ガノトトス希少種保護譚:マーキ・パラオの解脱   作:fuki

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15.水没林・エリア10
● 二頭目、再接敵


 植物の生い茂る暗い通路を抜け、崩壊した遺跡の痕跡がそびえ立つ広い空き地に出た時、満月が天頂を回った。

 三日目、〇時。

 古生物書士隊が到着するタイムリミットまで三時間。

 “陸の女王”、“桜火竜”、リオレイア亜種は、空き地の中央、地面を破って突き出す岩石の脇に腰を下ろしていた。尻尾と頭は向こう側に丸め、左の翼膜で自分の姿を隠すように、オレに背中を向けている。

 その背中、翼の付け根に挟まれた部分に、直径五センチほどの針が密生しているのが見えた。マーキの話によれば、あれにも毒が含まれているらしい。

 身体はわずかに上下しているが、寝てはいないだろう。

 だけどオレは、バックパックから取り出した右前腕の肉をポーチにつめ、まっすぐ走り出した。

 雷で焦げた踵の補強パーツで土に足跡を付け、くるぶしほどの水を蹴散らし、葉やツタを踏み破り、進む。

 方々に、小型の高脅威肉食動物であるフロギィの死骸が、無造作に転がっている。傷口からしてやはりレイアに捕食されたらしい。体力回復は十分、ってことか。

 そして予想通り、レイアは目を覚ましていた。

 長い首が持ち上がり、背中越しに風を切るような甲殻の奥の目がオレを見た。次いでしなやかな両脚が地面を捉え、尻尾が土を削りながら持ち上がり、翼を大きく広げて翼膜を夜に晒す。

 外敵を発見したレイアは、その体躯がもっとも効果的に映えるポーズで咆哮を放ち、相手を圧倒しようとした。

 月光を浴びて顎の強調する姿を見て、マーキが最後に使ったタル爆弾が失敗だったことを理解した。レイアが失ったのは授乳器の一部だけで、彼女自身はピンピンしていたからだ。

 どっちにしても、オレが決着を付けるしかねえか。

 “陸の女王”は翼を納め、オレと完全に向き合うと、開始早々の火球を吐き出した。

 唾液を芯とする炎の塊が空気を裂いて飛来し、オレは足をとめ、マーキの大盾でその軌道を逸らすかたちでガードする。

「ヒュウ! 相変わらず熱いヤツだな」

 意識的に口を鳴らし、軽口を叩く。自分を規定するようなその行動が、少し照れくさい。

 その返答のように、モゴモゴと口を動かしたレイアが二発目の火球を吐いた。

 今度は付き合わない。軽く左に身をかがめ、熱を避けるために盾を掲げるだけだ。

 オレたちの距離はもう三○メートルもない。レイアが踏み出せばすぐに詰められる。

 さあ、お前はどうする?

 レイアはオレを睨み付け、その巨体に見合わない重量で地面を蹴った。

 浅い水たまりが水飛沫になって消え、欠けた授乳器を備えた顔面が迫る。

 さすがに早い。想定した通り、ランスを構えたままの瞬発力じゃ、この両脚の外に逃げるのは無理だ。

 さあ、オレはどうする?

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