戦姫絶拳シンフォギアF   作:病んでるくらいが一番

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今日は立花響の誕生日です! おめでとうございます!!

バースデーの話は書くつもりですが、明日になるか今日になるかはわかりません。もし今日なら特に告知なしで書けたら投稿したいと思います。


#73『知識と事実の混同』

 Dノイズの紹介が終わったあと、こちら側にミカが来たりして色々大変だった。次の日には島の反対側でバカンスをしていた藤尭達スタッフが、船をこちらに回し、それに乗って皆でS.O.N.G.の潜水艦まで帰ってきた。

 

 その航路中、流は船の舵を取っている藤尭に呼ばれた。夏なのに、何故か温かいココアを友里に貰い、藤尭が舵取りしながら愚痴り始める。

 

「流くん……また、駄目だったよ」

 

 藤尭はそれだけ言って肩を落とした。今回の旅行で初彼女を作るんだ! と言っていたのにこれである。流はそれが信じられないので友里を見るが、彼女も頷いている。

 

「全く女と交流する機会がなかったの? 藤尭って割と権力もあって、技術もあって、顔もいい感じで、お金もあるし、家もいい所に持ってるよね? 料理も出来て、家事全般も快適に過ごす為に習得している。機会が無い以外はありえないんだけど」

 

 流は指折りながら、藤尭のアピールポイントを言っていく。女性は金があり、高身長で、高学歴で、高収入であれば何とでもなるらしい。ウェルが言っていた。

 なので藤尭に縁がないわけがないのだ。忙しすぎてそういう出会いがないのなら分かる。だが、今回は独身の人だけがバカンスに来ていた。S.O.N.G.には割と女性も多いので、チャンスはいくらでもあったはずだ。

 

「機会はあったよ? でも、駄目だったよ」

 

「なに? まさか亭主関白志向をまだ引きずってんの? ボヤいちゃうのは藤尭が頭が良すぎちゃうからだけど、あの志向は今どき駄目なんじゃない?」

 

 流自体が女性のやりたい事をさせたいという奉仕属性が強いので、初めて会った時は藤尭の亭主関白志向が理解出来なかった。

 

「今はもうそんな考えはないよ。了子さん怖いし、未来さんは怖いし、キレた翼さん怖いし」

 

 藤尭と友里は有能すぎる故に、了子に技術を色々教えこまれている。きっとスパルタにやっているのだろ。未来が怖いのは皆の共通認識なので、流も深く頷いた。翼は流の中ではマスコット枠なので特に怖くない。

 

「なら何でさ」

 

「……はぁ」

 

 藤尭は深刻に落ち込んでいて会話にならないので、友里に質問を向ける。友里は藤尭に軽く話しかけ、藤尭が頷いたので代わりに話し始めた。

 

「彼ね、同じ扱いを受けているようなのよ」

 

「誰と?」

 

「司令や緒川さん、流くん達の生身で凄い人たちと同類扱いみたい。『ちょっと人としての強さが違いすぎるみたいなので……』みたいな感じに、()()()()()()()()()知らない人は嫌煙しちゃうようなのよね。そこら辺は別次元なのに」

 

「……は?」

 

「藤尭は生身で大きなクリスマスツリーを運べるわけでも、装者と戦っても忍術で翻弄するわけでも、アームドギアの攻撃を腕で吹き飛ばせる訳でもないわよね? でも、了子さんのとんでも理論(異端技術)についていけちゃってるから、シンフォギアとかに深く関わってない区画の人たちには、同じ人種に見えるようね」

 

 流はもう一度考える。確かに藤尭は優秀だが、それは普通に優秀の範囲なのだろうか? シンフォギア戦闘を映像で見て相手の力の特徴をすぐに見抜いたり、月の軌道計算を微妙な機械でぴったりやり切ったりする。アニメでは潜水艦の周りに被害なしで爆撃できるし、この藤尭はシンフォギアの修繕くらいなら出来るはずだ。了子が生きていて、その技術を学んでいるから。

 

「……俺達は同類で、仲間だ!」

 

「なんで流くんや司令と同類扱いされないといけないんだよおおおおおお!!」

 

 藤尭は今回の旅行で自分が人外の域に片足を突っ込んでいることを理解した。

 

 

 

