インフィニット・ストラトス~シロイキセキ~   作:樹影

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※作者注※

 今回、ある種のアンチ要素ともとれる描写があります。
 作品タグには反映させていませんが、ご了承ください。


特別編
2017年クリスマス特別短編:それは極めて近く、そして限りなく遠い世界


 

 

 ―――それは極めて近く、そして限りなく遠い世界との……

 

 

 

***

 

 

 【絶対天敵(イマージュ・オリジス)】。

 大気圏外から飛来したその災厄を、人々はそう名付けた。

 昆虫、植物、恐竜、巨人、あるいはそれらとも違うまったくの異形。

 様々な形態・大きさを持つそれらは、未知の技術によって作り出された無機物疑似生命体であった。

 それらが纏う【虚空結界(タイム・ゼロエンド)】は通常兵器の悉くを無効化した。

 ただ一つ……奇しくもすべての兵器を置き去りにしたISのみを例外として。

 これにより各国はそれぞれの思惑を秘めつつも人類共通の敵に対して協力し合うことに合意、各国に配備されたISを中心に絶対天敵への抵抗を開始した。

 

 そんな中、国家や組織の柵にとらわれない、独立機動部隊が結成された。

 その名は【白刃隊(チーム・ホワイトブレイド)】。

 隊長は世界でただ一人の男性IS操縦者―――【織斑 一夏】。

 

 

 

***

 

 

 

「―――ブレイドトップより各機、報告を」

 

 刀型の近接ブレードを地面に突き立て、青年……一夏は通信をつなげる。

 彼が纏っているのは大きな翼を生やした白い装甲だ。

 腰から長く延びるリアスカートは二股に分かれ、さらに左腕にはやや細長い五角形の盾のようなものが装着されている。

 そんな彼の周囲には甲虫のようなものの残骸が山を作っていた。

 全て、彼が切り捨てた絶対天敵の亡骸だ。

 

 一拍の沈黙を置いて、部下からの報告が入ってくる。

 

『こちらライトブレイド。 小型機の掃討、完了しました。

 残敵の索敵と追討を開始します』

「了解、索敵は密にしろ。 三機一組(スリーマンセル)は崩すなよ」

『レフトブレイド、現在戦闘中!! 助っ人の嬢ちゃんのおかげで楽させてもらってますぜ!!』

「了解、変な色気は出すなよ? 援護に徹しろ」

『こちらガード。 砲撃支援継続中。 現在、中型機を三機撃破』

「了解。 そのまま戦況を把握しつつ支援を維持。

 ―――異変が起き次第、報告しろ」

 

 一通りの確認と指示を終え、一夏は軽く息を吐く。

 

「主力が何人か抜けているから幾分不安だったが……これなら何とかなるか」

 

 と、その時、突き立てた刃の柄頭ごしに鋼の手指に鈍い振動が伝わる。

 それに対し、一夏はすっと目を細めつつ再度通信を開く。

 

「ブレイドトップより各機へ」

 

 伝わる振動はどんどん強くなっていき、ついには地を揺らし始める。

 積み上げられた甲虫の残骸が、崩れて散らばっていく。

 それをよそに、一夏は薄い笑みを浮かべる。

 

 

「―――獲物を見つけた。 これより戦闘に入る」

 

 

 言うなり、刃を手にその場から飛び立つ。

 その直後、地中から土砂を巻き上げながら巨大な人型が屹立した。

 絶対天敵の、巨人型大型機だ。

 その威容をはるか上から見下ろしながら、一夏は悠然と刃を構え、豪、と吶喊していく。

 

「――――!!」

 

 巨人がそれに気づいてその大きすぎる拳を振るい、彼を潰さんと迫る。

 

「フッ!」

 

 しかし一夏は、呼気一つ漏らしてその巨拳を回避し、さらに伸ばされた腕の表面をバレルロールの如く巻きつくような軌道で伝っていく。

 そうして巨人の顔面にまで肉薄するまでは刹那と掛からない。

 

「――――!?」

 

 巨人はその無機質な眼で、それをごく至近から眺める羽目となる。

 歯を向いた笑みで己へと刃を振り下ろす、白い剣士の姿を―――。

 

