仮面ライダーDRAGOON 赤龍帝で仮面ライダー   作:名もなきA・弐

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 モールがいよいよイッセーたちの前に顔を見せます。
 本音を言えば怒られないか心配です。


HEART16 Crossする二つの力

空が暗くなり始めた時刻、駒王学園を覆うように巨大な結界が張られる。

生徒会ことシトリー眷属が一同に結界を張っており、蒼那曰く「外への被害は一先ず問題ない」とのこと。

 

「ありがとう。助かるわソーナ」

「ただし、現状が維持されていればの話です」

 

感謝の言葉を告げるリアスに彼女は言葉を付け加える。

あくまでも結界は一時しのぎ、その元凶であるコカビエルらを倒さなければ意味がないのだ。

その前にサーゼクスに連絡すべきかどうか悩んでいたが、兄にこれ以上の迷惑を掛けられないリアスはしぶっていたが、朱乃の説得により一先ずは納得してくれた。

 

「辰巳、木場との連絡は取れたのか?」

「いや、まだだ。イリナが言うにはコカビエルに襲われた時に二人を見失ったらしい」

 

結界を張っている匙の問い掛けにイッセーは首を振る。

イリナは一先ず安全な場所に避難させており、その際に意識が回復した彼女から二人の行方が分からないことを告げられていた。

 

「……信じましょう。イッセー先輩」

「ああ」

 

小猫の言葉に頷く。

ここで自分が悩んでも、彼は帰ってこない。

だったら彼女の言う通り木場が戻ってくれることを信じるしかない。

 

「それよりイッセー。君の家は大丈夫かな?」

「大丈夫だよ。母さんと姉さんがいるし……それに、今日は祖母ちゃん家からポチを連れてきたから」

 

並の敵だったら一口で簡単に噛み砕ける……。

そう語るイッセーの言葉に小猫とヴァイア、話を聞いていたアーシアは「ポチ」なる存在の正体に想像を膨らませるが、リアスからの呼び声に気を引き締める。

 

「ヴァイアはサポート、イッセーもネオストラが来るまではサポートに徹してもらうわ」

 

今回はライザー戦とは違い、自身の命を懸けた本当の戦い。

そして既に行動を起こしているであろうコカビエルとバルパーを止めることが目的だ。

 

「みんなで生きて帰って、必ずこの学園に通いましょう!」

『はいっ!』

「りょーかい」

 

明日ある日常を守るために、リアスからの命を受けたグレモリー眷属とヴァイアは返事をするとコカビエルたちのいる運動場へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

駒王学園の運動場へと向かうと、地面に書き込まれている術式に聖剣を一定の位置に突き立てて何かの準備を進めているバルパーと上空にいるコカビエルをリアスは見据える。

 

「待たせたわね、コカビエル」

「ふん。その様子ではサーゼクスもセラフォルーも来ないようだな……なら」

 

「こいつらと遊んでろ」と指を鳴らした瞬間、地中から身の丈以上もある獣が現れる。

本来一つあるはずの首は三つ存在し、赤い瞳をギラギラさせながら口から炎を漏らす。

 

「ケルベロス……!!」

「「グオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!」」

 

冥界に続く門に生息する猛獣……一般では『地獄の番犬』の異名を持つ有名な魔物は空気を震わせるほどの咆哮を三つ首からあげる。

それが戦闘の合図だった。

手筈通り攻撃はリアスと朱乃、小猫に任せイッセーとヴァイアは回復担当であるアーシアの護衛兼サポートに徹する。

魔法を駆使してケルベロスの吐く炎を凍らせ、小猫の小柄ながらも強烈な踵落としが炸裂する。

攻撃に怒りを覚えた個体が前足の鋭い爪で彼女に襲い掛かる。

 

「っ!」

 

左腕を掠るが致命傷には至っていない。

だがケルベロスの右側にある首が口を開けて炎を吐き出そうとする。

 

「口閉じろぉっ!!」

「グブゥッ!!?」

 

