戦姫絶拳シンフォギアF   作:病んでるくらいが一番

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やっと蛇足的な話が終わり、本筋に戻りますが、5期のフラグのために多分きっと恐らく必要でした。


#40『逃亡戦』

「響と未来以外が戦闘不能?」

 

 キャロルとの戦いでlinker組と未来が戦えたら、ファラと戦うのが翼とマリア。レイアと戦うのがクリスと調と切歌。キャロル及びガリィと戦うのが響と未来。そういう構図になった可能性が高い。

 アニメと現実は違うので一概には言えないが、翼にはファラを向かわせるのは間違いないはずだ。ファラは哲学兵装である『ソードブレイカー』を持っているので、その優位性の放棄はありえない。

 

 だが、流が何故この季節に欧州に来たのか。それはまだ()()()()()()()()()()()()()と思っていたからだ。

 チフォージュ・シャトーは残念ながら無かったが、それでもキャロル達の襲撃は夏のはずだ。海で鍛錬するという水着回もあった。

 

 キャロル達は長い時を掛けて準備をしてきた。多少誤差があるかもしれないが、その誤差を生む何かがない限り、アニメとは同じ襲撃タイミングになる可能性の方が高い。

 その誤差は流という可能性はほぼないだろう。彼はずっと日本にいて、キャロルは作戦が開始されるまでは準備に勤しんでいたはずだからだ。

 ならば、流に関わり欧州で暗躍している奴らが原因だろう。例えば、目の前にいる人たちとか。

 

「そう。風鳴翼の天羽々斬、雪音クリスのイチイバル、マリア・カデンツァヴナ・イヴのアガートラーム、月読調のシュルシャガナ、暁切歌のイガリマ。それらは全て貴方が戦ったアルカノイズの攻撃によって、分解され、機能不全を起こしている」

 

「三日前から襲撃は始まったんじゃねえか? 本当は一週間前から襲撃をする気だったけど、俺がロンドンに来るのを三日前にした……俺の端末がぶっ壊れてたのもそちらの工作か」

 

 ロンドンに来る前に日本にいる人達から、端末に連絡はあった。そのあとロンドンについた時、端末が故障していることに気がついた。

 流が唯一特に怪しまずに、端末を手放した時など一ヶ所しかない。飛行機搭乗の時に金属探知機を通り、小物は内部スキャナーに通した時だろう。あの時以外に故意に破壊などできない。

 

「回答はしない。さて、私達の力を見せつけて、あなたを倒すことによって、仲間にするという方法もありますが、それはリスクが高い。どうですか? 仲間にさえなって頂ければ、あなたをバックアップして、日本へ送りますが」

 

「そうだ、ね!」

 

 流はサンジェルマン達との間にあるテーブルを三人の方へ蹴り飛ばし、入口のドアではなく、窓に向かって飛蹴りを放ち、その勢いのまま外に出た。

 

「は?」

 

 まだ昼手前だったはずだ。それなのに外は星空を描き、近くには木星や太陽が見える。辺りは岩石地帯のような風貌で、結晶などが生えている。

 流は出てきた建物を見ると、その建物だけがポツンとその場にあった。

 

「試作品の試作品。まだ術式の核は私自身が担わないといけないけれど、それでもこれは強力な手ですね」

 

 唯一残っている建物の扉から、サンジェルマンが手元を光らせながら現れた。彼女を守るように、カリオストロとプレラーティが立っている。光っているのは錬金術の陣に見える。

 

「何これ?」

 

「仲間になれば教えてあげます」

 

『二人共、これが何かわかる?』

 

『わからん』

 

『結界とかそういうものだと思いますけど、もしかして異空間に放り込まれてしまったのでしょうか?』

 

『ありえるな。俺もバビロニアの宝物庫で同じようなことが出来るし』

 

「ごめんなさいね。仲間にならないなら、倒せって言われてるのよ。貴方に日本へ戻られると、キャロルの計画が狂っちゃうかもしれないからね」

 

「観念した方がいいワケダ」

 

「降伏すれば命は助けましょう。隷属してもらいますが、隷属さえすれば日本へ行くのも勝手にしていいですよ」

 

 三人は降伏勧告を出してくる。睡眠が足りず疲れている体、未知の錬金術師との3対1、敵が呼び出した異空間。

 

