やはり私と彼の出会いは間違っている。   作:赤薔薇ミニネコ

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第28話です


第二十八話 雪乃さんの黒歴史と出会う

 テレビ取材のカメラが会議の内容を撮影している。久々に文実メンバーが全員揃った会議室には、顔合わせの時のような緊張感が漂っている。

 そんな中、一人だけニコニコ笑っている、雪乃さんの姉の陽乃さん。会議によく顔を出し、八幡にやたらボディータッチをする淫魔だ。有志の手伝いで来てくれている葉山君をあたりまえのように顎で使う。陽乃さんと目が合った文実の男子は顔が緩み、生気を吸われているかのよう、まさにサキュバスだ。と、変なことを考えてる間に八幡の進行で会議がはじまる。

 

「それじゃ、委員会を始めます。本日の議題は、城廻会長から連絡があったように、スローガン決めになります」

 

 ホワイトボードに次々とスローガン(仮)が書かれていく。『友情・努力・勝利』平塚先生が好きそうな言葉だ……。『一意専心』うーん……雪乃さんっぽい。スローガンが出揃う中、相模さんからの『絆ともに助け合う文化祭』という言葉に、会議室の雰囲気が変わる。      

 それも当然だろう。相模さんの文実とクラスの両立という提案で文実は分裂。まじめ組とさぼり組に分かれてしまったのである。まじめ組から突き刺すような目線が当然のように相模さんに向けられる。さすがに相模さんもこれには動揺しているようだ。

 

「え~と、それじゃ俺からも……」

 

 変な雰囲気の中、平然とスローガンを言い放つ。八幡の考えたスローガンが、まともなことに驚く。ギルドメンバーの顔は、ほかの文実メンバーよりも驚きに表情だ。『千葉の名物、踊りと祭り、同じ阿保なら踊らにゃSingaSong』に誰もが、ほかのスローガン(仮)よりいいと頷く。満場一致で今年のスローガンは無事決まった。スローガンの入れ込みなどもスムーズに終わり会議は無事終了した。

 

「あなたが、まともな案を出したことに驚いたわ」

「お前のはなんだ、類語辞典かよ」

「八幡、あれ考えたの小町ちゃんでしょ」

「さすが忠絵だな。すばらしいスローガンだろ!」

「呆れた……。あなたの意思はないのかしら」

「昨日の体調不良で考える時間がなかったんだよ、おまけに誰さん達が遊び出したせいでな」

「それを言われると、何も言えないわね……」

「お見舞いのつもりだったけど、遊んじゃったのは確かだしね……」

 

 残りの文化祭本番までの期間は、特にこれといった問題も起きることなく進行していった。

 

「ようやく、残すは文化祭本番だけだな、今日が終われば、解放される……」

「終われば、またギルドメンバーみんなで遊べるね」

「そうね。昨日、シナリオミッションの闇の王も開放もされたし、是非クリアしましょう。まだクリア報告もないし、一番乗りできるかもしれないわ」

「雪乃さん、私よりゲーム詳しくなったよね。最近、教えてもらってばっかりだし……」

「もう、ユキペディアだな。それと今日はテレビ取材と知事がきたら案内しなきゃならんから、すまんが、あとは二人で頑張ってくれ」

「まかせておいて。八幡も知事に失礼のないようにね」

「まぁ、大丈夫だろ。文化祭一緒に回れなくて、すまないな。あとで小町が来るらしいから相手してやってくれ」

「比企谷君、知事が来たみたいよ。外がすごい騒がしいわ」

「了解、んじゃ行ってきますかね」

 

 八幡はいつものように猫背で面倒臭そうに歩いていく。緊張の欠片もない。ゲームの中では友人同士なので当然なのだろうか。

 

「これから知事と会うというのに、まったく大した男ね」

 

 知事と八幡が知り合い同士なのを知ってるのは私だけだろうし、雪乃さんの反応が普通だろう。

 

「それじゃ雪乃さん、写真を撮りにいかないといけないから」

「ええ、私も生徒会の人達と見回りに行ってくるわ。またあとで会いましょう」

 

 さてと、さっそく写真撮影にいきますか……。各クラス、各部活の出し物、みんなの思い出を撮りに行かなければならない。

 私のクラスの出し物は、当初は雪乃さん考案パングーファイト予定だったのだが、パンさんカフェに変更になった。パングーファイトは私も小学校の時に乗ったことはある。いろいろなところにパンさんが現れて、バトルやらパンさんの生活場面が見れるという乗り物だ。学年一番の秀才が考えた出し物だ。クラスのみんなもさぞかし期待しただろう。まぁ、結果ではない。みんなで作り上げたという思い出が大切なのだ……。