 

 

***

 

 

 

 ―――戦闘終了後、『白刃隊』専用全翼機【月牙】。

 

『『『かんぱーい』』』

 

 いくつもの野太い声と、金属製のカップが打ち鳴らされる音が同時に機内に響く。

 そこから少し離れた席には、一夏が同じようにカップを掲げながら苦笑を浮かべている。

 そうして揃ってコーヒーを煽るのは、六人の筋肉質な男たちと一人の見目麗しい女性だ。

 

「いやー、他の姐さん方がいないときだから焦りましたけど、何とかなってよかったですね」

「まったくだよ。 しかも隊長もこれ幸いと真っ先に突っ込んでいくし」

「いや、戦力が少ないんだからまず一番機動力がある俺が先陣を切ってだな……」

 

 なにやら言い訳を始める一夏に、一人だけいた女性が半目を向ける。

 

「とか言って、それって無茶する理由にはなりませんからね。 まったくもう」

「……あー、わかった。 悪かった、蘭」

 

 その言葉に、女性……【五反田 蘭】は「よろしい」と笑ってみせる。

 先ほどまで修羅のごとく暴れまわっていた隊長が尻に敷かれている姿に、他の隊員たちがおかし気に笑い声をあげる。

 

「けど、それで大活躍するんだからやっぱり隊長ってスゲーっスよ」

「憧れんのはいいが、真似すんなよ?」

「いや、できねーっスって」

 

 じゃれあう部下にして仲間たちの姿に、一夏は思わず目を細める。

 と、先輩隊員にヘッドロックを掛けられていた男が、気づいたように問うてきた。

 

「と、ところで、姐さん方はもう少しかかるんで?」

「ん? ああ、とはいえ次の作戦の時には戻ってこれるはずだ」

「でも、一夏さんはよかったんですか? 白式に付き合わなくて?」

「さすがに俺までここを空けるのはな。

 それに他の連中は武装やら装備やらの追加もあったが、白式はあくまでもオーバーホールだけだからな。

 最終調整は手元に戻ってからでも十分だ」

 

 蘭の疑問に答えつつ、一夏は「それに」と左の袖を軽く捲りつつ、手首を掲げる。

 そこには、真っ白で飾り気の少ない腕輪が嵌められていた。

 

「こいつのテストも頼まれたからな。 ―――結構いい感じだな、これは」

 

 そんなことを言って掲げた腕輪を見つめる一夏。

 と、その時だった。

 

 

『緊急事態です、隊長!!』

 

 

 突如、そんな通信がつながった。

 その瞬間、笑っていた皆の表情が引き締まり、戦士の顔になる。

 

「どうした?」

 

 あえて落ち着いた声音で訊き返す一夏。

 通信の発信源は操縦席からだ。

 なにがしかの反応でも感知したのか、そう思った直後に機体に大きな振動が走る。

 地震もかくやという揺れに、全員がバランスを崩してよろけ、倒れてしまう。

 ただ事ではないことを示すかのように、赤い非常灯が機内を照らした。

 自身も壁にやや強く身を打ち付け、呻き声を漏らしながらも神経は通信のほうへと集中する。

 そこから帰ってきたのは、外れてほしい予想通りの言葉だった。

 

『現在、本機は多数の絶対天敵に取りつかれています……迎撃を、早く!!』

 

 

 

●●●

 

 

 

 昼休みのIS学園、その屋上で一人の少年を中心に何人もの少女たちが集まっていた。

 どうやら弁当を持ち寄っての昼食のようだ。

 

「しっかし、賑やかになったよな……」

 

 白い制服に身を包んだ一夏は、周りにいる少女たちを眺めながらぽつりとつぶやく。

 彼の目の前にいるのは、十五人ほどの少女たちだ。

 その誰もが、専用機持ちの国家代表候補生だ。

 元から居た箒やセシリアたち。

 そこからさらにやってきたヴィシュヌや乱音といった他国からの転入生。

 さらには知己であった本音さえも、専用機を纏うに至った。

 