倍加した力の強烈なアッパーカットでイッセーが無理やり口を閉ざすと、炎が暴発して燃え上がる。

怯んでいる間にアーシアが小猫の怪我を治癒し、ヴァイアが高圧水流で牽制する。

水を嫌がったケルベロスは狙いを変えてアーシアと自分に攻撃したイッセーを睨む。

ケルベロスが咆哮と共にアーシアとイッセーに襲い掛かろうとした瞬間……。

 

「グオルッ!?」

 

巨体から生えていた三つの首の内の一つが切り落とされた。

その近くにいたのは見覚えのある緑のメッシュがあるボーイッシュな少女。

 

「ゼノヴィアッ!?」

「借りはこれで返したぞ。辰巳一誠、アーシア・アルジェント」

 

その言葉と同時に笑みを作ったゼノヴィアは剣を振るってケルベロスを粉砕する。

新たな乱入者に気づいたもう一体も口に炎を溜めて周囲を焼き尽くそうとするが地中から出現した無数の魔剣に胴体を貫かれる。

そこに現れたのはグレモリー眷属の『騎士』……木場祐斗だ。

 

「祐斗っ!」

「イッセー君、今だっ!」

「ああっ!赤龍帝からの贈り物(ブーステッド・ギア・ギフト)ッ!」

 

驚くリアスの方を一瞬だけ向くと、すぐに彼はイッセーに呼び掛ける。

イッセーは勢い良く跳躍してリアスと朱乃の背中に触れる。

譲渡で倍加された力を受け取った朱乃は最大の雷でケルベロスを吹き飛ばして消滅させる。

 

「遅刻だよ。イケメン王子」

「はは、ごめん」

 

木場の元まで来たイッセーは軽く会話をする。

そして一瞬だけ視線を合わせると、何も言うことなく二人は行動を開始する。

その一方でリアスも譲渡された力をプラスした滅びの力をコカビエルにぶつける。

軽くいなされてしまったが彼の顔に掠ったことでその表情が変わる。

 

「ほぉ、赤龍帝の力を使えばここまで戦えるのか」

 

興味深そうに笑うコカビエルは「なら」と言葉を続ける。

 

「『あれ』とは互角に戦えるかな?」

「完成だ…!ついに完成したぞっ」

 

それは嬉々としたバルパーの声色とほぼ同時った。

地面が振動すると同時に彼の周囲にあるエクスカリバーが輝いており、それが更に眩く光る。

やがて光が収まるころには術式の中央に一本のエクスカリバーが誕生していた。

 

「大地崩壊の術式を掛けた。後に十分もしない内にここは消し飛ぶ」

 

バルパーの言葉に続くようにフリードとオクトパスも現れる。

「どうする?」と挑発するコカビエルが席を立ったと同時にリアスと朱乃は当然と言わんばかりに、翼を広げた彼に攻撃を仕掛ける。

だが、彼女たちの放った攻撃はコカビエルに防がれただけでなく逆に跳ね返されてしまう。

 

「「ああっ!!?」」

 

どうにか致命傷は免れたが、バランスを崩した朱乃が地面へと落ちていく。

それを見たイッセーが自分を下敷きにすることで衝撃を殺すことに成功する。

 

「ぐっ!?」

「イッセー君っ!ごめんなさい、私…」

「俺は大丈夫です。それよりも…」

 

起き上がったイッセーはコカビエルを見据え、赤龍帝の籠手を突き付けて叫ぶ。

 

「良くも朱乃さんをっ!お前らは絶対に倒すっ!!」

『ならば来いっ!仮面ライダーッ!!』

「変身っ!!」

 

宣言した彼と正面から迎え撃つように現れたオクトパスに走りながら、イッセーはドラグーンドライバーにローカストバッテリーをセットしてドラグーンに変身すると、戦闘を開始する。

その様子に、朱乃は少しだけ頬を染める。

 

「やっぱり、男の子ですわね///」

 