「もしかして友里が合コンを尽く失敗しているのって?」

 

「それは関係ないわ。ただ外国のエージェントが混じってて、『あっ、この人私の技術狙いね』って分かるようになっちゃって、うまくいかないのよね。まあ、今回の旅行で私も同じような扱いだってことも分かったけど……」

 

 友里も同じようにできる女だからこそ、色々な苦労を積み重ねているようだ。友里は流にエージェントの混じらない合コンを企画してと、冗談を言おうとしたがやめた。彼にはそんな友達はいないし、居たとしても藤尭(人外)ウェル(英雄)しかいない事を思い出した。

 話を聞いているうちに友里も片足を突っ込んでいることがわかった。普通他国のそういう系統のエージェントはバレないように偽装しているのにそれを見抜き、藤尭と同程度の技術を持っているのだから。

 

「なんだよ」

 

「もう少し友達作れば?」

 

「……ノーコメントで」

 

 沈んだ目で真夏に温かいココアを啜る三人の人間がそこにいた。

 

 

 **********

 

 

 アイドル組とクリス以外は行く前に比べて少し焼けている。特に調や切歌の二人はフロンティア事変の始めらへんに比べて、肉付きが良くなり真っ白だった肌も健康的な色にまでなっていた。

 肉付きが良いのレベルを超えて、F.I.S.組は二の腕やお腹がぷにっとしていたが、2ヶ月の鍛錬と無人島鍛錬でそれもスッキリしている。流は結構残念がっていた。

 

 未来に響の画像を渡すように言われて全て送り、弦十郎達に報告会をしている時に、流がノイズを改造してDノイズを作り出した事がバレた。

 

 現在流は弦十郎に彼を拘束するための鎖でぐるぐる巻にされ、逃げることを禁止されて正座をさせられている。今の流には物理的な拘束は無意味なのだが、ある脅しをされているので逃げることすらできない。

 

「逃げたら、クリスをナイフで刺すからね?」

 

 了子のこの言葉にクリス自身も頷いている。流自身が傷つくならいいが、周りの人が傷つくのは嫌う。しかも了子はやる時はやる女でクリスは同意もしている。

 

「で、どういう事か説明しろ!!」

 

 ソロモンの杖は現在S.O.N.G.が保管していることになっている。しかし前回の月の軌道修正の時に必要だったから、人間に融合させたことになっているのだ。ぶっちゃけそんな訳ないが、フィーネの記憶を持っているとされている、了子が言うのだから国連は否定のしようがなかった。ただ流が勝手に融合させたからそれの帳尻合わせをしただけだ。しかも融合した人は国連にすら公開していない。国連の見解では弦十郎という事になってる。あの強さの説明がつくからだ。

 

 今までは杖があればただ命令を実行したり、漏れ出たノイズなら近くの人間を襲うだけだった。なのに知性を感じ取れる行動を取り、デュランダルを内に秘めているノイズ。シンフォギアやキャロルくらいの錬金術がないと太刀打ちできないだろう。そんなものをS.O.N.G.に仮所属していて、司令と了子の息子が作り出したなどスキャンダル以外の何者でもない。

 

「俺ってネフィリムに話しかけてたじゃん? それと同じようにノイズにも話しかけてたら、懐いてくるかなって思って話してたのよ。そしたらなんか反応するようになって、いつの間にか知性があるような動きをし始めた」

 

『でも本当に話しかけて、流に襲わせて戦い方を教えただけだしな。あとは位相の操作を練習する時に周りに居たくらいか』

 

『……あれ? それって私達が仲間になったあとですよね? それ以前は何もしていなかったんですか?』

 

『バビロニアの宝物庫から召喚することは出来てたけど、流自身が宝物庫に入ったのは、私達の欠片を首から外して、欝になったあの時くらいだしな』

 

『遊園地の前ですね』

 

 奏達も今回は同意している。流が無意識でやった行動でそのような物が目覚めてしまったのなら、奏達が気がつくだろう。本当に些細な行動で知性が生まれるなら、今まで無かった方がおかしい。

 

「うーん。まず、ソロモンの杖を作った人達はノイズを兵器としてしか見ていなかったわ。その後時代が進んで、杖は機能停止状態に陥ったけど、宝物庫は開け放たれたままだった」

 

「その後は了子くんがクリスくんに起動させたんだったな」

 

