【断章】二次創作鯖がいるFGO   作:kould

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 但しレアドロップ。てめーは駄目だ


RPGのレベル上げは大好きです。

 地獄とは、このような光景のことを指すのだろうか。

 

 道が割れて、ビルが折れる。空は濁り、街は燃える。現在進行形で炎が暴れているにもかかわらず、人間――若しくは今日まで人間であった死体すら存在せず。蠢くのは骸と亡霊のみ。

 大災害ですら“有り得ない”。この冬木を滅ぼしたのは、明らかに『人為的な憎悪』だったのは、疑いようもないだろう。

 

 何もかも狂った地獄の街を、三騎のサーヴァントと一人のマスターは疾走していた。

 

「やあああああっっ!!」

「――ッラァ!」

「せ、先輩! 着いて来られていますか!?」

「ゼェ――ハァ――。待っ、て、まってよふたりともおおお――」

 

 ――訂正する。前衛の二騎だけで、アンデッド共を蹂躙していた。

 

 

  ・・・

 

 

 切欠は、崩壊したはずの特異点Fが、何時の間にか再び発生したことだ。

 (よもや振り出しか)と、スタッフが涙目で観測に努めた結果――幸いにも、この空間は既に人理を焼却するほどの影響力を持たないだろう、という予測が得られた。

 安心して気を緩めたDr.ロマン達とは裏腹に、サーヴァント二騎は渋い顔をする。10分程、意見交換をした後『気になることがある』と、マスター立香に進言したのだ。

 

「あの特異点での記憶は、座に蓄積されないように細工されていたようです。その場に居た私にさえ、不可解な点が多すぎます」

「話を聞く限り、『歪みを解決した』というよりも、『元凶である聖杯を引っこ抜いたら勝手に安定した』ように見える。第一特異点の前に、冬木をもう一度調べてみないか?」

 

 加えて、戦力の確認と連携の訓練としての意味合いもある。時間は限られているが、取り返しは効かないのだ。準備をどれだけ積み上げても足りるはずが無い。新生カルデアの二日目は、特異点Fでの実地訓練と相成った。

――とはいえ、「最初は個人個人で好きに戦うからよく見ておいて」と悠二が提案したせいで、こんな大惨事(骸骨視点)が発生しているのだが。

 

「キリが無いなあ……藤丸さん、少しペース上げるよ」

「同じく、薙ぎ払います。マスター」

「うそん!?」

 

 驚愕を肯定と受け取った二騎は、一瞬息を溜めて――10体以上の骸骨を一振りで消し飛ばした。

 

「……凄い」

「ツヨォイ…」

 

 迫り来る“死”を嘲笑うように、剣士と魔術士の蹂躙劇は続いていく。

 

 

  ・・・

 

 

「二人とも、はしゃぎ過ぎ」

「申し訳――」

「――ありませんでした」

 

 過剰な暴走には相応の叱責である。残念ながら当然である。

 結局、アンデッドが存在の危機(死んでいるが)を直感して逃走を図り出しても、アルトリア達は迅速かつ丁寧に骸骨を解体し尽くしていた。

 マシュは殺気の籠もった攻撃では無く、飛び散ってくる残骸の骨を相手に防御の訓練を始め、立香は回収した『凶骨』が200本を超えた辺りで数えるのをやめた。その目は酷く据わっていた。

 

 本来の目的を見失ったサーヴァント二騎は、火災で熱せられた地面に正座させられている。悠二は迂闊な発言の責として、適当な瓦礫を膝上に抱かされてもいた。

 

「先輩、5分経過です」

「うん。――二人とも、オシオキ終わり」

 

 氷点下だった瞳が一瞬で温かみを取り戻し、罰の終了を告げる。アルトリアは『ちょっと休んでいました』といわんばかりの動きで立ち上がり、悠二は瓦礫の塊をビルの向こうへ放り投げた(落下地点にいた哀れな骸骨が粉微塵になった)。

 

「さてマスター。参考にはなりましたか?」

「カッ飛び過ぎて訳判んないです……」

「うん、それが正解だよ。理解は不要だけど、認識はして欲しい。君が使う“力”は、本来人間が使うには過剰なものだということをね」

「お二人はそれを伝えるためだけに、あれ程の大暴れしたのですか?」

「マシュ。戦場という場所では、残酷ですが『言い聞かせるより体に覚えさせた方が効率が良い』のです。先日の冬木にて、貴女達はマスターとしての心構えと、サーヴァントとしての在り方を身につけました。今日の探索も、その延長線上にあると考えてください」

 

「行きましょう、マスター」と、アルトリアが先導する。立香とマシュが横並びで歩き、悠二が後方を警戒しながら続く。

 

