モノクロの世界   作:琲世。

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新一side

───────遡ること、数分前。

 

新一「…戻ってきたか」

 

瞑っていた目を開ける。

 

開いた先には見慣れた景色が広がる。

ここは地下室か、近くにはウルと快斗以外の三人が床に眠るように倒れている

 

ウルと快斗は、俺の部屋か。

 

───────よお、新一大丈夫か?

 

と、その時ノイズ混じりの聴きなれた声が頭に響く

 

───────ウルか、大丈夫って何が?

 

───────お前、理性飛びかけてたろ?もう今はどうもしねえか?

 

───────なんだ、そのことか。

ああ、今はもうなんともねえよ。

 

むしろ今のほうが、頭も身体もスッキリしてとてもイイ気分だ。

 

───────それならいいが。おっと、マジック少年が目を覚ましたみたいだ。じゃあ、また後でな新一

 

───────ああ、快斗のこと頼んだぞ。

 

プツッとテレビが切れるように回線が切れる

ふう、と息を吐いて今だ床に眠るように倒れている三人のもとに近付く

 

新一「……」スッ

 

すべての感情が抜け落ちたような無表情でニコリとも微笑むことなく彼等を見下す。片手には黒鎌が握られ無言で天高く掲げ振り落とす

 

新一「ほお、これは面白い無意識に止 めたか?それとも…」

 

彼等を守るように黒い靄が円盤のように俺の攻撃を受け止める。

 

アゲハ「んっ…。ここは、?

ってうわ?!な、何やってんだよアンタ!!」

 

チッ、目え覚ましたか。

アゲハの叫び声に何事かと二人も目を覚ます。

 

新一「何って、なかなか目え覚まさねえからさ…

俺が目を覚まさせようかと。永遠のな」

 

アゲハ「永遠のって今永遠って言ったよね?!

俺達を殺す気かアンタ!!!」

 

新一「でも、目え覚めたろ?」

 

アゲハ「あったり前だバカ!!」

 

何をそんなに怒ってんだか、普通に起こすんじゃつまらないからちょおっとスパイスを加えただけだろ?全く冗談が通じない奴等だ

 

アゲハ「こんな最悪な目覚め初めてだよ」

 

あー、びっくりしたと胸をなでおろすアゲハに俺は振り上げていた黒鎌を手元に置く。

 

カブト「…戻ってきたんだな。あれ?あの人達は?」

 

キョロキョロと周りをみて「あれ?あれ?」と言うカブトに俺は人懐っこい笑顔で近付き肩に手をやる

 

新一「ん?ああ、ウル達か?アイツ等は上にいるよ」

 

天井を指差しニコッと微笑めば主にアゲハから悲鳴が聞こえる。その悲鳴にムッとしたように睨む

 

アゲハ「いや、なんで俺にはそんな敵意向きだしなの?!」

 

新一「カブトは女好きではあるが、人を見る目は誰よりもあるそれにどんな苦難に立ちはだかろうと絶対逃げ出す根性もな。お前はバカで喧嘩っ早くて状況判断能力はあるくせに正義感の強さからか無茶をするバカ」

 

アゲハ「バカって、今バカって2回言ったよね?!」

 

新一「大切なことだからな、お前がバカであることは」

 

アゲハ「くうう、腹立つッ!!」

 

小さな子供が玩具を買ってもらえず泣き喚くシーンをよく見るが、今目の前で彼がしているそれもよく見るシーンの一つだ。悔しさを身体いっぱいで表現するように地団駄を踏む。

 

アゲハ「ああ、腹立つ腹立つ腹立つ!!

ほんとのことだから何も言えねえってのが一番腹立つ!!」

 

でも、と言ってピタリと足を止め俺を真っ直ぐな瞳で見る

 

アゲハ「一度決めた信念は何があっても曲げねえ。だから、今度こそ新一さんに勝つ」

 

ビシッと俺を指差しふん!と鼻息荒く言うアゲハに俺はニヤリと黒い笑みを口元に浮かべる

 

新一「じゃあ、その信念とやらを見せてもらおうか」

 

───────そして、時は戻り現在

 

いつの間にか増えたギャラリーを横目に俺は大きく伸びをする。

 

快斗にバレたのは誤算だったが、まあいい。

どうせいつかバレることだったんだから

 

それに、今はそんなことどうでもいい。

昂ぶる気持ちを抑え切れず思わず笑みをこぼす

ああ、早く殺りてえな。でも、気をつけねえとさっきみたいに理性が飛んだら楽しめるものも楽しめなくなる

 

せっかく、こんなに面白いオモチャが手に入ったんだ。簡単に壊しちゃ意味がない

 

二人の視線が重なった瞬間、どちらともなく動き出す。黒い靄を纏わせたアゲハからの強烈な蹴りを腹部に喰らいながらもニタァとした笑みでその足を掴み壁に投げ飛ばしバンジーガムで壁に拘束し黒鎌で斬 りかかる

 

アゲハ「暴王・円盤Ver(メルゼズ・ディスクバージョン)」

 

