東方欲求録   作:黒色エンピツ

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お久し振りです。黒色エンピツです。
三人称視点と一人称視点が混ざっていますが、一人称視点は主人公だけとなっています。ご了承を。


其の一・・・あこがれ

今は少なくなってしまった自然溢れる世界。人々の生活はまるで江戸時代の様で、しかし生活している人々は皆楽しそうに、幸せそうにしていた。だが、時折何かを恐れている様な目をしていた。

ここは外の世界から切り離された世界『幻想郷』人妖神仏が生きており、その共存を願った幻想郷の賢者『八雲 紫』の作った世界である。まあ、共存と言っても名ばかりであり、人は妖怪を恐れ、妖怪は人を襲い、神は人から信仰を得る。これにより形の共存が保たれている。

そんな世界の中で一人の少年が森の中を走っていた。

 

「はぁっ…はぁっ…はぁっ……。」

 

必死に走る少年の後ろから犬の集団、いや、犬の妖怪の集団が追いかけて来ていた。

 

「たっ、たすけっ、だ、だれかー!」

悲痛な叫びが森の中に響く。しかし、ここは森の中、ましてや妖怪が出る幻想郷である。居るとすればただの物好きか、力を持った者だけだ。

少年が噛まれる……その瞬間噛もうとした妖怪が吹き飛んだ。

 

「グギャア!?」

 

先程妖怪の居た場所には代わりに女性が立っていた。

 

「み、巫女様……。」

 

「そこで待っていなさい。すぐに終わらせます。」

 

「は、はい……。」

 

そこからは一方的な戦いであり、言葉通りすぐに終わった。そしてその光景は少年の脳裏に焼き付いたのだった。

 

 

 

 

戦いが終わった巫女は少し乱れた服を直して少年の前にしゃがんだ。

 

「それで、あなたは何故このような所に居たのですか?危険と言うのは知っているでしょう?」

 

「ご、ごめんなさい……。」

 

「ごめんなさいと言われても困りますが……。まあ、その大事に抱えた花を見れば大体分かります。」

 

巫女の言う通り、少年は必死に逃げている間も束ねられた花を大事に大事に花弁の一つも落とさない様に抱えていた。

 

「母さんが、病気で寝てるから花を見せてあげたら喜ぶかなって……。」

 

「そうですか……。あなたは家族想いなのですね。

それと、一人でこんな所に来たのもあります、その花束はどうしたのですか?」

 

巫女は疑問に思った。この辺りにこの少年の持っている様な色鮮やかな花があっただろうか?と、それと同時に一つだけあると思い出した。

 

「えっと……あっちにある黄色いお花畑のお姉ちゃんに貰ったよ……です。」

 

少年の慣れてない敬語に巫女は笑みを浮かべる。

 

「なるほの、彼女がくれたのですか。しかし、良く花をくれましたね。」

 

「最初は怖かったけど頑張ってお願いしたらくれた……です。」

 

「無理に敬語を使わなくても良いですよ。……それにしても、ふむ……あなた、なまえはなんですか?」

 

「信……。上の名前は忘れちゃった。」

 

「そうですか、では信、たまに花畑の女性に会いに行ってあげて友人として接してあげてほしいのですが。」

 

「友達?うん、いいよ。」

 

「助かります。では、里に戻りますよ。説教も待ってますよ。」

 

「うっ……はぁい……。」

 

信は怒られた時に何て言おうかと考えると同時に巫女の様に強くなりたいと強く望んだ。

その日から信の進む道は大きく変わったのであった。

 

 

 

 

「えいっ!やあ!」

 

信は助けられた日から家の裏であの時の光景を思い出しながら拳を振っていた。

 

「ふぅ、どうやったらいいんだろ?」

 

信は今まで荒っぽい事をした事が無かったからかどうすればいいかと悩んでいた。

 

「うーん……でも、体力が無いし、やっぱり走ろっと。」

 

 

 

 

「やっ、とお!」

 

数ヶ月が過ぎた。信の体は前よりも大分引き締まり、体力も付いていた。それを周りの人は微笑ましく見ていた。

 

「腕立てとかはお休みかな。身長が伸びにくくなるって本に書いてたし。」

 

 

 

 

信が修行を初めて一年が過ぎた。その日は里が妖怪に襲われていた。

 

「ほら、逃げろ!」

 

「う、うん!」

 

信は有り余る体力を使って人を避難させていた。

 

「よしっ、これで全員かな?……あれは、慧音先生と巫女様?」

 

視線の先では寺子屋の教師であり里の守護者である半妖の上白沢慧音と巫女が戦っていた。

 

「…………。」

 

信は戦っている所からやな離れた所に隠れた。

見る観る視る監る覗る瞰る。ただただ何かのパーツを集める横に見る。

 

「あ、終わっちゃった。」

 

あんまり見れなかったな、と残念に思いながら離れると誰かに襟首を掴まれる。

 

「とてつもなく見られてると思えば信でしたか。」

 

「お前は何をしているんだ……」

 

「あ、あはは、こんばんは〜。」

 

慧音先生の頭突きは痛かった。

 

「まあ、何となくは分かります。私達の戦いを見ていたのでしょう?」

 

「正解です……。」

 

「お前が修行の様な事をしているとは聞いていたが、まさかこんな所にまで来るとは……。」

 

その言葉に信は苦笑いを浮かべるだけである。

 

「ふむ……どうでしたか?」

 

「どう、とは?」

 

「私達の戦いです。あなたにはどう見えましたか?」

 

「あはは……そう言われても見えてはいませ「見えてましたよね?」どうして分かるんですか……。」

 

「まだまだですね。それで、どうでしたか?」

 

「えっと、何か不思議な力を使っていたくらいしか分からなかったです。後、動きが凄いとしか……。後で反復練習しないと。」

 

「ほうほう、その不思議な力はどんな感じでしたか?」

 

「体の奥から湧き出ている風に感じました。」

 

「なるほど、では慧音の方はどう感じましたか?」

 

「巫女様とは違う力に感じました。」

 

「……良い目をしていますね。一度見ただけでここまでとは。」

 

「そんな、僕なんか見るくらいしか……。」

 

「いいえ、それが大事なのです。

それと今度神社に来てください。その力の使い方を教えましょう。」

 

「待て、何をするつもりだ!?」

 

今まで静観していた慧音が声を荒らげる。

 

「慧音。私が教えなくとも信は使える様になりますよ。ならば私が直に教えた方が安全です。」

 

「そうか……。暇だからとかでは無いだろうな?」

 

「………………勿論です。」

 

「なんだ、今の間は。

まあ、良い。信、こいつの言う事をしっかり聞くんだぞ。後修行の時以外は面倒を見てやれ。」

 

「はぁ……?分かりました。

巫女様、よろしくお願いします。」

 

「はい、承りました。それでは早速明日から。」

 

「はい!」

 

信は早く明日にならないかと胸を高鳴らせながら避難している場所に向かった。

……たんこぶがまた一つ増えたのは余談である。

 

 

 

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