戦姫絶唱シンフォギア 外伝 ~いつか空駆けるその日まで~   作:チョコ明太子味

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ちょこっと主人公の設定開示。
大きな伏線を開示するのはまだまだ先。


少年の家族関係

 世界のどこか。

 仮名アレイスターは、中学生ほどの見た目の少女の手を引きながら歩いていた。

 その少女は、黒い艶やかな髪に背丈に見合わない貧相な体つきをしている。

 その表所に変化はなく、感情を映さない瞳から、まるで人形のようだ。

 

「さて、あの少年の件は片付いたが……」

 

 そう言いながら、アレイスターは少年……カケルの事を思い出した。

 正確に言えば、最後に言いよってきたことをだ。

 

「ふん……。なにが『俺も連れていけ』だ。あれだけ嫌がっていたというのに」

 

 思えば、最初から変なやつだった、と思い返す。

 自分は関わりたくない、と言いたげな面をしているくせに、人の厄介ごとに触れてくる。

 それを理解せず行っているのなら、変な男で終わるのだが……。

 

「ん……?」

 

 そんなことを考えていると、不意に服の袖を引っ張られた。

 少女、フェル・マータがおなかの部分に手をやりながらこっちを見やる。

 

「腹が減ったのか?分かった。適当なものを食わせてやる」

 

 その言葉を理解したのか、フェルは僅かに頷いた。

 

(さて、フェルの欲求を満たしたら、次の計画に映らねば)

 

 そう言いながら、アレイスターは手元の液晶機器に映った風景を見やる。

 そこには、日本のとある神社が映っていた。

 

     ●

 

「はあ……」

 

 全くここ数日はついていない。と、神崎カケルは溜息をついた。

 そもそも、道に倒れている女の子を助けようと思ったのが間違いだったのかもしれない。

 

 ……いや、そんなことはないか。

 行いは間違ってなかった。問題だったのはそのあとの俺の行動か。

 

 人に深くかかわりすぎたのがよくなかったのだ、と考え直したうえで見当違いの結論を導き出すカケル。

 

 頭が微妙に固く、その癖根は真面目なせいで物事を偶然で測れない悪癖がここに出ていた。

 だが。

 だが。と考える。

 

 管につながれていた少女。

 フェルと呼ばれていたあの少女。

 あの子を見た時、なんとなく放っておけなかった。

 何が琴線に触れて、アレイスターに『連れていけ』などと言ってしまったのか。

 

「よお、カケル。意外に元気そうだな」

 

 そう言いながら入ってきたのは、S.O.N.Gの司令官の風鳴弦十郎だった。

 最も、カケルにとってはその肩書よりも親しみやすいものがあったが。

 

「師兄さん。驚きました。政府のえらいところにいるって父さんから聞いていましたが、まさかここの組織の司令官だなんて……というか、いいんですか?俺なんかにこういうこと言って」

 

「住良木さんからの言葉だ。『息子に教えてやってほしい』ってな。住良木さんは、まだお前がこっちに来ることをあきらめていないようだったぞ」

 

 こっち、というのは異常犯罪に関係する政府官僚のことだろう。

 事実、カケルは数年前までキャリアに関する勉強を進めていた。

 しかし。

 

「……、俺には無理ですよ。俺には無理や無茶苦茶に立ち向かう度量も度胸も根性もないんです。すっからかんなんですよ、俺の心の原動力」

 

「そうかな。俺はそういうもんは人間には無くせないものだと思うがな。無くしたと思っても端っこの方でこびりついてるんだ」

 

「……不思議ですね。ほかの人に慰められたりしても何も思わなかったのに、師兄さんにそう言われると、そうなのかもって思えます」

 

「そりゃあ、お前より年を少しばかり食ってるからな。辛いことや苦しいことを多く経験してる分、言えることも増えるようになるさ」

 

「…………」

 

「さて、と。悪いが簡単な取り調べと、秘匿事項に関する書類の記入がまだ残ってる。大丈夫か?」

 

「はい。問題なく」

 

 そう答えると、少しばかり浮かない表所のまま、カケルは頷いた。

 

 

 

    ●

 

「アレイスター、魔術師、ですか」

 

「いよいよ、ファンタジーじみた敵になってきたな」

 

 カケルの取り調べが終わった後。

 ブリーフィングルームにて、今動ける奏者である響、クリス。そしてS.O.N.G職員が集まっていた。

 

「ああ。といってもアレイスターと名乗る少女とフェルという少女が味方なのかはまだ分からん。当分は彼女たちの保護を目的として動くことになるだろう」

 

「あの……。あの男の人はどうなるんでしょう」

 

「ああ。秘匿事項の書類を書いてもらった後は今まで通りの生活に戻ってもらうことになる。まあ少しの間監視はつくことになるがな」

 

「よかったぁ……」

 

「妙に気にすんじゃねえか。何かあったのか?」

 

 クリスの言葉に、響は軽く首を振る。

 

「あの人とは何もないけど、私もここに来たときは無理やりだったし……」

 

「ふぅん。そういえば、あいつって本当に一般人なのか?それにしてはなにか、こう。普通にハウンド達を蹴り飛ばしていたように見えたんだが」

 

「ええ……!そうなの?クリスちゃん」

 

 信じられないようにそう言う響。

 

「カケルが言うには、アレイスターが施した術式によるものらしい。もっともそれは身体的なものの補佐のみで、反応速度はアイツ本人のものだろうがな」

 

「……取り調べ中もそうだったけどさ、おっさんはアイツと知り合いなのか?」

 

 クリスが、取り調べが始まった時から抱えていた疑問を弦十郎に投げかける。

 彼はゆっくりとうなずくと口を開いた。

 

