戦姫絶拳シンフォギアF   作:病んでるくらいが一番

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#34『置き手紙はしない計画後』

 秋口に文化祭がある高校の生徒は、文化祭が終わりに近づくと、少しだけ憂鬱になる。文化祭が終わって一月もしない内に期末テストがあるからだ。リディアンも例に漏れず、対策を早くからする人は既に期末テストの勉強をしている。

 

 翼は高校の内容程度なら問題にもならず、クリスはコツコツ勉強をしているので、テスト前だからと言って切り詰めてやる必要が無い。調と切歌は初のテストなので、いい点数を取ろうと頑張っている。未来は元々優等生なので、クリスと同じく問題ない。

 

「二課の訓練があるからごめんね!」

 

 たった一人、毎回テストの点数がやばい人、立花響はテスト勉強から逃げていた。

 響は毎回一夜漬けのように勉強して、赤点回避もしくは赤点を取り、課題が出される。その課題は頑張ってやろうとするが、高校に入ってからはシンフォギアが絡んできて、まともに時間が取れず、課題提出日を過ぎるのを繰り返している。

 

 未来は何だかんだ響に甘く、やらせようとしても、響は疲れているだろうし、響ならきっとやってくれる……、響に徹夜で教えれば何とかなるかもしれない。などと、ズルズルと引き伸ばしてしまっている。

 しかし、今回は調と切歌が編入してきて、テスト勉強を頑張っている。今回こそは響に勉強をさせようと、周りを巻き込むことにした。

 

 

 響はテスト前になると、鍛錬のやる気がより一層増し、板場(アニメちゃん)達の勉強会へのお誘いを断って、教室から出ようとした。

 

「ぐへっ!」

 

 響は廊下から入ってきた人にすれ違いざま、首を摘まれた猫のように持ち上げられ、教室の中へ連行された。

 

「こんにちは流さん」

 

「こんにちは未来、板場達もこんにちは」

 

「な、流先輩!?」

 

 その場にいる他三人にも挨拶をして、響を未来に渡す。未来は流に言われて()()()()()()といった感じに、響を拘束するために背中から抱きしめた。

 

「あれ? 流がいる」

 

「プロデューサースタイルの流が何故リディアンの中にいるのデスか? あー、わかりましたよ。女子高生を眺めるた」

 

 調と切歌も板場達の勉強会に誘われているので、彼女達の元へ向かうと流がいた。切歌は余計な事を言い、流が投げた針が首に刺さっていて、調に倒れ込むように意識を失った。しっかり調がキャッチした。

 

「授業にはついていけてる?」

 

「バッチリ」

 

「ならば良し」

 

「それで流さんはなんで学校にいるんですか? もしかしてアニメみたいに、学校に敵が侵入してたり?」

 

「そんな事が起きていたら、呑気にお話なんて出来ないと思いますよ」

 

「なんかヒナは知ってるみたいだけど」

 

 三人娘はそれぞれの思ったことを口にして、安藤の言葉で未来へと視線が向く。

 

「響には今回は頑張ってもらおうかなって。響が逃げられない人を呼んでおいたの」

 

「未来がまさかの裏切り!?」

 

「調ちゃんや切歌ちゃんに大差をつけられてもいいの?」

 

「それは……よくないと思うけど」

 

「勉強しよ?」

 

「…………はい」

 

 背後にいる未来の圧力に屈した響は、勉強会へと参加することになった。

 流は気絶した切歌をお姫様抱っこで運んでいるので、気配を消していた。なので他の人にバレることはない……はずだった。

 

「流!……なんで切歌を抱き抱えてんだ!」

 

 前方から友達といるクリスが声を掛けてきた。流は周りを見る。しっかり気配を消せている。クリス、そして翼や了子達が持つ女性の勘というものを、改めて恐ろしいと思う流だった。

 

 綾野さんに五代さん、鏑木さんの三人、クリスがツンツンしていても、呆れずに付き合ってくれている人達に流は挨拶をしたあと、クリスはこちらに合流して一緒に家へ帰ってきた。

