ガノトトス希少種保護譚:マーキ・パラオの解脱   作:fuki

11 / 45
● 一頭目、討伐完了

「ヒュウ……!」

 マーキはランスを納刀し、岸辺へと泳ぎだした。

「アイルー! ロアルは死んだ、水揚げの時間だぞ!」

「「ニャー!」」

 マーキの言葉に反応して、身長一〇〇センチ前後の人影が陸地の方々から姿を現した。

 アイルーとは人間社会の一翼を担う亜人種で、クエストでは危険な狩り場の至るところに潜伏し、観測気球との連絡や、危機的状況に陥った“ハンター”の救出などなど、様々な形でサポートしている。

 車高の高い荷車を持っている辺り、彼らは討伐した“モンスター”から剥ぎ取った素材を運搬する役割のアイルーだろう。

「えー、それ引っ張り上げるニャー!?」

「ヤダニャー! ビチャビチャニャー!」

「冷たいニャー!」

「雨降ってる中なに言ってんだ。文句言うな」

「でっかいお魚さんいるニャー!」

「これは食べられないニャー!」

「熱いニャー!」

「お、おいマーキ!」

「ん?」

 マーキに追いついたオレは、その肩を掴んで言った。

「殺す必要はなかったんじゃねえか? こいつはもう完全にガノスに負けたんだし、いくらオレたちの食料が足りないからって、こいつの肉じゃ食い辛いだろ」

 オレがまくし立てると、マーキは息を吐いて、陸地を見た。

「あいつのメシだ」

 いつの間にか集まってきた数十匹のアイルーに牽引されたロアルが、岸に近付いていく。

 それを眺めているのは、“翡水竜”ガノトトス希少種。

 高熱で全身に浴びる雨を蒸発させ、鈍色の身体を油の光沢で虹色に輝かせ、自分が見逃した生物が死骸となって戻ってくる様を眺める、オレたちの護衛対象。

「餌付けすんのか? あいつを」

「ああ。毒もこんなもんなら問題ねえだろ。腹減ってんのかどうかは知らんけどな」

 たしかに、毒生肉みたいに濃縮された毒ならともかく、襟巻きの中の紫色の毒液ならオレがかぶっても平気だったんだし、いくら小さいとはいえ大型“モンスター”なら大丈夫なのかもしれない。

 でも、そうか、こうやって最終的な目的のために手段を選んでいくのが、“ハンター”ってヤツなのか……。

 オレたちが陸にあがると、ちょうどガノスがペタリペタリとヒレ状の足で獲物に近付き、柔らかい腹に食らいついたところだった。

 足下の植物を熱で殺し、ロアルの死骸からしみ出す体液さえ沸騰させてるその様は、まるで生物とは言いがたい。近寄ることさえできない、高熱で鍛えられた金属のように渋みのある鱗やヒレも、その印象を後押ししている。

 もしかしてこいつ、オレたちがあと三〇時間近く護らなくても、普通に生き延びられるんじゃないか?

 てかそもそも、古生物書士隊の調査団が来たとして、どうやって調査するんだ? 一〇メートルも近付いたら熱さで皮膚をやられちまいそうなのに。

 そんなことを考えていると、

「ああ、そうそう」

 とマーキが振り返り、親指を立てた。

「初めてにしちゃいい動きだった。助かったぜ」

 オレは唖然として、言葉を返せない。

 助けられたのはオレじゃないか。最初から最後まで失敗ばっかりだったオレを、フォローしてくれたのは“凄腕ハンター”のお前だったのに、お前がそれを言うのか?

「そろそろ暗くなるな。ガノスの行き先をチェックしたら、今夜は一旦キャンプをはろう」

 オレが疑問を口に出せずにいる間に、マーキは一つ伸びをして、長いヒゲをじょりじょりとかいた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。