Fate/Grand Order 唯就職したかったんです。   作:B-in

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遅く成ってごめんなさい


カルデアス、爆発する

 

 

 

 

 

 

ポーンとアナウンスが響いた。

 

シートベルトを確認し、背凭れに身体を預ける。少し堅いのが気に成るが、就職先の指定した席がコレなので仕方が無い。

ぼんやりと、今までの事を思い出す。

私は、ついこの間までは女子高生だった。何の因果か友達達と善意で行った献血、その後に貰った安っぽい紙パックのジュースを歩きながら飲んでいた日。

思えばあの日が人生の転換期だったのだろう。

大学入試には合格、束の間の長期休暇を満喫し、晴れて女子大生に成る事が決定していた私は浮かれていたが、不安も有った。

大学卒業後の話である。

就職するか、結婚するか。前者には資格勉強等をしなければ成らないし、就職したい企業のピックアップもしなくては成らない。先輩から聞いた話では、対策は早ければ早いほど良いとの事で、後者に関しては彼氏いない歴=人生な私には難易度が高い。

同性に奔らなかった自分を褒めて欲しい。

 

コレでも最低限の家事は出来るんだぞぅ。

 

何故か後輩に慕われてたけど、お弁当とか差し入れとか貰ってたけど・・・

 

頭が痛くなるので一旦置いておこう。転換期である。

何時か来る当たり前の日常の中の当たり前な問題に頭を悩ませていた時、何か外人さんがスカウトに来たのだ。

意味が分からないが、話を聞けば国連主催の機関へのスカウトである。国連主催である。

ハッキリ言って、美味すぎる話しなのだが、女は度胸。あれ? 愛嬌だっけ? まぁ、そんな感じで飛びこんでみる事にしたのだが…

 

日程がかなりギリギリである。

 

私をスカウトしたハリーさんにも謝られたが、同郷の人間、しかも同い年が先に行っているとの事なので許した。

 

フフ、流石は私。友達からも男前と言われるだけはある。うっさいわ、こちとら乙女だ!!

身体に圧が掛かり、浮遊感と共に耳鳴りが少しした。後は目的地まで寝るだけ、其処からまた移動なんだけどね。ハハ、上手く働けるかなぁ。体育系のノリなら行けるんだけどなぁ

 

よし、現実逃避終わり。

 

さて、私が現実逃避していた理由を教えよう!!

テンション上がって来たぜ!!

 

ぶっちゃけ、隣の人が怖い!! 何か書類片手にブツブツ言ってるし、目の下の隈が凄いし、中々に良い筋肉をしている。いや、滅多にお目にかかれない筋肉かな?

首回りとか細い様でしっかりと鍛えこまれてる。う~む、後ろ姿にも期待しよう。スーツだから分かり難いかもしれないけど。

たぶん、この人はブラック企業に就職しちゃったんだろうなぁ。若そうなのに大変だ。

私は自分の幸運を噛みしめながら、国連主催と言う看板に安心しながら目を閉じて無理やり眠る事にした。

 

あ、私の名前は藤丸立夏。今年からグローバル社会人になる乙女である。

 

 

 

 

Side out

 

 

ロマニ・アーキマンは基本的にはカルデアから出ない。カルデアを留守にするのは本当にヤバイ案件が在る時のみだが、ソレを知る人間は殆ど居ない。知っているのはオルガマリー位で在り、彼女はロマニに救われた人間だ。

故に、周りからは人辺りは良いけど出不精で仕事熱心な人間と思われても居る。基本的にはドルオタで臆病な人と思われている。

そんな彼が此処五日程、不眠不休と言って良い程に働いている。

その理由は、レイシフトの期日が早まったからと言う事だ。本来ならば二日後の筈だったモノが二日早く成った。

二日程度ならば、どうとでも成ると思う者も多いが実際の所はかなり厳しい。その原因はカルデアの人事が少数精鋭だからである。

運営する者、補助をする者、ケアをする者と戦う者。大まかに分けてこの四つ在るのだが、その合計人数は200人に届かない。そして、驚く事に戦う者がコレの約四分の一であり、雑事等に狩りだされる人間を含めれば、各部署がかなりのギリギリの人数で回されてる。