「あいつの家名は『神崎』というんだが、神崎家というのは俺や翼の実家である『風鳴』の分家筋なんだ」

 

「つまりは……ええっと……親戚ですか?」

 

「ああ、簡単に言っちまえばな。あいつは風鳴家によく出入りしていてな。風鳴流の武術と神崎家の護身術を習得している」

 

「なんというか……それでなんとなく納得できるのが恐ろしいぜ全く」

 

 クリスと響は、目の前に立っている弦十郎のアスファルトをひっくり返したり、大質量を拳で押し返したりといった事例を頭の中で思い浮かべる。

 

「風鳴の家で手合わせをしてるうちに、あいつには兄弟子のように接されていてな」

 

「ああ、なるほど……だから『にいさん』って……。あれ?じゃ私はあの人の弟弟子……妹弟子?」

 

「まあ、俺の武術は風鳴のソレとは少しばかり離れてるがな。……では奏者はいつでも出動できるような心構えをするように。俺達大人はもう少しブリーフィングを続けるとしよう」

 

 どうでもいいことに躓く響に苦笑しながら弦十郎が答えると、彼は奏者の二人に対して下がるように伝えた。

 

「んー……」

 

「なんだ?まだ気になることでもあんのか?」

 

 ブリーフィングルームから出ても、なおうなるような声を出しつつ悩む響に、クリスはあきれ顔でそう問いかける。

 

「ううん。そうじゃなくて、なんとなく神崎さんの事。見覚えがある気がして……」

 

「どこかですれ違ったことでもあるんじゃねえのか?同じ町に住んでんだろ?」

 

「んー、そうかも。ふらわーで見かけたりしたのかなぁ」

 

 

    ●

「…………」

 

「あーっと…………」

 

 首都線を走る車の中で苦い顔をカケルは浮かべた。

 運転席にいるのは、今年四十三歳になる神崎家の当主である『神崎幸成(かんざき ゆきなり)』だ。

「とうさん。今日は……その……迷惑をかけてごめんなさい」

 

「謝らなくてもいい。巻き込まれただけだという事はすでに聞いている」

 

 こちらを振り返ることなく。そして、表情を全く変えずに言う事をバックミラー越しに確認したカケルは不意にため息をつきたくなった。

 

 実の親のはずなのに、この異様な付き合いにくさはどういう事だろうと思う。

 いや、理由は分かる。

 生まれてこの方、両親と顔を突き合わせたことはそれこそ両手と両足を数えたぐらいしかないのだ。

 物心ついた時にはすでに、彼らは国のために官僚として働いていたのだから。

 

「母さんも心配していたぞ。今度電話くらいはしてやれ」

 

「は、はい」

 

 それでも、電話などで声は何度も聞いている。

 ネグレクトなどを犯さないぎりぎりの範囲で自分と妹を育ててくれただけ感謝するべきなのか。

 それとも余計タチが悪いのか。

 

「あの。こんな時かもしれないけど。柚子に会っていかない?アイツも最近少し寂しそうでさ……」

 

「今日は無理だ。今度暇な日にな」

 

「そう……」

 

 なにが暇な日だ。

 あんたらの言う暇な日なんかほとんどないじゃないか、と思わず心の中で毒づく。

 

「それで、心変わりはしたか?」

 

「何度も言ってる。俺には無理だって」

 

「四年前の事だったらお前のせいでは……」

 

「分かってる!」

 

 車の外にさえ聞こえそうな大きさの声に、前に座る男はわずかに肩を動かした。

 

「でも、そう簡単じゃないんだ。誰も彼もが簡単な数字の計算で物事を図れると思わないでくれ……っ!」

 

 車が止まった。いつの間にか、家の前に着いたようだ。

 

 無言で車を降り、そのまま玄関から中に入ろうとすると、車の中から男の声が聞こえた。

 

「柚子の事、頼むぞ」

 

「分かってる。とうさんは、仕事。頑張って」

 

 男の声を振り切るように、家の中に入る。

 胸の中に、小さな切り傷ができたかのように、いたくむず痒い。

 

「あ、お兄ちゃん!」

 

 そう言いながら、家の奥から出てきたのは柚子だった。

 

「聞いたよ!私に内緒で旅行に行ってたんでしょ」

 

 ぷりぷり、と私怒ってますよと言う風にアピールする中学二年生の姿があった。

 柚子の、そのしぐさとやや小さい体が、実年齢よりも小さく映ったからだろうか。

なんとなく頭をなでたくなった。

 

「ふにゃ!な、なに?」

 

「いや、なんとなく撫でたくなって」

 

 自分の髪の色とは似ても似つかない栗色の頭をわしゃわしゃと撫でると、怒っていた顔は徐々に弛緩していった。

 

「何か買ってほしいものだったりあるか?」

 

「え?えーっとね。明日の晩御飯に私が好きなものばっかり作ってくれるのとー、明日の夕方に一緒に稽古してほしいな」

 

「あー、分かった。久しぶりににいちゃんの胸を貸してやる」

 

「やったあ!アレやってね。アレ!」

 

「アレってなんだよ」

 

 アレだってばー、とニコニコしながら言う妹を見ながら。

 カケルは数日の間に起きた厄介ごとを心の中の路上に置き捨てた。

 




まあ、アレイスターが魔術を使ってまで運んでた荷物を、アレイスター(45kgぐらい?)と一緒に家まで連れて帰れる時点で一般人じゃないですよね、肉体面は。

もう一度読み返してみると、さらっと超人的なことしてるかもしれませんよ?

あと、主人公のはクリスちゃんと同い年。
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