 個性的な顔ぶれが一気に増えたのは、偏に突如として現れた絶対天敵に対抗してのことだ。

 ISのみが有効なかの存在は、それを知ってか知らずかISに惹かれるようにそれらが配備されている場所を重点的に狙ってくる習性を持っていた。

 これを利用して、世界でもっともISが配備されているIS学園へと専用機持ちを招集したのだ。

 

(……正直、酷い目にも合ったけどな)

 

 新たな仲間たちとの出会いの場面を思い出し、思わず苦い顔になる。

 と、そんな彼を見上げる視線が合った。

 新しく増えた顔の一人、台湾の代表候補生である【凰 乱音】だ。

 名から察する通り、鈴音とは血縁があり、従姉妹にあたる。

 

「なに変な顔してるのよ、一夏」

「お兄ちゃん、おなか痛いの?」

「だ、だいじょうぶ?」

 

 乱音に続いて見上げてくるのはカナダの【オニール・コメット】とロシアの【クーリェ・ルククシェフカ】の二人だ。

 どちらも幼さの残る体躯で見上げてくる表情は、心配げに歪んでいる。

 そんな二人に、一夏はなんでもないと笑いかける。

 

「あぁ、いや。 単にみんなと出会った時のこと思い出してさ」

 

 言うなり、顔を赤くして身を引いたのはタイの代表候補生である【ヴィシュヌ・イサ・ギャラクシー】で、彼女は豊満な胸を隠すように己の身をかき抱いている。

 その反応に、一夏は慌てて弁明する。

 

「い、いや! そういう意味じゃなくてな!?」

 

 しかしすでに一部の面々の視線が冷たいものに変わり始めていた。

 世知辛さと肩身の狭さに思わず肩を落とす一夏。

 と、その時だ。

 全員の待機状態のISからアラートが響く。

 弾かれたように通信をつなげれば、ウィンドウに映し出されるのは真耶の顔だ。

 

「山田先生、どうしたんですか!?」

『皆さん、大変です!! 学園の上空に妙な反応が……』

 

 その言葉も言い切らぬうちに、さらなる異変が彼らの頭上で発生した。

 至近で大型の旅客機が通過したような、空気の撹拌される反響するような音が響いたかと思えば、まるでブラックホールのような黒い渦が現れたのだ。

 不可思議な現象を目の当たりにして、皆が一様に驚愕に目を見開く。

 

「なん、だ……あれ?」

 

 と、その黒い渦から何かが出現しようとしていた。

 紫電を纏いながら渦の中から飛び出してきたのは、巨大なブーメランのような白い全翼機だ。

 全翼機は傷だらけで、ところどころから煙を吹いている。

 そしてその傷を付けたと思しき小さい影も機体の表面に纏わりついていた。

 

「―――絶対天敵!!」

 

 蜘蛛や蜂のような形の小型機をいくつも張り付けたまま、全翼機は学園のグラウンドへと落ちていき、不時着を果たした。

 グラウンドのほうに生徒たちがいなかったのは不幸中の幸いというべきだろう。

 ただ、不自然な点を挙げるならば学園のグラウンドが広いとはいえ、航空機が不時着するには少しばかり狭いはずなのだが。

 しかし、今はそんなことを気にする場合ではなかった。

 一夏は皆のほうへ振り向いて力強く声を発する。

 

「みんな、行くぞ!!」

 

 力強い頷きが、返事として同時に返される。

 そうして改めて全翼機と絶対天敵を睨みつけると、勢いよく駆け出した。

 

「―――白式!」

 

 愛機を纏い、空へと飛び上がりながら一夏は思う。

 

(まったく……のんびり飯くらい食わせてほしいぜ)

 

 

 

***

 

 

 

「づっ……みんな、無事か?」

「……うぃーっス」

「ひ、酷い目にあいましたがなんとか」

 

 【月牙】の傾いた機内で、帰ってきた言葉に一夏は安堵を抱く。

 そして改めて腕の中の蘭へと視線を移す。

 

「蘭も、痛いところはないか?」

「ひゃ、ひゃい!! 大丈夫れす!!!」

 

 真っ赤な顔で呂律の回っていない蘭に、着陸の衝撃が強すぎたかと心配になる一夏だが、彼女にとって強すぎた衝撃は別のものであるのは言うまでもない。

 とりあえず、一夏は再び操縦席へと通信を繋げる。

 