それでも、しっかりと休暇を取れてしまえる辺り、カルデアの人間達の優秀さを浮き彫りにしているのだが…何処にでも派閥と言うモノがある。

何処まで行っても人間の敵は人間で、この期に及んで未だに暗闘を繰り広げている人間が居るのだから、他の職員達からしたら憤慨ものである。実際に書類の遅れや、意図された迂遠な嫌がらせなどの所為もあり、医療スタッフであるロマニでさえサボる事無く仕事に忙殺されている。

彼の場合は他にも色々と準備をしていた為、余計にそう見られているのだが、ロマニはソレが隠れ蓑に成ると考えてそのままにしている。

 

溜息が漏れるのを自覚しながら、本来の自分の仕事を片付ける。陰鬱な気分に成るのは、秘匿回線で会話した内容が内容である為だろう。

 

裏切りモノが居る。

 

つい四日前に、本当なら無い筈の回線での会話だった。各国の諜報員が居るのは許容出来る。此処は魔術師の城であり、人間相手の記憶操作も情報操作もお手のモノで、科学技術に関しても、召喚に応じてくれたサーヴァントのお陰も有ってかなりのレベルだからだ。

そのサーヴァント自体で対処出来ると言う事も有る。

 

だからこそ、この言葉は重い。そして、マリスビリーが死んだ直後に凍結し、破棄した事にしていた回線が生きた事に感謝した。

 

恐らくは、上級職員。カルデアの黒い部分を知る、数少ないメンバーが妖しい。

神経を擦り減らす作業と並行して、自身の仕事もこなさなくては成らなかった四日間は正に地獄だった。

 

(この書類を片付けたら休もう。絶対に休もう。)

 

レイシフト開始までまだまだ時間は在る。さっさと片付けてひと眠りしても罰は当たらないだろう。

 

(早く来てくれよライドウ)

 

尚、本日新人マスターが来る事を此処連日の激務で頭からすっぽ抜けて居た職員が居て、休憩時間を返上して準備をしたらしい。

 

 

 

 

 

 

 

Side out

 

 

かなり時間を巻き戻す。だいたい五日前の話だ。寒空の下、自分達の知る女性の残念具合とドン詰まり感に少々涙しながら顔を覆った後、器港雷堂とロマニ・アーキマンは締まらない顔で別れた。

お互いのする事は簡単な事で、お互いにそれなりに優秀である自覚が在った。

一度、今の家に戻り、従兄弟の衛宮士郎に暫くは冬木を離れる事を告げる。今年で六歳に成る従兄弟の娘は、自分が来る度に「遊んでー」と駆けてくる。ソレを正面から受け止めて持ち上げ、クルクルと回ると可愛らしく声を上げるのだ。

従兄弟の家庭を見ると、幸せと言うモノが何となくだが分けて貰えている気になる。

従兄弟の妻である女性は小柄で、何処か人懐っこい犬を連想させるおっとりとしている女性で、従兄弟がどうやってこの女性とお付き合いする事に成ったのかを小一時間問い詰めたくなるが、帰って来るのは惚気なので追求はしない。

 

「お腹、大きく成りましたねぇ」

 

「えへへ、もう8カ月だからね。雷堂君もまた、背が伸びた? まだまだ成長期見たいで羨ましいよ。士郎君も背が高いから、私が隣を歩くと見栄えが悪く成っちゃうから」

 

此処から、ヒール履いたら躓いて、ソレをそれとなく支えて、歩調を合わせて歩いてくれる士郎君大好きトークが始まるのだから、迂闊に受け答え出来ない。雷堂は背中に冷たい汗を掻きながら言葉を探した。

 

「男の子でしたっけ?」

 

「うん。そうだよ、我が衛宮家は安泰なのだ~って藤村先生も喜んでくれてね」

 

取りとめの無い会話をしながら、通い慣れた家に上がる。

リビングに向かえば、従兄弟が鍋の具合を確認しながら「よっ」と声を掛けてくれる。

 

普通の家庭の普通の団欒。

 

他愛の無い会話をしながら、目的を完遂する。鳥と海鮮から出た出汁に舌鼓を打ち、従兄弟の娘にダダをこねられながら、従兄弟の家を後にする。

 

その時までは器港雷堂は幸せに浸っていたが、後に成って後悔する。電話で済ませれば良かったと…

 

「若様、宮内庁から御電話が…」

 

(まって、まって、仕事が早すぎない? ねぇ)

 

「それと、ヴァンデルシュターム総帥から商談の打ち合わせがしたいとアポイントメントを求める電話が」

 

(上位死徒ぉぉぉぉぉ!! 白翼公と友好関係ぃぃぃ!!)

