戦姫絶拳シンフォギアF   作:病んでるくらいが一番

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マリア・カデンツァヴナ・イヴは8月7日が誕生日です。おめでとうございます!

忙しくて昨日に投稿できなかったので、時間で8月7日を表しました。

時系列はごちゃごちゃですがお許しください。


#番外02 『マリア・カデンツァヴナ・イヴ』

「ハアアアアア!!」

 

「使い方がダメだって」

 

 流はマリアから受け取ったアガートラームの短剣を逆手に構え、アガートラームを纏ったマリアの一撃を受け流す。煙玉の中での戦闘で、煙の外からは見えなくなるが、マリアは常に接近する事で()を認識し、声を上げて流を攻撃し続ける。

 

「隙だらけデス!」

 

 マリアに押されるように煙から出てしまい、背中を晒した流に向けて、切歌は鎖を射出する。

 

「待って切ちゃん、それは!」

 

【断殺・邪刃ウォttKKK】

 

 切歌が拘束した流はすぐに溶けて消えた。マリアに押されたように出てきた流は分身であり、その分身を押し出す形で、本体は未だ煙の中にいた。

 

「早く射出した鎖を戻さないと! こうなるぞ!」

 

「ちょっと、それは駄目デスよおおおおお!!」

 

 流はすぐ横に飛んできた鎖を無理やり引っ張って、一本背負いの要領で切歌を調の方にぶん投げる。

 

「切ちゃん!」

 

 調は飛んできた切歌を受け止めようとする。流が投げた切歌に追走するように、こちらに来ているので迎撃するために攻撃をする。

 

【α式・百輪廻】

 

 流はマリアの短剣やクナイ、腕や脚で走りながら丸ノコを無効化する。マリアも流を止めようとするが、射線上に調がいるため、短剣を放射することが出来ない。

 

 調が切歌を受け止めると同時に、流は調達の下へたどり着き、調に丸い玉を投げる。投げられた玉を調は反射的にヘッドギアで切り裂くが、その玉は閃光玉だった。

 

「きゃあああ!」

 

 調は目を痛め、マリアはギリギリ防げた目を開ける。

 

「さあ、武装解除しろ。さもないと、調の首に短剣が生えるぞ? あと胸を揉む」

 

 切歌を踏みつけ、調の首にアガートラームの短剣を添えて、調の胸にも手を据えている変態()がいた。

 

「……切歌は駄目?」

 

「マリアからは見えないと思うデスが、流の靴から刃物が出ていて、私の首元にも添えられているデスよ」

 

「そう、なら負けね」

 

『マリアさん、調ちゃん、切歌ちゃんグループの降参宣言により、流くんの勝ちです』

 

 藤尭の勝利宣言で演習が終わった。終わりの宣言が告げられたのに、流は調から手を離さない。クリスがいないから、ふざけているのだろう。

 

「ギアを解除するから胸から手を離して。クリスに言いつけるよ?」

 

「はい、すみません」

 

 流は調の脅迫に屈して解放し、切歌を起き上がらせる。マリアも変身解除をしてから、三人の下へ歩いてきた。

 

「……私が敗因よね」

 

「そんな事ないデス! 私は分身だと見破れずに、調の邪魔までしちゃいましたよ……」

 

「敗因は私。切ちゃんはシンフォギアを纏っていたから、あの場で受け止めるのは悪手。あの程度の落下なら平気。γ式(ヘッドギア丸鋸)β式(ヨーヨー)で流を足止めして、マリアと挟撃するべきだった」

 

「そんな事を言ったら、流の投げモーションの時に私は一撃与えられたかもしれないわ」

 

「功を焦って、ジャバウォックを使った私が一番駄目駄目デスよ。二人は悪くないデス!」

 

「違う。私が悪い」

 

「いいえ、私が悪いの」

 

 三人は反省会から、自分ことが悪いという自らへの責任の押し付け合いを始めた。

 流は一人で自分の悪かった点を箇条書きにして、見る映画の選定とやる鍛錬を模索していた。三人が喧嘩になりそうな雰囲気である事に気がついた。

 

 流的には今回はマリアが悪いと思っている。まだアガートラームの変身経験が浅く、ガングニールと似た立ち回りをしてしまっていた。更に人間一人をこの三人で囲っても、まともに攻撃を出来る人は一人なので実質タイマンだった。

 

「誰が悪くても別にいいだろ」

 

「「「良くない!」」」

 

「……なら、敗因だった奴は今日の夕飯抜きな? ちなみに今日は風鳴から貰った高級和牛ね?」

 

「「「……」」」

 

「金があっても買うには権力が必要とかいうクソみたいな肉だけど、味は風鳴当主すらも唸らせる物なんだけどな〜」

 

 たまたま仕入れる機会があったとかで、風鳴八紘(やつひろ)から連絡を貰い、政府御用達の肉を購入することが出来た。

 流と風鳴当主(訃堂)はとても仲が悪いが、流と八紘は仲が良いほうだ。

 

