戦姫絶唱シンフォギア 外伝 ~いつか空駆けるその日まで~   作:チョコ明太子味

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難産でした。
遅くなりましたが投稿させていただきます。


少年 決断

「あー……」

 

 あれから今日までずっと。

 つまりは約三日間。ずっとアレイスター達について考えていた。

 

 彼女たちのおおよその狙いは分かった。

 でも分からないのは、どうやったらあの二人に再び会えるかという事と、自分が一体どうしたいのかという事。

 

 現状的には前者の問題が深刻。カケル的には後者のほうが深刻だ。

 アレイスター達に会うという事は、今度こそ自分の意思で厄介ごとに首を突っ込んでしまうという事。

 そしてもう一つの壁。

 もし彼女たちの仲間になるにしても、彼女たちが一般人を巻き込まないとは限らない。

 あの少女の為なら、アレイスターは一般人への多少の被害は割り切ってしまうかもしれない。

 だったら、彼女たちが一般人を巻き込まないというこちらの約束を守らざるを得ず、なおかつカケルを仲間に引き込みざるを得ない札をカケルは提示しないといけないのだ。

 

「まあ、あてはあるけどなぁ」

 

「何が?」

 

 思わず、椅子に座ったまま頭上を見上げたところ、未だに教室に残っていたらしい律が話しかけてきた。

 

 その外には誰も人がいない。

 どうやら自分たち以外はすでに帰ってしまっているようだ。

 

「土曜日に言ってた悩み事について、ちょっとな」

 

「それって、私が相談に乗ってもいいこと?」

 

「いや、大丈夫…………」

 

 その言葉を口にして、カケルはその考えを取り下げる。

 よくよく考えてみると、核心的なことさえ言わなければ少しばかりの相談くらいはしても構わないだろう。

 

「や、うん。相談に乗れることだ。と言うよりもぜひ乗ってほしい」

 

「ほうほう。なら私にその相談事を話してみなさい」

 

 向かいの席に座り込み、女性らしい膨らみをポンと叩く。

 その仕草を微笑ましそうに見てから、カケルは律に向かって口を開いた。

 

「この前さ、放っておけない子を見かけたんだよ。困っている……というよりも、一人にしていたら危ない感じの子をさ」

 

「ふんふん」

 

「で、俺もその子の事を珍しく助けようと思ったんだ。でもその子の近くにいる人に反対されてさ。実際、俺がいなくても支障がないのかもしれない。それに、俺がその子の事を助けようとしたら、俺は多分危ない目に合うことになると思うんだ」

 

「うん」

 

「それでも、なんだか妙な予感がするんだ。その子に関わらないままいたら、いつかきっと後悔することになるって。でも冷静な部分は俺に関わる必要はないって言ってくるんだ。なんだか、どうすればいいのか分からなくなってさ。どうしたらいいか分かるか?」

 

「うむむむ……」

 

 顔をしかめながら考えること数分。

 律は一つうなずき満面の笑みを浮かべた。

 

「分かんないや」

 

「分かんないってお前なぁ」

 

「でも、理性は行くなって言ってて、本能は行けって言ってるんでしょ?じゃあ行っていいんじゃないかな?」

 

「なんでだ?」

 

「だって、理性って行動のストッパーになるものでしょ?でも本能は自分がやりたいことをそのまま示すじゃない?じゃあ本能のいう事を信じればいいんじゃないかな」

 

「それでいいのか?俺は……」

 

「じゃあ聞くよ?カケルがやろうと迷ってることは、大変で辛いかもしれないけど、それはあなたにとってできないことなの?」

 

「…………。そうか。逃げ続ける事にも限界が来たってことなのかな……」

 

「カケル?」

 

「いや、ありがとう律。少し本気で頑張ってみるよ」

 

「うん。私、応援してるね」

 

 律にお礼を言った後、カケルは学校を飛び出した。急いで行動しなければならない。

 人形のような少女のために。

 

    ●

 

「難儀な性格だなぁ」

 

 やれやれ、とかぶりを振ってため息をつく律は、けれどもどこか懐かしむように微笑んだ。

 

「なんだか久しぶりにあんなに明るい顔を見たかも」

 

 最初にカケルと出会った時もあんな顔をしていた気がする。

 

 三年前。

 

 律は誰もいない公園で、ぼうっと空を見上げていた。

 一週間ほど前にあったツヴァイウイングのコンサート。

 そこで起きたノイズの災害によって彼女の家族は全員死んでしまったのだ。

 

 彼女は、その事実に悲しんでぼうっとしているのではない。

 いや、正確に言うのならば、未だ悲しみのふちにいるのだが、今ふさぎ込んでいる理由は別にあった。

 

 学校に行くと、友達やクラスの人たちが一様に『辛かったね』だの『大変だね』などと言ってくるのだ。

 いや、それだけならまだいい。

 しかし、あったこともない人やあまり仲の良くない人にまで同じことを言われればさすがに気が滅入る。

 

 そういうわけで、彼女は誰もいない公園で一人でいるのだった。

 

 長い時間、少なくとも彼女自身がそう感じた頃、遠くのほうからたくさんの声が聞こえてきた。

 最近増えだした、ツヴァイウイングのコンサートで生き残った人たちを弾劾する人たちだろう。

 

