今回、幕間と同じくらいの独自解釈と設定捏造を行っています。
ご了承ください。
花の女子高生が集団で『鳩が豆鉄砲を食らったような顔』を浮かべるという、非常に稀有な光景を目の当たりにした一夏。
なぜかそれに妙な感動を覚えていると、再起動を果たした生徒たちが慌てた声を上げる。
「ちょ、ちょちょちょぉっと待とうか織斑くん。
………なんでISが男所帯?」
「そ、そうだよ! だってISって」
「女じゃないと動かない、か?」
一夏が継いだ言葉に、少女たちはそろってうんうんと首を縦に振る。
彼女たちが言っていることは正しい。
目の前にいるたった一つの例外を除けばISは女性だけが動かせるものだ。
故に、一夏もそれには頷く。
「ああ、その通りだ。
現状、俺以外にISを動かせるのは女だけだ。
―――いや、正確にはISのコアを、だな」
妙な言いなおしに、怪訝な顔つきになる少女たち。
そんな彼女たちに、一夏はある例え話をする。
「ここにISのコアを動力源とした戦車があるとする。
動力源以外は普通の戦車で、必要な人員の構成と数もそれに準拠したものとする。
さあ、この戦車には何人の女性がどの位置に居ればいい?」
突然の問いに、即答できるものはいない。
情報が少ないのもあるが、どういう意図なのかが見えないからだ。
目的は問答ではないので、一夏はサクサク話を進めることにした。
「正解は、『一人でいいし、なにをやってもいいし、やらなくもいい』、だ。
ISのコアさえ起動できれば他は全員ムキムキのマッチョマンで固めても問題ない。
同じ理由で、コアが動き続けるなら操縦士だろうが砲手だろうが好きにやればいい。
いっそ他は全て脳みそ筋肉な野郎に任せて寝てたりお茶飲んだりスマホいじったり好きなことしてても構わないってことだ」
それは現実でも同じだと、一夏は告げる。
「正味な話、現場だとISのパイロット以外は全員男って場合も少なくない。
実際、軍で国家代表が古参の整備兵の爺さんに怒鳴られて頭が上がらないって場面も見たことあるしな」
言いながら、一夏の脳裏に偏屈な老整備士の前で縮こまっているアメリカの国家代表の姿を思い出す。
彼女とその親友にはアメリカでとても世話になっただけに、ふと元気にしているだろうかと感慨にふけってしまう。
一方で、一夏の経験からくる意外な現実に、目の前の級友たちは静かに驚いていた。
そこで彼は意識を彼女たちに戻す。
「そもそもの話、ISを構成するのはブラックボックス塗れのコアを除けば本体に兵装、換装装備(パッケージ)にISスーツ……スーツを除けば産業としての種類は軍需や重工業だ。
女性の技術者がいないってわけじゃあないが、かといって女だらけの華やかな職場のイメージがあるかっていえばそんなことはないだろ?」
昨今の風潮で女性の比率は多少上がっているようではあるが、それでも極少数派で片づけられてしまう程度である。
スーツに関しては例外と言えるかもしれないが、こちらも女性向けファッションデザイナーをやっている男性というのもさして珍しくはない。
事実、一夏が使っているISスーツを特別にデザインしてくれたのも、その筋で有名な男性のデザイナーだ。
「本当に一から十まで女性にしか扱えない、なにからなにまで新しい技術で構成されている……なんて代物だったら、普及するまでにもっと長い時間がかかってたろうし、それ以前に廃れてた可能性もかなり高い」
もしISが本当の意味で女性にしか扱えない……使用はもちろん、整備や製造まで含めてその全てが男性には触れられないなんて代物であったのならば。
断言しよう、ごく初期の時点で廃れて歴史の陰に隠れて消えている。
これは男が何かしたとかそういう話ではなく、単純に普及するまで支えるための人員が確保できないのだ。
恐らく十機程度を運用するための専門の人員の育成だけでも、途方もない時間が掛かってしまうだろう。
今と同じくらいまで普及するまでなら、下手をすれば一夏の子の代でも難しいかもしれない。
そんな代物に、国や企業がどれほど飛びついてくれるだろうか。
「これは私見だがな。
目立つところで女尊男卑を謳っている人間に限ってISそのものとは遠いところにいるものだよ」
実態を実感していないから、目につくところだけを見て判断するというのはよくあることだ。
そしてその尻馬に乗って都合よく歪んだ解釈を広めるというのも。
もっとも、厄介なことにこれの場合はどうにも広く長く浸透しているような気もするが。
同時に、これで迷惑を被っているのはまともな男性だけではないことも思い出してしまった。
「………余談なんだがな。
世の中の女尊男卑思想の流行で一番割食ってるらしいのがIS関連で飯食ってるようなまともな女性でね。