 自分のクラスは後回しにするとして、一年のクラスから順番に見ていこう。お昼頃までには二年のクラスに行っておきたい。

 

 

「お、タタミンだ。やっはろ~!」

「やっはろ~結衣ちゃん、昨日は楽しかったね~」

「うん、昨日のマカロンおいしかったね~。今度、みんなでパセラにハニトー食べに行こうよ~」

「いいね、みんなでいこっか」

「タタミンは文実の仕事中?」

「うん。私、記録係だから。ちょっと写真撮りたいから見せてもらうね~」

 

  主演は、たしか葉山君だったっけ……。それだけで集客力がすごそうだ。教室に入ると、席はすべて埋まっている。女子にすごい人気だ。てか女子しかいない……。さすが葉山君だ。

 

「ヒメヒメさん、大盛況だね」

「でしょでしょ? ほんとは飛行士役でハチマン君にでてほしかったんだけど、さすがに文実の副委員長だし断られちゃったよ~」

「いやいや、ぜったい戸塚君でよかったよ! 八幡がでたら、なんか劇をダメにしそうなきがする」

 

 ここが見どころと言わんばかりに、クラスにいる女子から歓喜の声があがる。なんか異様にBLっぽく感じてしまうのは気のせいだろうか……。

 劇も終わり休憩時間になったらしく、ヒメヒメさんと三浦さんに食事に誘われた。

 

「あれ、結衣ちゃんは誘わないの?」

「結衣は午後の受付あるから、さっきハ二トー買ってたし。ただっちは、なにか食べたいものある?」

「特にないかな~、二人に合わせるよ」

「それじゃ! 男子水泳部で売ってる、フランクフルトにする? 水着で販売してるらしいよ!」

「ヒメヒメさん、それはちょっと……」

「ただっちのクラスでいいんじゃない? J組って持ち込み自由のカフェやってなかったっけ、ハニトー買っていけばよくね?」

「パンさんカフェね。そこでいっか」

 

 自分の教室まで移動する。パンさん人気のおかげで、子供連れの人が多い。パンさんカフェでは、頭につける紙帽子を渡している。入店してる人はみんな紙帽子をかぶっている。もちろん描かれているのはパンさんだ。

 当初の企画は、パングーファイトを真似したパンさんの世界観を乗り物で見て回るという内容だった。雪乃さんの完璧を求める性格のせいか、天井に竹を吊るすといいだしたらしい。その吊るすためのネジ付きフックがいけなかったようだ。ネジ付きフックを外した後の小さい穴ならたしかに目立たないし大丈夫だろう。しかし数が多すぎた。教室半分の天井が穴だらけなのだ。

 教師から怒られ、企画の中止。そのあと新しい企画をだし、カフェに変更になった。予算の残りも少なく、メニューは紅茶、コーヒー、ジュースのドリンクのみという、カフェとはとても呼べない物だった。パンさんのレイアウトで男子だけだと入りずらい、食べ物がないのでカップルもこない。世間からは、それが意外と好評だったらしい。

 私達は空いた席に座り、飲み物を頼むことにする。

 

「へぇ~すごいね、こんでる」

「てか、マジで飾りつけすごすぎなんだけど。メニュー少ないけど、子連れの人や女性が休める場所って大切だよね~。女性限定みたいな?そういうの考えられるとこが、さすが女子の多いJ組って感じだわ~」

「紅茶がおすすめかな、雪乃さんがみんなに入れ方教えたって言ってたし」

「ちょっと、ただっち。天井あれ、穴ポツポツあいてんだけどやばくね?」

「たぶん大丈夫だとおもう……。あ、佐藤さん注文お願い~」

 

 普通の恰好をしたクラスメイトに注文をお願いする。オシャレな衣装?そんなものはない、ただの制服だ。数名、持参した着ぐるみの人がいるくらいである。結衣ちゃんと同じ、買ったハニトーを食べながら雑談をする。

 

