戦姫絶拳シンフォギアF   作:病んでるくらいが一番

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区切るタイミングが分からなかったので、中途半端なところになってしまいました。
もうそろ久しぶりに戦闘が書ける。錬金術師の戦闘描写わかんない。特にサンジェルマン。


#38『メールの嘆き』

「これどうすんの? 当分噛み跡が残るやつだぞ」

 

『カッコイイですよ? その噛み跡』

 

 セレナは自らがつけた噛み跡を撫でながらそう答え、奏に引き剥がされた。

 

『な訳ねえだろ。ほんとセレナはぶっ飛んだ行動を平気ですから困る』

 

『奏さん、クリスさんも了子さんもこの程度ではありせんよ?』

 

『最高にぶっ飛んでる二人を例に出すな!』

 

 車を西へ向けて走らせる。ドロミテでお土産を買ったりや写真をいっぱい撮り、一部は郵送、一部はバビロニアの宝物庫に入れておいた。

 

『……あっ! バビロニアの宝物庫って流は簡単に開けられるよな? 中のノイズも流には逆らわねえ。なら、あの場所に物を置いたり出来るんじゃねえの? タヌキの○次元ポケットみたいな感じに』

 

 聖遺物の発動を検知されてしまうだろうが、日本では割とよくあることなので、特に気にせず今必要ではないものをどんどん入れた。ここが日本ではない事は特に気にしていない。

 

「水の都くらいまで行けば交通機関が発達してるし、そこでセイントっていう錬金術師に連絡するから」

 

 キャットファイトを始めた二人の頭をチョップを入れて止めて、二人に連絡事項を伝える。

 

『白髪のあいつだよな? なんかあたしを見た気がするんだよな』

 

 セイントと会った時、出現した奏の方へ視線を動かしていたことを奏は言っている。

 

『あの時は奏さんが外に出るなって言ってたので、出なかったんですけど、そんなに警戒するほどの人なんですか?』

 

「結構やばい感じはした。あの時の俺では全く勝てる気がしなかったからね。今は聖遺物の侵食も進んだし、映画で錬金術師や魔法使いとの戦い方をがっちり覚えたから、負けはしないと思うけど」

 

『負けないけど勝てないだろうな。テレポートっていう反則がある限り』

 

 奏はあの場で消えたのではなく、姿を隠していただけだったようだ。前世の家のような空間に入ると、流の周りのことを見ることは出来ないはずだから、テレポートを見ているということは、居たのだろう。

 

『……流さんはなんでテレポート使わないんですか?』

 

「え? 忍術も武術も知ってるけど、テレポートは無理だよ」

 

 セレナが突拍子もない事を言ってきた。

 

『バビロニアの宝物庫に入って、違う場所に入口を作ったりできますよね? そこから降りればいいんじゃないですか』

 

「ああ、あれは開いてノイズを送ることは出来るけど、俺自身があの入口を通ろうとすると、体がぶっ壊れるんだよ。シンフォギアとか纏ってたら違うかもしれないけど、あと通ろうと思えば通れる手段はあるが、簡単には使えないんだよね」

 

 前にセレナが言ったことをやって内蔵がズタズタになった事がある。

 

『なるほど。でも本当に危なくなったらそれを使ってくださいね? 相応に強い逃走手段なんですから』

 

「それはわかってる。秘密兵器が秘密なまま、死んで終わるなんて事にはしないよ」

 

 更に仲良くなった気がするセレナと、セレナへの遠慮が完全に消えた奏と楽しく話しながら、数時間の運転をした。

 

 

 **********

 

 

『ドーナツ美味しいです……でも、観光しかしてませんよね?』

 

「今から進めるからいいの。鎌倉だって、まともな情報を寄越さなかったんだし」

 

 水の都に着くと、車を止められるところを探した。道中何人かに聞いて、美味しいと言われているカフェに向かった。

 車の中でも食べていたのに、平然と軽食を頼むセレナと奏。もし死者蘇生に成功して、体のある時に同じ事をしたらデブりそうだなと思ったが口にはしない。

 

 流は二人に足を踏まれた事は言うまでもない。この二人はクリス並に勘が鋭いので、ばれること覚悟だった。

 

「今から連絡するから、静かにしててね」

 

 二人が頷いたのを確認してから、流は『セイント』のアドレスに通話をする。

 

『…………風鳴流か。連絡を寄越したという事は、私達の仲間になるだな?』

 

「いやいや。セイントと話したいから電話したとか……」

 

『ブチン』

 

 セイントは電話を一方的に切った。

 

「……」

 

『あはははははははは。アホじゃね? 相手は秘密結社の人なんだろ? 錬金術師って言ったら何らかの実験とかで忙しいだろうし、それなのに「話したいだけ」とか切られるに決まってんだろ』

 

『……ジョークなのは分かってますけど、セイントさんには通じなかったみたいですね』

 

 奏に肩を叩かれ、セレナには可哀想なやつを見る目で見られている。

 

「和ませようとしただけなんだけどな」

 

 流はもう一度連絡を入れた。コール音がなる前に、電話に出てくれた。

 

『……要件は?』

 

