七夕転生物語。   作:すぴか。

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エアコンが……壊れました。


帰る方法。

 洞窟を目指す道中、リディアと色々な話をした。最初は好きな食べ物だったりアーティストだったりの他愛もない話だ。…もっとも俺は結構な量の記憶を失っているので、ただ楽しそうに話すリディアの聞き手に回っていただけだったが。

「ブイさん…ブイさんの話も聞きたいです」

一方的に話すのでは気まずいからかと、リディアはやがて気を使って話を振ってくれた。

「俺?話はしたいが記憶がないから話のネタが…」

「じゃあ…なにか覚えていることを、何でもいいですから」

「覚えていることと言ってもなあ…」

リディアに言われるがまま、最後に覚えている記憶をたどる。

確か覚えているのは6月の末…。

なんでもいい、何かないか、何か…

俺の脳にあの時の記憶が映像としてよみがえる。しかしそれにはモザイクがかかったようになっていて、何かがあった。が、その「何か」が不鮮明で何なのか分からない、そんな状況に陥っていた。

「…だめだ、リディアはどう?この世界に飛ばされた理由とか知ってる?」

そう聞き返すと、リディアは立ち止った。しばらく経った後、口を開く。

「すいません、理由は分からないです…」

「…そっか」

分からないのか、つい溜息をついてしまいそうになった時、でも、とリディアは続けた。

「元の世界に帰れる方法…なら少しだけなら…」

「え、その方法は…!?」

願ってもない言葉だ。方法を知っているのならさっさとそれを達成したら元に戻れる。

「えと…この世界で目覚める前に見た夢で誰かに教えてもらったんですけど…」

あんまり期待しないで下さいね。リディアはそう念押しした。

「確か…七夕の日までに人数分の短冊を集めろって言われたような…」

「短冊?」

短冊。七夕…何でだろう。つい最近聞いた言葉な気がする。

「そして、その短冊をもって全員で特定の場所に行けばいいって言われました」

「特定の場所って?」

う、とリディアは口籠る。

「…分からないか」

「はい…すみませんそこまでは…」

…肝心な所は分からないが、ともかく大体は分かった。この世界のどこかに落ちている短冊とやらを人数分集めて、特定の場所へ行けばいい。それだけのことだ。それだけの…

「え……」

短冊を探す?俺は辺りを見渡した。雨が少しづつ強くなっていて視界が悪いが、辺りには遠くに見える洞窟。後は草原がただ広がっている。こんな広い場所でどうやって探せというのか。それに…

「全員でってことは…俺達以外にポケモンになった人がいるってことか…」

「はっ…確かにそうですね…」

どこにいるのかも分からないそいつらを見つけ、その人数分の短冊を見つける、そしてどこかの特定の場所、やらを見つける。これを七夕の日までに。…うん、考えれば考えるほど無理ゲーに感じてきた。

「なんか、帰れるのか不安になってきた」

「私もで…っへ…くしゅ!」

リディアは変なくしゃみをした。それに合わせるこのように雨が強くなっていく。

「う…寒いです……」

「雨がやばいな、急ごう…」

雨が降る中、速足で洞窟へと急ぐ。

 

--------

 

「ふう…ようやく着いた…」

…湖から洞窟までの距離を甘く見ていた。すぐ着くだろう、そう思って移動し始めたが洞窟までの距離は思ったより遠かった。歩いて1時間、いや2時間だろうか。もう辺りは暗くなりかけていた。それに比例して時間とともに雨は強くなっていった。ザアザアと音を立てて降り注ぐ雨が俺とリディアの体をびっしょりと濡らした。未だ止む気配も見えない。

「お互いずぶ濡れですね…早く中に入りましょう」

リディアは雨の当たらない洞窟の入り口まで移動すると、湖に落ちたあの時と同じようにふるふると体を震わせて水を飛ばす。俺もリディアに倣い体を震わせた。

「ブイさん、寒くないですか…?」

リディアは心配そうな声で言う。

「え?まあ濡れはしたけど大丈夫だ」

本当はかなり寒いが何故か強がる俺。

「よかったです、私は…ちょっと寒くて…」

リディアはふらつき、俺にもたれかかった。濡れた毛の生暖かい感触が伝わる。

「お、おい、大丈夫か?」

「はっ…迷惑かけてすみません…!私は大丈夫です…」

慌てて体を立て直す。が、リディアの様子がおかしい。顔は赤く、足が覚束なくなっている。更に息も荒い。誰の目から見ても大丈夫ではない。

「リディア…まずい、熱出てるじゃん…」

どうしよう。途方に暮れて洞窟の奥を眺めた。どこまでも続く暗闇。その中に赤い光が揺らめいているのが見えた。

「なんだあれ…」

じっと目を凝らして赤い光を見つめる。あれは…火?

(とにかく奥に行ってみるか…)

どさっ、後ろで音が聞こえた。振り返ると先程まで辛うじて立てていたリディアが横になって倒れていた。

「リ、リディア!」

しまった、火に気を取られすぎていた。慌ててリディアの元へ駆け寄る。

「とりあえず奥にいこう、立てる?」

「む、無理です…」

リディアの体温はさっきより上がっていた。こんな状況でリディアを歩かせるわけにはいかない。…なら。

「よいしょっ…!」

「わ、ブイさん…?」

俺はリディアを背中に乗せた。

(おもっ…)

女子とはいえ、リディアはイーブイである俺の進化後の姿。その体重差は決して無視できるものでは無かった。何度も転びそうになり、そのたびに気合で耐え、奥で揺らめいている火を目指して進む。

…火が見える洞窟の奥に行ったことろで必ずリディアを助けられるという確証はない。ただ、命の恩人であるリディアを助けたい。その一心で進み続ける。

「ブイさん…ありがとうございます…」

微かな声でリディアは言った。

ゆっくりだか確実に視界に見える火は大きくなっていく。

「ん…?」

パチパチと炎の燃える音が聞こえる程に近づいたとき、急に体が動かなくなった。

移動は勿論、後退も、首を動かすことすら出来ない。

(なんだこれ…動けねえ…!)

「そこにいるのは…誰?」

すぐ前方から声が聞こえた。薄暗い中、その猫のような眼だけが光り、足音を立てながらこちらへ近づいてくる。

 




書き終わって気づいたけどもう深夜だ…
3時半って…(汗)
お休みなさい。
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