「三浦さん達のクラス完全に葉山君のファンばっかりだったね」

「隼人はモテるからね~、午後のチケットもすぐ売れると思う」

「F組の星ミュ、ヒメヒメさんの個人的な趣味が見えたきがしたけど……」

「海老名が監修、演出、脚本、全部やってたからね~」

「やっぱり……」

「ハチマン君が出てくれれば最高だったんだけどね!」

「そうそう、ヒキオって今日知事と一緒にいるんでしょ。しかも指名とか、まじすごくない?ただっち彼女として鼻が高いじゃん」

「ハチマン君って、ほかの男子と違ってなんか大人びてるしね。最近じゃ、一年の女子からも人気あるみたいだよ」

「あーしもそれ聞いた。文実メンバーを回してたのヒキオなんでしょ?文実メンバーの女子からすごい評判いいらしいじゃん」

「う~ん、どうなんだろ。いつもより頑張ってたとおもうけど」

 

 たしかに、八幡は説明とかとてもわかりやすい。大変な仕事中、男子に優しくされれば、女子もへんな自己フィルターがかかってしまうかもしれない。

 

「ハチマン君って、ほかの男子にはない精神的な逞しさってのがあるんだよね~」

「あーそれわかる、つい頼りたくなっちゃう感じのやつね」

「葉山君だって、今日劇みたけどかっこいいじゃん、三浦さんも頑張らないと」

「はぁ~彼氏持ちだからって、ただっちはほんと余裕すぎじゃん。ヒキオ、下の子に弱そうだし、いつもみたいに目を鋭くして見張ってた方がいいんじゃない?」

「ええ、私そんなに鋭いかな……?」

「いやいや、ただっちの視線にはまじビビるし、小学校の時まじで怖かったから。はぁ~、あーしも早く彼氏がほしい」

「ヒメヒメさんは彼氏とか興味ないの?」

「だめだめ、海老名はそういうの全然興味ないから」

「私はいまのみんなでいる雰囲気が好きなんだよね~。付き合うとかまだそういうのはちょっといいかな~」

「だっしょ? 海老名に男紹介したらまじで嫌われそうになったし」

 

 時計をみると、時間がだいぶたっていた。このまま長話をすると、実務に影響が出そうなので話を切り上げる。

 

「そろそろ、戻ろっか。私、あと三年のクラスと部活の出し物を写真に撮らないといけないから」

「そうだね。あーしらも、そろそろもどろ」

 

 記録の仕事に戻り、残りの出し物を取りに向かう。時間をかけ残りを見て回る。とりあえずは全部の出し物の写真は撮れた。安心していると背後から聞き覚えのある声と共に背後から抱き着かれる。

 

「おねえちゃ~ん! ふふっ!」

「わぁ、小町ちゃん一人で来たの?」

「うん、お兄ちゃんとお義姉ちゃんに会いに来ただけだし。結衣さんとか雪乃さんとかは?」

「結衣ちゃんは八幡のクラスにいると思う、雪乃さんはいま生徒会の人と見回りしてるとおもうよ」

「お義姉ちゃんはなんで一人なの? お兄ちゃんは?」

「聞いてよ~小町ちゃん! 去年は八幡が文実メンバーのせいで全然一緒に回れなかったの、今年は私も文実メンバーになったけど、八幡は知事と一緒にテレビ取材でいなくなっちゃうし……もう最悪」

「うへ~、お兄ちゃんほんとゴミぃちゃんだな~って! テレビ取材で知事と一緒!? えぇっー!!」

「ね、ひどいでしょ……」

「ほえ~、あのお兄ちゃんが……、小町はうれしいです! 忠絵お義姉ちゃん、これからも兄をよろしくお願いしますね! なんかお兄ちゃんが遠くに行っちゃったみたいでちょっと複雑だけど……」

「小町ちゃん、もうすこし仕事残ってるけど一緒に回る?」

「う~ん、邪魔しちゃ悪いし。お兄ちゃんとか、他にもいろいろ見て回りたいから。まったね~お義姉ちゃん~!」

 

 ふっ、いいですよ……。私は一人で寂しく回りますよ……。ってあれ、雪乃さん?

 

「雪乃さん、見回りはもういいの?」

「ええ、いまからエンディングセレモニーの最終打ち合わせにいくの」

 

 急ぎ足で、女子の二人組が廊下を駆け抜けていく。なにかイベントでもあるのだろうか。

 

「なんだろう」

「これから、有志のコンサートがあるの、忠絵さん見に行きましょう」

 

 私と雪乃さんは一緒に会場へと向かう。

 




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