新一「チッ、またこれか」

 

俺のPSIを吸収し大きく円盤状になり無差別に襲いかかる。それを黒鎌で蝿でも叩き落とすようにほんの数秒で消滅させる。そのたった数秒のうちどうやって拘束を解いたのか俺の真正面に移動してきたアゲハによって地面に叩き落とされる

 

それを俺は満面の笑みで受け、埋まった地面から身体を起こす。かなりの衝撃で地面に叩き落とされたにも限らずかすり傷一つない俺を見て「マジかよ」とアゲハが呟く

 

新一「なあ、まさかこれで本気なんて…言わねえよな?」

 

アゲハ「あ、当たり前だ!俺の本気はこんなもんじゃねえ!い、今から本気出すから待ってろ!(言えない、これが俺の本気だなんて口が裂けても言えない!!)」

 

新一「なーんだ、そうだよな。

これで本気とか…くくッ、弱すぎるもんなぁ?

俺はさ、ウルと遊んでた時にだしたあの時のお前と殺りてえんだよ」

 

黒く禍々しい靄のようなものが身体を包んで別人のように豹変したあの時のように。悪魔のような狂気めいた笑みで俺はスッと黒鎌を手放す。手元から離れた黒鎌は黒い霧となり消え去る

 

軽くジャンプして手足 をぶらぶらとさせ、息を吐く。両足を肩幅くらいに開き、左足を前に出し、半身の姿勢になる。両拳をこめかみの高さに上げ、脇を軽く締め、左拳は少しだけ前へ出し、右拳は自分の顎とこめかみを守るように構える。 左足の爪先は正面を向け、右足は外側に向け、軽く踵を浮かせる。膝を柔らかく使って、いつでも左足を上げることができるように構える。顎を引き、視線が下を向かないよう、両目は上目づかいをするように前方を直視する。

 

前に出した左手で挑発するようにクイクイッとさせる。

 

新一「さあ、来いよ」

 

アゲハ「ッ!! 舐めやがって…!!」

 

挑発に乗せられ俺に向かって無防備に突っ込んでくる。やっぱりコイツアホだな。まんまと乗せられるなんて…、構えていた左足でアゲハの首元に向け強烈な回し蹴りを喰らわせる

 

が、それより早くアゲハを守るように攻撃を受け止めその衝撃によって切れた頬からはたらりと血が落ち袖で拭う。

 

アゲハ「あっぶねー…。アンタ俺を殺す気か?!」

 

新一「殺す?それくらいで死ぬかよ」

 

アゲハ「いやいやいや!今の首にヒットしてたら完璧死んでたよ?!」

 

新一「でも、実際死んでねえだろ?

それに二割程度の蹴りで死ぬわけねえだろ」

 

アゲハ「今ので二割って、マジかよ…」

 

チッと舌打ちをし再び俺に攻撃を仕掛けてくる

素早い動きにも離されまいと必死に喰らいつきちょっとした隙が生まれた瞬間

 

アゲハ「──── ─全てを貫け

暴王の流星(メルゼズ・ランス)」

 

黒い流星が俺の心臓を貫くように真っ直ぐに向かってくる。

 

新一「残念だよ。全く

もっと、楽しめると思ったのに」

 

バンジーガムによって攻撃は止められはね返す。

心臓を狙うそれは高く評価するが、その攻撃には殺意も何もなく。あるのは少しの迷い

 

新一「お前さ、本気で勝つ気あんの?

お前には失望したよ。これ以上ヤッてもつまらないだけだ」

 

一気に興醒めした。こんな奴と遊んでも何も楽しくない。

 

新一「少しでも、期待した俺がバカだった」

 

くるっと方向転換し他の遊び相手を探すべく俺達の遊びを見学していた彼等の方に歩み寄る

 

アゲハ「…てよ。」

 

アゲハ「待てよ!!俺はまだアンタに負けてねえ!」

 

その言葉に立ち止まり、顔だけ振り向くように彼を横目でみる

 

新一「だから?これ以上して何か変わるのか?変わらねえだろ。覚悟も何もない奴が俺に勝とうなんて…お前こそ舐めてんじゃねえの?」

 

アゲハ「…確かにこれ以上アンタと戦ったとして俺が勝つ確率は低い。けど、もうやめた。勝つ気じゃダメなんだ。殺す気で行かねえとアンタと同等には戦えない」

 

新一「ふっ、殺す気って甘ちゃんなお前に出来んのか?」

 

馬鹿にしたような嘲笑で言えば俺を真っ直ぐな瞳でみる。その瞳にはさっきまでの迷いもなく本気だと言うことが伝わる

 

ああ、これだよこれ。きたきた来た…くっふふ。

 

あの時感じたのと同じ空気だ。

部屋いっぱいに張り裂けるような殺気が満ち、圧縮された空気を前から浴びせられるような異様な威圧感に俺はブルっと背中を震わせる。

 

腹の底からゾクゾクとした何かが湧き上がり興奮したように顔だけじゃない身体を火照らせ唇を舐める

 

彼を見れば、大きく息を吸ってゆっくりと時間をかけ息を吐き、それを繰り返したかと思えば身体全体の力を抜くようにだらりと手をぶら下げ顔も下を俯くように脱力している。

 

───────来るっ!!!

