・これは二話同時投稿の二つ目です。
・今回、オッサンしか出てきません。
・独自設定と独自解釈と原作キャラの設定捏造がございます。
・ぶっちゃけ地の文ばっかりで読むのめんどいと思います。
……以上のことをご了承の上でお読みください。
倉持技研の技術者、【城山 風玄(しろやま ふうげん)】……一夏からフーさんと呼ばれる男は上司への連絡を終えると、アリーナ内の生徒立ち入り禁止区域へと足を運んでいた。
と言っても、別段重要な機密を抱えた場所ではなく、不法侵入でもなければそもそも立ち入り禁止区域でもない。
にもかかわらず生徒の出入りを禁じているのは、単純に公序良俗に反するからだ。
即ち。
「………広くて豪華だねぇ、喫煙室まで」
つまりはそういうことだった。
生徒がいれば問答無用で反省文、場合によっては謹慎や停学、最悪は退学までありうる場所へ風玄は軽い足取りで踏み入る。
すぐ傍に数台ほど並んでいる自販機にはコンビニでも売っているような普通の銘柄から常用していればその数倍は金がかかるだろう高級品、果ては特注だろう葉巻を扱っているものまであった。
喫煙スペースの方も広く、すでに先客が数名いるというのに煙で視界が霞むどころか扉を開けても煙草臭さをそれほど感じない。
どれほど高価な排気システムを導入しているのか気になるところだ。
と、風玄が据わり心地の良い革張りの席に腰を下ろすと同時に近くに座っていた先客二人が立ち上がる。
「しっかし、この無駄に豪華な造り……これ全部税金なんだよな?」
「ああ、IS技術のためとはいえガキどもの学び舎にここまで金かけるとは……貧乏くじってのはヤになるね」
「まったくだ」
そんなことを言い合いつつ、その場を後にする二人を尻目に風玄は愛用のライターと煙草を一本取り出した。
「貧乏くじ、ね」
先程聞いた言葉を一人繰り返しながら、唇で挟んだ煙草に火を点ける。
貧乏くじ。
IS学園の設立は、一般にはそういうことだと認識されている。
正確には世界的混乱に対する謝罪と責任か。
ISを扱う者を育てる教育機関を作れ。
その過程で出るすべての情報を隠すことなく全世界に開示しろ。
土地と費用はそっちで全部負担しろ。
それが【白騎士事件】……たった二人の人間が大国の軍備を相手にあらゆる意味で翻弄してみせたその事件で、日本が負わされた賠償だ。
―――そう、“表向き”にはそういうことになっている。
「全く、よくいったものだ」
口から紫煙を燻らせながら、独り言つ。
そもそもの話。
責任を取ることが世界で唯一の教育機関をこの国に作るということへつながることが不自然なのだ。
寧ろIS関係の権利をすべてはく奪されていてもおかしくはなかったというのに。
だがもしIS学園が世界各国で作られていたなら恐らく今のように技術は開放的にならず、結果として姿の見えぬ最新鋭のISを警戒し合う冷戦状態が各国間で繰り広げられていたかもしれない。
しかしそうはならなかった。
IS学園が作られたのが日本だけで、その技術をすべて開示することが前提条件となったが故にアラスカ条約は無実化することなく機能している。
これだけなら日本に特に益はなく、金を出している分かえって損をしているように見えるかもしれない。
だがそうではない。
むしろ日本にこそ有益な要素が多いのだ。
まず一つに、技術。
ISを通して、ここにはあらゆる国の最新の技術が集まる。
当然のことながらそれらは隠匿することなどできず、開示しなければいけないのだがそのためには技術そのものを精査しなければいけない。
それには各国の技術者も立ち会うだろうが、IS学園が日本にある以上責任者として日本側の立場は必然強くなる。
つまり、日本は全世界へ発信されるIS関係の最新技術に真っ先に触れられるということだ。
もっとも、他国も知られたくない技術は自国内で極秘裏に研究するだろうが、それを差し引いても利は大きい。
