ダンジョンを英霊が求めるのは間違っているだろうか 【無期限休載中】   作:たい焼き

23 / 25
|ω・`)コソ

|ω・`)チラ

今だ、皆が忘れてるうちに投稿するんだ!(二ヶ月ぶり)


怪物祭 その6

 「で、何故君らがここにいるのかね?」

 

 ヘファイストス・ファミリアが所有し、ヘファイストスが団員達に貸し出している工房。ヘファイストスが直接アーチャーに与えた物は工房の隣に小さいながらも厨房や生活スペースも備え付けられた物だった。アーチャーの生前の規格で例えると1LKで1が工房として作られている。

 

 サーヴァントならば別に睡眠を取る必要も無いため寝床も用意していないが、別に住まいに拘るアーチャーでもなかった。

 

 「邪魔してるでー」

 

 「お邪魔しています。アーチャー」

 

 精々アーチャーのマスター兼所属しているファミリアの主神のヘファイストスが食事をたかりに来る以外には来客一つ無いここに、ロキ・ファミリアのロキとセイバーが訪れていること自体異常とも言える。

 

 「ティオナ達から聞いたで。街で暴れとったモンスターを退治するの手伝ってくれたんやろ?」

 

 「その事か。何、人として当然のことをしたまでだ」

 

 「確かモンスターの脱走事件が起きたのだったわね」

 

 「こっちの方には被害が出ていなかったからな。店や本拠の方に被害は無いか?」

 

 問題ないわ。とヘファイストスは伝えた。闘技場を中心に街の東ストリート辺りにしか広がらなかったためそれ以外に被害は出ていないのだ。

 

 「おう、邪魔するぜ」

 

 鍵を掛け忘れていたせいもあるが何故かランサーまでアーチャーの工房に押し掛けて来ることになった。アーチャーは心底嫌そうな顔をしてランサーを見た。

 

 「邪魔するなら帰ってくれ。ここは溜まり場じゃないんだ」

 

 「細けぇこといいっこなしだぜアーチャー。これ土産だ」

 

 ランサーが差し出した袋の中には酒瓶がぎっしりと詰められていた。こいつら居座る気だな……。このまま酒宴と称して居座り、酒の肴に何か作らされることが確定した瞬間でもあった。

 

 「おっ、これ中々旨くて高い酒やないかい。分かっとるなぁ自分」

 

 「なんだ、アンタいける口だったか!!セイバーも飲むよな?」

 

 「ええ、私も多少ですが」

 

 確かヘファイストスも嗜む程度には飲む方だったからどの道この場にいる全員、帰る気などないだろう。

 

 「はぁ、もう知らん。何か壊さない程度にやってくれ」

 

 「何言ってるのよ?貴方も参加するのよ。今日の事件について」

 

 ロキ・ファミリアというオラリオで一、二を争う大規模派閥の中でも主戦力の冒険者達すら見たこともない新種のモンスター。そのモンスターが落としたこれまでとは明らかに違う極彩色の魔石。それに50階層でアーチャーも対峙した芋虫のような強酸を吐くモンスター。確かにこのまま放置していい問題ではないだろう。

 

 「ところでランサー。その格好はどうしたのですか?」

 

 「これか?ちょいと街ん中で暴れ過ぎちまってよ……。顔を隠さないといけねぇから霊器とクラスをルーンで弄ったんだ」

 

 全体的に青いイメージは崩していない。だが代わりに見慣れた青の戦装束と紅い槍ではなく、木製の杖とローブで顔を隠している。

 

 「なるほど、貴様にはドルイドとしての側面もあったな。その側面を強くしたのがその姿と言うわけだな」

 

 「お蔭で戦い辛いったらありゃしねぇ。趣味じゃねぇってのによ」

 

 杖とローブの魔術師としての姿がここまで似合わないキャスターというのも珍しい、とアーチャーは内心感じていた。

 

 「ではまず情報を整理するとしよう」

 

 一先ずある限りの材料をかき集めて大量の酒に見合う酒肴を出してやった。帰宅してからも忙しなく働いていたアーチャーを視界にも入れずに飲んだくれていた奴らは既に顔が真っ赤に染まり始めていた。このままではここに集まった目的を成し遂げる前に酔い潰れる方が先なので、迅速に事を推し進める。

 

 「本日正午、ガネーシャ・ファミリアが怪物祭の催しのためにダンジョンから持ち出したモンスター十数匹が脱走し闘技場の外へ進出した。これが今日起きた事件の概要だ」

 

 前代未聞の事件だ。昨年まではガネーシャ・ファミリアとギルドが共同して脱走防止の見張りや人間同士のトラブル等の対応に当たっていた。事が事だ。万が一にも人間を殺すためだけに存在するモンスターが街中で暴れて死人が出れば今後の怪物祭が中止になるだろうしギルドやファミリアの信頼に関わる。

 

 「これを起こした下手人は既に確認済みだ。人ではなく神だがね」

 

 モンスターを逃したのはフレイヤ・ファミリアの主神フレイヤだった。動機は気に入ったとある人物にちょっかいをかけたかったからというものだった。

 

