戦姫絶唱シンフォギア 外伝 ~いつか空駆けるその日まで~   作:チョコ明太子味

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存外、筆が乗りました。
それはともかく、XDイベント面白すぎィ!
エンディングの陽だまりメモリアで奏者の涙腺にダイレクトアタック。

ずるいわ、と連呼する機械になってました。


少年 武器を握る

 学校を出た翔はまず、自分の家に帰ってきた。

 最低限の準備をするためである。

 

 と言っても持っていくのは、リュックサックと間食。それと、道場に置いてある武器だけである。

 おかげで背中に背負ったリュックは非常に軽い。

 

 さて、次にやることは……。

 

 可能な限り気配を消して、家の外側に配置されている黒服の男たちに忍び寄る。

 後ろから迫り、気道を占めるようにして意識を奪っていく。

 気絶した体は見つかりにくいところに隠していく。

 

 車の中にいるものは、道場から失敬していた刀の柄の部分を窓に向かってたたきつけ、一動作で意識を刈り取った。

 

 家の周りに四人ずつ、それが四グループ。

 そのすべてが沈黙した後、バイクにまたがる。

 妹に少し挨拶をしたい気持ちを振り切って、そのまま那由他の家へ向かった。

 次の手を打つためには彼の腕が必要なのだ。

 

 翔の駆るバイクは首都線を風を裂いて走る。

 そのまま約十分程度。

 どこにでもある一軒家のような外装をした那由他の家へとたどり着いた。

 

 そしてそのまま家と家の間に挟まれた裏手の方から壁伝いに二階へと上がる。

 すでに那由他は家に帰っている頃だろう。

 この曜日のこの時間。彼は必ず家にいるからである。

 

 外から窓を思いきり叩く。

 それでも反応がなかったので、力づくで窓を割り、鍵を外側から開けた。

 どうやら身体強化系の術式は未だ生き続けているようだ。

 

「うわ!翔、お前……なんで二階から……」

 

 ヘッドホンをつけながらパソコンと向き合っていた那由他は、窓の縁に乗ったこちらを見て大きく驚いた。

 しかし、翔はその質問に答えることなく彼をせかす。

 

「話は後だ。それよりも前に言ってたことあっただろ?」

 

「なにが?」

 

「政府の中央記録をのぞき見したってことさ。お前に聞きたいことがある」

 

   ●

 

 那由他はハッカーである。

 と言っても、遊び目的やいたずらでいろんなところの記録をあさっているだけのもので、どちらかと言うとクラッカーに近いものだ。

 

 要は悪質な奴ってこと。

 

「聖遺物を安全に保存、確保できるのはここだね。深淵の竜宮。旧二課の手にないものは大体ここにあるよ。座標は翔の携帯に送っておく。それで、君の欲しい天叢雲剣のあるブロックだけど、それを調べたら絶対に足がつくよ。S.O.N.G関係の情報にハックするのは僕たちの業界じゃタブーなんだから」

 

「いや、足がついても構わない。むしろ、調べたのが俺になるようにわざと粗を出してくれ」

 

「どういうこと?」

 

「そうしなけりゃ切れないカードがあるという事だよ」

 

「……ま、乗ってやるよ。こういうあくどいことをやるのは久しぶりだね。中学時代はよく人助けの名目でこういうことをやったけど……。あとこれ」

 

 そう言いながら、ぽいっとこちらに向けて、那由他は端子付きのメモリを渡してきた。

 

「これは?」

 

「潜水艦の自動操縦プログラム。いやあ、最近の機会は最新技術を詰め込んでるから便利だねえ」

 

「助かる」

 

 そのままカチカチとキーボードの音が響く。

 

「僕は何も聞かないよ。翔を心配するほど人間ができてる自覚もないしね。でも、今やろうとしてることが翔にとって意味のあることだってのは分かってるよ」

 

「那由他……」

 

「ほら行きなよ、端末に聖遺物の場所は送っといた。翔のことがばれるのは今から四十分後かな?まったく、ライダースーツくらい着て来ればよかったのに。うちの学校の制服のまま敵地に乗り込むなんて間抜けだなぁ」

 

 言いたいことはいくつもあった。

 だが、それをぐっと飲みこんで、言うべきことのみを口から出す。

 

「言ってくる。五体満足で戻ってきてやるよ」

 

「ああ」

 

 握り拳を突き合わせて、簡単な挨拶を済ませる。

 あとは何も言う事はない。

 