「わたしが、あるじ。……私が、マスター」

「先輩……」

『――集中するのは良いことだけど、気負ってはいけないよ、立香君。二人だって、君を追い詰めるためにこんなデモンストレーションをやった訳ではないのだし』

「そうだよ、今迄のが悪い例なのだから、藤丸さんがするべき事はそう多くもなければ難しくもない」

「でも……私は作戦とかは――」

「それを考えるのもサーヴァントの役目の内だ。藤丸さんに頼むのは、『戦場の俯瞰』だよ」

「ふかん?」

「ええ。戦闘中に於ける不測の事態というのは、幾ら万全を期していても発生するものです。その瞬間に気づければ御の字ですが、目の前に敵が居てはそう上手くもいきません」

「だからこそ、戦いを見守る者として、マスターの存在は無駄じゃない。難しく考えなくても、自分に出来ることをやって欲しいんだ」

 

「……そっか。うん、やってみる」

 

「その意気です」「何事も挑戦だよ」「先輩の護衛はお任せください!」と三者三様の励ましを受けて、少女は足取り確かに地獄を歩く。

 

  ・・・

 

「そういえば、悠二君も剣使えるんだ。セイバーだったりするの?」

『あ、それはこっちでも気になるな。アーサー王の聖剣ほどではないにせよ、悠二君の剣からは、宝具に匹敵する魔力量が観測できている。というか君、ホントにキャスターだよね? さっきから斬ったり殴ったりばかりだけど!?』

「まさか。恥ずかしながら修行不足で、術式だけだと一流キャスターには到底追いつけないだけだよ。この剣は戦利品でね、愛用してはいるけど聖剣や魔剣になるような逸話が無いのさ」

 

 悠二はひらひらと揺らした右手を一気に振り抜き、愛剣を再び顕現させる。銀の幅広い刃に、不釣り合いに短い銀の柄、挨拶するように僅かに血色の波紋を揺らす『片手持ちの大剣』である。

 

「ーー"ブルートザオガー"。ドイツ語で"血を吸う者"、転じて"吸血鬼"という銘だよ。僕たちはこういう摩訶不思議なアイテムを"宝具"と呼ぶのだけれど、こっちの世界では定義が違うのだろう?」

「はい、英雄達の逸話が昇華された"ノーブルファンタズム"。サーヴァントの皆さんは、クラスの枠組みの中でその力を行使することが出来ます」

「成る程、英霊の代名詞が宝具であるならば、やっぱり僕の宝具はアレで正しいな」

 今度見せてあげるね。と、悠二が剣をしまった直後、穏やかな行進が一転する。

「――っ、この殺気!?」

「やはり此方でしたか……マシュ、ユウジ。ここからは構えて進みましょう」

「はいっ! 先輩、こちらに」

「うん。マシュ、アルトリア、悠二君、宜しくね」

『こちらでもサーヴァント反応をキャッチした。クラス:バーサーカー、接敵まであと7秒!』

 

 地響き。最初に感じたのは脚だった。

 そして耳が、肌が、最後に瞳が、その(いわお)を焼き付ける。

 種別としては、この前の汚染サーヴァントと相違ない。しかし彼が懐く英雄としての核ないし格が、此までの敵を凌駕し、あの黒剣のサーヴァントに迫る存在感、危機感を放出していた。

 

「■■■■■■■■ーーーーー!!」

「ひっ、ぐぅ」

「ーーっ、先輩! 後ろに!」

「こんなぶっ飛んだのもいるのか、常識破りなのは“徒”だけじゃないな」

 

 威嚇の雄叫びに怯む少女達は、恐怖に曝されても尚、両の脚で立ち続ける。二人の振り絞った勇気を()()賞賛せず、騎士達は静かに闘気を高めていく。

 

「■■■ー!」

「おや、私も憶えていてくれたとは光栄ですね、バーサーカー。しかし、貴殿は何故このようなところで呆けているのです?」

「ーー■■!?」

「鈍いですね、貴殿が護るべきは土地ではなく主ではないのかと訊いたのです」

「………■…」

「果たしたくも果たせないというのであれば、送るのを手伝いましょうーー

 

 

ーー来い、大英雄(ヘラクレス)!!」

 

 

「■■■、■■■ァァァァァ!!」

 

 

 

 




 顛末を記せば、『多少ヒヤリとしたが順当に勝利』というもの。
 挑発じみた号令を掛けたアルトリアに狂戦士の猛攻が集中したため、慌てて悠二とマシュがカバーリングに入りダメージコントロールを図ったのが、ピンチの原因にして勝因だった。
 ギリシャ最強が全く過言にならない神話世界の大英雄。その剛力が理性と引き換えに更に狂化されながら、鋼の意志で以て武芸の冴えに曇りが無いという不条理極まる怪物を相手に、新米マスターとサーヴァントは見事に耐え抜いた。

 ハイタッチで大喜びする立香達の心をボッキリ折ったのは、『因みに本物のバーサーカーはあれをもう12回戦ります』と溢してしまった騎士王のうっかりミスであった。

 # # #


 バーサーカーが守護していた森の奥には、手造りの墓が遺されていた。恐らく彼の太い指で悪戦苦闘しながら拵えたのであろう、歪ながら丁寧な作りであり、災禍を免れた草花がこれでもかと供えられている。
 立香達は彼の力作を崩さないように簡単に掃除した後、出逢えなかった誰かを静かに祈ったのだった。
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