 弦十郎の手順の確認の言葉に、皆がクリスに視線を向ける。クリスは罰が悪そうにそっぽを向いている。みんなは別に責めるためではないのだが、やはり気になってしまうのだろう。あの時の話はクリスも流もしないから。

 

「そんなことは別にいいじゃん。その後は二課が保有して、米軍基地に運んだのにウェルが盗んで、更に俺が奪い返した」

 

「本来ならその後すぐに返すはずだったのに、流が勝手に融合させたものね」

 

「あははは」

 

 今度はキャロルやエルフナインが馬鹿を見る目で流を見ている。完全聖遺物なんてものを自分で融合させるなんて、死にたいですと言っているようなものだ。

 

「話の流れでわかったと思うけど、まともに杖を持って、ノイズを操った人はあんまりいないのよ。ルル・アメルと呼ばれていた人たちは、完全に兵器としてしか見てなかった。その次は私とクリス。最後に流。最近まではノイズが命令に従ったような行動を取ったという情報はないから、先史文明期後期からこの前までの間に覚醒したことは無い。もちろん私もノイズは人類を効率的に抹消する兵器としてしか使ってないわ」

 

「あたしは足止めとかくらいだな。ぶっちゃけ本格的に戦う時は流が仲間になってたから、ほとんど要らなかったし」

 

 そうなると、やはりノイズに話しかける人なんていう狂人は流以外にいないようだ。

 

「話しかけたら反応するようになって、何やかんやして、オートスコアラーがあそこにいる時、動きを真似るようになった。あとデュランダルの欠片を入れたのは、アルカノイズを参考にした」

 

「ん? どういうことパパ」

 

 話を聞きながら、パソコンに何かを打ち込み続けているキャロルが顔をあげてこちらを見てきた。自分が設計に関わっているのだから、それを参考にしたと聞き、少しだけ嬉しそうにしている。

 

「アルカノイズは位相差障壁に掛けるエネルギーを、炭素変換の代わりに搭載した分解機構に流してたじゃん? まずそういう変更の仕方がわからなかったから、唯一色々分かってるデュランダルでエネルギー総量増加とその他ギミックでエネルギーを生産をするように仕込んだ。一度起動していれば、一時停止状態になってもエネルギーを送れば動き出すし」

 

「パパがオートスコアラーにエネルギーを与えたみたいな感じ?」

 

 周りには装者やほかの人がいるが、迷いなくキャロルは流をイザークの代わりの父親として呼んでいる。

 

「そう。あんな感じのラインを作って、ノイズが炭素変換機構に力を送ると、デュランダルが動くようにした。ノイズに教え込んだことは、位相差障壁をもっと活用することと、炭素変換を今後は使わないこと」

 

「そうか! 位相差障壁に送るエネルギーをフラクタルに変化させて、調律を阻害することによって、擬似的に防御力を上げたんですね!」

 

「エルフナイン正解。もし万が一軍が必要になったら使うつもり。もちろん炭素変換はノイズには使わせないけどね」

 

「……色々わかったわ。ようは新しいノイズ、生物型聖遺物ノイズを作り出したってことね」

 

「そうなのかな?」

 

 了子はため息をついてから、了子は流の言ったことを復唱し、既にノイズとは違うものになっていることを説明した。響のある程度力が入った拳をエネルギーと位相差障壁によって、ダメージを分散して、更に今まで持ってなかった戦術を持った時点で、既存のノイズと同じ呼称は不味い。

 

 そのあと流はガリィが面倒臭いからと言って、掃除を教え込んだアイロン手ノイズをその場に召喚して、了子やエルフナインに従う様に命令をしておいた。

 そのノイズの手は既にアイロンの手ではなく、ホウキの様な見た目とチリ取りのような見た目に変化している。

 

 流には減給と始末書が言い渡された。

 

 

 **********

 

 

「まあ、減給したとしても、了子ママと開発したAIが勝手に株とかデイトレードで稼いでるし」

 

「全く反省してないのね」

 

「あれ? そんなこと言っていいの? 青臭いトマト祭りにするよ?」

 

「トマト祭りですか! トマトは何にでも合うから楽しみです!」

 

「い、いえ。やめておきましょう。せっかく美味しい物が買えるだけの資金があるのに、そんなことする必要は無いわ」

 