闘志を燃やす彼の姿にしばし見惚れていたがアーシアとヴァイアが来たことで我に返り、リアスから少し尖った視線を向けられていた。

一方の木場はバルパーとフリードの元まで歩き、対峙する。

 

「バルパー・ガリレイ。僕は聖剣計画の生き残り……いやっ、正確にはあなたに人生を壊された」

「……そうか、あの計画の」

「こうして悪魔に転生して生き永らえたのも、全ては無念のままに散っていった同志たちの敵を討つためだっ!」

 

思い出したように呟く彼に、言葉を続けながら木場は剣を突き付ける。

この状況に興味を持ったコカビエルがバルパーとフリードに指示を出す。

 

「せっかくの余興だ。四本の力を得たエクスカリバーで纏めて始末してみせろ」

「イエッサー!超素敵仕様になったエクスなカリバーちゃんっ、確かに配慮しましたでございまするっ!」

 

手に取ったフリードはその狂気染みた笑みを木場へと向ける。

木場は臆することなく剣を構えるが、フリードはエクスカリバーを振り回しながら口を開く。

 

「いやいやっ!感謝してるよ色男君よぉっ!おかげで超絶スペシャル仕様の俺様を除いた聖剣の使い手ちゃんは、必要な因子の不足分を補えるってわけだからよぉっ!!」

「だが、ミカエル様は命を奪っていないっ!」

 

叫んだゼノヴィアが振り下ろした攻撃をフリードは難なく躱す。

確かに因子を抜き取ること自体は生きたままでも可能であり、教会側も両者に後遺症を残すことなく結晶化した因子の譲渡に成功している。

「それなら」と木場は苦しげな声を漏らす。

 

「死ぬ必要がないのなら、どうして僕たちを毒ガスで始末した?」

「あったま悪いですねー?用済みの被験者は廃棄するのが当然でしょーよ!そっすよねバルパーの爺さん」

 

バルパーの代わりに応えたのはゼノヴィアと剣戟を繰り広げている、これ以上にない狂喜に染まった笑みを浮かべるフリードだ。

対してバルパーは何も言わずに木場の前に青く光る因子の結晶を投げ捨てた。

 

 

 

 

その事実に、地面に膝をついた木場は愕然とするしかなかった。

廃棄……その言葉は憎悪を通り越して、強大な悲哀が彼を支配する。

先ほどバルパーが投げ捨てた因子を両手で拾い、目を瞑ってそれを胸の前に持っていく。

涙を流すも、それでも彼は立ち上がる。

閉じた瞳から涙を流しながらも、彼は両手に持った因子の結晶……否、同志たちの魂に意識を集中する。

同時に、彼の周囲は優しく青い光を放ちながら周囲へと広がっていく。

すると木場の周りに人の形をした青い光がぽつぽつと現れる。

 

「結晶から魂を解き放っているのですわ……」

 

そう呟く朱乃の言葉通り、やがてそれは人の形を成していく。

同志たちの姿を見た木場が口を開く。

 

「ずっと、ずっと思っていたんだ。僕が、僕だけが生きて良いのかって……!」

 

自分よりも夢を持った子がいた。

自分よりも生きたかった子がいた。

そんな彼らよりも……。

 

「僕だけがっ、平和な暮らしをして良いのかって!」

 

それはずっと秘めていた想い。

自分だけが生き残ってしまったことへの悔恨と懺悔。

だが、その悲痛な叫びから返ってきたのは歌だった。

 

「……聖歌」

 

聞き覚えのあるその歌にアーシアが呟く。

魂だけとなった彼らは一人の同志のために歌う。

そしてその青い光は木場を優しく包み込んでいく。

 

『大丈夫』

『みんな集まれば』

『受け入れて、僕たちを』

『怖くない。例え神様がいなくても』

『神様が見てなくても』

『僕たちの心はいつだって……』

「一つだ」

 