 「やっぱあの色ボケやったかー。んなことやと思ったで」

 

 「まあアレは放置していいんじゃねぇか?質が悪くても悪意は無かったぜ」

 

 「それには私も同意だ。少なくとも無差別に街に危害を加えることはやらないだろう」

 

 今回のモンスター脱走事件で多少なりとも建造物に被害は出ているが近くに居合わせた一般市民は誰一人怪我を負っていない。本当に危害を加えるつもりは無かったのだろう。目標一人だけに狙いを絞ってフレイヤはモンスターを差し向けた。古の神話の時代、神々は人に接触出来るくらいには近くに居た。

 

 神々は人間が遠く及ばない位置まで力を持っており、その気になれば気分次第で人の興亡すら自由にできたがそれはどの神も決して行わなかった。何故なら人々は神々の大事な子供達だから。神は子供を殺さない、だが神は子供に試練を与える。常人では乗り越えられないような試練を与え、もしもその試練を乗り越えたら人からも神からも偉業として認められ後世にまで語り継がれるだろう。だが失敗すれば無惨に切り捨てられ忘れ去られるだけだ。

 

 これからもピンポイントに誰かを狙って問題を起こすかもしれないが、そうなったら目をつけられた者になんとかして欲しいものだ。

 

 「では二つ目。こちらはかなり深刻な問題になるだろうな。まずはこれを見て欲しい」

 

 アーチャーが取り出したのはモンスターの中に存在する魔石だ。だがその色は極彩色と通常のそれとは明らかに違っていて異質だ。

 

 「これは打撃に強い耐性を持った植物型のモンスターが落とした物だ。ちなみに私はアレは新種のモンスターじゃないかと睨んでいるのだが、神ロキは今日までの間であの新種の発見報告を聞いたことはあるか?」

 

 「ないで。それにアイズたん達も新種やって言っとったから間違いないはずや」

 

 「そいつならオレもぶっ倒したぜ。魔石も持ってる」

 

 「私もです。下水道の中に大量にいました」

 

 ランサーもセイバーも同じ魔石を回収していたらしい。ざっと数えただけでも数十個はある。つまりこれと同じ以上の植物型モンスターがダンジョンから抜け出してオラリオのすぐ下にまで迫っていたということだ。

 

 「調教師(テイマー)か」

 

 ダンジョンのモンスターを手懐けて使役する技術はある程度確立している。その技術を用いてモンスターを使役する冒険者のことを総じて調教師と呼んでいる。

 

 「なんや?調教師が裏で糸引いて街で暴れさせたっていうんか?」

 

 「まだ証拠も裏付けも何も無いがね。ただそう考えれば腑に落ちるってだけさ。可能性の一つとして覚えていて欲しい」

 

 色々と憶測を立ててみたものの、所詮は憶測であり何一つ根拠のない話だが心の隅に覚えておくべきことだ。

 

 「あとは、オレからも言っておかなきゃなんないことがあるんだが」

 

 今度はランサーからの提案だ。

 

 「キャスターになってルーン魔術の精度が上がったんでな。ベルカナ(探索)のルーンを街の外に飛ばしてみたんだが……。サーヴァントを二騎見つけたぜ」

 

 「それは本当ですか?ランサー」

 

 ああ、と短いが確かに肯定した。ここにいるサーヴァントは、セイバー、ランサー、アーチャーの三騎士。ランサーが発見したモノが本当にサーヴァントならば既に五騎のサーヴァントが召喚されていることになる。

 

 「近いうちに始まるぜ。聖杯戦争が」

 

 一同沈黙する。

 

 「け、けどなぁ、セイバーたん達がいうとる聖杯戦争ってのはウチも説明は聞いとるし、そんな深刻そうな顔せんでもええんやないんか?」

 

 「ロキ。聖杯戦争に召喚されるサーヴァントは基本的に何かしら聖杯に望みたい願いというものを持っています。そのためならば周りの被害などお構いなしで戦おうとする者も少なくありません。……かつての私は最低限の騎士道精神はありましたが、願いを叶えたいがために聖杯戦争に勝利することを貪欲に望んでいました」

 

 「加えて補足するが、サーヴァントを殺すことも避けた方がいい。サーヴァント一騎でも大凡人間一人で使い切れる魔力では無いからな。ついでに聖杯戦争の本来の目的は七騎の英霊の魂を聖杯に留め、それを一気に解放することで根源へ通じる孔を空けることだ。その孔を固定して御三家の魔術師達が根源へ至るって寸法だ」

 

 それには流石のセイバーとランサーも驚いた。本当に知らなかったらしい。

 

 「なっ!?それは本当ですかアーチャー!?」

 

 「ついでに言ってしまえばサーヴァント同士で殺し合う必要もない。マスター全員が結託して召喚したサーヴァントを自害させてしまえばいいんだからな。サーヴァント同士で殺し合いをさせるのは、ただ聖杯を得る権利を競うというだけなのだからな」

 

 「ならよ、もし第五次聖杯戦争でオレが勝ち残ってたら……」

 

