戦姫絶唱シンフォギア 外伝 ~いつか空駆けるその日まで~ 作:チョコ明太子味
まずは、一章完結を目指す。
昔々ある時代。
誰もが使ったものがありました。
誰もが使えたものがありました。
人々を笑わせることも傷つけることもできる力がありました。
その力は、人によって編み出され。
人によって衰退しました。
その時代。ある少女がいました。
力を代償なく使うことのできる少女を、誰もが追い求めました。
誰もが焦がれました。
誰もが彼女の事を認めませんでした。
そして彼女は………
●
ぎゃあぎゃあ、わーわー。
周りからそんな音が聞こえる事を気(け)取って、神裂カケルは目を覚ました。
時計を見ると、現在時刻は一時ぴったり。
もうすでに昼休みは始まってしまっている。
わずかに走る頭の痛みに顔をしかめながら、ふらりふらりと廊下に出る。
目元から少しずれた眼鏡を押し上げ、私立大空学園の中庭に向かうことにした。
「まいったな。約束してたのに……」
すでに約束の時刻から二十分程過ぎているという事実にげんなりとしながら、カケルは学校の廊下を歩く。
一緒に昼ご飯を食べることにしている、数少ない二人の友達。
律と那由太がおそらく怒りながら待ってるはずだ。
いや、怒ってるのは律だけかもな、と思わず笑いが漏れた。
「うっ……」
ぐぐぐ、とわずかに腹から音が鳴る。
「しまった。弁当を作るのを忘れてたんだった」
今日はカケル自身も、そして彼の妹も寝坊をしてしまったせいで弁当を作れなかったのだ。
律に頼めばもしかしたら弁当を分けてくれるかもしれないが、仮にも約束をすっぽかしかけた男である。
そんなことを頼める豪胆さはカケルにはなかった。
「仕方ない。購買で適当に買うことにしよう」
中庭に行く廊下には購買がある。
そこでパンと飲み物を買うことにしよう。
育ち盛りの身には少々ボリュームが足りないかもしれないけれど、学校帰りに何か買って帰れば晩御飯までは持つだろう。
●
「おそい!」
降ってきた言葉に思わず身をすくめる。
カケルの目の前には、茶髪の髪を後ろのほうで結った女の子、『律』がいかにも怒ってますよといった表情でぷりぷりと怒っていた。
「ご、ごめん。寝ちゃっててさ」
「まあまあ、律も。カケルもわざとじゃないんだしさ。僕の顔に免じて……」
「なんで、あなたの顔に免じなきゃいけないのよ」
ぷい、とそっぽを向いている律を見て、仲裁に入ってきてくれた星空那由他と顔を突き合わせて苦笑いを浮かべる。
彼らにしてみれば、これもいつもの光景であった。
「ほんとに悪かったよ。あ、今度お前の好きなアーティストのCD買ってあげるからさ」
「ほんとに?」
「ほ、ほんとほんと」
「じゃあ、風鳴翼さんのアルバムが欲しい」
「分かった。じゃあ今度の休日に一緒に買いに行こう」
「お前ら……デートかよ」
「「違う」!」
横から入った那由他のちゃちゃを否定する。
わずかに朱の乗った律に対して、カケルの方は余計なことを言うな、と単純にご立腹の様子だ。
こういう所はお固いんだからなぁ、と親友の恋愛観念に少し呆れながら、那由他は、ごまかすように話題を変えた。
「そう言えば、本当にノイズ出なくなったよな。あのフロンティア事変か ら」
ノイズとは、人を炭素分解してしまう、『自然災害』である。
人類の天敵とされるそれは、一ヶ月前に起こった、『ルナアタック事件』と呼称されるものが発生してから出現しなくなっていた。
「そうだね。政府からの発表があったときは半信半疑だったけど……、カ ケルはどう思うの?」
もそもそとカレーパンを口に運ぶカケルに、律は質問をぶつけた。
その当の本人はというと、しばらく口を動かしたのちやっとこさ口を開いた。
「別に、どうも思わないけど」
一言だけそう言うと、紙パックから牛乳を吸い上げた。
「どうも思わないことないでしょ?無関係じゃなかったんだから」
「今は無関係だよ。ノイズはもう存在しないんだし。こういうのはさ」
少しばかり口の端をあげて、にへらと笑みを作る。
「大人に任せとけばいいんだよ」
「カケル…………」
「まあ、そうかもな。じゃあ今度の土曜日にどこかに遊びに行こう!久しぶりにカラオケにでも行ってさ」
いやな空気を感じ取ったのか、二人に対して気を回す那由他。
それに考えなしに乗るカケルを、律は心配げな目で見つめていた。
導入の導入なので、短めです。
面倒くさい系主人公にして、ダメな大人まっしぐらという、この世界ではダメ役満そろった少年ですが、どうか付き合ってあげてください。
追記
ルナアタック→フロンティア事変
追記2 修正済み