戦姫絶拳シンフォギアF   作:病んでるくらいが一番

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#77書き終わった! よし、少しだけ休憩するぞ。そのまま寝てしまい、気が付いたらついさっき。
いつもの時間に遅れてしまい、すみませんでした。明日からは普通に19時に投稿できるはずなので、よろしくお願いします。

そしてオリジナルオリジナル書いてましたが、結構原作沿いになるかもしれません。


#77『女の子は空から降ってくる』

「……俺はこの惨状を国連に報告しないといけないのか?」

 

「各戦闘の詳細は書面と口頭での説明義務がありますが、これを報告するのどうなのでしょうか?」

 

「ノイズが流に従う意思を見せて、ある程度の柔軟性があれば、ノイズの軍隊になるのは必然よね。しかも流にはまだネフィリムと、ネフィリムに命令すればフロンティア、キャロルちゃんが譲渡したチフォージュ・シャトーがあるのよね。なんでフィーネやってた時の私よりも凶悪なものばかり息子は持ってるの?」

 

 S.O.N.G.の潜水艦ではない仮設本部では、弦十郎やエルフナイン、了子を始めとした皆が微妙な顔をして、流がノイズに持たせたカメラからくる映像を見ていた。

 そこでは兵士が悲鳴をあげ、武器を捨て去り、目もくれず逃げ回っている光景が広がっていた。

 

 火災が起きた所には、粘液を出すノイズが炎に粘液を吹き掛けて消火したり、グレープノイズがコインを無尽蔵に出して、兵士の所持している銃をコイン打ちで撃ち抜いたり、細身のソードブレイカーのようなものを持ったオタマジャクシ型ノイズが、戦車を切り裂いたりしている。もちろん人敵はかすり傷程度しか負っていない。

 アルカノイズは流に向かって突撃しているが、その足元や進行方向上にバビロニアの宝物庫のゲートを開いて、中にボッシュートされている。

 

「流さんってソロモンの杖を完璧に扱えて、デュランダルによって人間を超越した防御力を誇っていて、位相差も操作出来るんですよね……事件を起こしたりしませんよね?」

 

 エルフナインは装者達が何かしらに虐げられた場合、流がブチギレて、宣戦布告した国に対しても同じ事をやる気がすると想像してしまった。

 

「……俺は否定出来ん。アイツが()()()()()()、俺が流を殺してでも止めるがな」

 

「その時は私も手伝うわ。多分意識が吹っ飛んだ暴走をしていたら、ノイズを出してくることもあるかもしれないしね」

 

 弦十郎も了子も否定せず、対処を誤らないように、それ以前に装者が死ぬなんて事が起きないように、より一層気を引き締める気である。

 

『ねえ、そこにいる人達は反応すべき事を反応してないよね? なんで流は()()()()()()()

 

 ウェルは国際的に英雄として扱われているが故に、下手に国外に出すと引き抜かれたり、誘拐されたりする可能性がある。なので、現在ウェルとナスターシャはS.O.N.G.の潜水艦の中で、戦場の映像をリアルタイムで見ている。

 

「ウェル博士、流の事で一々驚いてたら、ストレスで死ぬぞ」

 

「そうそう。ウェルも流の友達なんだから、それくらい理解しないと」

 

 頭のおかしい部類である弦十郎と了子は二人でウェルに突っ込んだ。

 映像の中でノイズに指揮をしたり、戦っている流が時折空を飛んでいるのを目撃しても、何も疑問に思わないように、ここにいるスタッフは心をうまく制御できるようになっている。

 今更超人(弦十郎)人外()忍者(緒川)マッドサイエンティスト(了子)の事で驚いていたら、ストレスで死んでしまう。ここにいる他のスタッフは皆がそう思っているのだ。

 

「了子くんとエルフナインくんは何故流が飛んでいるかわかるか?」

 

「あれは錬金術ではないですね。もっと純粋なエネルギーのまま運用しているように思えます」

 

「正解よ。私が使うエネルギーを強固な盾とするシールドがあるじゃない? あれは空間にエネルギーを固定しているのだけど、流は自分の周りにエネルギーを纏わせて、それで無理やり飛んでいるのではないかしら? エネルギー効率が悪いけど、流にはエネルギーを無限に生み出すデュランダルがあるから、ほとんどノーリスクよね」