『今水の都にいるから会わない? 俺に情報をくれ』

 

『……はい? 貴方は第二の特異災害対策。そのような人がおいそれと外国に出てこれるのですか?』

 

「日本政府は俺のわがままを通すしかないからね。俺の身柄を云々言われたけど、俺を拘束できるヤツらを連れてこいって言ったら、それ以上は何も言わなかったよ」

 

『そうですか……わかり『サンジェルマン! ちょっと、サンジェルマン、聞いてるの?』……』

 

「……」

 

 通話越しに流も聞いたことのある声が聞こえた。水色の髪にクリスやマリア超えのでかい胸のカリオストロ。彼女の声が、電話先から聞こえてきた。

 

『『まじ最悪。プレラーティの手伝いに行かされたじゃない? ほんとキャロルって頑固だし、ガリィはボロクソ言ってくるし。もう絶対に手伝いになんて行ってあげないんだから!』……カリオストロ、少し黙りなさい』

 

 サンジェルマン……サン、ジェルマン……セイント、ゲルマン、Saintジェルマン……Saint(サン) German《ジェルマン》。

 

 セイントは名前をもじったと言っていた。文字っている訳では無いが、前半をつづり通りに読んだのがセイントだったのだろう。

 そして嬉しい事にサンジェルマンとカリオストロは同じ組織だったようだ。これで日本に来る、来ていた錬金術師の組織は今のところ2つに減った。三組織連続襲撃などという事はないようだ。

 

「なあ、サンジェルマン。会うの? 会わないの?」

 

『会おう。勧誘できるチャンスでもあるからな。それを棒に『あれ? もしかして今の声って流? 久しぶりじゃない……ああ! セイントって貴方は言ってたけど、サンジェルマンの事だったのね。偽名を使うなら、始めから言っておいてくれないと』……カリオストロ? 何故貴方が風鳴流を知っているのですか? 彼との接触は誰にも言っていないはずですが?』

 

 電話先で二人は会話を始めた。

 

『え? いや〜、サンジェルマンのお手伝いをしようとして、執務室を見てみたら、男の子のパーソナルデータが置いてあるじゃない? 気になったから会いに行ったのよ』

 

『私に東京へ飛ばして欲しいと言った時のことですね。ですが、貴女は友達(キャロル)の働く場所を見てみたいと言っていましたよね? 嘘をついたのですか?』

 

『あはは。キャロルの事もしっかり気になっていたのよ。流の事も同時進行だったけどね』

 

「……」

 

 流は無言でサンジェルマンとカリオストロの会話を聞いている。この二人のいる組織はキャロルの世界解剖にも手を貸している。

 だけど、キャロルの世界解剖が完成すれば、文字通り世界が解剖されて世界が終わる。何故自分達をも殺してしまうような事を手伝っているのだろう?

 

 まずキャロルの計画はバレると不味い部分が多すぎる。それを少しでも把握しているということは、この二人は錬金術師としては一流。キャロルは手が必要ならホムンクルスに知識を転写すればいい。それをしないで他に頼るという事は、それ相応の実力があるのだろう。

 キャロルが手を借りるほどの敵。しかも、流は彼女達の実力を詳しく知らない。

 

 あと最初に出たプレラーティという名前。話の流れからしてキャロルの手伝いをプレラーティという人が行っていて、カリオストロもそこに向かった。

 キャロルの計画で他人が手伝える場所といえば、チフォージュ・シャトー建造か、想い出を採取する生贄の提供のどちらかだろう。運搬のために錬金術師が二人も必要とは思えないので、シャトーの建造を手伝っているのかもしれない。

 

『……カリオストロが嘘をついていないことはわかりました。ですが、貴女は色々と話すべきではない事を話すぎ。今通話中ですので、少し待っていてください』

 

『もう、わかったわよ。そんな怖い顔しないでちょうだい。流、また今度ね〜』

 

 コツコツとヒールが離れていく音がして、扉の開閉音がした後にサンジェルマンは話し始めた。

 

『……ロンドンに来てください。私も色々忙しいので、予定が空いているのが少し先ですね。こちらで1週間ほど滞在してもらうことになります。宜しいですか?』

 

「数日はここら辺の観光してるから、三日ほどそちらで待つよ」

 

『わかりました。では追って詳細を連絡します』

 

 事務的な話が終わると、サンジェルマンは電話を切った。少し怒っていたように思えるのは気の所為ではないはず。カリオストロのご冥福をお祈りします。

 

「何となくサンジェルマンが苦労人ポジションに思えたわ」

 

『これでプレラーティって奴も問題児なら、凄く苦労してそうだよな』

 

『マリア姉さん達を惑わした組織なので、どうでもいいです』

 

 セレナは怒りながら、奏のタルトを勝手に食べた。奏も怒り、バトルに発展したとかしてなかったとか。

 

 

 **********

 

 

 メール一覧

 

『クリス

 海外の水は日本みたいに飲んじゃダメだぞ? しっかりキャップの締まってるミネラルウォーターを飲まないと腹下すからな。それにチップは……今のヨーロッパはどうなんだ? あと日本とは違って…………』

 

『響

 先輩! お土産、期待してます! 食べ物がいいです!