優しい声が、懐かしくも悲しい声が自分に呼び掛けてくる。

生きる希望を、自分の為すべきことを思い出させてくれる。

生きてくれることを願ってくれた同志たちの声にそう呟いた瞬間、光は完全に木場を包み込んだ。

 

「同志たちは、復讐を望んでいなかった」

 

光を吸収した木場は魔剣を召喚してバルパーに一歩近づく。

彼らは自分たちの敵を討つことを願っていなかった。

それでも、目の前の男を許すことは出来ない。

 

「だが僕は目の前の邪悪を討つ。第二第三の僕たちを生み出さないためにっ!!」

 

その瞬間、木場の魔剣に変化が起こる。

シンプルな造形ながらも、刀身の中央には赤い文字が刻まれておりそこから発せられるのは魔と……聖なる力。

彼は至ったのだ。

聖魔融合の剣『双覇の聖魔剣(ソード・オブ・ビトレイヤー)』……世界の均衡を崩すことさえ可能とする領域、禁手(バランス・ブレイカー)へと。

 

「聖魔剣……だとっ!?」

 

突然の事態にバルパーの表情が変わった。

そう、本来ならば二つの反発する要素が混じり合うなど起こりえない事象なのだ。

だが現実として聖魔剣は実在している。

動揺する彼に気にすることなく歩く木場の隣にゼノヴィアが並ぶ。

 

「リアス・グレモリーの『騎士』よ。まだ共同戦線は生きているか?」

「だと思いたいね」

「なら共に破壊しよう。あのエクスカリバーを」

 

彼女の言葉に木場は驚くも、ゼノヴィアは言う。

あれは聖剣であって聖剣ではない物……異形の剣だ。

そう言い放った彼女は破壊の聖剣を地面に突き立て、口を開く。

 

「ペトロ、バシレイオス、ディオニュシウス、そして聖母マリアよ。我が声に耳を傾けてくれ」

 

そう告げた詠唱と同時に空間が歪むと、そこから鎖に厳重で繋がれた青い刀身を持つ一本の聖剣が出現する。

その剣の柄を掴みながら彼女は言葉を続ける。

 

「この刃に宿りしセイントの御名において、我は解放する……『聖剣デュランダル』ッ!!」

 

鎖を砕きながら聖剣……デュランダルを引き抜いた彼女は構える。

これに対してバルパーはまたも驚く。

 

「この世の全てを切り刻むと言われている聖剣……でも研究では…」

「私はイリナたちとは違って、天然ものだ」

「ちゅーことは真の聖剣使いですとぉっ!?んですかその超展開はよぉっ!!?」

 

突然のイレギュラーに完全に冷静さを失ったフリードはエクスカリバーを振るうが、それをデュランダルによって逆に吹き飛ばされてしまう。

デュランダルは触れたものは何でも斬り刻む暴君、だからこそ異空間へと封じていたのだ。

 

「気をつけろ、こいつは私の言うことも碌に聞かない」

「んにゃろぉっ!!」

 

擬態の特性による分裂した刀身を振るうが、それすらも砕かれてしまう。

フリードが一歩足を引いた時だ。

 

「僕を忘れてもらっては困るっ!!」

「ちぃっ!!」

 

木場の攻撃を防いだフリードだが威力があまりにも違う。

地面を蹴って土による目潰した行うが、それを読んでいていた木場は上体を軽く動かして回避すると再び攻撃を開始する。

統合させた擬態と夢幻の特性を組み合わせた分身する多方向から迫る刀身による攻撃を仕掛けるも、全て防がれてしまう。

 

「こんな半端もんの剣が俺様のエクスカリバーちゃんに…ぐぅっ!!」

 

頭に血が上ったフリードの懐に入った木場の一撃が胴体を掠める。

そのまま天閃の特性と『騎士』の特性による高速移動での剣戟が始まるが戦況は圧倒的だった。

途中で透明の特性で目に見えない高速の斬撃を浴びせようにも、攻撃パターンを既に見切っていた木場の前では児戯に等しい。

やがて、木場の剣が透明化していたフリードを捉えた。

 