 全く迷惑な人たちだなと思っていると、どうやら彼らはこちらの方向に向かって歩いてきているようだ。

 

 あまり彼らの運動を近くで見たくない、とその場から離れようとすると、集団が発する声のトーンが少し変わった。

 どうやら、誰かが集団に向かって話しかけているらしい。

 

「…………」

 

 この時なぜ律が集団がいるほうに行ったのかは今の彼女自身にもわからない。

 だが、どうしてもそちらのほうに行かなければならないという予感がしたのだ。

 

「ですから、あなたたちの運動のせいで俺たちの学校の生徒の何人かが迷惑を受けているんです」

 

「別に構わないだろう、あのコンサートで他人を見捨てて生き残ったような連中だぞ」

 

「そうだそうだ!ニュースで見たんだぞ。生き残った人がノイズに追いかけられてる人を見捨て逃げていくの!」

 

 集団の熱は冷める様子がない。

 それどころか、彼らはどんどん興奮しているようだ。

 

 眼鏡をかけた少年は、目の前の集団に少し怯みながらも一生懸命に彼らとの対話を試みている。

 

 それが見ていられなくて、律はそのあとすぐにそこにいた男の子の手を持って無理やりにその場から引っ張り出した。

 

「え、ちょっと!」

 

「黙ってて」

 

 ぴしゃりとそう言うと、男の子は文句を言おうとしていた口をつぐむ。

 そのまま少年を人の少ない川辺のほうまで引っ張ってくると、少年は口をとがらせて律に文句を言った。

 

「なんなんだよ君は」

 

「なんなんだ、はこっちのセリフ。全く、あんな事しても火に油を注ぐだけってどうして分からないかな」

 

「そんなのは分かってるけど。うちのクラスで泣いてる女子がいたから……自分が何もしないままでいるのは嫌だったんだ」

 

 口をとがらせて言う彼は、何かに気づいたように律の顔を見た。

 

「あれ、もしかして同じクラスだっけ」

 

「え?」

 

 そう言われても。彼女には心当たりがない。

 自分のクラスメイトならこちらに同乗して話しかけてきたりで顔は覚えているはずなのだから。

 

「律さんでしょ?前のほうに座ってるから何回か見たことあるんだ」

 

 こんなところで会うなんて偶然だなぁ。

 

 そんな風にのんきそうに言う彼に、なんだか力が抜けて、律はその場でしゃがみこんだ。

 

 そのまま互いに言葉もなく、いくばくかの時間が過ぎたころ。少年が口を開いた。

 

「律さんも、あのライブで生き残った人たちの事を恨んでるんですか?」

 

「…………」

 

 その質問をされて、正直律は驚いていた。

 自分の心配をするような言葉は何度も聞いたが、こちらに意見を聞いてくるような人は一人もいなかったからだ。

 

「私は別にそんなことはないけど?」

 

 そもそも、それはお門違いも甚だしい。

 集団心理が作用しているからああいう人たちが生まれてしまっているわけだが時間がたてば自然とあんな人たちは消えるはずだ。

 

 それを、律儀にこの少年は目の前の問題に必死に立ち向かおうとしているのだ。

 もちろん、手段の稚拙さは否めないが。

 

「そもそも、一番悪いのはノイズのくそったれ達だもの」

 

「……驚いた。律さんってそういう汚い言葉は使わないと思ってた」

 

 何を失礼な、と思ったが、確かに。

 自分は学校では真面目な学生という事で通ってたはずだ。

 

「別に。時と場所を選んでるだけだってば」

 

「ああ、なるほどね」

 

 談笑を続ける。そんな中、律からその言葉が出たのはある意味自然だったのかもしれない。

 

「ねえ、私たち友達になろうよ」

 

「え?」

 

 キョトンとした顔がなんだかおもしろくて。そこで律は再び笑ってしまった。

 

「その、なんだかあなたといるとなんだか楽に話せる気がするし。いい友達になれると思うの」

 

「まあ、そう言う事だったら全然かまわない。むしろ大歓迎だよ律さん」

 

「敬称はいらない。……そういえば名前はなんて言うの?」

 

「あー、神裂カケルっていうんだ」

 

「なんて書くの?」

 

「えーと、神様の『神』に物を裂くの『裂』。それで下の名前のカケルは……」

 

 そうして、そこらに落ちていた木の枝で草が生えておらず、僅かに湿った地面に自分の下の名前を書くカケル。

 

「こう書くんだ。翔(かける)。神崎翔(かんざき かける)」

 

 それが自分の名前だ、と彼は言った。

 

    ●

 

「思えば、あの時の私の予感は当たってたのね」

 

 中学のあの時から、律と翔は友達のままだ。親友になったといってもいい。

 

「翔……。無理をするな、なんて言わないけれど、無事に戻ってきてね」

 

 彼女は、そっと祈るように目をつぶりながらひとり呟いた。

 




今回で平和(?)な回は終了。
ちらちらと貼ってきた伏線を回収していきます。

それはそうと、シンフォギアXDの新イベント楽しいですね。
ぐれビッキー(略してグレッキー)欲しいんじゃあ。

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