「聞こえるか? どうやらなんとか不時着はできたようだが、どの辺りに落ちた?」

 

 問えば、わずかなノイズを挟んで応答が来る。

 

『そ、それが……IS学園です』

「なに!?」

 

 帰ってきた答えに、一夏のみならずその場にいた全員が驚きを禁じ得ない。

 なぜならば、

 

「IS学園って……地球の裏側じゃないですか!? どうして……」

『し、しかし間違いなくIS学園です。

 ただ、なんでか現在サテライトリンクとの接続ができない状態ですが……』

 

 パイロットも困惑しているのだろう、動揺を隠しきれない様子だ。

 一夏は自身も困惑を得つつ、確認のために行動を開始する。

 

「外の様子をモニターに出せるか?」

『は、はい! すぐに!!』

 

 そうして備え付けられた大型モニターに光が灯ったのは直後のことだ。

 不時着の影響か若干の乱れを生みつつも映し出された外の光景に目を細める。

 

「確かに、IS学園だな」

「あれ? でもなんで明るいんですか? 時間を考えたら日本は夜のはずなのに……」

「そういえば……」

 

 疑問に疑問が重なっていくが、それら全てが吹き飛ぶような光景が映し出された。

 それは、小型の絶対天敵に斬りかかる白いISを纏った少年で、彼らからすれば絶対にいないはずの存在だからだ。

 半ば呆然としながら、一夏は誰ともなしに問いかけた。

 

「―――お前ら、あれが誰に見える?」

 

 その答えを、同じように呆然としている腕の中の蘭が答える。

 

「………一夏さん?」

 

 

 

***

 

 

 

「くそ、いきなり何なんだよ!?」

 

 一夏は蜘蛛のような小型機を斬り捨てながら、やけくそのように叫ぶ。

 あの後、全翼機に取り付いていた分の敵はすぐに倒せたのだが、そこから更に増援のように敵が飛来してきたのだ。

 しかも小型機ばかりでなく、巨人のような大型機もだ。

 

「文句を言っている暇はない、今は迎撃が最優先」

 

 言いながらミサイルをばらまくのはギリシャの代表候補生、【ベルベット・ヘル】だ。

 この修羅場においても、その氷のように怜悧な表情は崩れない。

 

「わかってますよ、っと!!」

 

 言いながら、一夏は雪片弐型を振るい、蜘蛛のような異形を両断していく。

 そうしながら考えるのは、背後に守る所属不明のの全翼機の存在だ。

 

(この飛行機、どこのなんだ? エンブレムらしきものは付いてるけど、国旗とかは見当たらないし……)

 

 横目で見るエンブレムは、剣を象ったと思わしきもので、さらにはイニシャルらしきアルファベットが二文字ほど刻まれている。

 

(【W・B】……何の略だ?)

「おりむー、危ない!!」

 

 本音の警告に顔を挙げれば、小型機の後方に陣取っている大型機が尾の先端をこちらに向けていた。

 そこにあるのは、巨大な砲口だ。

 

「くっ!?」

 

 慌ててその場から飛び退いた次の瞬間、さっきまで彼がいた場所を弾丸の雨が通り過ぎる。

 思わず冷や汗をかきつつ安堵の息を吐く一夏だったが、その一瞬の油断が祟る。

 彼が来るのを待っていたかのように、三機の蜂型小型機が躍りかかってきたのだ。

 

「っ!? しまっ―――!!」

 

 慌てて身構えようとするが、間に合わない。

 小型機はその針で彼を貫かんと一直線に向かってきている。

 

「一夏!!」

「一夏ぁっ!!」

 

 少女たちが叫ぶが、その悲痛さも空しく一夏の体が貫かれんとしたその時、

 

 

 

「―――おい、あまり無様を見せつけるな」

 

 

 

 背後から放たれた三つの白い光条が、三機の蜂を悉く貫いた。

 爆散する小型機に、安堵よりも困惑を強く抱く一夏。

 思わず振り向いて、そこにいた人物に大きく目を剥く。

 なぜなら、その人物は。

 彼は。

 