 那由他に向かって一度も振り返らずに、家の外壁を滑り落ちるようにして下り、バイクに飛び乗る。

 

 ピースは思いのほか簡単に集まってしまったと、エンジンをかけながら翔は思う。

 だが、気は抜けない。

 

 ここから先、ピースの部品をつなぎとめる作業こそが一番大変なのだと理解した上で少年は動き出す。

 

 

   ●

 

「よ、し……」

 

 油田プラントに偽造されていた国家保有の私有地から、潜水艦を奪って乗り込むこと数分。

 わずか二十分ほどで邪魔な警備員を片付けた翔は狭苦しい潜水艦内で必死に息を整えていた。

 

 しかし、こういう密閉された場所はなんというか不安になる。

 どこを向いても大して面白くもないものが映るだけで、そういった気持ちを紛らわすことすらできないのだから。

 

「はあ、もう本当に後戻りはできないな」

 

なによりも、日本の国家に喧嘩を……いや、向こうからしたら子供のしでかしたとてつもない厄介ごとという認識かもしれないが、ともかくこれで翔は犯罪者だ。駅前の掲示板に張られているああいう人たちの仲間入りをしたわけだ。

 

「あとは思惑通りに事が進むか。それと俺の実力次第か」

 

 ああ、まったく。大変につらい状況だが。

 悪くないんじゃないか。

 

 ゴトン、と言う音と共に、潜水艦が深淵の竜宮内部の発着場につく。

 上のハッチを開けて、端末に乗っている地図を見る。

 

「さて、急いで二階層下に……」

 

「いーや、アンタが進めるのはここまでだ」

 

 その言葉に端末から顔を上げると、そこには赤の装束と黄の装束を纏った少女たちがいた。

 

 まあ、つまりはあれだ。来たるシンフォギア奏者――――!

 

「そうだよな。来るんだったら二人で来るよな……!」

 

 正直、一人だけで来てほしいなとは思っていたので、そこのところ翔は賭けに負けていた。

 

 しかし、予想よりもずいぶんと速い。

 翔の目的では天叢雲剣を見つけてから、戦闘に移行する腹積もりだったのだが。

 

「覚悟を決める時か……これは」

 

「あ、あの…………!」

 

 そんな折、黄色の装束を纏う少女、立花響は声を張り上げた。

 

 自然、赤色の装束の少女、雪音クリスと翔はそちらを向いた。

 

「とりあえずは話し合いましょう!私たち戦わなきゃならないってわけじゃないと思うんです」

 

 鉄火場にはいささか平和的すぎる発言に、クリスはいつもの奴が始まったと言いたげな表情で響を見る。

 

 そんな中、翔は口を開いた。

 

「ま、確かに。俺個人に限った話ではシンフォギア相手に立ち回る意味はない。けど、まあ俺個人に限らなければ話は別だ」

 

 リュックサックを放り投げ、背負っていた長刀を引っ張り出す。

 

 鞘から刀身を滑らせるようにして、刀を抜き身の状態に移行させる。

 刀身は蛍光灯の光を反射し、ぎらつくように輝く。

 

 それを正中線に構えるようにして、翔は言葉をつづけた。

 

「話し合いは通じず、こちらはやる気満々。だったら残る対話手段はただ一つだろ」

 

 術式が起動し、熱さが伝播し、胸から頬に、腕に、そして構える刀にさえ広がる。

 

「この神埼翔。生易しい手段で刃を落とさぬと思ってもらう!」

 

 

    ●

 

 翔を相手にしたクリスの印象はやりにくい、といったものだった。

 

 なんといってもあっちの攻撃は彼女に対してただの一つもこちらに届いていない。

 翔の攻撃のすべてはこちらが仕掛ける攻撃に合わせて繰り出されるものであり、遠距離の攻撃手段を彼は持ち合わせてはいないからだ。

 

 しかし、彼の歩みをとどめることはできない。

 少しずつ、着実に、翔は天叢雲剣のもとに進んでいく。

 

 この現状を招いているのは、翔の剣の技量だけというわけではない。

 なにせ、響とクリスが使っているのはシンフォギアだ。

 

 強化されているとはいえ、生身の人間相手に100パーセントの力で力を振るえるわけもなし。

 彼女たちはきつい戦いを強いられていた。

 

「~♪!」

 