 

「先に宮様方との件に向かう。」

 

「了解しました。3時に皇居の例の場所でとの事です。それと…」

 

「総師からは明日の夕方には着くと」

 

(強制じゃねぇか!! 向こうが喰いつくネタも企画もねぇぞコラ!!)

 

「格財閥に通達しろ、俺の客だ。無法をしない限り、最善を尽くせ。何か有れば戦争が始まる!!黒磯、父に連絡しろ、協会と教会の調整は任せる。幹部連中は明後日の昼までに集合させておけ、海外派遣組は良い。国内に居る此方側は全部集めろ。」

 

「はっ!!」

 

命令を直ぐに行動に移せる優秀な部下の後ろ姿を見送り、雷堂は自分を誤魔化しながら呟いた。

 

「わーい、今ならおさんかたとえっけんできるぞ~オフロハイッテミヲキヨメナキャ」

 

 

これより地獄の4日間が始まり、今に至る。

 

雷堂は隣から聞こえる気持ち良さそうな寝息を聞きながら、溜息を吐いた。最後のマスター候補(補欠)の情報をロマニ・アーキマンから得られたのは行幸だった。向こうも、裏切り者が居ると言う情報を得られて、在る程度の絞り込みが出来ているだろう。まぁ、個人的には一人に絞られているのだが…

 

溜息しか出ない。身体は不調を訴え、頭痛が睡眠を妨げる。胃が軋むし、関節も軋む。

 

隣で眠っている少女は、ホントに同い年になるのかと思ってしまう位に、あどけない寝顔を曝している。

この少女を巻き込む形に成ってしまうのは不本意だが、カルデアが失敗すれば結果は同じかと思い直し。目を閉じ、身体を休ませる事を優先する。

 

(あぁ、うどんが喰いてぇ)

 

 

 

 

 

 

 

Side out

 

 

もともとが上手い話では在ったのだ。高校を卒業し、滑り止めの大学に入学予定だった春を待たずに、スカウトの話に乗った。考えなしだったとは思うが、世界を見て見たかった。

国連の機関と言うフレーズはとても魅力的で、自分には其処に所属する為の素養が在ると強く話され良い気分に成った。

成ってしまった。英語は何とか聞きとれるレベルで意味は分かるも、発音が悪い所為か話す時は片言の様に成ってしまう。その時点で自分が調子に乗ってしまって居た事に気づき、自己嫌悪に耽る。

カルデアスと言うこの機関は正式な名称は長いのでカルデアで良いよと、気さくなDrが言ってくれた為か、何となく愛着が湧いて来たのが三日ぐらい前の話だ。

Drと言うのは、このカルデアで医師として勤めているロマニ・アーキマンと言う何処となくうだつの上がらない感じの良い人だ。顔も広く、この機関ではそれなりに古い職員との事で、あの気難しそうな所長を愛称で呼び、僕の事を先輩と呼ぶマシュ・キリエライトと言う、男子校出の僕にはちょっと刺激が強い感じの純粋な美少女の主治医との事だ。

 

ハッキリと言ってしまえば、この二人が居なければ僕は潰れて居たかも知れない。

 

日本男児として、中学時代に恥ずかしい妄想と言うか、想像をした事が在る。しかし、実際にこの世界にはそう言った力が在ると知らされてしまえば、興味が湧き、好奇心が膨れ上がり、自分は選ばれた者なのだぁーとはっちゃけたくも成ったが…死が近過ぎる。

 

マスターの資格。それが僕には在るらしい。何のマスターなのかと問えば、英霊と答えられた。

 

神秘、魔術、儀式、人理、僕がカルデアに来て得た情報は膨大で、突拍子も無さ過ぎて、言葉だけが頭の中に入って来るだけだった。間抜けな質問をしたのだろう。所長は怒ってしまった。

代わりにゆっくりと教えてくれたのは、マシュとレフ教授だ。二人の説明の仕方は覚えやすく、レフ教授の説明はユーモラスが在り、とても面白かった。

 

「レフ教授の説明は分かりやすくて面白いですね。」

 

「凄いです。Drとは大違いです。」

 