 

 流はキャロルに飛行の錬金術を習う前なので、理論と了子の技術を使って、それっぽく空を飛んでいる。シンフォギアの限定解除、またの名をXDモードを解析した時、出た情報も流用しているので、流はノイズに乗らなくても飛べるようになった。

 曰く、装者がXDモードで飛べるのに、自分が飛べないんじゃ置いていかれたみたいで嫌だった。と流はキャロルに語っていた。

 

「……うーむ、空を翔れるくらいにならないと駄目なのか?」

 

「私が飛べるから大丈夫よ」

 

「了子くんは飛べたのか」

 

「何度も言ってるじゃない。流やキャロルちゃんに出来て、私に出来ないことはほとんどないとね!」

 

 弦十郎がとんでもないことを言い出している中、了子は胸を張って微妙な宣言をまたした。了子は記憶を対価に戦うことなんてしないし、自分が人間から遠ざかるのにそれを無視して戦うことだってしないので、ほとんどという言葉をいつもつけている。

 

「僕も頑張らないといけませんね!」

 

 エルフナインもキャロルに錬金術を習っているので、それを頑張って進めようと気合を入れるのだった。

 

 

 **********

 

 

 流は順調に制圧を行っている裏では、苦戦している場所もあった。

 

 F.I.S.組+未来は特に問題はなかった。調が敵に突っ込み、それに切歌が並走し、マリアは全体を見つつ動く。その間に未来が内部に、神獣鏡の能力で隠密を発動させて侵入する。神獣鏡の隠密はS.O.N.G.の機器ですら、当時は認識することが出来ないほどのものだったので、生物実験施設が探知できるわけもなかった。

 

 アルカノイズを操作している杖を未来が奪い、トップを昏倒させ、予め了子達から聞いていた杖の使い方のうちの一つがうまく当たり、アルカノイズを停止させた。あとは装者達が倒しながら、降伏を呼びかけて終わった。

 一人だけ混乱して、投降後に切歌を撃とうとしたが、切歌自身がその殺気に気がついて被害を負うことはなかった。八紘邸で武人達と戦ったおかげだろう。

 

 

 問題が起きたのは二課組だった。

 ここの司令官は過激な方法を取り、一般兵士ごと殺すような自爆覚悟なアルカノイズの運用や、兵士の命を物としか考えていない攻めをしてきたので、少しだけ手こずってしまった。

 響達が襲撃をかけた場所が化学兵器を扱われている場所だったのもあり、大胆にしかし慎重に戦っている間に、アルカノイズを操る杖を持ったトップは逃げてしまった。

 

 奇しくも流が歴史を変えたのにも関わらず、ステファン・ヴィレーナという少年が、トップの奴が向かった方向を見ていて、案内を申し出ていた。

 その村に行く時、軽トラックの運転を翼がしようとしたがクリスと響が止めた。

 

「先輩は乗り物に乗ると、使い捨てる癖があるんだろ?」

 

「ステファンくんに任せましょう、ね?」

 

「……不承不承ながら受け入れよう」

 

 つまらない事で争っている時間はないので、防人少女が折れることで話は進んだ。ステファンは焦る気持ちを抑えて、車をひたすら走らせた。

 

 

 

 村に着くと、村人は一箇所に集められて、アルカノイズに囲まれていた。そして杖を持ったトップは女の子を自分の側に置いて人質にしている。

 

「要求は簡単だ。俺を見逃せ! 然もなくば、出なくていい犠牲が出るぞ!」

 

 女の子は首を絞められて苦しいのか、苦痛の声を上げている。

 

「皆、鞘走らずに少しだけ時間を稼いでくれ」

 

 瞬時に状況を把握した翼は皆に小声で命令した。こういう時に一番冷静になれるのは翼なので、大抵は皆は従う。大抵は、だが。

 

「そんな悠長にしてられねえ!」

 

「流を呼ぶ、これならクリスも良かろう?」

 