次に、人材。
IS学園への入学の門は当然のごとく非常に狭い。
つまりここへ入学できる人間はそれだけ将来有望な人間だ。
そして生徒の割合は地元故か日本人の比率が大きいが、それでも入学生は世界中からやってくる。
つまり、世界中のエリート候補の少女がこの国にやってきているということだ。
また同時にISはコアの数が限られているため、実際にISの操縦者になれる人間はさらに少ない。
中には技術者関連を目指す者もいるだろうが、そうでもなく卒業する者もいるだろう。
つまり、世界中の将来有望な少女をスカウトすることができるということだ。
多くは国元へ帰ることを選ぶだろうが、それでも分母が大きければそれだけチャンスも多いといえる。
最後に、外交と経済。
IS学園の運営資金は基本的に日本が出している。
これに関しては一見すると日本には損しかないように見えるがその実、外交上の“伏せ札”として大きな意味を持つ。
極論で言ってしまえば、日本に対して経済的な不利益を被らせてしまうことがあればそれは間接的にIS学園への経済的攻撃だと認識されてしまいかねないのだ。
そうなればその国は他のIS関連の条約に加盟している国家からの批判を免れないだろう。
無論、そこまで飛躍することはまずないだろうし、ましてそれを直接的に交渉カードとして使おうとすればそれは逆効果になるだろう。
だが、だからこそ触れずに伏せ続けておくことに意味がある。
相手の無意識化に『そういった懸念が存在する』と刷り込ませておくだけで日本に対しての便宜を図らせやすくなるのだ。
同時に金銭面での他国からの提供を失くすことによって、学園の運営などへの干渉を抑制することにも成功している。
これら三つ。
積極的に行使できるような権利とは言い難いが、しかしこれらによって生まれよう利益は莫大なものになり得る。
それこそ、『学び舎としては破格なほど豪華な施設』程度に掛かる諸経費など安く感じられるほどに。
だがこうした背景を正しく理解している人間は国内外問わずそう多くはない。
(食えない話だよ、本当に)
この構図を作り上げた人間は、表に見えやすい部分を上手く操作してあたかも日本が責任という形で負債を背負い込んだように見せた。
無論、各国のTOPや要人は実際の部分に気付いているだろうが、一般的な認識としては日本はあくまでも損をしていると思われている。
これは絵図面を引いてそれを実現させた大臣が、交渉を終えた直後に“責任を取る形”で辞任したというのも大きい。
この責任というのはあくまでも白騎士事件に対するものであってIS学園設立に関しては関係ないモノなのだが、これも一般的には後者の件も含めてと思われている。
己の進退すら利用しつくしているのだから、ペテンも極まれば神算鬼謀の域にまで達するという隠れた良い例だろう。
「いやはや、恐ろしい話だ」
「おや、何がですか?」
「うぉっ!?」
思わず漏れ出た呟きへの応えに、風玄は思わず肩を震わせて口から煙草を落としそうになる。
見れば、掃除用具の籠を手にした男が喫煙室の入り口でこちらへニコニコと笑顔を向けていた。
壮年の風玄よりもさらに幾つか上で、初老に差し掛かって見える。
しかし背筋は伸びており、足腰も見るからにしっかりしていて矍鑠とした印象を受ける。
その見知った姿を見て、風玄は困ったように溜息を吐く。
「いえいえ、こちらの話ですよ。 先輩」
「そうですか……驚かせてしまって申し訳ありません」
「こちらこそ、お仕事ご苦労様です」
「はは、お互い様ですよ」
朗らかに笑いつつ、男性はテキパキと喫煙室の灰皿の掃除を始める。
ボックスを開け、吸殻を袋に放り込んでいく大学時代の先輩の背中を眺めながら、風玄は自分の咥えている煙草がフィルター近くまで短くなっていることに気付いた。
「これもいいですか?」
「はい、どうぞ」
風玄は男性に了解を得て火を消した吸殻を袋に放り込む。