「ははは、そうでもないさ。時計塔に行けばロード・エルメロイⅡ世が居るし、ロマニだって真面目にすればとても面白い話をしてくれるよ。まぁ、今後も立香君みたいに一般の人からマスター候補が来るかもしれないなら、講師役を買って出てみようかな?」

 

特徴的な揉み上げが第一印象に残る教授は笑ってそう言った。教授の説明で、僕は自分が本当の意味で補欠であり、だからこそ知識や技術を学ばなければいけないのだと理解出来た。残念ながら、僕には魔術回路と言うのがちょっとしか無いらしい。それでも、初代に成るのなら多い方だと言われた。

 

(コレから頑張らなきゃ)

 

そう思った矢先に、レイシフトの予定が二日繰り上がった。今回は時間が無いと言う事も有り、僕は留守番との事だ。先輩に当たる魔術師の人達は皆がピリリとした鋭い雰囲気を纏っており、中々に話しずらい。

しかし、忙しそうな所長や教授達に聞く訳にもいかず初日は正確な適正検査と健康診断で終わった。

二日目はマシュがカルデア内の案内をしてくれた、運動をする場所も広く、トレーニング器具も充実しており、娯楽品に関してはかなりの数の漫画やゲームが揃えて在った。

日本でも良く見た表紙や海外の物もあり、休みの日なら、此処で1日を過ごせる時間が在ると言うモノだった。

マシュに、どうしてこんなにもゲーム等が揃って居るのかと聞くと

 

「えーと、コレは寄付の様なモノで…その、別の予算で送られて来たんです。」

 

「これ、送って来たの確実に日本人だよね?」

 

「はい、昔、カルデアに所属してた人で…私も良くお話ししたり、ボードゲームでDrと一緒に遊んだりしてくれた人で…」

 

「へぇー」

 

「あ、先輩と同じ年か1つ上ですよ? その人」

 

「えっ?! 何で辞めちゃったの?」

 

と言うか、その年で所属して働いてたの? 

 

「えっと、Drの話では前所長と仲違いしたって言うのと稼業(魔術サイド)の手伝いでと…」

 

「稼業?」

 

「先輩なら知ってるかもしれないですね。器港雷堂って言うんですよ。」

 

うん? 

 

「…器港? 僕の高校時代にはゲーム業界にも進出して、ソレ以前も建築やら海運やらで有名な?」

 

「はい、確かそうだったと思います。詳しくは話してくれなくて…あっ、Drなら詳しいですよ? 唯一のお友達だと思いますから!!」

 

なんで、皆こう…Drをディスる時が有るんだろう? いや、何となくダメな感じの人なのは雰囲気で分かるけど

 

「そ、そうなんだ。」

 

「はい。良い人ですよ!!」

 

ソレは、Drと友人だからなのかと聞きたくなったが辞めた。

 

「会ってみたかったなぁ。」

 

「偶に来ますから、その内会えるかもしれないですね。え~と、次は…」

 

マシュにカルデアを案内されながら、取りとめの無い事を話す。驚く事にマシュはこのカルデアから出た事が無いらしく、器港さんが偶に来た時に色々な国の話をしてくれるらしい。昔はDrと良く旅行に行っていたらしいが、ソレはマシュと出会う前の話で、その時の話は中々してくれないらしい。何が在ったのだろうか?

 

二日目は案内が終わった後、魔術に着いての講習を受けた。

三日目には神秘や英霊の講習を受ける。英霊…過去の英雄の事。座と呼ばれる場所に登録された人類の抑止。天・地・人に属性が分かれ、英霊、反英霊の弐種に分類される神秘の塊。もっと細かく分けるとメガテンのアライメントみたいのも追加されるらしい。ソレを従える適正を持つモノがマスターに成れるらしい。

日本の冬木と言う場所で10年くらい前に聖杯戦争と言う魔術師の戦争が在ったらしい、そして、その勝者が器港雷堂さんらしい。

レフ教授曰く、鬼才との事。裏社会の二大勢力のどちらにも顔が聞く調停者との事だ。

僕には良く分からないが、魔術師として位も高位の人らしい。この日はレフ教授の補佐として、先輩であるマスターの一人が着いて来ていた。僕が頭を捻っていると、一度咳払いし、補足してくれた。

 

「君には分かりづらいだろうが、器港氏のお陰で幾つかの学科の研究が大幅に進んだ。コレは進歩であり、魔術の回帰と言っても良い。現代では閉ざされてしまった『異界』の発見と門の開閉の仕方構築、交流が廃れて久しかったアトラス院とのパイプの構築、繋がりが薄くなり、独自の思想で動こうとしていた下部組織の粛清と正常化に…こう言っては何だが外道狩りが主な功績だ。」

 

異界となんだろうか?