「そんな剣でっ!」

「くそがぁっ!!」

 

一撃を捌き、フリードの斬撃を躱した木場は蹴り飛ばして怯ませる。

それが致命的だった。

 

「僕たちの想いには、勝てないっ!!」

「がぁっ!お、折れ…ぶぎゃあああああああああああっっ!!!」

 

想いを込めた木場の聖魔剣が歪んだ聖剣ごと、所有者である歪んだ男を斬り伏せる。

地面へと叩きつけられる形になったフリードはそのまま気絶。

荒い息を吐きながらも、エクスカリバーを砕いた木場は口を開いた。

 

「見ていてくれたかい。僕らの想いは……エクスカリバーを超えたよ」

 

それは木場の完全なる、本当の意味での勝利だった。

 

 

 

 

 

「バカな、エクスカリバーがっ……」

 

目の前でフリードが敗北し、完成させた聖剣が折れたことにバルパーは驚きを隠せない。

そんな彼にリアスは叫ぶ。

 

「当然よバルパー・ガリレイ。私の『騎士』は、欲に歪んだエクスカリバー如きに負けないわっ!!」

「信じていましたわ」

「……冷や冷やしましたけど」

「良かったです、本当に……!!」

 

グレモリー眷属が強い結束を見せる中、ドラグーンも木場が勝ったことに「しゃあ!」とガッツポーズしながらも背後から鉄球を振り下ろすオクトパスの攻撃をズババスラッシャー防ぐ。

一方のヴァイアは聖魔剣について考える仕草を見せていたが……。

フリードの戦闘不能を確認した木場とゼノヴィアは愕然とするバルパーは睨む。

 

「バルパー・ガリレイ。覚悟を決めてもらおう……っ!?」

 

だがバルパーは光の槍に身体を貫かれ、そのまま倒れてしまう。

攻撃の主はもちろんコカビエル。

物言わぬ存在になった老人を見下ろしながら、彼は口を開く。

 

「充分楽しませてもらったぞ、バルパー。だが余興にも飽きた、好い加減邪魔な連中にはご退場願おうかっ!!」

「そうですね。邪魔者はさっさと消えてくださいね」

 

翼を広げたコカビエルがそう告げた瞬間、幼い少女の落ち着いた声が響く。

大きくないにも関わらず、周囲に聞こえるような聞きなれない声に全員が驚きを露わにする。

しかし。

 

「がっ、ああ……!?」

 

コカビエルの胴体は何かによって貫かれた。

状況が理解出来ないまま、コカビエルは自分の胴体から伸びる物体を見る。

いや、あれは腕だ。

まるで大熊のような白黒の腕にドラグーンとヴァイアは目を見開く。

表情を歪ませながらも、コカビエルは後ろを振り向いた。

 

『……』

 

そこにいたのはキョンシー・ネオストラ、そして小柄なメイド服を着た少女。

宙に浮いていることから恐らくネオストラで風を操って身体を浮かせているのだろう。

 

「キョンシー様っ、ハルピュイア様っ!!」

 

オクトパスは二人に頭を垂れる。

彼の様子から上級のネオストラであることを理解したリアスとドラグーン、そして突然の乱入者に全員が警戒を忘れずにいるが気にすることなく少女はドラグーンのバックルを観る。

 

「なるほど。奪った主の力をハートバッテリーに改造したのですか」

 

そう独り言ちながら、彼女は『この場にいるネオストラ』の名前を呼ぶ。

 

「『モール』、起きなさい。いつまで寝ているのですか」

 

そう彼女は既に絶命しているバルパーの亡骸へと語り掛ける。

本来なら返ってくることはないのだが、『それ』はゆっくりと微動する。

 

「『人使いが荒いなぁ……マジで痛かったんだよ』」

 