「もうマリアは食材が高いとか言わなくなった」

 

「……美味しいのが悪いのよ」

 

 S.O.N.G.で開放されたあと、時間も微妙だった。響も未来もリディアンで夜飯を食べようとすれば、冷めた残り物になってしまう。なので今夜もご相伴する事になり、近くのスーパーで食材を買って、皆で家に戻ろうとしている。

 もちろんスーパーアイドルである翼とマリアはサングラスを掛けているが、マリアも翼も変装になっていない。流がマネージャーの格好をしているので、変に勘ぐられることはあまり無いだろう。もし写真を撮られそうになったとしても、周りで監視しているエージェントが止めてくれるので安心だ。

 

 この家に来た時、流が平然と安い食材ではなく、単価が高い物を取った時に怒っていた。お金は無限にある訳では無いやら、今は良くても後のち……など、金銭感覚が緩い子供を叱るお母さんのように怒っていた。だが、マリアは苦手を克服するために? 糖度がとても高いトマトを通販で買ったりしている。スーパーで売っているものは苦手なようで、一度食べさせてから高いトマトにハマってしまった。

 確か生産地は鎌倉のどこかだったはずだ。

 

「まあ、今日は和食だけどね。島で大味な料理ばかりだったし、たまにはしっかり作りたい。調も手伝って……いや、今日は俺が調をサポートしよう」

 

「……頑張る!!」

 

 そんな感じにあと少しでマンションに着く場所、ちょうどリディアンに真っ直ぐ繋がっている道に差し掛かった時に、この集団に声をかける人がいた。

 

「響! それに未来ちゃんも!」

 

「……お父さん!?」

 

 リディアンの方からこちらに走ってきたのは、アニメに比べて髪がボサボサにはなっておらず、ちゃんとしたスーツを着た立花洸だった。

 

 立花洸。アニメでは当初はライブで響の命が助かったことを喜んでいたが、そのライブで命を落とした者の中には、彼の務める会社の取引先の社長令嬢がおり、厄介者扱いされて彼は社内プロジェクトから外され、社内で持て余されるように扱われた。

 そしてプライドを引き裂かれた結果酒に溺れ、家庭内でも暴力を振るうようになり、ついには蒸発。仕事や家庭を放り出したまま、行方を眩ませた。

 3期最後にOTONAになったような描写がされたが、これには適合者(アニメ視聴者)でも苦笑いだったらしい。

 

 しかし、この世界ではアニメに比べて、奏も翼も基礎スペックが高く、奏が早期に絶唱を歌ったことによって、被害は少なく済んだ。その助かった中には社長令嬢もいたので、会社でハブられることなく、今も務めている。

 

「夏休みになっても帰ってこないし、学校に問い合せたら公欠で休んでると聞いて、ふっ飛んできたけど……怪我とかはしてない…………なんで響の隣に男がいる!!」

 

 立花父は響の周りに女の子がいたので、きっと友達なのだろうと眺めていたら、何故か有名なアイドルがいるような気がした。しかし、それよりもその集団に一人だけ男がいたことに気がついた。立花父は響のいる集団に近づいてくる。

 

『……チッ』

 

『あれ? 奏さんどうしました?!』

 

『ちょっと、やめて奏!』

 

 流の体に奏がいきなり憑依して、近づいてくる立花父の元へ走り込み、その頬へと拳を振るった。

 

「ゲハッ!!」

 

「お父さん!? 流先輩何やってるんですか!! その人は私のお父さんですよ!」

 

 先程の叫び声と同じ言葉だが、初めはいきなり父親が現れて驚いた叫び声。二度目はいきなり流が父親を殴り飛ばしたことへの驚愕の声。

 

『クソ野郎が! 子供を捨てたくせにどの面下げて来てやがる!』

 

『奏さん、流さんの記憶とこの世界の事実を混同させないでください! 落ち着いて』

 

『いきなり操作権を奪うな!』

 

 少しして奏は落ち着き、自分が流に憑いてる間に頭を下げ、流にも謝って、体から出た。どうやら奏は流が失くしたアニメの記憶に引きずられてしまったようだ。

 

「どういう……事なんだ?」

 

 娘との再会を拳によって遮られた男が、痛む頬を撫でながら呟いた。


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