「………俺?」

 

 やや大人びて、己の知らないISを纏ってはいるものの、それはまぎれもなく自分自身だったからだ。

 

 

 

***

 

 

 

「まったく、同じ顔で情けない。 ……ドッペルゲンガーの気持ちなど理解したくもないんだがな」

 

 溜息交じりに、一夏は驚愕をこちらに向ける【織斑 一夏】を睨みつける。

 ふと周りを見れば、そこには本来ここにはいないだろう面々が雁首揃えてこちらに顔を向けていた。

 誰も彼も、全員同じように驚きと困惑を抑えられないでいる。

 その気持ちはよく解かるが、一夏は敢えて彼女たちに怒鳴りつける。

 

「何をやってる!! 今は戦闘中だ!!」

 

 と、さすがは代表候補生というべきか。

 すぐさま迫った敵への対処を開始する。

 しかし、傍らにいるもう一人の自分はこちらを見たままだ。

 その間抜けさに、思わず舌打ちを漏らしそうになる。

 

「な、なあ、あんたは一体……」

「後にしろと言っている。 ……蘭!」

『了解』

 

 通信が帰ってくると同時に、開かれている全翼機の後部カーゴハッチから新たな機影が飛び出し、上空で静止した。

 自身の専用機である【夜叉蜘蛛】を纏った蘭だ。

 

「って、まさか蘭かアレ!?」

「嘘、ホントに蘭!?」

「え? 呼んだ?」

 

 思わず叫ぶもう一人の自分に、鈴音まで反応する。

 また、普段『乱』と呼ばれている乱音も振り向くが、当の本人はそれら全てを無視して武装を展開する。

 拡張領域から取り出されたのは、小型のバズーカが六基だ。

 蘭はそれを左右の腕と、背から延びる二対のサブアームでそれぞれ保持し、構える。

 同時に、照準補正のゴーグル型仮想ウインドウが眼前に展開される。

 

「ターゲットロック……フルファイア!!」

 

 そうして六つの砲が一斉に火を吹いた。

 放たれた砲弾は着弾と同時に爆発を生み、小型機を複数まとめて破砕していく。

 その爆発は前方放射状に展開され、前線が引き上げられる形になる。

 その隙に、一夏はさらに指示を出す。

 

「【R:EOS(レオス)】、全機展開」

『『『『『『了解!!』』』』』』

 

 直後に出てきたのは、ISと比べれば重厚なシルエットを持つ六機のパワードスーツだ。

 それらはそれぞれ三機ずつに分かれると、ローラーダッシュで疾走しつつ手にしたガトリング砲で小型機に攻撃を仕掛ける。

 通常兵器を受け付けない絶対天敵は、しかしその弾雨に怯み、動きを鈍らせる。

 

「あれは、EOSか?」

「でも、攻撃が効いてる……なんで?」

 

 所々から上がる疑問の声も完全に無視して、一夏は指示を続ける。

 

「ライト、レフトはそのまま牽制を続けろ。 戦力だけは充実している、トドメは押し付けておけ。

 ガードはそのまま支援砲撃を継続。 そちらは遠慮するな、喰えるのはどんどん喰え。

 そして俺はいつも通り―――」

 

 そこで言葉を区切り、一夏は【一夏】を一瞥して、

 

「―――大将首(ジャイアント・キリング)、だ」

 

 直後に飛び立った。

 

 己に迫る脅威に、大型機が両の拳を文字通り発射する。

 しかし、隕石じみた大質量の攻撃を一夏はなんなく避けて見せる。

 そうして巨人に肉薄すると、下からすくい上げるような軌道でその顔面の右側を近接ブレードで切り上げる。

 さらにダメ押しとばかりに左腕の盾から白い光弾を連射し、右の損傷を大きく広げていく。

 まるで痛みに狂ったかのように首を左右に振る巨人。

 その姿を一夏は頭上から睥睨する。

 

「悪いが、とっとと決めさせてもらうぞ。 ―――コード【白刃の矢(しらはのや)】、展開」

 