 

「そうだな、例えばだがアーサー王の伝説にある『妖精郷』も『異界』の一つだ。簡単に言えば伝承に有る今は無い現実に有る神秘の世界だ。」

 

へぇーとしか言えない自分が恥ずかしく成るが、補佐役の先輩も、レフ教授も、学べばドレだけ凄い事かが分かるよと教えてくれた。何だか、より一層ゲームの世界の話し見たいだ。

 

なので、思い切って『異界』に行けばレベルアップしそうですねと笑いながら言ったら真剣に注意された。

何でも、紀元前の神秘そのままの場所に行ったら普通に死ぬとの事だ。恐ろしい…アレ? 何で器港さん生きてるの?

その疑問には器港の秘義だろうと、予測を立てているとの事だ。会った事は無いけど、とんでもない人なんだなと思った。

 

4日目からはシュミレーターを使用しての戦闘訓練の講義だった。1日かけて行われた講義で、僕はやっとの事で指示を出しながら礼装を使用出来るように成った。

 

そして、本日。先輩方がファーストミッションを行う為の最終ミーティング中にシュミレーターを使用していた所、僕は気を失ったらしい。

マシュに起こされ、近くの空き部屋で休憩しようとふらつく頭で考えマシュに支えられながら、ドアを開けると

 

「ヴぁ~~…もう疲れた。もう無理ぃ…あ~」

 

とだらしない恰好でベットに凭れかかる様にして座り込んでるDrが居た。

 

「Dr? 何してるんですか?」

 

「えっ? アレ、マシュに立香君。あーそうか、時間が繰り上がったから立香君はお留守番だったね。どうしたんだい? マシュもそろそろ作戦開始の時間じゃ無かったかな?」

 

「え?あ、本当だ。先輩すみません。私そろそろ」

 

「うん。ごめん、マシュ。どうやらまだ、脳が慣れて無かったみたいだよ。昨日説明されたのに…。今日はもう、大人しくしておくよ」

 

「はい。それじゃあ、行ってきます。Dr,先輩。」

 

そう言って駆けて行くマシュを送り、椅子に座る。

 

「少しは慣れたかい?」

 

「本当に少しだけですけどね」

 

「ははは、ソレは結構な事だ。正直に言って、才能が在っても全くの素人である君の事は心配だったんだ。序にコレから来る子も君と同じ境遇の子だよ? しかも、女の子!! マシュとも上手くやってるみたいだし、両手に花が出来るかもよ?」

 

笑ってそう言うDr。確かに僕は男子高校出だから、年の近い女の子が増えるのは大歓迎なのだけど。ちょっと自分の態度が心配に成って来た。

 

「僕ってそんなにがっついて見えます?」

 

「まさか。君が誠実な人間なのはマシュとの会話を見てれば分かるよ。伊達にあの子の事を診て来た訳じゃないんだからっと、通信だ。」

 

Drはそう言って、口元に指を当てた。

 

(あ~…サボりがバレるからかぁ)

 

コレはディスられる要因の一つだね。うん、ちょっと評価が下がる。

 

電話越しに聞こえるレフ教授の声には少しの呆れが混じっていた。Drのサボりは日常的なのだろう。

 

「はぁ~、面倒臭いなぁ」

 

「いやいや、Drも直ぐに行かないと。五分じゃ着かないですよ今からじゃ」

 

「ははは、だからどうどうと遅れていくのさ!! ソレに、僕の出番はまだ先なんだよね。それに…」

 

不意に、Drは立ち上がった。

 

「待ち人が来たようだ。ギリギリ間に合ったかな? はぁ、よし。立香君、丁度良いから僕等の最高戦力を迎えに行こうか」

 

「え? 最高戦力ってなんです」

 

か…と言おうとした頃で、爆発音が響いた。非常事態を知らせるアナウンスが響く。

 

僕は自分で考える間もなく駆けだしていた。

 

「ちょっ、立香君?! あーーーもーーー!! 間に合わなかったみたいだよライドウ!!」

 

 




マーリンはこなかったよ。チキショウ
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