 翼はクリスを抑えるために、流の名前を出した。響がその言葉に頷き、翼の前にゆっくりと歩いて、手をあげて無抵抗を示す。丁度その手で翼が連絡を取っているのを認識しづらくする気なのだろう。

 

「流、聞こえるか?」

 

『要件は? お前達の場所はわかってる』

 

 流も戦った後にすぐに休憩などする訳もなく、仮設本部に戻ってきて、装者達の場所にいつでも行けるように待機していた。通常ならばその場にすぐに行けないが、流は擬似テレポートが使える。

 

「村人が人質に取られた。私達の場所から大体北に8メートルの場所に主犯がいる」

 

『了解。速攻で片付ける』

 

 翼は流に上空からテレポートしてもらい、男を無理やり確保してもらうつもりだった。流ならばアルカノイズにも色々できるので、油断なく気を張っているはずだったが、指示を聞かずに動いた人がいたので、色々崩壊した。

 

「うおおおおお!」

 

 ステファンは装者達が動けないことが分かると、家からボールを取ってきて、トップの男にボールを蹴り飛ばした。狙い違わずトップの男の頭に当たり、女の子が開放された。

 

「おい、馬鹿!」

 

「こっちだ!」

 

「総員戦闘を開始! Imyuteus……」

 

「Balwisyall……」

 

「チッ、Killiter……」

 

 ステファンはボールを蹴り飛ばすと、すぐに男に近づき、女の子を確保して、その場をダッシュで逃げた。それに見てすぐに装者は変身を始める。

 

「貴様あああ!!」

 

 トップの男はステファンの走り去る姿を見てガチギレし、アルカノイズを召喚して、ステファンを殺すようにコマンドで命令をした。それと同時に村人を囲んでいるアルカノイズにも攻撃を命令し、心中する気のようだ。このままでも捕まるなら、諸共に滅ぼす気なのだろう。

 

 人が多いところのアルカノイズを真っ先に消し去ろうとした装者達は、ステファンに向かったアルカノイズへの反応に少しだけ遅れてしまった。

 

「君は逃げて……うわあああああ!!」

 

「ステファン!」

 

「動くな!」

 

 流は多数を救う為にステファンを見捨てようとしたが、クリスに見せてもらったソーニャという女性が、ステファンを呼んでいることに気が付き、テレポート場所をステファンの側にした。

 そしてステファンの足に絡まってしまったアルカノイズの手を掴み、無理やり引きちぎった。

 

「え?」

 

 ソーニャやその他の人々、トップの人間までも動きが止め、人間のはずなのに、アルカノイズに触れて平気だった流を見ている。

 

「クリス!」

 

「くそおおおお!!」

 

 クリスは流とステファンの周りにいるアルカノイズを全て掃討し、叫び声をあげた。流はすぐにステファンを見る。

 

「立てないか」

 

「えっと、うっぐ、手は、大丈夫で、すがあああ!」

 

 ステファンは自分の足が分解によって千切れかけているのにも関わらず、流の手を心配している。そんな流はどうでも良さそうにステファンを見て、どうしようか考え、とりあえず手刀を首に当てて気絶させた。

 ソーニャは気絶させられたステファンの横に駆け寄って来る。他を翼と響に任せて、クリスもこちらに寄ってきた。

 

「分解されてすぐに無理やり引き剥がしたから、完全には分解されなかったけど、足が千切れかけてる。ソーニャとかいうあんたは、この布で少年の足を止血してくれ。焼いたりして傷口を塞ぐのはやめろよ?」

 

 流はいますぐ治療の錬金術を使おうとしたが、分解された細胞はうまく再生してくれるかわからないので、行動を早まるのをやめた。

 

「え、ええ」

 

「クリスはその少年を呼びかけたりしてやれ。ちょっと電話」

 

 流は錬金術、とりわけ分解に詳しいキャロルにテレパスで連絡を取ることにした。

 

『キャロル質問だ。足を部分的に分解された少年がいるんだが、イザークの治癒の錬金術で直しても大丈夫か?』

 

『待って……駄目だと思う。あれは肉体の力で無理やり再生させているの。分解されちゃうと、細胞が死滅してるから、変に再生しちゃう』

 

『治す方法は?』

 