「……ふぅ。カリオストロをぶっ飛ばして、プレラーティをぶっ飛ばして、サンジェルマンもぶっ飛ばす! それでここから出てやる」

 

 ぶっ飛ばすと言いながら後ろに後退し、煙玉を投げて、ソロモンの杖で飛行型ノイズを呼び出す。

 

「真横にまっすぐ飛んでくれ」

 

 ノイズに乗っかり命令して、一気にその場を離脱する。

 

「ちょっと! ぶっ飛ばすとか言ったのに、何逃げてるのよ!」

 

 カリオストロが水色のエネルギー弾を撃ってくるが、それは了子直伝紫バリアで防ぐ。

 

「……あれは錬金術ではなく、エネルギーをそのまま空間に固定してるワケダ」

 

「フィーネの()()()()ですか。でも、無駄です。どこまで行っても……」

 

 流は空間の境界があるのかを探るために、まっすぐ飛んだ。結構進むと、結界のようなものを通った感覚があったあと、前方に先ほど流がいた建物が見える。

 流は建物から離れていた。この空間は一定距離離れると、真反対に出てしまうようだ。

 

「球体か半球で空間が繋がっているのか。右端からエリア外に出ると、左端に出るって、みんなとやったゲームにそんな奴あったよな」

 

『現実逃避してないで考えろ。ちなみにあたしは分からん』

 

『……私は力に関することなら何とかできると思うんですけど、その起点はサンジェルマンが持っていますので、私も手伝えることはあまり無さそうです』

 

 空中で停止していると、銃弾のような物とカリオストロの攻撃が飛んできた。迎撃しようとしたが、何となく嫌な予感がしたので大きく回って回避して、敵のいる下へ戻る。

 戦うしかないのなら、接近しないと流が不利だ。

 

「空間をループさせるとか酷いことするなよ」

 

「時間稼ぎと貴方を倒すことが目的ですので」

 

「その武器はなにか聞いても?」

 

 サンジェルマンはこの空間を維持している術式とは反対の手に、フリントロック式のヴィンテージ銃をこちらに向けていた。何かを嵌める穴が空いている。

 

「まだ完成していない武装の一つです。武器として使うだけならば、運用できるので、今回は持ってきてみました」

 

 流は先ほどの銃弾はあの銃から出たのだとわかったが、あの攻撃はあまり受けたくないと勘が告げる。

 

「まずは物量で」

 

「こちらも……やめておきましょう」

 

 流は大型小型関係なく、ノイズを大量展開した。サンジェルマンも召喚をしようと結晶を握るが、その手を懐に戻した。アルカノイズを使って流を攻撃すれば、下手したら分解してしまうのでやめたようだ。

 

「あの白髪だけを狙え!」

 

「カリオストロ、プレラーティ、手足なら持って行って構わない!」

 

 流はサンジェルマンに突撃するノイズに紛れて、三人に接近する。

 カリオストロとサンジェルマンが攻撃をして、プレラーティは漏れてきたノイズを錬金術のシールドで抑え込み、そのまま潰している。

 

『錬金術師は歌わなくてもノイズを殺せるのかよ』

 

『テレポートが出来るようですし、位相もどうにか出来るみたいですね』

 

 姿勢を低くして一気にカリオストロへと距離を詰める。将を狙うのが鉄板だがそれは無理。ならば、防御している敵ではなく、攻撃している敵をぶっ飛ばす。

 

「ちょっと、プレラーティ!」

 

「わかっているワケダ」

 

 流の本気の拳はプレラーティの使う錬金術のシールドに阻まれた。

 

 流は自分の拳を受けても涼しい顔をしているプレラーティを見て、少しだけ笑みを浮かべてから、本気でシールドを殴る。その合間にカリオストロやサンジェルマンへ、閃光玉や毒に漬けたつぶてなどを投げるが、尽くプレラーティにガードされたり、迎撃されたりする。

 日本国内ではないので、クナイや手裏剣がないのが何ともやりづらい。

 

「硬いなお前」

 

「貴様は生身でどれだけの威力を出せば気が済むワケダ」

 

 流は殴りながらプレラーティのシールドの範囲、強度、プレラーティ自体の運動能力を観察し続ける。出したノイズが減ってきたら、追加で召喚して、絶対にサンジェルマンとの射線上に、相手のお仲間がいるように立ち回る。