 流はアニメのおかげで、八紘が翼に対してツンデレであり、翼の事を思って突き放していることを知っている。そして八紘を無理やり酔っ払わせた時の『翼に嫌われたあああ!!』というボイスはしっかり録音してあった。

 それを後日八紘が素面の時に聞かせた。八紘はいつものキリッとした顔からアホ面になり、色々あって流と仲良くなった。

 

 流が翼を盗撮して、楽しそうに笑う翼や友達と嬉しそうに話す翼、凛々しい翼から、怒ってシンフォギアを纏い流に襲いかかる翼まで、多種多様な翼コレクション画像を八紘に献上したとかそんなことは無い。

 仲良くする条件として、流は八紘の本性を翼に伝えないというものがあったり、政治的な約束事も絡んできたが、八紘とはお友達になった。

 今回はそのコネの一つが使われた。

 

「えっとですね、私は悪くないと思うデスよ。マリアが煙から上手くおびき出せなかったからでして」

 

「調のあの判断ミスは痛かったわね。あれさえ無ければ、もっと上手く行けていたはずよ」

 

「切ちゃんが悪い。あそこでジャバウォックは論外。ジュリエットかラプンツェルで良かった」

 

「いやいやいや」

 

「いやいやいや」

 

「いやいやいや」

 

「「「私は悪くない(デス)!」」」

 

「そう、誰も悪くないならそれでいいんだよ。さあ、帰ろう。その前にシャワーを浴びておいで。汗で服が引っ付いてエロいし」

 

 三人に殴られて流が倒れている内に、仲良くシャワールームへと向かった。三人が出ていくと、倒れている流の顔の上にセレナが着地しながら現れた。

 

「顔面に乗るな、あと黒とか狙いすぎ。くまさんパンツとかで十分だろ」

 

『一言が余計なんですよ、流さんは特に。あと別に何履いてもいいじゃないですか! お仕置きです!』

 

 セレナに足で顔面をぐりぐりされるが、最近は393からの顔面への正拳突きが多くなってきているので、慣れてしまい特にダメージはない。

 

「最近のセレナも割と一言多いけどね」

 

『知りませーん。私達の分のお肉ってありますよね?』

 

「ないわけないでしょ。みんなで食べた方が美味しいし」

 

『ですよね! そういう流さん()好きです』

 

「肉につられて好意を示す乙女とか可愛くないな」

 

『朝ごはんをたかりに来ていた乙女が好きな人が何を言っているんですか』

 

「奏? クリス? 響? 調? 切歌?」

 

『食欲旺盛な人多すぎませんか? シンフォギア装者って』

 

 食欲旺盛な乙女な一人であるセレナがボヤく。顔面から退いて、流に手を差し出して起こす。

 

「動くから別にいいんじゃね? あとさ、ずっと聞こうとして忘れてたんだけど、マリアの誕生日っていつ?」

 

 流の持つ装者のパーソナルデータには、流には教えたくないと言われたデータは表示されていない。スリーサイズや体重などは健康管理上必要なので、マスク化出来ないが、マリアだと年齢に関係する項目は見えなくなっている。誕生日もその一つだ。

 クリスはオールオープンだし、調も同じく、切歌は昔の住所などは隠していて、響のパーソナルデータは最近健康管理上必要なデータも見えなくなった。流は未来が何かしらの細工を了子に頼んだのではないか? と思っている。

 

『あれ? 知らなかったんですか?……今日ですよ』

 

「藤尭さん!」

 

 セレナの声を認識するのに何秒かかかり、理解するとすぐに動き出した。流は運動場を監視できる場所にいる藤尭に声をかける。大きな声を出せばマイクが拾ってくれる。逆に大きな声で喋らなければ、セレナや奏との会話を聞かれる心配もない。

 

『なに?』

 

「今日はもう帰る! やること出来たから!」

 

『……待って、これから有給を取った友里さんの代わりに仕事を手伝ってくれるって!』

 

「まじごめん。了子ママを使っていいから、では!」

 

 流は本気で走って運動場を出て、三人のいるシャワールームへ向かう。更衣室を抜け、シャワールームと更衣室を仕切っている扉を軽く開ける。

 

「急いでるから帰る。また後で」

 

「「「……きゃああああああ!!」」」

 

 流石にシャワーを浴びている無防備な姿は見られたくなかったのか、三人は悲鳴をあげた。今の流は急いでいるので、覗きこまずにそのまま更衣室を出て、近所のスーパーへと買い物に走った。

 

 

 **********

 

 

 流は急いで帰ると、ケーキを作りながら、セレナにマリアの好物を聞いた。

 

『マリア姉さんは何でも美味しそうに食べますから、トマトと熱すぎるもの以外なら何でもいいんじゃないですか?』

 