 

突風がふいて俺は思わず目をギュッと瞑る

そして、閉じていた目を開くと全くの別人が俺の目の前に佇んでいた。

 

ああ、ダメだ。我慢しなきゃ我慢我慢我慢我慢!!!俺は自分の興奮を抑えるように震える身体をギュッと強く強く抱える

 

黒く禍々しい靄のようなものが彼を包み酔っぱらいのように右に左にとユラユラと身体を揺らす。

 

来い来い来い来い来いッ!!!!

 

新一「さあ、来いッ!!」

 

彼の周りには無数の 黒い球ができ一斉に俺を襲う。それを待ってましたと言わんばかりに駆け出しひとつ残らずサッカーボールでも蹴るように消滅させ攻撃を囮にして正面突破してくる彼を壁をけるように上に飛びそのまま踵落としをするが、余裕で避けられ無数の流星と円盤を再び俺に叩きつける

 

新一「これだよこれこれこれえええ!!

あはははははははははははははははは!!!!」

 

壊れた笑みで攻撃を瞬殺し、興奮でギラリと目は異様な輝きを見せはあはあと肩を上下に揺らす

 

新一「─────水天逆巻け 捩花」

 

ふわっと自ら風を起こすように髪や服が舞い上がる。鞘から出した刀は三叉の槍(矛)に変化し、同時に多量の水を発生させる。頭上でクルクルと回転させるようにし槍を構える。 彼はそんな俺に臆することなく突っ込んでくる。

 

足を払うように柄を引っ掛けって地面に転ばせそのまま止めを刺そうと更に追撃を仕掛けるが彼のPSIにより止められさっきと同じく近距離で無差別に無数の円盤と黒い流星を俺に飛ばしてくる

 

片手首を軸に回転させ、巻き上げた水の波濤と槍で攻撃を殺しその勢いのまま狂った笑みで斬りかかる

 

新一「オラオラオラオラおらあああああッハハハハハハハハハ!!!」

 

ウル「……やべえな、新一。理性が飛びかけてやがる」

 

快斗「は?!ちょっ、それ相当やばいんじゃ…」

 

周りの声など既に聞こえておらず、

楽しさだけを求めただひたすらに戦いを渇望する

突いて、払って、斬って、跳ね飛ばし叩き潰すよう巻き上げ様々な戦法を用い攻撃していく

 

新一「あハハはははハハハハハ!!ヤベエエエエ楽しいよォ楽しい楽しい楽しすぎる!!!あああもっともっともっと壊したい壊して壊して壊してグチャグチャになるほど壊してエエエけどまだダメだ。だってこんなに楽しいんだ!!

 

駄目駄目駄目駄目我慢しないとコイツが壊れちゃまた退屈しちゃう。だからダメだ我慢しないと駄目だダメ」

 

自分に何度も言い聞かせるように 呟いて天井を仰ぐように高笑いをする ああ、でもでも死なない程度に壊すぶんにはいいよな?そうだよな、うん。それにコイツはそう簡単に壊れないし

 

───────新一、俺の声聞こえてるか?

またあの時みたいになるぞ。一旦落ち着け新一

 

頭の中にノイズ混じりの声が聞こえた。俺はその声に返事することなく目の前にいる彼だけを視界にいれる

 

快斗「お、おい新一大丈夫なのか?」

 

ウル「…いや、ちょっとやばいかもな」

 

カブト「新一さん。あの時より楽しんでるように見える」

 

アゲハ「バケモンてより悪魔だよ、最早…」

 

新一「悪魔?クククッ、褒め言葉じゃねえか。はあぁ、楽しいなおい。楽しすぎて楽しすぎてゾクゾクしちゃうヨ」

 

最後の「ヨ」の部分で一瞬で彼を壁に追い詰め槍投げの要領で手から放った槍は弧を描き彼の右太ももに突き刺さる

 

アゲハ「ぁガッ…ぐぅ‥んにゃろッ!!」

 

太ももに突き刺さった槍を抜くとポッカリと穴の空いた傷跡は一瞬で消える。俺の手元に戻った槍につく血をぺろりと舐め狂った笑みを浮かべる

 

新一「────卍解 擂砕け 龍渦水捩花(すりくだけ りゅうかすいねじばな)」

 

普通の状態の捩花が長くなり、前後についた刃の部分に大量の水 が龍のように渦まいている

 

新一「さあ、これからが本番だぜ。

へばってんじゃねえぞ。楽しみはこれからなんだからよお!!」

 

アゲハ「いや、え?!これまでのは一体?!」

 

新一「あ?これまでのはほんのお遊びだろ?」

 

アゲハ「デスヨネー!!」

 

涙目になっている彼を無視して俺はニッコリと黒い笑みを浮かべた

 

新一sideend

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