 

 カリオストロが使う錬金術の連射速度、威力、飛距離。サンジェルマンは銃は撃った瞬間、銃口付近に錬金術陣が現れて、そこから弾が発射される。敵や地面に着弾すると、金のような金属がその場で錬成されて、周りを巻き込んでいる。それらのパターンを見続ける。

 

 観察しているため集中力がおざなりになった時、プレラーティに何度かシールドで殴られるが、弦十郎の拳や響のガングニールの拳ほどは痛くないので、無視できるダメージだ。

 

「ちょっと! キリがないじゃない!」

 

「ソロモンの杖の持ち主だと説明したはずだ」

 

「まさか消しても消しても出てくるとは思わないじゃない!」

 

 大型ノイズはサンジェルマンの銃撃で簡単に殺されてしまうので、小型の召喚のみにする。

 

「……」

 

 執拗にシールドのカリオストロとは逆側を殴り、体がそちらに逸れた瞬間、カリオストロに向かう分身や、プレラーティを殴る分身、流された方向へ向かう分身などを出して突撃する。

 

「そんな小細工は効かないワケダ!」

 

 プレラーティの体が発光して、正面に錬金術の陣が表れた。それが弾けると、彼女の周りに強い衝撃波が発生して、分身が尽く吹き飛ばされた。

 

「な! どういうワケ……」

 

 流本体は位相を限りなくこの世界からズラし、シールドも、プレラーティの体すらもすり抜けて、彼女の背後を取り、位相を正して思いっきり蹴りあげる。ギリギリで避けたようだが、肋骨や片腕は折れた感覚があり、遠くに蹴り飛ばされていった。

 カリオストロがサンジェルマンの下へ行かせないように、流に攻撃するが、二人の間にノイズを召喚して防がせる。

 

「やはり位相をズラせるのですね」

 

 サンジェルマンが連射してくるが、その全てを流は避けた。障害はなくなった。

 

「いっぺん死ね!」

 

『回避!』

 

 彼女に向けて今出せる全力の拳を打とうとしたが、奏の声が耳に届いた瞬間、流はその場から思いっきり飛び退いた。

 

「……ぐあああああ!」

 

 だが、流の背中に()()()()()()()()()()()()()が当たり、彼は吹き飛ばされた。背中が焼けるように痛いが、すぐに立ち上がって追撃されないように動き回る。

 

「……ゴホッ。さっきまで実体弾だったのに、今度はエネルギーの弾でホーミングかよ」

 

 一旦距離を取り、ボロボロで邪魔になった上着やシャツを脱ぐ。

 

『プレラーティを殴ったあともギリギリまで位相はズラしてたよな?』

 

「ああ。だけど、食らったからあれも調律的な効果があるんだろ」

 

『宝物庫経由で撤退すべきです。デュランダルのエネルギーを使った流さんの拳なら、プレラーティのシールドは抜けると思いますけど、今の状態では無理です。しかも、位相の操作も知られてしまいました。1対1ならまだしも、この人数は無理です』

 

 サンジェルマンはノイズの処理中、今のホーミングで流を攻撃することも出来たはずだがしなかった。有効的な場面で手札を切るために、あえて残しておいたのだろう。そういうモノがまだ残っている可能性が高い。

 

「やってくれたワケダ!! 殺す!」

 

「それは使うのは駄目よ。万が一のために持たせたけど、今はその時ではない」

 

「やられっぱなしはないってワケダ。この怒りはどうすればいい!」

 

「折れたくらいなら、後から治してもらえばいいじゃない」

 

「自分の顔をぐじゃぐじゃにされたとしても、同じことが言えるワケダ!」

 

「それとこれは違うじゃない!」

 

 プレラーティはブチ切れて、カエルの人形の口から、けん玉を取り出したが、サンジェルマンに止められた。サンジェルマンがプレラーティの治療をしている間、カリオストロと喧嘩をしだす。

 カリオストロも喧嘩はしているが、ノイズ処理は正確に行っている。

 

『あたしもそれがいいと思う。まずその秘密兵器ってのはポケットに入ってる()()を使うんだよな?』

 

「そうだ。想定では結構強化できるはず」

 

『流さんは装者じゃないのに、()()を使って意味があるんですか?』

 