 言うなり、前に突き出した左腕の細長い五角形の盾が変形していく。

 数秒とかからず完成したのは、長大な鋼の白い弓だ。

 同時に、左下腕の内側に二又の突起のようなものがせり出す。

 一夏は右に持った近接ブレードを、その二又の間にセット。

 峰の部分が腕に沿い、切っ先が前方に突き出す形で、鍔元が二又と合致するように装着する。

 見ようによっては、矢を番えたようにも見える。

 あるいはそのものだったのか、一夏は柄頭を摘まむとそのまま引き絞っていく。

 すると、弓の上下の先端……末筈と本筈から白い光が弦のように伸び、柄頭に到達する。

 引き絞れば、その動きに合わせて刀身が白い輝きを得ていく。

 そうして限界まで引いたそれを、

 

「―――貫け!!」

 

 放せば、ブレードは二又をレールに滑走し、鍔元に衝突して甲高い金属音を奏でる。

 纏っていた光のほうは、滑走の勢いそのまま……否、あるいはそれ以上の速度で文字通り矢となって撃ちだされた。

 

 放たれた白い矢は、巨人の胸の中心を貫き、その大きさ以上の大穴を穿った。

 

 中枢を破壊され、倒れ伏す巨人。

 それを感慨なく見届けると、一夏は通信で部下たちに呼びかける。

 

「大型機、沈黙確認。 さあ、あとはごみ掃除だ」

 

 そうして一息、間を置いてから、彼にとっては珍しく戦闘中にぼやく。

 

「……そのあとは、面倒ごとが待ってるがな」

 

 

 

***

 

 

 

 無数にいた絶対天敵は殲滅され、戦闘は終わった。

 しかし、その場の緊張感は解かれていない。

 

 後ろに互いの仲間を従わせ、二人の一夏が対峙する。

 

「………」

「………」

 

 しばし見つめあう両者、口火を切ったのは白式を纏ったほうだ。

 

「なあ、お前は一体―――っ!?」

 

 しかしその言葉を、もう一人の一夏は手にした刃を突きつけて中断させる。

 途端に、背後の少女たちがざわめくが、年嵩のほうの一夏は気にした様子もない。

 

「おい、間抜け面。 質問に答えろ」

「な、誰が……」

「間抜け面が嫌なら腑抜け面だ。 ……いいか、単刀直入に訊く」

 

 そこで一息、間を置く。

 そして一夏は【一夏】をまっすぐ見据えてこう問うた。

 

 

 

「―――今は西暦何年だ?」

 

 

 

***

 

 

 

 それは、あり得ない邂逅。

 決して重なることのない、二つの可能性の迎合。

 その物語の名は。

 

 

 

 

 

【インフィニット・ストラトス アーキタイプブレイカー ~コウサスルキセキ~】

 

 

 

 

 

「―――立てよ、腑抜け面。 俺ができてお前ができない道理はどこにもないぞ?」

「ハッ! ヌかせよ、オッサン!!」

 

 

 

 ―――連載予定、全くなし。





 というわけで、クリスマスということで昨日今日で吶喊で作りました。
 ……多分、アラ目立ちまくりだと思いますがご容赦ください(汗
 ちなみにタイトルはスパロボのBGMからとりました。
 これのボーカルバージョンがすごい好きです。

 これ、ある意味でアンチに相当するのかなと思いつつも、たぶんこのダブル一夏は絶対折り合い悪いと思って書きました。

 ちなみに、アーキタイプブレイカー……自分は本格稼働後、一回だけやって今は手付かずだったりします。
 ……いや、前も書いたけど普段chrome使わないし、PC低スぺだから落ちまくる上に動きカクカクだし……
 あと、ストーリーパートで中途半端に声入ってるのが妙に引っかかるのは自分だけ?

 なのでYouTubeのプレイ動画で、キャラとか確認しながら書いたので、微妙に把握しきれてない可能性が高いです。
 ……その辺りも低クオリティですいません。

 とりあえず、すごく疲れたので多分正月特別編とかはやらないと思います。
 多分。

 それでは、今回はこの辺で。
 可能ならもう一回更新したいと思いますが、できなかったらご容赦を。
 それでは皆様、メリークリスマス&よいお年を!!
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