 

 

 

「あたしも一応テスト勉強しようかね」

 

 クリスは一度着替えてくると言って部屋に戻っていった。調と切歌はそのままリビングの席に座り、皆と同じようにテスト勉強の道具を出している。

 

『実際、流とクリスが対策問題を作ればそれで終わりだろ?』

 

『でも、それは点数が取れただけで、知識にはなりませんよね?』

 

『いいじゃん。響はどうせ勉強しても頭からポーンって飛んでいくだろうしさ』

 

『抜けるとしても、しっかり勉強すべきです』

 

『面倒なテストを終わらせるだけで十分だ』

 

『知識をつけるべきです!』

 

『点数が取れればいいんだよ』

 

「お前らが争ってどうする」

 

 流は人数分のお菓子と飲み物を用意している時、奏とセレナのテストへのスタンスで喧嘩を始めたので止める。

 流がセレナへのお仕置きを躊躇しなくなってから、二人はよくどうでもいい事でも喧嘩するようになった。その喧嘩も遊びみたいなものなので、二人は楽しそうにしている。

 

『なら、流はどっちがいいんだ? その場の点数? それとも知識?』

 

『もちろん知識ですよね!』

 

「今回はテストの点数を取らせて、その後圧縮して勉強させる。これが正解」

 

『狡じゃねえか! どっちかって言ったろ!』

 

『女性の二択を選ばないから、流さんは童て……』

 

 流はセレナを無理やり欠片に押し付けて、前世の部屋と同じ見た目の空間に飛ばした。

 前に何度か流が奏と入った空間は、霊体二人の感覚ではガングニールの欠片の中にあるらしい。前に奏がやっていたように、欠片に霊体である二人を押し付けると、部屋の中に押し込むことが出来るようだ。

 

「これホント便利だな」

 

『セレナも遠慮がなくなって、いい感じになってきたのに、一々下品というか、覚えた言葉をすぐに使いたがるというか』

 

「セレナと中で遊んでてよ。勉強とかしてるの見ててもつまらないでしょ?」

 

『はいはい、じゃあまた。あたし達が見えない調に今の行動見られてたぞ』

 

 奏はやれやれとポーズを取り、流に片手を上げてから欠片の中に入っていった。

 奏の言葉を受けて、流は調達のいる方をちら見すると、調は目を逸らした。

 

「俺の奇行は今に始まったことじゃねえし、まあいいか」

 

 奏に殴り飛ばされたり、セレナにイタズラされたり、奏とセレナに襲われたりした時に、みんながいるのに対応をしたりすることもあったので、流の奇行は今に始まったことではない。

 

 

 クリスがカリオストロには負けるけどだいぶ際どい、家でしか着ない服を着て、リビングの空いている席に座った。板場達三人がそんなクリスに驚いているし、流も『秋桜祭』以降、どうしてかそういうクリスを直視出来なくなってしまったが、今は特に問題ではないので放置されている。

 

「まずは響がどれだけ馬鹿なのか測るために数問解いてもらう」

 

「バカって、まあ師匠や先輩みたいに頭は良くないですけど……それでも高校は行ってるんですからね!」

 

 響は珍しく流の挑発に乗ってきた。しかし、流に学歴の事を揶揄ってはいけない。

 

「もしかして煽ってる? もし煽ってるなら、響だけお菓子をあげない」

 

「ごめんなさい! 私が悪うございました!」

 

 響はその場でテーブルに頭をぶつけながら、頭を思いっきり下げた。今回のお菓子は最近テレビでやっていた並ばないと買えない洋菓子なので、響は流に従う奴隷と化した。

 

 響が問題を解いている間に、調と切歌のよく分からないところを聞いて、それの解説をしていた。それをしていると、板場達も流に質問するようになり、クリスの機嫌が少し悪くなる。

 

「はい、時間終わり」

 

「……えっと」

 