「人間をやめる的な意味がある」

 

『人間を……やめる?』

 

『今の状況で使えば、確かに人間の境界が崩れそうだな……でも、このままじゃ死んじまう。あたしが流にお願いする。使ってくれ』

 

「ああ」

 

 流は錬金術師三人に近づく。プレラーティは片腕を固定されているので、錬金術はゲームの魔法のように簡単に治せるわけではないようだ。もしくは少し時間がかかるのかもしれない。

 治療や喧嘩しながらだったが、流がノイズを追加で召喚していないので、この場にいるノイズは殲滅された。

 

「もういいのかしら」

 

「ああ。無傷でここから逃げられないことはわかった」

 

「もうやめなさいって。本当に死んじゃうわよ? 仲間になったって変な扱いされないのよ?」

 

「……さあ、二回戦の開始だ」

 

 流はポケットから、液体注入器を取り出した。中に入っているのは『linker model N』。ウェルに頼んで流に合わせて作られたlinkerだ。linkerとはシンフォギアの適性が少しはある人に使い、無理やり適合率を引き上げるための物。

 だが、linkerの本当の目的は聖遺物の力と人体を繋ぐための制御薬。ならば、流が使えばどうなるか?

 

 流は首元に注入器を触れさせ、トリガーを引いた。

 

「がああああああああああ!!」

 

 ウェル博士の作っているlinkerはシンフォギアの適合率を上げるために作っているが、流が使ったものは人体と聖遺物を直接繋げるために作られた。だが、シンフォギア用と同じように適性がない人が使えば、激痛に身を悶えさせる。

 

「ごほっ」

 

 流は目から血が流れ、口からは血を吐き、身体中の血管が拒絶反応を起こす。

 本来なら絶唱顔になるほどの副作用は起きない。だが、今は条件が悪く、負荷が掛かりすぎている。

 

「自殺がしたいワケダ」

 

「…………いいや。人間を一時的にやめただけだ」

 

 流の右腕はマリアと戦った時のように、肉から金属に変わり、金色と水色の不可思議な模様が描かれている。流の目、その内の黒目がデュランダルカラー(水色と金色)に変わっていた。見た目の変化が起きると、絶唱級の反動は収まった。

 

 流は聖遺物がネフィリムのように基底状態ならば、起動させることが出来る。だが、了子と戦った時以外自らデュランダルを扱うことが出来ず、力を発揮するにはガングニールからのフォニックゲインを貰う以外にまともな方法がない。その時ですらデュランダルを剣として出現させることが出来ない。

 まるで流に使われるのを拒んでいるように、ソロモンの杖のように使えない。なので、デュランダルを単独で活用するにはこのような使い方しか、今のところは分かっていない。

 

 

「人間だったから、副作用が出た。ただの聖遺物に肉が張り付いているだけの物に、linkerをぶっ込んでも拒絶反応なんて起きない」

 

 流は今までで一番体に力が入る。完全聖遺物デュランダルと融合した時は、拒絶反応がひどかった。

 だが今は、デュランダルも杖も体の一部であり、linkerによって流の体は聖遺物としての面と人間の面が曖昧になった。

 

「待って、待って。何あれ? サンジェルマンはあの力が欲しいの?」

 

「いや、あの力は()()()に過ぎない」

 

 流のあまりの見た目の変化にカリオストロは質問するが、サンジェルマンはすげなく答える。

 

『今なら、あいつらを()()()()も出来るんじゃないか?』

 

 人間と聖遺物の境界が曖昧になり、寝不足や傷つけられた怒りの感情がそのまま思考を乗っ取り、そんな言葉に出た。

 

『待て! 撤退するためにlinkerを使ったんだろ!』

 

『落ち着いてください。いつlinkerの効果が切れるか分からないんですよ』

 

「うるさい。黙れ」

 

 流は膨大な力に全能感すらも感じ、二人の忠告が耳に入っていない。

 

「覚悟しろよ。死者蘇生を教えるまで殴り続ける!」

 

『行かせねえよ! え?』

 

 奏は流のアホな行動を止めるために、背後から流に抱きついた。いつもならそのまま抱きしめられるのだが、奏はそのまま流の体の中に入ってしまった。

 今まで奏とセレナは一つのモノを除いて、あらゆるものを透過してきたが、その唯一透過できないモノは流の体だった。

 