『日本に連れてきてくれれば、足の一本や二本くらいは治せるよ? パパ(イザーク)の錬金術は大体理解したからね。出来ればいますぐその子の遺伝子情報をこっちに持ってきて欲しい。あとその少年の写真とか、足の長さとかの情報も知りたい』

 

『わかった』

 

 どうやら流の頭の中に残していった、イザークの錬金術の遺産を紙に書き写したものは、習得し終えたようだ。ひとえに天才ゆえだろう。流はまだ四肢損傷レベルを治すことは出来ない。

 

「流! ステファンはソーニャの弟らしいんだ! 助けることは出来ないか?!」

 

「できるよ。だから、泣きそうになるな」

 

 ソーニャとの関係を知ったのか、クリスは涙目で流に懇願してきた。クリスがお願いしてきたのなら、流にとってもやるべき事だ。クリスを軽く抱きしめたあと、ソーニャとステファンの元へ流は向かった。

 

「ソーニャさん。あなたにはいくつかの選択肢……とかはいいません。日本に来てください。そうすれば、ステファンくんは今まで通りに戻すことができます」

 

 流のこの言葉が信じられないのか、クリスの事を見て、クリスがしっかりと頷いたことを確認してから、流にソーニャは頭を下げた。

 

「私の弟をよろしくお願いします」

 

「まあ、俺がやるわけじゃないけど、確実に治ることは保証しよう」

 

 泣き崩れるソーニャをクリスに預けて、流はステファンの血液と髪の毛を採取して、あたりの警戒に務めるのだった。

 

 気軽にテレパスで連絡をしたキャロルが大変なことになっていることも知らずに。

 

 

 **********

 

 

「貴方達の命も、世界革命の礎に使わせて頂きます」

 

「これって絶体絶命ですよね?」

 

「流くんも装者の子達もいないのに、どうしましょうか」

 

 藤尭と友里、その他黒服は、流達が施設襲撃をしている裏で、電波やその他科学的な波形では捕えられない施設を見つけて、そこに潜入していた。

 

 中に入ると、フロンティアを襲ったパヴァリア光明結社のサンジェルマン、プレラーティ、カリオストロが結晶の中で保存されているオートスコアラーの前で、立っているのを目撃した。

 藤尭はこの情報を持ち帰るべく、パソコン型の端末で情報を収集していたが、なんとなしに後ろを見たカリオストロに見つかってしまい、撤退することになった。

 

 そのまま撤退させてくれるわけもなく、訳の分からない巨大な蛇に追い回され、友里と藤尭以外は殉職。その二人も崖っぷちまで追い込まれてしまった。

 巨大な蛇から逃げるために使っていた車は横転させられ、後ろは崖しかない。

 

「いつもの服装なら、ジェムもあったんですけどね」

 

「慣れない環境で一番大事なものを忘れちゃったわ」

 

 藤孝と友里は有用な人物なので、キャロルが量産しているテレポートジェムを、()()()()常備している。だが、今回は急に国連から出動を要請され、服装をこちらで着替えてしまったので、ジェムを持ってくることを忘れてしまった。

 

 しかし、二人はまだ死ぬ運命ではないようだ。

 

 

「これで俺とパパが怒られたらどうするんだ。パパのお仕置きのお尻ペンペンは物凄く痛いんだぞ!」

 

 そんなとてつもなく締まらない言葉と共に、キャロルと四体のオートスコアラーが、空に現れた錬金術陣の中から現れた。

 

「友里さん! 空から女の子じゃなくて、キャロルちゃんが!」

 

「よかった。これで助かったわ」

 

 強力な援軍に藤尭と友里は安堵の声を上げた。二人はすぐに邪魔にならないように距離を開ける。そしてちゃっかり戦闘になったら、敵のデータを取れるようにパソコン型端末を起動している。

 

「おのれキャロル! まさか邪魔をする気か!」

 

「久しぶりだなサンジェルマン。今度は協力者ではなく、敵としてお前らと相対することになった」

 

 キャロルはダウルダヴラを構えて、パヴァリアの三人に向けて、不敵に微笑んだ。




端末のサイレント設定はしていたのに、逃亡用のアイテムを忘れるうっかり友里とうっかり藤尭。

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