 流は響に渡した問題を見て、響が何故勉強が遅れてしまっているのかがよくわかった。2期の戦いはなかったが、1期自体は響はフルで動いていた。あの時に勉強に置いてかれたのだろうと流は理解する。響は一度聞けばわかるタイプではなく、わからない所は粘って習得するタイプみたいなので、二課の忙しさで放置してしまったのだろう。

 

「響はアホだけど、補填すれば赤点程度なら余裕で回避できるようになるはずだな。まあ、このくらいなら今回は点数を取るだけの勉強をすればいいか」

 

「学校に行けてて、少し抜けた程度でボロボロになるなんて情けないけどな」

 

 学校に色々あって行けてなかったのに、成績自体はいいクリスが響をいじめ始める。乙女的理由でストレスが溜まったので、それの発散、そうは八つ当たりともいう。

 

「クリスちゃん辛辣!」

 

「クリスも虐めるな。響はこの問題の解説を読んでおいて」

 

 クリスは頬をふくらませて、そっぽを向いてしまった。クリスは後で対処するとして、響に作っておいたプリントを渡す。

 

「……あれ? これって一年二学期期末って書いてありますけど」

 

 未来が響に渡されたプリントを見ると、確かに問題のはじめにそう書いてある。響達が今度受けるテストも、一年二学期期末テストだ。

 

「おっま! まさか忍者をして盗んできたのか!?」

 

「なわけねえだろ。二課経由で何年か分の過去の問題を貰ってきて、それを見て作った。細かい所は変わるだろうけど、教科書の範囲が同じなら、問題なんてさほど変わらないでしょ? 多分……変わらないよね? 俺学校行ってねえからわからねえけど」

 

「変わんないだろ。そっか、リディアンは二課のダミーカンパニーの一つだからから、融通が効くのか」

 

「そうそう」

 

 クリスが言う通り、リディアン音楽院は二課のダミーカンパニーの一つなので、この程度は造作もないのだ。ただ問題入手の手続きをしてくれた友里が、

 

「学校に入りたいなら、手続きしますけどどうします?」

 

 と聞いてきて、流は微妙な気持ちになった。クリス達がもし大学に入るなら、入ろうかなと思う程度には虚しくなった。

 

 

「こんなチートがあったなんて!」

 

「次回はここまで露骨には手伝わないからね」

 

「はい! 今回こそ、赤点課題なしで乗り切るぞー!」

 

 期末テストが始まるまで、放課後は毎日響達は流の部屋にやってきて、勉強会を開いた。その甲斐あってか、予測問題がよかったのか、響はテストでいい点数を取ってしまい、職員会議で取り上げられるほどだったらしい。

 

 

 

 

 テストお疲れ様会がまた流の家で開催された。だが、考えてほしい。運動もせず、流がカロリーオフのお菓子を出していたとはいえ、毎日のように少女達はお菓子を食べていた。

 

「……なあ、クリス以外太った?」

 

「「「「「「「…………」」」」」」」

 

 クリス以外の少女達は自覚があったのか、気になる所を抑えている。そんな中、切歌だけ抑えている場所が少しおかしい。

 

「そりゃそうだよな。あたしだって、朝起きて流のランニングに付き合って保ててたくらいだし。そうなるわな」

 

「なんでクリスちゃん言ってくれなかったの!?」

 

「クリスだけ抜け駆けとか酷い!」

 

「アニメなら勉強で頭を使ったから、太ることなんてないのに!」

 

「目を逸らしていましたのに」

 

「ビッキー達につられてやってしまった……」

 

「流は私達を肥えさせたのだから、責任を取るべき」

 

「そうデス! これは絶対に許されない!」

 

 一部はクリスに詰め寄り、一部はその場で嘆き、一部は流に当たった。

 

「いや、俺言ったよね? 食べたいって言うから出すけど、朝走るくらいしないとやばいよって」

 

「お前らはガリガリだったんだから、太った内には入らねえだろ。板場達はヤバいけど」

 

「そうそう、調も切歌もこれでやっと正常値を超えたくらいだろ?」

 

「そんな事言ってもデスね、最近はよく食べるから()がきつくなるんデスよ! ここに来て買い替えが二度目デス! というか、なんで私達のヘルスデータを!?」

 

