七夕転生物語。   作:すぴか。

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こんにちは、今日も暑いですね⋯。
ふと見たらこの小説に数件のお気に入りが入ってました。ありがとうございます!こんな下手な小説でも気に入ってくれてる人がいるんだと思うと嬉しいです。


命名。

生まれて16年間一度でも忘れることの無かった自分の名前。

それすら、今の自分は思い出せずにいた。

「イーブイさん…?」

不思議そうな顔で俺の表情を伺うリーフィア。

「…悪い、分からない」

俺が覚えていることといえば、16歳だったことと、かつて人間だったということのみだ。それ以外のことはきれいさっぱり忘れている。

「そうですか…」

リーフィアは悲しそうに俯いた。

「リーフィアは人間だった時の名前は覚えてる?」

「わ、私ですか?」

数秒の時間を置き、リーフィアは口を開く。

「私は…リ、リディアって言います⋯あっ、本当の名前じゃなくて、ここに来た時から自然と思い出した名前というか、その…すみません、うまく説明できなくて…」

リーフィアのリディアか。なんか覚えやすいな。

「いや、大丈夫。じゃあリディアって呼ぶよ」

「はい…えっと、あなたはなんて呼べば…?」

「え?普通にイーブイでいいよ」

「でもそれじゃ人間に人間って呼んでるみたいで⋯」

リディアは控えめに言った。確かにイーブイは種族名だからリディアの言い分はわかるが。

「あの⋯もしよかったら名前⋯わ、私が決めてもいいですか⋯!?」

リディアは真剣な顔で言った。

「へ?いいけど⋯」

余程種族名で呼ぶのに抵抗があるんだろう。さっきまでの消極的な姿勢は無くなっている。俺が了解を出すと、リディアは嬉しそうに笑った。

「ありがとうございますっ⋯!では今から考えてきますね⋯!」

リディアは楽しそうに湖の縁まで駆け出した。

(⋯大丈夫かな、ま、そこまで変な名前にはならないだろ)

リディアを眺めながら、この時の俺は楽観的に考えていた。

 

 

ーーーーーーーー

「⋯⋯⋯リディア、決まった?」

「ま、まだです⋯もう少し待っててください⋯!」

振り返らずに返事をするリディア。

あれからかれこれ30分は経過している。大人しく待っていたが流石に暇なので、こっそりとリディアに近づいてみる。

「⋯うーん⋯ソクラテス⋯いや⋯ヘロトドス⋯?」

(ファッ!?)

リディアはぶつぶつと呟き、俺の名前を考えている。俺がすぐ後ろにいるのに気づいていない。

「フロイト⋯アレクサンドロス⋯なんか違うなぁ⋯」

(なんか違うとかそんな次元じゃねえよ!なんで全部偉人!?)

このままでは俺の名前がなんらかの偉人になってしまう。それだけはなんとしても避けないと⋯!

「あ、あのリディア⋯?」

「ひゃうっ!?」

前足でリディアの尻尾を触った途端、リディアは甲高い悲鳴をあげて前方へよろける。そのままチャポンと水音を立てて、湖へと落ちた。

「ちょ、危ねぇ!」

水面から出ているリディアの後ろ足を咄嗟にひっぱる。

「ぷはっ⋯!えっ、ヘロト⋯イーブイさん!?」

誰がヘロドトスだ、誰が。

心の中でそう思いつつも、なんとか安全なところまでリディアを移動させた。

「あ、ありがとうございます⋯助けてくれて」

リディアは犬がやるようにぶるぶると体を震わせた。

ぴちぴちと水滴が俺にかかるが気にしない事にする。

「さっき助けてもらったお礼だよ」

まぁ、あのことが無くても助けていたが。

「本当にありがとうございます⋯⋯」

二匹の間に再び沈黙が走る。

「⋯あの、もしかしてさっきの聞いてました⋯?」

俯き、赤くなりながらリディアは言った。

「⋯あぁ、しっかりと」

「~~ッ!すいませんっ!ふざけてた訳じゃないんです!アリストテレスは私の飼ってる猫の名前で⋯!だから⋯!」

哲学的な猫もいるもんだな。

「ま⋯まぁそんな大仰な名前だと呼びにくいだろ⋯?普通の名前でいいよ」

「普通の名前⋯?」

リディアはじっと俺の体を品定めするように眺める。

「えと⋯イーブイさん⋯イー⋯ブイ⋯ブイさん⋯ブイさん?」

「⋯ブイさんって呼んでもいいですか⋯?」

「あぁ、それでいいよ」

男子だった俺には似つかない可愛い名前だが偉人に比べたら遥かにマシだ。

「じゃあ⋯ブイさん、よろしくお願いします⋯!」

「あぁ、よろしく⋯ん?」

ポツ、と俺の鼻先に冷たい感覚が走る。空を見上げるといつの間にかすっかり曇っていた。

「雨ですね⋯どうしましょうか⋯」

どうしようか、辺りを見回すと、先程までは気づかなかったが湖のずっと奥に洞窟のようなものを見つけた。

人間だった頃じゃ絶対に見えないぐらいに遠い場所だ。この姿になって視力も変わっているらしい。

「取り敢えず、あそこで凌ごうか」

前足で洞窟を指差す。

「はいっ、分かりました」

雨の降る中、二匹は洞窟へ向けて歩き始めた。

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