戦姫絶唱シンフォギア 外伝 ~いつか空駆けるその日まで~ 作:チョコ明太子味
二連続投稿です。
「待て!」
黒づくめのスーツで身を固めた男たちが目の前を走る人物に向かって9mm弾を発射する。
あわや、少女にあたってしまうと思われた銃弾だが、なぜかその数々は少女の後ろでわずかに逸れてゆく。
自分の脇を銃弾がかすめていくのを感じながら、少女は走る。
肩に大きなカバンを背負っているにもかかわらず、その足取りは普通の人間よりも早く、それ故に異常だった。
「はあ、はあっ」
少女の顔は、深くかぶったキャップのせいではっきりとは分からないが、その肌の色から純粋な白人であることだけは分かる。
「ちっ、埒があかん。おい。
「はい」
短く答えた黒服のうちの何人かが自らの車から、横長のケースを取り出し側面のスイッチを押す。
すると、ケースの表面に幾何学的な模様が走り、ケース自体が質量を無視した変形をし始める。
薄い金属は空気が入ったように膨らみ、人と同じくらいの大きさをした金属の獣と化した。
「女は殺してもかまわん。我らの目的はあの荷物だ!…………おい、引くぞ」
「よろしいのですか?」
「ああ。日本にはNINJYAやSAKIMORIがいるからな。あの女はそれを知って ここに逃げ込んだのだろうが……」
そういうなり、大きく鼻を鳴らした黒服は、その他大勢と共に車に乗り込み迅速にその場から去って行った。
●
「くぅッ……!」
「〇×%(&&%$O!)
金属同士が触れ合うような異音を吐き散らしながら自分を追ってくる化け物を見て、少女は思わず声を漏らした。
一体や二体ならどうにかなる。
しかし、七、八体となると……。それに……。
細い裏道を走り抜ける。
市街地に逃げるわけにはいかない。その選択肢を取ってしまうと一般人を人質に取られるかも……。
「くそっ……!」
少し開けたところに出たと思えばそこは袋小路、逃げ場がなくなってしまった。
「ここで終わりなのか……」
脳裏にある少女の姿が浮かび上がる。
(すまない、お前との約束守れなかった……)
思わず、ぎゅっと目をつぶった少女に上空から声がかかった。
「伏せて!」
「なっ!?」
声の方向に目をやると、はるか上空から少女が落ちてきていた。
「なにを!?」
上空の少女は首から下げた赤いペンダントを手に取り、歌を詠った。
「Balwisyall Nescell gungnir tron」
瞬間、少女の姿が光に包まれる。
「あれは異端技術……!なればあれが…………」
「はあっ!」
脚部のジャッキで空気を打ち、上空にいながら地上に向かって、少女は眼下の異形の獣に向かって一直線に拳を振り下ろす。
その一撃をハウンドは躱すことができずに、頭の部分にまともに食らう。
少女の拳は金属板を幾重も貫き、命令系統に当たる部分を粉々に粉砕した。
「シンフォギア……!」
<正義を信じて、握りしめて>
いまここに、ガングニールのシンフォギア奏者。
立花響が降り立った。
ハウンドたちは自分の邪魔をする少女を排除するべく多数で、囲んで、一斉に襲い掛かる。
それを立花響はわずかに腰を落とし、腕部のジェネレーターから発生したエネルギーと中国拳法、『発勁』を利用して周りの空間ごと衝撃でふっ飛ばした。
ハウンドを構成する金属板の端々が剥がれ落ちるが、そのどれもが瞬時に再生していく。
『響君。奴らに些細な攻撃は効かないようだ。ならば……』
「狙うはあれを動かしている頭の部分ですねッ!」
脚部ジャッキを展開、瞬時にそれは地面をうがち、響の体を正面にふっ飛ばす。
そのままの勢いで正面からとびかかろうとしていたハウンドの頭部を拳で粉砕した。
後ろから来たハウンドを回し蹴りで沈める。
その体は、隣にいたハウンドを巻き込んで壁にぶつかり、静止した。
残りは五体。
右の腕部ジェネレーターに火を入れる。
燃料は、胸の歌で、響自身の心だ。
右側面からかかってきたハウンドを、体を回転させた勢いのまま放つ肘打で前方に。
足に食いつこうとしたハウンドを、体の軸を大きくずらしながら左足を上げることで躱し、頭部が足の真下に来た瞬間に震脚の要領で全身を粉砕する。
背部バーニアを起動させ、姿勢を整える。
目標は前方のハウンド四機。
バーニアが推進力を生みだし、拳を構えたまますさまじいほどの勢いで響の体を前にふっ飛ばす。
これを脅威と思ったハウンドが、大きく口をあけ、口内から鋭い牙状の金属片を響に向かって飛ばし始める。
自分に向かって飛んでくるソレを、背部のバーニア、左右の噴気孔から吐き出されるエネルギーを調整。
壁に沿うように軌道を修正し、響はすべての攻撃を躱しきった。
腕部にある拳の兵装を大きく、通路の大部分を占めるほどにまで巨大化させる。
大質量と膨大なエネルギーが掛け合わされたその一撃は、そのまま正面にいたハウンドをすべて粉々に粉砕した。