 切歌は自分の胸を抑えていると、流が切歌の身体データを言い始め、ツッコミを入れている。もちろん隣にいる調が膝をついた。

 流は自分の家に住んでいるクリスとF.I.S.装者組の健康管理を引き受けているので、身体データはあらかた頭に入っている。

 

「装者の健康管理が俺の仕事でもあるし」

 

「切ちゃんは私をいつも置いていく……現実は残酷で偽善に満ちている」

 

「どうしたんデスか? 調?……待ってくださいよ!」

 

 切歌の手を弾いて、調は自分の部屋にゆらゆらと帰っていった。

 

「流さん! ダイエット講座を開いてください!」

 

 二週間ほどでみんなの体型が元に戻り、流は付き合いダイエットから開放された。

 

 

 **********

 

 

 響や未来と仲良くなったり、了子がフィーネを捨てたり、F.I.S.の人達と同じ屋根の下で暮らし始めた年も残り一ヶ月を切り、クリスマスが近づいてきている。11月7日にあった未来の誕生日は盛大に祝われた。

 

「S.O.N.Gになったけど、二課と全然変わらないよね」

 

「そりゃそうよ。ほかの奴を入れるとしても、使い捨てのエージェントだけ。藤尭くんだって友里ちゃんだって、相当なエリートなのよ?」

 

「そうなんだけどさ、ずっと二課にいるせいでそういう感覚がね」

 

「流は特殊だもの。風鳴に生まれたわけでも、シンフォギア装者でもないのに……」

 

 流と了子は国連に提出する、シンフォギアとは何ぞや? という報告書を二人でまとめていた。

 

 だが、今回の話に流は不要だ。

 

 

 

「第一回、シンフォギア装者の集い!」

 

 響の掛け声に翼以外の装者が拍手を送った。ちなみにここはリディアンの近くにあるファミレスの一角で、翼とマリアは伊達メガネを掛けている。

 

「色々待って欲しい。装者で集まる事は良い事だと思う。仲の良さは連携に関わるからな。だが、いきなり集められたので、何をするのかを教えて欲しい」

 

「えっとですね、これはクリスちゃんの提案なんですけど、私達が集まる時って流先輩がいるじゃないですか」

 

「私とクリスと調と切歌は彼と暮らしているから、装者で集まる時は大抵あの家だったものね。そういえば、流がいない場所でこの7人で集まることって」

 

「初めて」

 

「何故か、しれっと居たりしますからね」

 

「そうなんだよ。流がいると話せない事とか、流がいないからこそ出来る話とかをしようと思ってな」

 

 いつもは仕切りなどをしないクリスが立ち上がり、この場の目的を口にした。

 

「雪音が流なしで何かをするのは、とても珍しい事ではないか?」

 

「クリスちゃんは流先輩に引っ付いている子犬だからね」

 

「おい! バカは何変なこと言ってんだ!」

 

「待って待って! 引っ付いてくる子犬って言い方は流先輩が言ってたことだから! 小動物みたいで可愛いって」

 

「そ、そうか……ならいいんだ」

 

『『『『『チョロい』』』』』

 

 皆の意思が一つになった瞬間だった。

 

「なんか話したい事とかあるか? あたしは話題がなくなったら話すわ」

 

「ならいいですか?」

 

「許可を取らないで言ってもいいんじゃない? 誰も駄目とは言わないわ」

 

 未来が手を上げて、マリアの言葉に頷き、話し始めた。

 

「皆さんってシンフォギアのあの格好は、恥ずかしくないんですか?」

 

「ん? あの格好?」

 

 クリスの言葉に続くように、響以外の全員が頭をかしげた。響と未来以外はシンフォギアといえば、あの格好なので、いまいちよく分からないようだ。

 水泳のアスリートがプールで水着をチラ見される程度の感覚でしかない。要は、特に何も思っていない。

 

「あー、確かにそうだよね。私も初めはあれ? 露出高くない? って思ったよ」

 

「だよね! 私の時は流さんが結構見てたから、尚更恥ずかしくて」

 

