東方欲求録   作:黒色エンピツ

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其の二・・・修行

里が襲われた次の日。信は巫女に言われた通り神社に来ていた。神社への階段は長いがや修行のほとんどを体力を付ける事に回していたためそこまで苦は無かった。

 

「こんちにはー。」

 

「ああ来ましたか。」

 

「はい、お願いします。」

 

「ええ、それでは、あの時の力を説明しましょう。こちらへ。」

 

二人は神社の裏に回ると巫女の体から昨日の力が出てきた。

 

「これは霊力と言い、人に宿っている力です。」

 

「霊力……。」

 

「霊力を使えば妖怪と渡り合える力と速さを持ち、術を使う事が出来る。……可能性があります。」

 

「可能性?」

 

「人の持つ霊力にはそれぞれ差があるのです。勿論、修行によって増やす事も可能です。」

 

「じゃあ、頑張れば僕も……。」

 

「強くなれます。が、自惚れてはいけません。

それでは、霊力を見てみましょう。精神を静め、体の中心にある力を感じるのです。」

 

「ん、んー……?」

 

「難しいですよね……。何か、良い方法でもあれば……。」

 

そう聞いて信は昨日の光景を思い出した。そして、その思い出した像を自分に重ね無意識に最適化させていく。

 

「これは……!」

 

「どう?」

 

「荒いですが私と同じ方法を……。それに少しの強化も……。

信、一体これはどういう事ですか?」

 

「えっと、巫女様の真似をしてみたよ?」

 

「それだけですか?」

 

「うん。」

 

巫女は愕然とした。真似しただけで少し出来るようになった。もしかしたらこれをもっと上手く出来るかもしれない。しかし、これではいつか必ず壁に当たり、進めなくなる。そんな確信があった。

 

「信。以後、真似をするのを禁止します。」

 

「?なんで?」

 

巫女は子供の素朴な疑問に困惑した。難しく教えてもきっと理解出来ないだろう。

 

「いつか、ちゃんとした理由を話します。しかし、あなたのためなのです。今は私の言う事を聞いてくれますか?」

 

「はーい。」

 

「良い返事です。

では、今ので霊力の流れは分かったでしょうから、今度は自分のやり方でやってみましょうか。」

 

「ん〜、こうかな?」

 

信はその場で座禅を組み、目を瞑る。そして数時間過ぎた。

 

「む。」

 

「あ、出来た。」

 

微量だが、霊力が出た。

 

「どれどれ……普通よりもやや多くて、退治屋よりもやや少ない、と言った所でしょうか。悪くありませんね。」

 

「本当に!」

 

信は少なくとも努力をすればもしかしたら巫女に追いつけるのでは無いのかと喜んだ。

 

「はい。ですが、少しの間は霊力に慣れる為にこの様な修行が続きますが、よろしいですか?」

 

「うん!大丈夫だよ!」

 

信の修行が始まった。

 

 

 

 

修行が始まり二週間が経った。信はいつも通り座禅を組んでいた。

 

「……信。」

 

「…………あ、何?」

 

「随分と慣れるのが早いようですが、何かしましたか?」

 

巫女は信の霊力を制御する練度と効率が妙に良いと見抜いた。

 

「家でもやってるからかな?」

 

「ずっとですか?」

 

「ご飯と寝る時と寺子屋に行く時以外かな。」

 

「……それならば納得です。」

 

巫女はため息を吐いた。子供が何故こんなにも強くなろうとしているのだろうと。

それと同時に要領が良いとも思った。

 

「これならば、早いですが霊力による強化をしてみましょうか。」

 

「やたっ!」

 

頑張った甲斐があったと信は喜んだ。

 

「体の中心にある霊力を全身に回してください。イメージとしては鎧か服を纏う感じでしょうか。」

 

「ん、んー……。」

 

信が少しずつ体の中心から霊力を伸ばす。しかし、途中で霊力が乱れて途切れた。

 

「あれ?」

 

「ふふっ、要修行ですね。」

 

「むう……。」

 

上手くいかない事に不満を出す。

 

「大丈夫ですよ。私も最初はそうでしたからね。」

 