ただでさえ高給取りが多くてしり込みされやすい上に、一般男性からはイメージ的に女尊男卑の最先鋭みたいに思われてるから敬遠されるらしい。
かといって、そういう人たちは女尊男卑に迎合したような男はそりが合わないし、割と本気で出会いがなくって悩んでる人が少なくないらしいぞ」
『『『知りとうなかったそんな現実!!!?』』』
先ほどとはまた違った意味で実感の滲み出た一夏の言葉に、少女たちがそろって頭を抱えて絶望に悲鳴を上げる。
ちなみに、一夏が何故そんなことを知っているのかというと、以前その辺りで思いっきり管を巻かれたことがあるからだ。
IS関連の企業と軍が共同で主催したパーティーに出席したとき、出来上がっていた数人の女性のテーブルに漂っていた瘴気は、スーツをびしっと決めたロマンスグレーやいくつもの勲章を着けた威厳溢れた将官、顔に大きな傷を刻みつけた歴戦の勇士が揃って冷や汗を流しながら全力で目を逸らすほどの代物であった。
そんな場所に船を沈める怪異に絡め取られたかのごとく引きずり込まれていく自分に、彼らが無言で送った敬礼と眼差しは恐らく死地へ向かう若者に向ける者と同質だったのだろうなと一夏は今になって遠い目で考える。
と、そんな彼に聞き覚えのある声が向けられた。
「お、おりむー!! そろそろ行かないとだよ」
「む、そうだな」
「……って、あれ? 二人でどこ行くの?」
本音に指摘される形で、一夏は鞄を手に取り連れ立って教室を出ようとする。
と、そんな二人に再起動を果たしたクラスメイトが目ざとく呼び止める。
すると周りの者たちも何事かと意識を向けてくる。
或いは、色恋の類かと少女らしい琴線をかき鳴らされたか。
そんな彼女たちに、一夏は一言だけ告げてその場を後にする。
「生徒会室」
………そんな二人の姿を、一人の少女が力なく見送っていた。
「………結局、話しかけることができなかった……一夏………」
***
しばらくして、二人の姿はIS学園の生徒会室前にあった。
両開きの重厚な扉を二人してまじまじと眺めている。
「随分と雰囲気があるな……中学のなんて普通の部屋だったぞ」
「わたしのところもそうだったな~」
そんなことを言い合いながら、一夏は拳の裏でコンコンとノックする。
質感の良い高級木材が奏でる音に、扉の向こうから「どうぞ」という返事がくぐもって聞こえる。
「―――失礼します」
「しま~す」
扉を開いて入れば、真正面に大きな執務机を挟んでこちらに背を向けて座っている誰かの姿が目に入った。
その脇には、眼鏡をかけた上級生らしき少女の姿がある。
「よく来たわね」
目の前の人物が背を向けたままそう言うと、彼女はくるりと椅子を回してこちらへ向き直る。
その人物こそ、現在の部屋の主であり、学園の頂点に立つ人物。
つまり。
「IS学園生徒会執行部へようこそ、二人とも。
生徒会長である更識 楯無は貴方たちの参入を心から歓迎します」
言って、楯無は自信に溢れた眼差しを放つ。
それを向けられた二人はというと、
「おりむー、こっちが私のお姉ちゃん~」
「三年で会計の【布仏 虚】です。
よろしくお願いしますね。 名前で結構ですよ」
「織斑 一夏です。 こちらこそよろしくお願いします、虚先輩」
「って、完全にスルー!!?」
まったく見向きもせずに自己紹介をしあっていた。
思わず作り上げた雰囲気をかなぐり捨てて突っ込みを入れてしまうのもやむなしであった。
前々から考えていた部分だから割とスムーズだと言ったな。
あれは嘘だ。
……いえ、正確にはスムーズのようでどうにも纏まらなくて……
結局、一部を削ったりしたのですがどうにも纏まり切れてない気も……
それはさておき。
この作品ではIS運用の現場はこんな感じ。
実際、女性が完全上位とか女性主導とかだったらうまい具合に普及しないよねっていう。
ならなんでセシリアは原作とあんまり態度が変わらないのかっていうと、原作通りの事情もありますが、それとは別にその辺りの設定もありますので(というかこの話を書いてたら生えてきた)、彼女と戦うまでには作中に出てくると思います。
そして明らかになるIS業界の結婚事情。
とち狂った価値観で割食うのはまともな人っていう無常で非常な現実。
たぶん彼女たちは泣いていい。
次回は現在執筆中なので、もうちょっとお待ちください。
割食わされてた某ヒロインの出番も増えてきますので。(笑)
それでは、この辺で。
あと、なろうで連載しているオリジナルの方も更新しました。(ステマ並感)
と言ってもそれまでに出た人物や設定の解説ですが……
興味がありましたら是非、お読みくださると大変うれしいです。
……そして感想くださるとすごくうれしいです(切実)