によく知っているのね。キャロルはそういう細かい事は苦手っぽいからね〜。うちの上司は細かい事がだーい好きで、よく押し付けられている人だもの。いつの間にか上手くなったのでしょうね」

 

 キャロルは世界を分解などという大きな計画を行っていたが、細かい作業は必要な知識を与えたホムンクルスにやらせていたことを思い出す。ガリィの様に器用に水を操るわけでもなく、想い出を焼却させてぶっぱなしばかりだった。

 

「次に」

 

「駄目よ。焦りは禁物、モテないわよ? 私は情報を与えた。それで私は錬金術師。錬金術といえば等価交換」

 

「私が教えたのだから、次は俺の情報を渡せってことね。でも国の事とか、シンフォギアの事とかは無理だぞ? 俺自身の事も言えない事があるし」

 

「言えない事情があるのは誰でも同じね。キャロルの目的は知ってる?」

 

「知ってる」

 

「私の目的は?」

 

「知らない。下見って言ってたけど、それだけじゃないだろ?」

 

「そうよ。なら、あなたの正体については?」

 

 カリオストロがこちらに体を近づけて、互いの額が当たりそうなギリギリの位置で、そんなことを言ってきた。流は本当にわからず首を傾げる。

 

「俺の正体? 俺は俺だろ」

 

「うーん? なるほどね」

 

 カリオストロは一人わかった風に腕を組んで頷いた。無意識に腕を組む時の胸の動きは良いものだと、いつもの流なら思うが、正体について思考を巡らせる。

 

「待て、俺の正体ってなんだ?」

 

「私の言えない事はそれと組織のことと仲間のことよ。流と一緒でね」

 

「……」

 

 流の正体。転生者、デュランダルの融合症例、ソロモンの杖の完全聖遺物融合症例、謎の指輪持ち主、炭素変換無効化人間、原作知識持ち。ざっと流が挙げるとこれくらいだが、これらの事を言っているのだろうか? 流は深く考えず、とりあえず覚えておくことにする。敵の言うことで一々悩むのも馬鹿らしい。

 

 ピロン

 

 流が唸っていると端末に連絡が入った。カリオストロに一言掛けてから、流は端末を見ると翼からメールが届いていた。

 

『クリスが勝ち抜き歌ステージに出ることになった。もし会場にいないのであれば、急いで来ぬと見逃すぞ』

 

「すまない。用事ができたから俺は出るわ。会計はしておくから、靴が軽く馴染むまでゆっくりしてっていいから」

 

「あら、それは残念ね。今日はありがと。またね」

 

「ああ……またね?」

 

 流は会計を済ませて、リディアンに向けて本気で走った。流は錬金術師となんて二度も会いたくないなと思いながら、クリスの歌に間に合わせるべく駆け出した。

 

()()()()を仲間に引き入れるのは無理じゃないかしら? サンジェルマンもイマイチよく分からないわね」

 

 カリオストロはすぐに店を出て、テレポートジェムでどこかへ消えた。

 

 

 **********

 

 

「こちらだ」

 

「席取っておいてくれたのか。ありがとう」

 

「いや、取っておいてくれたのは立花と小日向だ」

 

「二人共ありがとう」

 

「いえいえ。流先輩が見ないとクリスちゃん拗ねちゃいますしね」

 

「そういう事を言ってると、クリスに怒られるよ?」

 

 武術に忍術を本気で運用して、数分で勝ち抜き歌ステージの会場になっているホールについた。後ろの席に響と未来と翼が座っていて、流は翼の隣に座る。周りから視線を感じるが無視する。

 

「雪音がシンフォギア関連以外で歌う所は見たことないから楽しみだ」

 

「クリスは歌うの好きだから割と歌ってると思うけどな。カラオケとかたまに行ったりするしな」

 

「そうなのか?」

 

「翼さんも予定が合えば誘うんですけどね。毎回緒川さんに聞くと、仕事ですって返ってきますし」

 

「なんだ、私だけ仲間はずれみたいではないか」

 

「三人とも、始まるから静かにして」

 

「「「はい」」」

 

 先程まで歌っていた人の評価が終わり、次の人が呼ばれたので、未来が三人に指示を出す。

 

『さて、次なる挑戦者の登場です!』

 

 司会の子がステージから引くと、舞台袖からクリスがつんのめって出てきた。

 

「すげえ緊張してるな」

 

「クリスちゃんは恥ずかしがり屋さんだからね」

 