老人の声と、青年の声が重なったまま完全に起き上がると、それはバルパーの身体からゆっくりと這い出てくる。

現れたのは全身に銀色のドリルを生やした土汚れのあるブラウンカラーの西洋甲冑を纏ったネオストラ……モール・ネオストラだ。

首をごきり、と鳴らしながら彼は塵になったバルパーの亡骸を見下ろす。

 

「何、だっ……これは、何が……!」

「あなたもご苦労様でした。モールの成長を促す良い道具となってくれました」

 

「どういうことだっ」と必死に言葉を紡ぎながら問い掛ける彼に、ハルピュイアは見下ろしながら「最期の手向け」と言わんばかりに説明を始める。

モールは元々、聖剣計画に関わっていた人間の一人で精神を病んで自害する前に彼女が感染させて誕生した。

 

『あの実験で、多くの子供たちが犠牲になった。だからバランスを取る必要がある』

「ですが、このまま計画を勧めれば何ればれる可能性がある。なので、皮を被ってもらうことにしたのです」

 

「知識の蓄えも兼ねて」とハルピュイアが言葉を続ける。

元々駒王町を犠牲にするほどの行動を起こす予定だったバルパーの知識には利用価値がある、そう判断した彼女は彼を殺害してその亡骸にモールを潜り込ませたのだ。

おかげで手を組んでいたコカビエルの動きによってスムーズに進化させることが可能となったのだ。

 

「あなたは実に優秀でした。モールの計画を手伝って下さり、誠にありがとうございます」

 

恭しく一礼する彼女に、コカビエルの傲慢とも言える誇りは粉々になっていた。

聖書に名を記され、戦争においても数々の勝利を重ねた自分が訳も分からぬ生命体に利用されていた……。

道化のような扱いに怒りを覚えぬほど、彼は底辺ではなかった。

 

「ふざけるなあああああああああああっっ!!!俺がっ、貴様らのような化け物にいいいいいいいっっ!!がっ!?」

『異形が汚い声で喚くな』

 

キョンシーが喉の器官を粉砕すると、今度は憤怒と憎悪の混じった形相で睨む。

それに何の感情も抱かない彼に殺意を昂らせながらも、一方のキョンシーはボロボロになったコカビエルを雑に地面へと投げ捨てる。

その一部始終に動揺する一同に気にすることなく、地面へと降り立った彼女は頭を下げる。

 

「改めまして……私の名前はハルピュイア。ネオストラたちの管理を仰せつかっております」

 

それだけを言うと、彼女はインフェクションドライバーを腰にセットして上部のボタンを押す。

 

【BUGRIALIZE…! WELCOME THE NEOSTRA…!!】

 

自身の遺伝子とも言える薄い水色のウィルスが増殖し、培養されると彼女は戦闘時の姿を取り戻す。

羽根を散らしながら現れたのは水色の猛禽類を思わせるような装甲を纏った黒い人型……何処となく戦士を思わせるような見た目の彼女は自身の腰に手を回すと、巨大な翼を模した二つの剣を召喚する。

 

『申し訳ありませんが、ここで消えていただきます』

「それはこっちのセリフだ。神の名の元に断罪してやる」

 

目の前の怪人にゼノヴィアはデュランダルを構える。

その言葉に反応したのはキョンシーだ。

「やれやれ」と呆れたように言葉を続ける。

 

『「神」だと?そうか、お前も異形を生み出しておきながらその責任を押し付ける無責任な汚物以下の屑に騙されていたのか』

「貴様……!!」

 

冒涜に等しいその言葉にアーシアは両手で口を覆い、ゼノヴィアが怒りを露わにする。

だが次に放った一言がそれを一変させた。

 

『神などいない。俺が殺したのだからな』

「……は?」

 

その言葉に、ゼノヴィアが……いや全員が驚く。

唖然とする彼らに対してキョンシーは言葉を続ける。

 

『正確には俺が感染したオリジナルだがな』

 