「は?」

 

 流は怪我をしているプレラーティの下へ瞬間移動しようとしたが、体を動かせなかった。金縛りにでもあったように、体が流のいうことを聞かない。

 

『……あれ? もしかしてこれって流の体か! なら、あたしは戦略的撤退を選ぶ!』

 

 いつもなら頭に響いてくる奏の声が、体の中から聞こえた。

 流の意思とは関係なく、流の体は奏の意思を尊重して動いてしまい、彼の横にバビロニアの宝物庫への扉が開かれ、流の体はその中に入り、扉をすぐに閉めた。

 

「薬まで使って覚醒したと思ったら、速攻で逃げちゃったわね」

 

「どういう、ワケダ?」

 

「……」

 

 向かってくる気満々だった流が、いきなり考えを変えて別空間へ逃げた事に、カリオストロとプレラーティは唖然とした。

 

 

 **********

 

 

「体を返せ!」

 

『うるさい! 少しは黙ってろ』

 

 流の体は奏の意思に従って、自分の頭を思いっきり殴る。

 

「『痛え!』」

 

 デュランダルと化している手で殴ってしまい、流と奏は悶絶してしまった。

 

『奏さんずるいです! 私にもやらせて下さい!』

 

『久々の肉体が、ってなんか下半身に付いてんだけど! ああ、なるほど。男だからそりゃ付いてるよな』

 

『奏さん!! 変わってください!!』

 

「いい加減体を返せ!」

 

 奏は女の体と男の体の違いを実感し、セレナの変われコールは強くなる。流は動かない体を無理やり動かそうとするが、口が動くだけでそれ以外は動いてくれない。

 

『ちょっと待て……ああ、出れそうだな。出れた』

 

 奏がどうやってか流の体から出た。セレナがすぐに抱きついてきたが抱きしめるだけで、体の中に入る、憑かれることは無かった。

 

『何でですか!』

 

「今の状態なら、バビロニアのゲートも通れるから、邪魔をしないでくれ。このまま帰るから」

 

『うー!』

 

 自分だけ憑くことを体験できず、セレナは不貞腐れるように、流の噛み跡のついている場所に噛み付いた。

 

「えっ! またかよ!」

 

『やった! 入れました! 男の人ってこうなってるんですね。触ってもいいですか?』

 

「やめろおおおおおおおお!!」

 

 セレナは噛み付くと、そのまま流の体の中に入れた。その事に喜んだ後、セレナが男としての場所を触ろうとする。流は絶叫をあげながら、体を動かそうとするが、セレナから体の操作権を奪えず、揉みくちゃにされた。

 

 

 **********

 

 

『……その、セレナはやり過ぎるところがあるし、許してやってな?』

 

「…………当分飯抜きな」

 

『ごめんなさい! 本当にごめんなさい! 幽霊だけどお腹は減るんですよ! 食べなくてもどうにかなりますけど、ひもじいのは嫌です。ごめんなさい』

 

 セレナは数分だったが一通り楽しんだ後、流の体から出た。流はブチ切れて、セレナには三日の飯抜きが言い渡された。

 

「さて、リディアン屋上から数メートルでいいか」

 

 全く寝ておらず、戦闘をして、更に精神的なダメージを負った。そのため少しふらつく流を奏は抑える。

 流はソロモンの杖を体から出現させて、バビロニアにある浮いている建造物に突き刺す。杖の上に手を置き、リディアン上空にゲートを出現させる。

 

「……多分疲れとダメージで、俺の意識は飛ぶと思うから、体に憑くなり、何らかの対策をよろしく」

 

『わかった。体は任せろ』

 

『……ごめんなさい』

 

「はぁ、そこまで怒ってないから。そんなに落ち込むなって。じゃあ行くよ」

 

 流は杖を体の中に戻してゲートをくぐった瞬間、体に負荷がかかり、そのまま意識を失った。




ソロモンの杖は流に従順ですが、デュランダルはまず力を貸しません。

ラピスなしでも、ファウストローブとしての武器運用程ではないけど、サンジェルマンの銃は武器として使えるということにしました。
同じく3話にあった空間を閉じるという手法はサンジェルマンが制御すれば出来るんじゃね? という考えで使われました。

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