「あっ、クリスがこっち見てるよ」

 

 クリスがこちらを見ていた。流と目が合うと、顔を軽く赤く染めて、舞台袖に向けて何かを言っている。肩を落としていたから、うまくいかなかったようだ。

 

 歌が始まると少し置いてから、クリスは歌い始めた。歌のはじめは動きも表情も硬かったが、歌に没頭し始めたのか、表情も動きも柔らかくなった。

 クリスは特に意識していなかったと思うが、流達の方に歌っている時、僅かに微笑んだ。

 

 流はその微笑みに見蕩れてしまい、いつの間にかクリスの歌が終わっていた。

 流は何故か動機が激しくなり、クリスを見ていると恥ずかしいような、変な気持ちになる。周りが拍手している間も、彼はずっとクリスを見ていて、クリスは流と目が合うと照れくさそうに目を逸らした。その仕草に流は愛おしさを感じる。

 

「クリスちゃんはやっぱり凄いね!」

 

「とっても可愛かったね」

 

「戦いの歌ではなく、人に聞いてもらう歌はやはりいい物だな流、おい流!」

 

「……は、はい!? 翼呼んだ?」

 

「ボーッとしていたが大丈夫か? マリアが最近、流が疲れていると言っていたからな。体調が悪いのなら休むべきだ」

 

 マリアは流が架空を掴んで窓の方へ投げたり、流がいきなりぶっ飛ぶのを何度も見ていて、疲れているが故の行動だろうと情報共有をしていた。

 

「いや、大丈夫」

 

「流先輩もきっとクリスちゃんに見蕩れてたんですよ!」

 

「……」

 

『勝ち抜きステージ新チャンピオン誕生! さあ、次なる挑戦者は! 飛び入りも大歓迎ですよー!』

 

 クリスは今まで歌っていた人の中で最も点数が高かったようで、チャンピオンとして舞台端にい続けないといけなくなった。

 

「やるデス!」

 

「チャンピオンに挑戦」

 

 アニメで見たような流れで、切歌と調が挑戦者として名を挙げたが、二人の格好はリディアンの制服で、楽しそうに壇上へ向かっていった。

 

「クリスちゃんに対抗するために二人で挑戦かー」

 

「私達も出てみる?」

 

「いや〜、人前で歌うのは少し恥ずかしいかな」

 

「楽しそうだな」

 

「え? 翼さん」

 

『さて、今度は二人ペアの挑戦です。雪音クリスさんに勝てるのか!?』

 

 調と切歌は歌を指定し、その曲が流れ始めた。

 

「これは!」

 

「翼さんとマリアさんで歌ってた」

 

「不死鳥のフランメだね」

 

 調が翼役で切歌がマリア役。2期一話の翼とマリアのライブの歌を歌い始めた。

 

 歌詞は翼が関わるだけあって硬い内容だが、二人は嬉しそうに、楽しそうに歌っている。

 

「……」

 

 二人はこちらに手を振ってきたので、皆で手を振り返した。いつも冷静な翼の体が、じれったそうに動いている。

 

 二人が歌い終わり採点されるが、クリスに若干届かず、二人が落ち込んでいると、ある女性が立ち上がった。

 

「情けないわよ二人共!」

 

 空中で浮いて、こちらに手を振ってくる茶髪の霊体を連れて、ピンク髪の女性が壇上に向けて歩き出した。

 

「マリアさん!?」

 

「飛び入り参加したいのだけどいいかしら?」

 

『えっと……大丈夫みたいです。あのアメリカで一気に名を馳せた歌姫、マリア・カデンツァヴナ・イヴさんが飛び入り参加だ!』

 

 その後は少し騒動になり、マリアが歌い、クリスを抜いてチャンピオンになった。それに触発されたのか。

 

「私もいいだろうか!」

 

 翼まで参加し出して、最後は翼とマリアのユニットで歌って締めが行われた。

 マリアが歌いだしてから、ホールには人がどんどん入ってきて、最後のペアでの歌の時には、みんなが立ち上がり、ギュウギュウ詰めで聞くことになった。

 

 それでも翼もマリアも皆楽しそうにしていた。そんな中、流は度々こちらを見てくるクリスとまともに目を合わせることが出来なかった。

 

 流は奏とは恋を超えて愛が芽生えた。クリスに対しても何かが芽生えたが、流はその感情が何なのかわかっていない。




カリオストロの組織での風鳴流のコードネームは『ソロモン』です。

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