 響の相槌に未来は同意を得られたことに安堵した。周りはそれでやっと意味が理解できた。

 翼は幼い頃から纏っていたし、クリスは纏わないといらない物として扱われるので必死だった。F.I.S.組も自分達の価値を示せるのがシンフォギアだったので、そんな気持ちは捨て置いてある。

 

「あれは一応、神獣鏡が未来の負担にならない様なギア展開がされたか確認する意図があったはずよ。まあ、多分胸を見ていたのだと思うけどね」

 

「流はおっぱい星人」

 

「隙あらばちら見してくるデスからね」

 

 F.I.S.組は家での流を思い浮かべて苦笑している。流は気が付かれている事はわかっているのに見ているので、なおタチが悪い。

 

「今更だな。幼い頃から見られているが故に何も思わん」

 

「流先輩って昔からおっぱい星人だったんですね」

 

 クリスは機嫌が悪くなる。

 

「流の胸好きは血の繋がった父親譲りと言っていた気がするな。後は奏の洗脳だったはずだ」

 

「ん? そういえば流の両親はノイズに殺されたんだよな? そこら辺の話って、流に聞くのは何となく感じわるいじゃん。先輩が知ってるなら教えて欲しいんだけど」

 

「……まあ、ここにいる者達は流に過去を根掘り葉掘り調べられた者ばかりだ。この程度なら言っても問題なかろう」

 

 翼が弦十郎から聞いた流の話をした。最後にこの事件は本当に了子は関わっていない事も語られた。

 

「それで奏さんの洗脳と言っていたかしら? 何をしたの?」

 

「奏は流が好きだったのだが、流はその気が一切なかった。小学生の頃から奏は大きい方で、自分の体に興味を持たせるために、流の部屋に胸の大きな本を置いたり、寝ている横で呟き続けたり、色々していたようだったな。あとは……」

 

「私を命懸けで守ってくれた奏さんの印象が崩れそうなので、聞くのやめますね」

 

 響は自分の命の恩人のかっこいい像を壊さないために、話の途中で耳を塞いだ。

 

「…………のような涙ぐましい努力も、奏が死んでしまってから叶ったのが少し辛いところだな」

 

「死んだ後に叶った?」

 

「……いや、この話は止そう」

 

 翼はクリスの気配が剣呑になってきたのを察し、これ以上は危ないことを察知した。翼は奏の死んだあの場所で、流が一度だけ愛を囁いていたのを聞いた。だが、それを今言う意味は無いだろう。もう奏はいないのだから……と翼は思って口を閉じた。

 

「ねえ、切ちゃん」

 

「なんデスか? 調」

 

「結局流の話になってるよね」

 

「あの人の事を出しておけば、とりあえず話題になりますからね」

 

「確かに。料理のお話とかもしたいけど、この中で少し出来るマリア以外は根本的に駄目だし」

 

「私は食べる専門なので」

 

 調と切歌がボソボソ話していると、他からの話題提供がなくなったので、クリスが相談を始めた。

 

「特になさそうだから、私が話すわ。というか、相談みたいなものになっちまうんだけど。流の態度が最近余所余所しいというか、無視されることが多くなったんだけど、何か知らないか!」

 

「……結局流の話なのね。いつからそんな風に感じ始めたの?」

 

 マリアは共通の話題はそれしかないのか……と頭を抱えたくなったが、ここにいる人達は趣味も割と違うので、致し方なしと考え、クリスの話を進めるように務める。

 

「秋桜祭の後だな。お風呂に侵入しようとしても、気配を察知されて逃げられたり、ベッドに入ろうとしても、何故か立って寝てたり。最近目を直視してくれないし、距離を半人分くらい開けてたり。もしかしてあたしは嫌われちゃったのか!?」

 

 テーブルをダン! と叩いて、クリスはうなだれた。

 

 避けられている理由は流がクリスにときめいてしまったからであり、嫌いとは逆ベクトルなのだが、この場で異性に恋をした人はいないので、答えに辿り着くことが出来なかった。


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