そしてその場を後にしようとして出入り口に足を踏み出したその時、背後で掃除を続けている男から声が掛かる。
「織斑一夏くん」
知っている名を言われ、ピタリと動きを止めてしまう。
男は掃除の手を休めずさらに続ける。
「―――君から見て、どんな子ですか?」
「良い子ですよ。 ……ごく普通のね」
静かに言って見せたその答えは、風玄の紛れもない本心からのものだ。
彼とは三年前の修羅場から付き合いがあり、その成長と才能の片鱗を間近で見続けてきた。
間違いなく一夏はISの操者として類稀なる実力者になり得るだろう。
その上で風玄はそう評した。
彼にとって一夏は善良でどこにでもいるごく普通の少年で、そしてだからこそ気の置けない世代を超えた友人のように思っている。
そう答えたのも、男性が求めたのがそういう面の答えであると暗に察したからだ。
事実、男は満足げに笑顔で頷いている。
「そうですか……来年も、賑やかになりそうですね」
楽しみです、と呟いて掃除に没頭する。
風玄も今度こそ喫煙室を後にする。
いくらか離れた後で、ふぅ、と溜息を吐く。
「いきなり会うとびっくりするな」
先ほどの男性の姿を思い浮かべながら誰ともなしに呟く。
風玄は彼のことをよく知っていた。
名を、【轡木 十蔵】。
その柔和な人柄から“学園の良心”などとも呼ばれている用務員……というのが彼を知る殆どの人間の評価だ。
だがその実態は、妻を学園長の座に置きながら実務を取り仕切る実質上の学園の最高権力者。
―――そしてIS学園設立における全ての絵図面を引き、現実のものとした立役者でもある。
それらの事実を知る者は、限りなく少ない。
「………本当、恐ろしいほどに食えない人だ」
いらないところで精神的な疲労を背負ってしまったような気分の風玄は、気を取り直すかのように携帯を取り出す。
掛ける相手は、年下の友人だ。
「一夏くん、試験ご苦労さん。 よかったらご飯でも奢るよ?
…………ん? お姉さんもいる?
構わないよ、むしろ光栄だね」
そうして約束を取り付け、さらに幾つらか会話してから電話を切ると風玄は足取りを軽くした。
さて、なにを御馳走しようか……財布の中身と相談しながら、風玄は楽し気に思案を始めていた。
というわけで、いろいろ垂れ流し回。
でも正直、責任取るってことが世界でただ一つの教育機関を作ることに繋がるのがよくわからなかったのでそこら辺を妄想。
実際、むしろ全部取り上げられてるよね、管理できてないって言ってるようなもんだし。
政治学的におかしいところがあっても、あんまり突かないでくれるとありがたいです。
ぶっちゃけそこらへんは素人以下なので。
ならなぜ書いたかというと妄想が暴走した結果と言いますか。
さて、フルネームも出ましたフーさんこと【城山 風玄】。
これ、以前あとがきで書いた『八房先生びスパロボ漫画のあるキャラを思いっきりモデルにしたオリキャラ』です。
モデル元は【ジョナサン=カザハラ】……グルンガスト壱式のパイロットであるイルム中尉のお父さんなあの人です。
ちなみに名前ももじってます。
・ジョナサン→じょうさん→城山(→しろやま)
・カザハラ→風原→ふうげん→風玄
……こんな感じに。
ぶっちゃけそんな出張ることはないと思いますが、それでも一夏側の人間としていろいろ関わってくると思います。
ちなみにセルフQ&A。
Q:倉持技研の人間ならオリキャラじゃなくても【篝火 ヒカルノさん】でもよかったんじゃない?
A:ヒカルノさんのキャラよくわからない&あんまり一夏側に立ちにくい感じがした&立場的にあんまりフットワーク軽くなさそう&オッサンキャラ出したかった。
……まぁ、一番デカい理由は最後のなんですが。
一応、『子供の味方ができるまともな大人』として描けたらいいなと思っています。
それではこの辺で。
次回はかなり間が空くと思いますが気を長くしてお待ちいただければ幸いです。