バーニアを静止、バランスをうまくとり地面へと着地し、残心。
その姿はまごうことなく、世界を二度救った少女の姿だった。
(これが、シンフォギア。これが聖遺物の力か)
これがあれば、とキャップの少女は思う。
だがそれでも足りないのだ、と少女は確信した。
「ねえ、君、大丈……わぁ!?」
思わず響は悲鳴をあげた。
自分が助けたキャップの少女が自分のことをカメラで撮ったからである。
「あ、あの……そういうの、私困るっていうか……」
キャップの少女はそのままカメラをカバンの中に直し、体をひるがえし去ろうとする。
「ま、待って話を……」
その時、彼女の背中に幾何学模様が浮かび上がる。
そして、そのまま少女の姿は空気に溶けてしまった。
「ああっ!?……すいません……逃げられちゃいました……」
『まあいいさ。あとは俺たちに任せて響君は帰ってゆっくり休んでくれ。 たしか課題が残ってるんだろ?』
「そうだったぁ!?また居残りさせられちゃうっ!」
先ほどまですさまじい戦いを繰り広げていた少女は、なんとも日常的な問題にノックアウトされかけていた。
●
「ふぅ……思ったより遅くなっちゃったな……」
スーパーのドアをくぐったカケルは、腕時計を見ながらその顔をしかめた。
もう六時を過ぎてしまっている。家では妹が
「まあ、今日はあいつの好物ばっかりだし、文句は言わないだろ」
帰ってからの料理の手順を頭の中で反復しながら家の前までの道を進むカケルの目の前に、少女が現れた。
カケルは知るはずもないが、響が助けた、件の少女である。
そんな彼女は、ふらふらと体を揺らしたと思えば、路上の真ん中にどさりと倒れこんでしまった。
「ちょ、ちょっと!」
突然のことに慌てたカケルは、それでも少女のそばに駆け寄った。
どうやら少女の体のあちらこちらには切り傷が、目元には大きな隈があり、何日も寝ていないのだという事を知りえることができた。
「う……まちがいなく厄介ごとだ」
誰か……、と周りを見渡してみるも誰もいない。
「お前、なんで…………ぐっ……」
わずかに目を開け、何事か呟いた彼女は、そのまま意識を放り投げた。
「どうしろって…………。ええい、ままよ!」
少女の肩を支えて、引きずるようにして家に向かう。
幸い、少女は自分よりも小さかったために移動させるのに大した手間はなかった。
「ただいま……!」
「おかえりなさいませ、カケルさん……その人どうしたんですか!?」
時代錯誤な割烹着を着た、カケルの家のホームヘルパーである夜城ゆかりはカケルが支えている少女を見て目を丸くした。
「道で倒れてて……、とりあえず、これ。冷蔵庫に入れといて……あ、あ とごめん。よければ妹にご飯作ってやって?その材料で妹の好きなもの 作れるはずだから。残業代もだすからさ」
「そんなもの要りません……。その女の子の事は……」
「それはこっちでやるから大丈夫」
両手があいたカケルはそのまま少女をお姫様抱っこで、家の奥の自分の部屋である和室に運んでいく。
彼女の持っていた荷物を肩からおろし、布団を広げ、少女をそのうえに寝かしつける。
「我慢してくれよ……」
救急箱から消毒スプレーや包帯を取り出し、傷の処理をする。
少女が浮かべる苦しそうな表情が、カケルに情欲の一切を浮かび上がらさせなかった。
「全く、どうしてあんなとこに倒れてたんだ……」
彼女の持っていたカバンをいればわかるかもしれないと、ずけずけとカバンの中身をひっくり返す。
そこに入っていたのは、本や見たこともないような機材の数々。
道理でめちゃくちゃおもかったわけだ、とため息をつく。
「ん。カメラ?」
もしかしたら、これに彼女の正体をしめす何かが入ってるかもしれないとメモリーをあさる。
「なっ!?これって……」
メモリーの中には、立花響。
その名前まではカケルは知らないが、その姿はまごうことなく、フロンティア事変時に全国中継されていた少女だった。
「やっぱり厄介ごとだ……」
この人がなおったらさっさと家から出て行ってもらおうそうしようと考えながらも、カケルはカメラのメモリーをあさっていく。
それは訳の分からない記号や石板の写真だったり、てんで彼には分らないものばかりだったが、そのうちの一つに思わず目を奪われた。
少女だった。
こちらに目線の一つも向けてはいないが、金髪の自分の妹ぐらいの、中学生くらいの少女。
その体には。
たくさんの管が巻き付いていた。
AXZの戦車の弾を弾き飛ばすビッキーが男前すぎたので補正かけてます。
シンフォギア一話目は、強さにブーストand相手が格下だから一方的でも仕方ないね。
なお、相対的に主人公の強さに問題が出る模様。
追記 利用規約を理解せず、歌詞を載せていたのでそちらを消しました。
のちに加筆します。
追記2 修正済み