「そっかぁ。」

 

うんうん頷くとまた霊力を体に纏わせようとした。

 

 

 

 

今度は一月経った。

 

「どう?」

 

「はい、問題ありませんね。少し動いてみましょうか。あちらまで全力で走ってください。」

 

「はーい。……うわっととと!?」

 

いつも通りの感覚で走ったつもりが予想以上の速さが出てそのままひっくり返ってしまった。

 

「あ、あれ?」

 

「あははっ、強化した体に付いていけてないようですね。」

 

笑われた事に信は少し頬を膨らませて不満を表す。

 

「それも少しずつ慣れます。また修行です。」

 

「頑張る!」

 

 

 

 

一年程過ぎた。

 

「ふっ、やっ、はあ!」

 

「良い感じですね。」

 

「よしっ!」

 

「所で、今まで聞いていませんでしたが、どのような戦い方をしたいのですか?」

 

「えっと、近接、かな?」

 

「危険ですよ?術などなら少しは安全性に戦えますよ?」

 

「それでも、だよ。」

 

「そうですか。しかし、博麗の戦い方を他の者に教える事は出来ません。これは先程の術でも言えますが、実戦などで自分に合った戦い方を見つけてもらいましょうか。」

 

巫女が構える。それを見た信は顔を引き攣らせた。

 

「お、お手柔らかに……。」

 

穏やかな昼に悲鳴が響いた。

 

 

 

 

信が九歳になり少し経ったある日。

里に妖怪が攻めて来ていた。

 

「くそっ!巫女様や慧音先生の居ない時に!?」

 

「ぼ、僕に、やれるのかな……。」

 

巫女との組手はずっとしていたが、妖怪となど戦った事のない信には自信が無かった。

 

「うわぁぁぁ!?」

 

その時少し離れた場所で自分よりも幼い子供が襲われようとしていた。

その光景はあの日巫女にに助けられた時の自分に重なった。

 

「やらせるかぁぁ!!」

 

信は自分の出来る最大の強化を行い、単純に走って殴る。今までの修行で得た技術の一切を使わなかった拳を妖怪を一撃で殺した。

 

「はぁ……はぁ……。」

 

信は殴った自分の拳を見つめる。その間にも妖怪が複数で信を囲う。

 

「やってやる……、お前らなんかに負けるもんかぁぁ!!」

 

 

 

 

戦いは思っていたよりも早く終わり。一時間程で終わった。

 

「ふーっ!ふーっ!」

 

信の体も満身創痍であり、立っているのも辛そうであった。

そんな中、静かになったからか里の人間が少しずつ出てきた。

終わったと安心させるように人々の方を向いて、気付いた、気付いてしまった。

 

「妖怪を殺した。」

 

「バケモノよ……。」

 

「怪物だ!」

 

「消えろ!」

 

人々は助けてくれた信を罵倒した。その言葉は今まで、人の悪意に触れて来なかった信の心に刃を突き立てた。

 

「あ、ああ、違う、違うよぉ……。」

 

やがて言葉は物理的な暴力となり石を投げ始めた。

 

「いたっ!……ぅあ…あああぁぁぁ!」

 

信の心はボロボロになり耐えられなくなり、遂には逃げ出した。

 

 

 

 

ふらふらと森の中を歩く。先程襲って来ていた妖怪達を殲滅したからか、妖怪に襲われることは無かった。

 

「僕は……なんの為に……守りたい為に付けたのに、意味が無いじゃないか……!」

 

歩いているとふらついて前に倒れてしまうが、目の前にあった鉄板の様な物にしがみついた。

 

「熱い……?」

 

熱いが妙に体に馴染むと思った。

 

「……よし。」

 

その場で座禅を組み、呼吸を整える。少しすると少しだが傷が治り、顔色も安定していた。

 

「あんな奴らなんかもういいや。僕は自分で生きていく。あ、でも、僕だと舐められそうだから俺にしよう。」

 

嫌われ、傷ついても、信は前を向いて進んで行く。

 

「あ、家だ!……ボロボロだけど。」

 

まずは家の修理かららしい。

 

 

 

 

 

 

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