 とりあえず美味しい物を作る準備を始めた。流のただいまの声を発して、すぐにクリスが来なかったので、居ないものだと思っていたが、少しするとクリスがキッチンに来た。

 流の部屋からクリスが出てきたところをセレナは確かに見た。だが、乙女の仲間であるセレナはこの事は胸の内に仕舞おうと決意した。

 

「おかえり。今日はあの三人と演習だったんだよな? どうだった?」

 

「マリアがアガートラームに慣れてないから、連携が強みな三人の強さが引き出せてなかったね」

 

「実戦がまだないからしょうがねえな……それってケーキを作ってるんだよな? なんかのお祝いだったっけ?」

 

「マリアの誕生日だと、今さっき判明して結構焦ってる」

 

「あははは。流もたまに抜けるよな…………今日はあの馬鹿達とふらわーで夜飯食べてくることにする」

 

 調理をしながらだった手を止め、流はクリスの方を向く。クリスが流のパーティー料理を食べないで、外食をしようとするなど、今まで無かったことだからだ。

 

「んだよ」

 

「いや、なんで外で食うの? 怒ってるとかじゃなくて、なんか理由でもあるの?」

 

 流は捻らずに聞くと、クリスは流とは逆を向きながら話した。

 

「あたしの誕生日は二人っきりで祝ってもらっただろ? みんなが何故か予定があるとかで。その時にああ、あたしの居場所はここなんだって思えたんだ。居てもいい場所だって。今までだって思ってたけど、誕生日を祝われるってのは、なかなかにくるものがあるんだよ。あの三人で平和を改めて認識させてやりたいって思った。そこにはあたしは不要だろ?それだけ」

 

 クリスは流とは顔を合わせず、それだけ言うと玄関に向かっていく。その耳は真っ赤に染まっているのが、流には見える。

 

「クリスの居場所はここなんだから、飯食い終わったら帰ってこいよ」

 

「ああ! 行ってきます」

 

「行ってらっしゃい」

 

 クリスは振り返らずに手を振ると、家から出ていった。

 

「……やるか」

 

 

 

 夕食の時間になってやっと三人は帰ってきた。クリスが街の案内とかで連れ回していたらしい。そのあと響達を連れて、ふらわーに入っていったとか。クリスが時間を稼いでくれたおかげで、料理は全て完成した。

 

「……え?」

 

「あれ?」

 

「お祝いデス!」

 

「マリア、誕生日おめでとう」

 

 三人がリビングに入ると、テーブルの上には誕生日を祝うに相応しい料理が並んでいた。響や他の人がいないので、少しボリュームは少なく作っている。

 

「誕生日とかの項目は隠していたはずなのだけど」

 

「俺を舐めるな」

 

「私は誕生を祝われる資格はないの。作ってくれたのに、ごめんなさい」

 

 マリアはそれだけ言うと、自分の部屋に戻ろうとする。流は引き止めて、マリアを抱きしめて、耳元に口を持っていく。

 

『「マリア姉さん、誕生日おめでとう」』

 

 流は何かが引き裂かれる感覚を味わいながら、セレナと一緒にマリアの誕生を祝福した。流がセレナの声でお祝いをした事にマリアは戸惑い、彼女の目から涙がこぼれ落ちる。

 

「な、なんで、セレナの声を真似してそんな事言うのよ! もうその声で、祝われる事なんて絶対にないのに!」

 

 マリアはセレナを犠牲にして、自分だけ生きて、歳を取っていく事に、罪悪感を持っていた。だからこそ、誕生日は祝われないように、データを隠していたのだとセレナが流に語った。

 

「セレナなら絶対にそう言うから」

 

『私なら絶対にそう言うよ、マリア姉さん』

 

「なんで会ったこともない流がそんなことを断言するのよ!」

 

「何となくそう思えたから」

 

 何度もセレナがここに居ることを告げようとしても、言語化出来なかった。もし言えるのであれば、すぐに伝えてあげたい。だが、世界は許さない。

 

「もう、本当に訳がわからない。なんでそういうずるい事ばかりするのよ」

 

 マリアは流の肩を借りて涙が枯れるまで泣いた。流は泣き止んだマリアが少し大人になったように見えた。

 

 

 

「「「『マリア、誕生日おめでとう!』」」」

 

「ありがとう」

 

 マリアが泣き止んだ後、お腹と背中がくっつきそうな緑の乙女がいたので、すぐに席につき、もう一度、今度はみんなで誕生日を祝った。

 今度はマリアは笑顔でお礼を言って、ロウソクを22本消した。

 

「これでマリアも22歳だな……」

 

「何よ」

 

「22でも、23でも、それ以上になっても養ってあげるからね」

 

「流ぇぇええ!!」

 

 流は今までで一番優しい顔をマリアに向けて、マリアはアガートラームを纏うのだった。

 こうして騒がしいマリアの誕生日は幕を閉じた。




今日の本編が投稿できるか怪しいところですが、投稿できるならいつもの時間に投稿します。

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