 思い通りにならない鬱憤を歌にこめて、マイクロユニットから両手の指では数え切れぬほどのミサイルを翔に向けて打ち出す。

 

 その攻撃を、前方から拳を突き出してきた響の攻撃を、からめとるようにしていなすと、翔は目的地に向けて一気に距離を詰めた。

 

 そのまま、通路の壁に足を着け、天井に向けて回転しながら跳躍。

 

 二度の回転にのせ、刀でミサイルの一部を押しのけるように叩き割り、天井に足をつけると今度は縦に回転するようにして残りのミサイルを叩き落し、床に着地した。

 

「はあっ!」

 

 そのまま響の剛腕が唸るようにして翔のいる位置に向かう。

 それを身を猫のように屈めることで躱し、そのまま刀を持たない手で体を持ち上げて、一度刀を手放す。

 

「おぉっ!?うぇええ!?」

 

 両手で地面に手をつくようにして、サマーソルトキックのように響に攻撃を当てた。

 そのまま、もう片方の足で響の突き出した腕を払い、腕を使ってクルリと回り、独楽の要領で響の体を蹴り飛ばし、距離を空ける。

 

「ったく、見たことのある技を使いやがる……」

 

「うん。翼さんと同じ技を学んでるんだもんね。でも所々違う……。翼さんの攻撃と同じ対応をすると、予想してない方向から攻撃が飛んでくるもん」

 

 攻めきれない理由がもう一つ。風鳴流の剣を彼女たち二人が知っているという点。

 知っている一撃に備えると知らない一撃が。知らない一撃を待っていると、既知の絶技が飛んでくる。

 

「もう三階層だ。このままじゃあいつが目的地に着いちまう」

 

「うん……。あ!いいこと思いついた!」

 

 妙案を思いついたという風な響の顔に、薄ら寒いものを感じつつ、クリスは頷いた。

 

「やーな予感がするが、ここは任せるぞ。お前の動きに合わせて後ろからサポートしてやる」

 

「分かった!」

 

 二人で、前を行く翔を見据える。

 

「だぁっ!」

 

 響がダンッ、と地面を踏みしめると同時に、クリスは腰の二門からミサイルを取り出し、発射レール上に乗せ、ひと思いに発射した。

 

 ガングニールのシンフォギア脚部に搭載されているジャッキが地面をたたいた時には、ミサイルは翔との距離を半分に詰めていた。

 

 これには、翔も走る足を止めざるを得ずに、二人の方向に体を向ける。

 そのまま勢いを殺すようにして後ろに出した足を軸にして、二つのミサイルを三分割ずつに切り裂いた。

 

 後ろのミサイルの爆風に煽られるようにして僅かに背をそった翔の懐に、響が潜り込んだ。

 

「はあっ!」

 

 声を上げながら響が繰り出したのは、中国拳法の鉄残光。

 本来、体内の気を爆発させるところを、フォニックゲインのエネルギーを相手に伝えふっ飛ばす。

 

「ごッ!?」

 

 これには翔もたまらずに、後方へとサッカーボールのように飛んでゆく。

 

「よしっ!作戦通り!」

 

「じゃねえよ、馬鹿!」

 

「うひぃ!」

 

 ガッツポーズをした響に、クリスが怒りの声を上げる。

 

「真正面から思いっきり突っ込んだだけじゃねえか!あたしがサポートしてなかったら……」

 

「だ、だって……、してくれるっていったからぁ……」

 

 涙目でそう言う響に、クリスは声を荒げようとして、今自分たちがどこにいるかを理解した。

 

     ●

 

「だっあ……。作戦通り……ではないけど、目的達成ッ……!」

 

 翔の目には、ショーケースの中に入っている何かの欠片が映っていた。

 

「か、隔壁が閉じないように、奏者たちをひきつけながら入ったのはいいけど、流石に……ハァ……きついな……」

 

 息を切らせながら、顔にかけた伊達眼鏡をはずし、汗をぬぐう。

 眼鏡は爆風に煽られたせいか、弦の部分が半ばから折れていた。

 

「刀に強化がかかるんだったら眼鏡にもかけてほしかったなぁ」

 

 ぐちぐちとつぶやくように言うと、すぐに思考を切り替えた。

 さて、ここから大きな賭けの始まりだ、と。

 




うむ、三人称にも少し慣れてきたような気がします。
さて、次回で起承転結の起が終わるころだと思います。
約一週間後にまた会いましょう。

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