キョンシーの感染者は真なる平和のために神をこの手で始末し、永遠の牢獄に囚われた。

その後、戦争によって多大な犠牲を払った三大勢力は人間に頼らなければ種の存続が出来ないほど追い詰められた。

だからこそ、三大勢力のトップは神を信じる人間を存続させるためにこの事実を隠蔽した。

 

「嘘、だっ。神が死んだなんて、貴様に殺されたなんて……!!」

『ならば、なぜ聖魔剣が生まれた?なぜ異形に生まれ変わったそのシスターの神器は異形を治癒出来た?ミカエルは愚かだが実に良くやっている』

 

『システム』さえ機能していれば、神への祈りも祝福も悪魔祓いもどうとでもなるからな……。

そう吐き捨てた彼に対して、ヴァイアも納得したように頷く。

あり得ない事象である聖と魔の融合、本来ならば相反する力が一つになるということは神の作り出したシステムに欠陥があったか……その管理を行っていた者がいないかの二択だ。

キョンシーの言葉が事実なら、恐らく本来の管理者がいないからこそ起きた奇跡でありイレギュラー。

 

「そんな……神が、死んでいるだなんて」

「では、私たちに与えられる愛は……」

 

その存在が死んでいたということに動揺が隠し切れていない。

衝撃の真実にゼノヴィアはデュランダルから手を離してしまい、地面に膝を付けて力なく俯く。

アーシアも呆然とその場をふらつき、足元が覚束ない状態だ。

鼻を鳴らしたキョンシーは散らばった聖剣の欠片を集めていたモールに声を掛ける。

 

『モール、最後の仕上げだ』

『アイアイ、サーッ!!』

「っ、何を…!?」

 

我に返ったリアスがモールの行動を止めようとした瞬間、彼は聖剣の欠片を食らう。

バリバリ、と噛み砕きながら全てがモールに入ったと同時に身体が輝き始める。

 

『おおおおおおおおおおおおおおおっっ!!!』

 

圧倒的なまでのオーラを発しながら、モールはその姿を変える。

身体に生えているドリルはそのままに、銀の装飾が入った煌く金の鎧を纏った彼は恍惚とした声色で話す。

 

『ボクは聖剣っ、エクスカリバーその物になったっ!!これでバランスが整えられるっ、あの計画で犠牲となった子どもたちと釣り合うほどの街の破壊が出来るっ!!』

 

『モール・ネオストラ聖剣態』となった彼は、召喚した聖剣……子どもたちが思い描くような西洋剣を召喚して破壊活動を始めようとする。

しかし、それを止める存在がいた。

 

「ふざけんなっ!!」

 

彼……辰巳一誠ことドラグーンは勝手な言い分を語るネオストラたちに対して怒りを覚える。

信仰が深いゼノヴィアとアーシアのことを考えずに真実を伝え、勝手な言い分で街や何の関係もない人々……そして自分の友や恩人を傷つけるその行動にイッセーの心に火が付く。

 

「俺には何もないっ!誰かの盾になることでしか役に立たない薄っぺらい奴さっ……だけどっ、俺には目標があるっ!かつて俺を救ってくれたっ、俺を見捨ててくれなかったあのヒーローのようにっ!」

 

心火を燃やすように叫ぶドラグーンの傍に現れたのはスミロックス……内部からハートバッテリーを排出すると、それをキャッチしてローカストバッテリーと入れ替わるようにセット、インジェクタースイッチを押した。

 

「俺はお前たちと戦うっ、ランクアップ!」

【CURSE OF CHARGE!…燃えるBEAT! メラBEAT! SMILODON KNIGHT!!♪】

 

瞬間、ドラグーンドライバーからバッドでビートな電子音声が鳴り響いた。




 前回で『バルパー』は一度も自分のことを「バルパー・ガリレイ」だと言っていません。現に彼はフリードたちから呼ばれた時は特に肯定するようなことを言っていませんでした。フリードが「いつからそこにいた」と質問していたのも伏線(のつもり)です。
 次回、最高にバッドなビートでお送ります。ではでは。ノシ
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