 「貴様のマスターの言峰に自害させられて終わりだろうな。生かしておく理由もあるまい」

 

 うへぇ、マジかよ……。そこだけは運が良かったとランサーは心底思ったことだろう。

 

 「とにかく、サーヴァントを殺して脱落させるのはオススメしない。やるならこの世界のどこかにある聖杯を見つけ出して異常がないことを確認してからだ。相手に戦意も敵意も無ければ楽なのだがね」

 

 「そうね……。それじゃあこうしましょう」

 

 一言も発せずに思考に浸っていたヘファイストスが提案したのは同盟、この場にいる三騎のサーヴァントと、それぞれのサーヴァントが所属するファミリア同士の同盟だ。

 

 「ウチはええで。ドチビんとこに手を貸すってのは気に入らんけど、んなこと言って下手打ったらアカンからな」

 

 「んじゃ、ヘスティアはいねぇけどオレは力を貸すぜ。アーチャーと共同戦線を張るってのは気に入らんがな」

 

 「いや全くだよランサー。獣の如く前線をかき乱す君と遠距離から爆撃で削る弓兵の気があうわけがない」

 

 「こらそこ。なんで早速喧嘩しているのですか……」

 

 第五次聖杯戦争において三騎士クラスに選ばれた三人が手を組んだのだが、早速前途多難な予感が漂っていた。主に味方のせいでだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「貴女の期待にお応えできず、申し訳ありませんでした」

 

 オラリオにそびえ立つバベルの最上階。怪物祭の最中に起きた事件の首謀者のフレイヤは、何事もなかったかのようにオラリオの街を見下ろし眺めていた。傍らで跪く男には視線一つ向けずに。

 

 彼女が気に入った魂の持ち主の二人を試すことが目的だったのだが、得られた成果はまあマズマズといったところだろう。白髪の少年は格上相手に立ち向かい見事それを下してみせた。それは紛れもなく少年の魂を輝かせる一つのきっかけとなっただろう。

 

 もう一人の紅い男は直接フレイヤに会いに来た。まさか気づかれて目の前に現れるとは思いもよらなかったし、端からどうする気もなかったかのように何もされずに見逃されたというのはフレイヤからして気に入らなかったとしか言いようがない。

 

 間近で見たあの鍛え上げられた鋼の如き目は美の女神として至上の存在であるフレイヤを射止めていなかったが、もしあの目が映すモノが自分の存在だけとなった時、一体どれほどの快感が得られるだろうか。今はそれを考えるだけで全ての欲求が満たされた。

 

 そういえばとふと思い出した。あの青い男はどうだろう。確かにこのオラリオに暮らす人間達と比べることすら必要ない程燃え上がり輝く魂はフレイヤの目にも止まったが、少しばかり血が滴っているのがマイナスか。今はあのベルとアーチャーの二人を追うことで精一杯のフレイヤは一先ず青い男をマークから外した。

 

 そしてフレイヤは傍らのオッタルに視線を移す。今までオラリオで最強の冒険者として君臨していた猛者(おうじゃ)だが、今は見る影もない。傷は薬で癒えたが、彼が積み上げた実績や自信、何より絶対王者としての誇りは見るも無残に砕け散った。

 

 「いえ、大義だったわ。オッタル。貴方は私の期待によく応えてくれました」

 

 「……勿体なきお言葉」

 

 「そして思い知ったでしょう?貴方の座している玉座は所詮一つの街の中のちっぽけなモノだったと」

 

 「はい、この身を以て思い知りました」

 

 オッタルは間違いなく最強だ。だがそれは今生きている者達の中での最強だ。過ぎ去った過去の中には今のオッタルを軽々と超える英雄達が居た。またいつか訪れる未来には過去も現在も含めた英雄達を凌駕する英雄が生まれるかもしれない。

 

 「フレイヤ様。誠に勝手ですが、私に暫しの間お暇を頂きたい。貴女の身を危険に晒すことになりますが、どうかこの願いだけは聞き届けて欲しい」

 

 「許可します。貴方に与えた恩恵はまだ限界を迎えてはいないわ。そして恩恵を昇華させるまでこの場に足を運ぶことを禁じます」

 

 ありがとうございます。オッタルはそれだけ言い残しフレイヤの私室から姿を消した。護衛と身の回りの世話をする者が居なくなった部屋でフレイヤはワインに口を付けて未来に思いを馳せる。

 

 再び自分の最強の騎士が目の前に現れるのはそう遠くないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本文中のランサーが見つけたサーヴァント二騎のヒントを書いておきます。出るのは当分先ですし。多分戦争遊戯の後くらい?

クラスはライダーとアサシンを予定しています。

FGOには既に参戦していて、ライダー予定のサーヴァントはFGO以前にも参戦しています。

そして重要なヒントはライダーもアサシンも公式とは違うクラスです。

逸話や史実をペラペラと調べてみて、あれこのクラスでもいけるんじゃね?と思いました。

本小説のランサーの宝具全部乗せ状態もライダーならいけそう

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。