 あと未来が私が料理を出来ることから手伝いますって言ってますよ』

 

『マリア

 流は欧州にいるのよね? ロンドンに私達はいるから、もし余裕があって、来てくれればもてなしてあげるわ。私のお金で!』

 

『調

 たす……けて。響さんは自由すぎるし、未来さんは流がいないから料理を手伝おうとして、味付けに手をつけてくる。、が掃除を手伝おうとして、逆にごちゃごちゃにしちゃうし、この家大き過ぎ。クリス先輩は先輩が起こさないと起きないし、了子さんは入り浸って小姑みたいにイビってくる。早く帰ってきて、疲れた』

 

『切歌

 こっちは平和デスよ。調のご飯も美味しいデスし……でもクリス先輩が携帯ばかり気にしてて少しイライラしてますね』

 

『翼

 櫻井女史に自分から連絡を入れてくれ。私のところや多分雪音へ、流に連絡をする代わりに何度も連絡が来る』

 

 流は了子から来たメールに寒気がしたので、一通目以降開いていない。

 

 

 **********

 

 

 翼が卒業してからすぐに、マリアと共に日本を発ちロンドンに行った。鎌倉の腰巾着達はその行為にキレていたが、流が表のことや裏のことも、防人としての務めを全うしているので、翼本人に文句を言う奴はいなかった。

 

 現在翼は歌番組やコンサート、バラエティ番組やバラエティ番組、バラエティ番組に出るなどしている。コンサートは認定特異災害ノイズをはじめとする、超常脅威による犠牲者の鎮魂と、遺族の救済を目的に企画されたチャリティライブイベント「LIVE GenesiX」に参加している。

 マリアはアイドルをしているが、翼ほどバラエティ番組には出ていない。S.O.N.G.のエージェントとして、有事の際にすぐに動けるように色々と工作をしている。

 

 そんな二人がいるロンドンに、セイントではなくサンジェルマンが用意した飛行機のチケットを使って向かっている。

 

『メールにもあったけど、翼とマリアはロンドンにいるんだよな?』

 

「そうだよ。翼はまたバラエティ番組の撮影みたい」

 

『翼さんのバラエティは面白いですからね。翼さんの硬い性格に対してトンチンカンな解答。普通の質問をするバラエティも、ズレた事を答えて笑わせてくれます』

 

『あれも一種の才能だよな』

 

「あんまり言ってると、翼が」

 

 流が注意しようとすると、端末にメールが届いた。流は誰からのメールかなんとなく察しながら開く。

 

『私を侮蔑したか?』

 

 奏とセレナはこの話題をやめた。流は翼を褒めちぎったメールを送って、無理やりやり過ごした。内容的には、翼はバラエティよりも歌姫としてテレビに出た方が映えるなどの事を書き連ねた。

 

 空港に着くとサンジェルマンの使いの人がいたのだが、それとは別にもう一人いた。

 

「おはよう。元気にしてた?」

 

『誰だよこのおっぱい』

 

『誰ですか? この露出狂女』

 

 カリオストロもいた。

 

 どうやらサンジェルマンの使いはカリオストロに流を連れていかれると不味いようで、カリオストロを説得しているが、彼女は聞く耳持たない。

 

「カリオストロはサンジェルマンが用意した宿の場所知ってんの?」

 

「知ってるわよ。流だって、こんな知らない男よりも、知り合いの女性の方がいいわよね?」

 

『は? 流はそっちの男の方がいいに決まってんだろ』

 

『流さんはチラリズムを楽しむ人ですから、こんなあからさまな露出狂を選びませんよね?』

 

 流は知っているカリオストロを選ぼうとしたが、結構キレてる奏とセレナには逆らえないので、男を指さそうとした。

 

「……」

 

 カリオストロの手に水色の光が溜まり、その光を男に向けて投げ飛ばす。光は光線となり、男を吹き飛ばした。

 

「……あら〜、あの人は体調が悪いようで気絶しちゃったわね。しょうがないから、私が案内してあげるわ」

 

『なんかこの女無理だわ!』

 

『嫌な臭いがプンプンします』

 

 カリオストロは奏とセレナは見えていないようで、そちらを一度も見ていない。彼女はしょうがないと言いながら、流の手を取って空港の外へ連れていこうとする。

 二人は余程カリオストロが嫌いなようで、ずっと乙女がしてはいけない顔をしている。乙女がしてはいけない顔の一例として、血液だらだらの絶唱顔がその一つだ。

 

「なんで強引に案内役をやりたがってたの?」

 

「私の知り合いの人の言葉を使うと、楽しそうだから……かしら? サンジェルマンも固執しているようだしね」

 

 奏は昔のノイズへ殺意マックスだった時のように威嚇をして、セレナも珍しく本気でカリオストロに威嚇しているが、二人は存在がバレたら不味いことは理解しているので、流に触れることは無い。

 

(あとで絶対に二人にボコボコにされるんだろうな)

 

 流はそんな事を考えながら、カリオストロに車の中へ押し込まれた。


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